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第40話 引っ越し
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翌日、俺は朝食に陽菜の大好きなふわとろオムライスを作ってあげるために亜空間キッチンへとやってきた。
材料は卵とご飯の他に玉ねぎ、鶏もも肉、マッシュルームだ。
ご飯を少し硬めに炊いたら調理開始だ。
玉ねぎは粗みじんに、鶏もも肉は皮を外して一センチ角に、マッシュルームは薄切りにする。
そうしたらまずは鶏の皮をフライパンで中火で炙り、油を出してやる。こうすることでうま味とコクが増すのだ。
十分に油が出たら鶏の皮は避けて、玉ねぎを炒める。これが透明になってきたところでもも肉を投入し、ピンク色の部分が無くなったらマッシュルームを入れる。
マッシュルームに火が通ったらバターを入れ、溶けたところでご飯の投入だ。
フライパンをささっと振り、ご飯にバターをしっかりからめてやる。
よし、こんなもんかな。
そうしたら塩胡椒とケチャップを入れる。
フライパンを振って、まずはしっかりと混ぜ合わせる。
だが、混ぜて終わりではない。混ぜたあとにきちんと炒め、ケチャップの酸味を飛ばしてやらなければならないのだ。
こうしないとトマトの酸味が残ってしまい、味が少しツンツンしてしまう。だから焦げないように、それでいてしっかりと火が通るように入念に炒めてやる。
よし、これでチキンライスの完成だ。
あとはこれをちょっと高く盛り付けて、次は卵を焼いていこう。
卵をちょっと多めにボウルに入れて切るようにしてしっかり混ぜ合わせ、余熱したフライパンに投入する。
火加減は中火で、フライパンを前後に動かしながら菜箸で素早くかき混ぜる! かき混ぜる! かき混ぜる!
よし。ちょうどいい感じになってきた。
あとはフライパンの柄をトントンしながらオムライスの形を作って……こんな感じかな?
よっと!
素早くひっくり返して反対側も加熱する。
んー、加熱はこんなもんかな?
そうしたらもう一度ひっくり返して、作ったつなぎ目を上にする。
ようし! 火加減はバッチリだ。
あとはこれを高く盛り付けたチキンライスの上に乗せ、包丁でつなぎ目をカットする。
うん、完璧。
パカッと割れた玉子焼きの中からふわとろの玉子が広がっていく。
あとはケチャップとパセリを乗せて完成だ。
俺は出来上がったオムライスを持ち、亜空間キッチンを出た。
「あ! お帰り! やったぁ! ふわとろオムライスだ!」
陽菜はまぶしい笑顔でそう言ってくれた。
陽菜はいつもこうやって素直に喜んでくれるんだよなぁ。
「今日はこの部屋で過ごす最後の日だしね。だから陽菜の好きなオムライスにしてみた」
「うん! ありがとう! 食べよ?」
「そうだね」
俺たちは食卓に着き、いただきますをしてからオムライスを口に運ぶ。
うん。完璧。陽菜がよくリクエストしてくるので、オムライスは作り慣れている料理の一つだ。
「んー、おいしー。やっぱ祥ちゃんのオムライスがないとあたし生きていけなーい」
陽菜は本当に幸せそうにオムライスを口に運んでおり、その姿を見ている俺まで幸せな気分にさせてくれる。
正直なところ、この反応が見たくて料理を作っていると言っても過言ではない。
「陽菜は美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるよなぁ」
「ほんとぉ? あたし、祥ちゃんの料理が世界一だと思ってるからねー」
「ははは。ありがとう」
そんな会話をしつつ、俺たちはオムライスを口に運ぶのだった。
◆◇◆
朝食を終えると俺たちはすぐに引っ越しを始めた。
「陽菜、持って行かなきゃいけないのはどれ?」
「うん。まず昼用のはここからここまで」
「えっ? こんなに?」
嘘だろ? 三十着くらいあるんだけど?
