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第161話 悪の一族
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「おい! ファウストはどこにいる!」
鬼のような形相をしたクルデルタがマッツィアーノ公爵邸へと乗り込んだ。その姿を見た使用人たちは腰を抜かし、また口をあんぐりと開けて驚いている。
「えっ? 旦那様!?」
「どうなってるんだ?」
「ファウスト坊ちゃまが旦那様はお亡くなりになられたと……」
そんな使用人たちをクルデルタは一喝する。
「おい! 貴様ら! 主人を出迎える礼儀すら忘れたのか!」
「お、お帰りなさいませ! 旦那様!」
クルデルタに怒鳴られ、使用人たちは慌てて頭を下げる。
「この騒ぎは一体なんだ! セバスティアーノはどうした!」
「そ、それが――」
使用人の一人がクルデルタに状況を説明した。するとクルデルタはわなわなと怒りに体を震わせる。
「セバスティアーノを殺しただと!? あの馬鹿者が! ファウストはどこにいる!」
「はっ! 今は離れの研究所にいらっしゃるはずです」
するとクルデルタは舌打ちをする。
「おい! 兵を連れてこい! ファウストを処分する! これは反乱だ!」
「で、ですが、サルヴァトーレ坊ちゃまはモンスターとなられ、サンドロ坊ちゃまはサルヴァトーレ坊ちゃまに……」
「なんだ? 貴様ごときが後継問題に首を突っ込むつもりか? お前はいつから俺よりも偉くなった?」
「も、申し訳ございません! ただ、私めは心配で……」
「ふん。セレスティアがいるではないか。子供たちの中で誰よりも俺に似た優秀な娘だ。魔力もまだまだ成長している」
「えっ? セレスティアお嬢様が?」
「何度も言わせるな! ファウストを処分する!」
「は、ははっ!」
こうしてクルデルタは邸内に残っていた五十名ほどの兵士とモンスターたちを引き連れ、ファウストの研究所へと乗り込んだ。
「ファウスト!」
「父上!? なぜこんなに早く……」
「ふん。俺の目がないとでも思ったか?」
「くっ……」
ファウストは悔しそうに唇を噛んだ。
「さあ、この愚かな行いの落とし前はつけさせてもらうぞ」
クルデルタはそう言ってニヤリと笑うが、ファウストも負けじとクルデルタのほうを睨む。
「なんだ? その目は?」
「どのみち死ぬのなら、あがこうと思っただけですよ」
「ふん。無駄なことを」
「ですが父上、本当にそれでよろしいのですか?」
「何がだ?」
「サンドロはもういません。父上はもう私を後継者とするしかありませんよね」
「ほう? お前を後継者に? く、くくく、くはははは。面白い冗談だな。こんな杜撰な計画しか立てられん愚か者にその資格があると本気で思っているのか?」
「なっ!?」
「お前がここまで愚かだとは思っていなかったよ」
「ですが! サンドロがいなくなれば私以外に継げるものはいません! まさか魔力の少ないロザリナに、ましてやほとんどないセレスティアごときに後継者が務まるとでも?」
それを聞いたクルデルタは見下すような視線をファウストに向ける。
「それは本気で言っているのか?」
「え? それは一体どういう……?」
「そうか。本気なのか」
「父上!」
「もういい。研究とやらを見守っていたが、やはりその程度だったか」
「なっ!? いいでしょう。ならば見せてやりますよ! 出てこい!」
ファウストがそう言うと、二体の緑色の巨人が姿を現した。
「なるほど。それがサンドロとサルヴァトーレの成れの果てというわけか」
「ええ、そうです。私の研究は完璧です。魔人と化した二人はたとえ父上のブラックドラゴンでも止められません」
「ふん。だが所詮はモンスターだ。俺とお前の魔力差を考えれば支配権を奪うことなど……何っ!?」
クルデルタは余裕の笑みを浮かべながら手を突き出したが、その表情はすぐに驚愕へと変わる。
「サンドロにやられましたからね。もう対策済みですよ。いくら父上の魔力が強力とはいえ、支配権を奪うことなどできないでしょう。さあ、サルヴァトーレ、父上を始末しろ。そうすればあの女はお前のモノだ」
「グ、グガァァァァァ! ゴロ゛ズ!」
サルヴァトーレはそう叫び、クルデルタのほうへと向かっていく。
「ええい! ギガンティックベアども! そいつを殺せ! ディノウルフたち! ファウストを殺せ!」
命令を受けたギガンティックベアはサルヴァトーレに襲い掛かるが、サルヴァトーレの拳一発で巨大なギガンティックベアはなすすべなく打ち倒されていく。
一方のディノウルフたちはファウストを守るように立つサンドロによって一瞬にして打ち倒された。
「どうです? 兄弟がこうして力を合わせるだなんて、素晴らしい光景だとは思いませんか? 継承の度に兄弟をすべて殺してきたマッツィアーノの歴史に新たなる道ができたのですよ」
ファウストは勝ち誇ったようにそう宣言する。
その間にもサルヴァトーレはギガンティックベアたちの壁を力ずくでなぎ倒し、クルデルタへと近づいていく。
やがてクルデルタの目の前までたどり着いたサルヴァトーレは拳を振り上げる。
「さあ、父上。爵位継承の時間です。今までお疲れ様でした。輝かしいマッツィアーノの歴史はこの私が引き継ぎましょう」
ファウストは芝居がかった様子でそう宣言した。それと同時にサルヴァトーレの拳がクルデルタに振り下ろされる!
