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第83話 私の食べたいもの
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週末になり、私はアンディさんのライ麦畑にやってきた。すっかり雪の無くなった畑には若いライ麦が植えられており、すくすくと育っているように見える。
「やあ、ホリーちゃん。ありがとう」
私がやってきたことに気付いたアンディさんは、筋肉を見せつけるポーズを取りながら笑顔で近づいてくる。
アンディさんは嫌いではないが、どうにもこのポーズを取りながら近寄ってこられるのは苦手だ。
「いいえ。お仕事ですからね。早速見せてもらえますか?」
「もちろん。ついてきて」
アンディさんに案内され、ライ麦畑の一角にやってきた。
なるほど。たしかにこの辺りのライ麦は他の場所よりも元気がないように見える。だが育ちが悪いだけで葉にも茎にも異常はなさそうだ。
「どうだい?」
「見た限り病気ではなさそうですけど……ちょっと根っこも見せてもらえますか?」
「もちろん。そうだなぁ。あ、こいつはかなり元気がないし、この株を診てもらえるかい?」
「はい」
私はそっと地面を掘り起こし、ライ麦の根を確認する。
「根にも病変はなさそうですね。やっぱりこれは病気ではなさそうです」
「うーん、でも肥料は他と同じようにやってるんだけどなぁ」
「そうですか。だとすると、魔力不足かもしれませんね」
「魔力不足?」
「はい。おじいちゃんが言っていたんですけど、作物が成長するのにも魔力が必要らしいんです。だから土地の魔力が足りないと病気じゃないのに成長が遅れるらしいんです」
「そうなのか。さすがグラン先生だね。どうすればいいんだい?」
「今日は豊穣の奇跡を使ってライ麦に元気を与えます。これで一時的に元気になりますから、あとは新鮮な水や肥料を少し多めにあげてください。それでしばらくしたら元気になるはずです」
「そうなのか! ありがとう! ホリーちゃん」
「あ、でも豊穣の奇跡は結構お金かかっちゃいますけど大丈夫ですか?」
「もちろんだよ」
「わかりました。それじゃあ、始めますね。あまり広い範囲を一度にはできないので少しずつやります」
「ああ。よろしく!」
私は自分の周りの半径一メートルくらいに対して豊穣の奇跡を発動した。キラキラとした光が元気のないライ麦に降り注ぐ。
見た目には変化がないが、これでこの範囲のライ麦の魔力不足は解消しているはずだ。
「それじゃあ、次の場所に移動します」
こうして私は元気のないライ麦たちに次々と豊穣の奇跡をかけるのだった。
◆◇◆
「ありがとう。お疲れ様」
「どういたしまして。合計で百回かけましたから、十リーレです」
「え? たったそれだけ?」
そうは言うが、お給料のいい衛兵をしているニール兄さんだって月に百リーレも稼いでいない。だからアンディさんにとっても痛い出費のはずだ。
それにおじいちゃんと相談して値段を決めたので、適正価格のはずだ。
「えっと、はい。十回で一リーレなので、百回で十リーレです」
「そうかぁ。本当にホリーちゃんは商売っ気がないよなぁ。まあ、グラン先生の孫娘だし、似るんだろうなぁ」
「え? 安いですか?」
「そう思うけれど、でもそのおかげで助かってるしなぁ。あ! そうだ! じゃあお昼はおごってあげるよ。たくさん魔力を使っただろうし、美味しいものをお腹いっぱい食べなよ」
「いいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます!」
こうして私はアンディさんにお昼をおごってもらえることになり、ハワーズ・ダイナーへと向かうのだった。
◆◇◆
「え? 何? お昼おごってもらえるのにうちに来たわけ?」
ハワーズ・ダイナーに着いて事情を話すと、アネットに呆れられてしまった。
「だって、私が一番食べたいのはここのランチプレートだもん」
「まあ、それでいいんならいいけどさ。じゃ、座って。アンディさんは?」
「もちろんスペシャルヘルシーランチで」
「はい。注文でーす! 五番さん日替わりランチプレートとスペシャルヘルシーランチ!」
アネットが厨房にいるハワードさんに注文を伝える。ちなみにアンディさんの頼んだスペシャルヘルシーランチというメニューは全くヘルシーではない。胸やけしそうなボリュームがあるのだ。
「やっぱりハワードさんの料理は美味しいもんなぁ」
「はい。私、毎日食べてますよ」
「そうだよね。近いもんね」
「はい」
それから世間話をしていると、私たちのランチが運ばれてきた。今日は珍しく魚のようで、トラウトのグリルとポテトサラダ、野菜のスープと黒パンのセットだ。
一方のスペシャルヘルシーランチは相変わらず胸やけしそうなほど大量の肉が積み上げられている。
鹿ロース肉のステーキと鶏胸肉のステーキがそれぞれ三枚ずつ、目玉焼きが二つに大量の豆とグリル野菜、そして野菜のスープだ。
これでどうしてヘルシーなのかは分からないが、アンディさんや一部のマッチョな人たちは喜んでこれを食べている。
正直食べすぎだと思うけれど、本人たちからすればちょうどいいらしい。