魔窟に行く前は三着を着まわしてたじゃん。
「うん。オリアンヌさんが来たときにそれ、全部お直ししてもらって、それでつい……」
「な、なるほど……」
「それに、ほら。素敵なドレスがいっぱいあったらさ。やっぱり着たくなっちゃうでしょ?」
陽菜が恥ずかしそうにそう言った。
うーん。俺はファッションに疎いのでその気持ちはよく分からないのだが……。
あ! でもそういえば前に買い物に付き合わされたとき、陽菜はうんざりするほど試着を繰り返していたっけ。
「まあ、いいや。そのうち着てるの、見せてくれよ」
「うん! 約束ね!」
「ああ。じゃあ、ケースに入れるか」
俺は皺にならないよう、慎重にドレスをキャリーケースに収納する。このケースはドレスを持ち運ぶ専用のケースのようで、折りたたまずに収納ができるようになっている。
まあ、要するに背の高いハードケースだ。そのため持ち運ぶのはかなり大変だ。
「じゃ、行ってくる」
「うん」
俺は近くに掛かっていた四着のドレスを収納すると、宿泊所へと向かう。
宿泊所には宮殿のほうからすでに話を通してくれており、すでに部屋の鍵は受け取っている。ちなみに俺たちに用意されたのは、前とは別の部屋だ。
今度の部屋は一番上のフロアにあり、前の部屋よりも少し見晴らしがいいのは嬉しい。だが、前と比べてかなり狭いのが難点だ。
ベッドも宮殿で使っていたものと同じサイズなので、夜の精神修行は継続することになるだろう。
部屋に着いた俺はすぐさまキャリーケースからドレスをウォークインクローゼットに移し、空のキャリーケースを持って宮殿の部屋に戻る。
そんなこんなで俺は最終的に十五往復し、ようやく陽菜の服と靴をすべて移動させることができたのだった。
新しい部屋のソファーでぐったりする俺に、陽菜は申し訳なさそうに話し掛けてくる。
「祥ちゃん、ごめんね。あたしのせいで……」
「いや、いいよ。気にしないで」
「あたしも手伝いたかったんだけど……」
「だからいいってば。陽菜にそんなことさせたら俺は後ろ指を指されるし、勘違いした男が陽菜に寄って来ちゃうでしょ」
「うん……でも、ごめんね」
陽菜はまたもや申し訳なさそうに謝ってきた。
「うん。いいよ。ただ、馬車のお店に行くのは明日にしようか」
「そうだね。でも、ホントにごめんね」
「だからいいってば」
こうして俺たちは宮殿からの引っ越しを終えたのだった。
================
次回更新は通常どおり、2024/03/15 (金) 18:00 を予定しております。
材料は卵とご飯の他に玉ねぎ、鶏もも肉、マッシュルームだ。
ご飯を少し硬めに炊いたら調理開始だ。
玉ねぎは粗みじんに、鶏もも肉は皮を外して一センチ角に、マッシュルームは薄切りにする。
そうしたらまずは鶏の皮をフライパンで中火で炙り、油を出してやる。こうすることでうま味とコクが増すのだ。
十分に油が出たら鶏の皮は避けて、玉ねぎを炒める。これが透明になってきたところでもも肉を投入し、ピンク色の部分が無くなったらマッシュルームを入れる。
マッシュルームに火が通ったらバターを入れ、溶けたところでご飯の投入だ。
フライパンをささっと振り、ご飯にバターをしっかりからめてやる。
よし、こんなもんかな。
そうしたら塩胡椒とケチャップを入れる。
フライパンを振って、まずはしっかりと混ぜ合わせる。
だが、混ぜて終わりではない。混ぜたあとにきちんと炒め、ケチャップの酸味を飛ばしてやらなければならないのだ。
こうしないとトマトの酸味が残ってしまい、味が少しツンツンしてしまう。だから焦げないように、それでいてしっかりと火が通るように入念に炒めてやる。
よし、これでチキンライスの完成だ。
あとはこれをちょっと高く盛り付けて、次は卵を焼いていこう。
卵をちょっと多めにボウルに入れて切るようにしてしっかり混ぜ合わせ、余熱したフライパンに投入する。
火加減は中火で、フライパンを前後に動かしながら菜箸で素早くかき混ぜる! かき混ぜる! かき混ぜる!
よし。ちょうどいい感じになってきた。
あとはフライパンの柄をトントンしながらオムライスの形を作って……こんな感じかな?
よっと!
素早くひっくり返して反対側も加熱する。
んー、加熱はこんなもんかな?