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次回更新は通常どおり、2024/04/25 (木) 18:00 を予定しております。
鬼のような形相をしたクルデルタがマッツィアーノ公爵邸へと乗り込んだ。その姿を見た使用人たちは腰を抜かし、また口をあんぐりと開けて驚いている。
「えっ? 旦那様!?」
「どうなってるんだ?」
「ファウスト坊ちゃまが旦那様はお亡くなりになられたと……」
そんな使用人たちをクルデルタは一喝する。
「おい! 貴様ら! 主人を出迎える礼儀すら忘れたのか!」
「お、お帰りなさいませ! 旦那様!」
クルデルタに怒鳴られ、使用人たちは慌てて頭を下げる。
「この騒ぎは一体なんだ! セバスティアーノはどうした!」
「そ、それが――」
使用人の一人がクルデルタに状況を説明した。するとクルデルタはわなわなと怒りに体を震わせる。
「セバスティアーノを殺しただと!? あの馬鹿者が! ファウストはどこにいる!」
「はっ! 今は離れの研究所にいらっしゃるはずです」
するとクルデルタは舌打ちをする。
「おい! 兵を連れてこい! ファウストを処分する! これは反乱だ!」
「で、ですが、サルヴァトーレ坊ちゃまはモンスターとなられ、サンドロ坊ちゃまはサルヴァトーレ坊ちゃまに……」
「なんだ? 貴様ごときが後継問題に首を突っ込むつもりか? お前はいつから俺よりも偉くなった?」
「も、申し訳ございません! ただ、私めは心配で……」
「ふん。セレスティアがいるではないか。子供たちの中で誰よりも俺に似た優秀な娘だ。魔力もまだまだ成長している」
「えっ? セレスティアお嬢様が?」
「何度も言わせるな! ファウストを処分する!」
「は、ははっ!」
こうしてクルデルタは邸内に残っていた五十名ほどの兵士とモンスターたちを引き連れ、ファウストの研究所へと乗り込んだ。
「ファウスト!」
「父上!? なぜこんなに早く……」
「ふん。俺の目がないとでも思ったか?」
「くっ……」
ファウストは悔しそうに唇を噛んだ。
「さあ、この愚かな行いの落とし前はつけさせてもらうぞ」
クルデルタはそう言ってニヤリと笑うが、ファウストも負けじとクルデルタのほうを睨む。
「なんだ? その目は?」
「どのみち死ぬのなら、あがこうと思っただけですよ」
「ふん。無駄なことを」
「ですが父上、本当にそれでよろしいのですか?」
「何がだ?」
「サンドロはもういません。父上はもう私を後継者とするしかありませんよね」
「ほう? お前を後継者に? く、くくく、くはははは。面白い冗談だな。こんな杜撰な計画しか立てられん愚か者にその資格があると本気で思っているのか?」
「なっ!?」
「お前がここまで愚かだとは思っていなかったよ」
「ですが! サンドロがいなくなれば私以外に継げるものはいません! まさか魔力の少ないロザリナに、ましてやほとんどないセレスティアごときに後継者が務まるとでも?」
それを聞いたクルデルタは見下すような視線をファウストに向ける。
「それは本気で言っているのか?」
「え? それは一体どういう……?」
「そうか。本気なのか」
「父上!」
「もういい。研究とやらを見守っていたが、やはりその程度だったか」
「なっ!? いいでしょう。ならば見せてやりますよ! 出てこい!」
ファウストがそう言うと、二体の緑色の巨人が姿を現した。
「なるほど。それがサンドロとサルヴァトーレの成れの果てというわけか」
「ええ、そうです。私の研究は完璧です。魔人と化した二人はたとえ父上のブラックドラゴンでも止められません」
「ふん。だが所詮はモンスターだ。俺とお前の魔力差を考えれば支配権を奪うことなど……何っ!?」
クルデルタは余裕の笑みを浮かべながら手を突き出したが、その表情はすぐに驚愕へと変わる。
「サンドロにやられましたからね。もう対策済みですよ。いくら父上の魔力が強力とはいえ、支配権を奪うことなどできないでしょう。さあ、サルヴァトーレ、父上を始末しろ。そうすればあの女はお前のモノだ」
「グ、グガァァァァァ! ゴロ゛ズ!」
サルヴァトーレはそう叫び、クルデルタのほうへと向かっていく。
「ええい! ギガンティックベアども! そいつを殺せ! ディノウルフたち! ファウストを殺せ!」
命令を受けたギガンティックベアはサルヴァトーレに襲い掛かるが、サルヴァトーレの拳一発で巨大なギガンティックベアはなすすべなく打ち倒されていく。
一方のディノウルフたちはファウストを守るように立つサンドロによって一瞬にして打ち倒された。
「どうです? 兄弟がこうして力を合わせるだなんて、素晴らしい光景だとは思いませんか? 継承の度に兄弟をすべて殺してきたマッツィアーノの歴史に新たなる道ができたのですよ」
ファウストは勝ち誇ったようにそう宣言する。
その間にもサルヴァトーレはギガンティックベアたちの壁を力ずくでなぎ倒し、クルデルタへと近づいていく。
やがてクルデルタの目の前までたどり着いたサルヴァトーレは拳を振り上げる。
「さあ、父上。爵位継承の時間です。今までお疲れ様でした。輝かしいマッツィアーノの歴史はこの私が引き継ぎましょう」
ファウストは芝居がかった様子でそう宣言した。それと同時にサルヴァトーレの拳がクルデルタに振り下ろされる!
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