私は胸やけしそうな自称ヘルシーランチを視界に入れないようにしながら、今日のランチプレートに手をつけるのだった。
「やあ、ホリーちゃん。ありがとう」
私がやってきたことに気付いたアンディさんは、筋肉を見せつけるポーズを取りながら笑顔で近づいてくる。
アンディさんは嫌いではないが、どうにもこのポーズを取りながら近寄ってこられるのは苦手だ。
「いいえ。お仕事ですからね。早速見せてもらえますか?」
「もちろん。ついてきて」
アンディさんに案内され、ライ麦畑の一角にやってきた。
なるほど。たしかにこの辺りのライ麦は他の場所よりも元気がないように見える。だが育ちが悪いだけで葉にも茎にも異常はなさそうだ。
「どうだい?」
「見た限り病気ではなさそうですけど……ちょっと根っこも見せてもらえますか?」
「もちろん。そうだなぁ。あ、こいつはかなり元気がないし、この株を診てもらえるかい?」
「はい」
私はそっと地面を掘り起こし、ライ麦の根を確認する。
「根にも病変はなさそうですね。やっぱりこれは病気ではなさそうです」
「うーん、でも肥料は他と同じようにやってるんだけどなぁ」
「そうですか。だとすると、魔力不足かもしれませんね」
「魔力不足?」
「はい。おじいちゃんが言っていたんですけど、作物が成長するのにも魔力が必要らしいんです。だから土地の魔力が足りないと病気じゃないのに成長が遅れるらしいんです」
「そうなのか。さすがグラン先生だね。どうすればいいんだい?」
「今日は豊穣の奇跡を使ってライ麦に元気を与えます。これで一時的に元気になりますから、あとは新鮮な水や肥料を少し多めにあげてください。それでしばらくしたら元気になるはずです」
「そうなのか! ありがとう! ホリーちゃん」
「あ、でも豊穣の奇跡は結構お金かかっちゃいますけど大丈夫ですか?」
「もちろんだよ」
「わかりました。それじゃあ、始めますね。あまり広い範囲を一度にはできないので少しずつやります」
「ああ。よろしく!」
私は自分の周りの半径一メートルくらいに対して豊穣の奇跡を発動した。キラキラとした光が元気のないライ麦に降り注ぐ。
見た目には変化がないが、これでこの範囲のライ麦の魔力不足は解消しているはずだ。
「それじゃあ、次の場所に移動します」
こうして私は元気のないライ麦たちに次々と豊穣の奇跡をかけるのだった。
◆◇◆
「ありがとう。お疲れ様」
「どういたしまして。合計で百回かけましたから、十リーレです」
「え? たったそれだけ?」
そうは言うが、お給料のいい衛兵をしているニール兄さんだって月に百リーレも稼いでいない。だからアンディさんにとっても痛い出費のはずだ。
それにおじいちゃんと相談して値段を決めたので、適正価格のはずだ。
「えっと、はい。十回で一リーレなので、百回で十リーレです」
「そうかぁ。本当にホリーちゃんは商売っ気がないよなぁ。まあ、グラン先生の孫娘だし、似るんだろうなぁ」
「え? 安いですか?」
「そう思うけれど、でもそのおかげで助かってるしなぁ。あ! そうだ! じゃあお昼はおごってあげるよ。たくさん魔力を使っただろうし、美味しいものをお腹いっぱい食べなよ」
「いいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます!」
こうして私はアンディさんにお昼をおごってもらえることになり、ハワーズ・ダイナーへと向かうのだった。
◆◇◆
「え? 何? お昼おごってもらえるのにうちに来たわけ?」
ハワーズ・ダイナーに着いて事情を話すと、アネットに呆れられてしまった。
「だって、私が一番食べたいのはここのランチプレートだもん」
「まあ、それでいいんならいいけどさ。じゃ、座って。アンディさんは?」
「もちろんスペシャルヘルシーランチで」
「はい。注文でーす! 五番さん日替わりランチプレートとスペシャルヘルシーランチ!」
アネットが厨房にいるハワードさんに注文を伝える。ちなみにアンディさんの頼んだスペシャルヘルシーランチというメニューは全くヘルシーではない。胸やけしそうなボリュームがあるのだ。
「やっぱりハワードさんの料理は美味しいもんなぁ」
「はい。私、毎日食べてますよ」
「そうだよね。近いもんね」
「はい」
それから世間話をしていると、私たちのランチが運ばれてきた。今日は珍しく魚のようで、トラウトのグリルとポテトサラダ、野菜のスープと黒パンのセットだ。
一方のスペシャルヘルシーランチは相変わらず胸やけしそうなほど大量の肉が積み上げられている。
鹿ロース肉のステーキと鶏胸肉のステーキがそれぞれ三枚ずつ、目玉焼きが二つに大量の豆とグリル野菜、そして野菜のスープだ。
これでどうしてヘルシーなのかは分からないが、アンディさんや一部のマッチョな人たちは喜んでこれを食べている。
正直食べすぎだと思うけれど、本人たちからすればちょうどいいらしい。
私は胸やけしそうな自称ヘルシーランチを視界に入れないようにしながら、今日のランチプレートに手をつけるのだった。
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