そうしたらもう一度ひっくり返して、作ったつなぎ目を上にする。
ようし! 火加減はバッチリだ。
あとはこれを高く盛り付けたチキンライスの上に乗せ、包丁でつなぎ目をカットする。
うん、完璧。
パカッと割れた玉子焼きの中からふわとろの玉子が広がっていく。
あとはケチャップとパセリを乗せて完成だ。
俺は出来上がったオムライスを持ち、亜空間キッチンを出た。
「あ! お帰り! やったぁ! ふわとろオムライスだ!」
陽菜はまぶしい笑顔でそう言ってくれた。
陽菜はいつもこうやって素直に喜んでくれるんだよなぁ。
「今日はこの部屋で過ごす最後の日だしね。だから陽菜の好きなオムライスにしてみた」
「うん! ありがとう! 食べよ?」
「そうだね」
俺たちは食卓に着き、いただきますをしてからオムライスを口に運ぶ。
うん。完璧。陽菜がよくリクエストしてくるので、オムライスは作り慣れている料理の一つだ。
「んー、おいしー。やっぱ祥ちゃんのオムライスがないとあたし生きていけなーい」
陽菜は本当に幸せそうにオムライスを口に運んでおり、その姿を見ている俺まで幸せな気分にさせてくれる。
正直なところ、この反応が見たくて料理を作っていると言っても過言ではない。
「陽菜は美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるよなぁ」
「ほんとぉ? あたし、祥ちゃんの料理が世界一だと思ってるからねー」
「ははは。ありがとう」
そんな会話をしつつ、俺たちはオムライスを口に運ぶのだった。
◆◇◆
朝食を終えると俺たちはすぐに引っ越しを始めた。
「陽菜、持って行かなきゃいけないのはどれ?」
「うん。まず昼用のはここからここまで」
「えっ? こんなに?」
嘘だろ? 三十着くらいあるんだけど?
魔窟に行く前は三着を着まわしてたじゃん。
「うん。オリアンヌさんが来たときにそれ、全部お直ししてもらって、それでつい……」
「な、なるほど……」
「それに、ほら。素敵なドレスがいっぱいあったらさ。やっぱり着たくなっちゃうでしょ?」
陽菜が恥ずかしそうにそう言った。
うーん。俺はファッションに疎いのでその気持ちはよく分からないのだが……。
あ! でもそういえば前に買い物に付き合わされたとき、陽菜はうんざりするほど試着を繰り返していたっけ。
「まあ、いいや。そのうち着てるの、見せてくれよ」
「うん! 約束ね!」
「ああ。じゃあ、ケースに入れるか」
俺は皺にならないよう、慎重にドレスをキャリーケースに収納する。このケースはドレスを持ち運ぶ専用のケースのようで、折りたたまずに収納ができるようになっている。
まあ、要するに背の高いハードケースだ。そのため持ち運ぶのはかなり大変だ。
「じゃ、行ってくる」
「うん」
俺は近くに掛かっていた四着のドレスを収納すると、宿泊所へと向かう。
宿泊所には宮殿のほうからすでに話を通してくれており、すでに部屋の鍵は受け取っている。ちなみに俺たちに用意されたのは、前とは別の部屋だ。
今度の部屋は一番上のフロアにあり、前の部屋よりも少し見晴らしがいいのは嬉しい。だが、前と比べてかなり狭いのが難点だ。
ベッドも宮殿で使っていたものと同じサイズなので、夜の精神修行は継続することになるだろう。
部屋に着いた俺はすぐさまキャリーケースからドレスをウォークインクローゼットに移し、空のキャリーケースを持って宮殿の部屋に戻る。
そんなこんなで俺は最終的に十五往復し、ようやく陽菜の服と靴をすべて移動させることができたのだった。
新しい部屋のソファーでぐったりする俺に、陽菜は申し訳なさそうに話し掛けてくる。
「祥ちゃん、ごめんね。あたしのせいで……」
「いや、いいよ。気にしないで」
「あたしも手伝いたかったんだけど……」
「だからいいってば。陽菜にそんなことさせたら俺は後ろ指を指されるし、勘違いした男が陽菜に寄って来ちゃうでしょ」
「うん……でも、ごめんね」
陽菜はまたもや申し訳なさそうに謝ってきた。
「うん。いいよ。ただ、馬車のお店に行くのは明日にしようか」
「そうだね。でも、ホントにごめんね」
「だからいいってば」
こうして俺たちは宮殿からの引っ越しを終えたのだった。
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次回更新は通常どおり、2024/03/15 (金) 18:00 を予定しております。
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