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第147話 聖女リーサの登場
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俺たちは大量の荷物を背負い、ボアゾ村の跡地へと戻ってきた。するとそこにはクレートとバルドが呼んでくれた荷物持ちの元従騎士のメンバーたちがやってきていた。
「レクス卿! お帰りなさい! 良かった! 無事だったんですね!」
「ああ、ただいま。それに遅くなってすまない」
「いえ! それにしても、すごい量ですね」
「ああ。だが魔の森の奥にあった次元の裂け目は閉じたぞ。これで魔の森も少しは落ち着くはずだ」
すると元従騎士のメンバーたちはわぁっと歓声を上げる。
俺はちらりと森のほうを振り返った。すると俺たちをずっと上空で監視していたダーククロウが森のほうへと帰っていくのが見える。
「あ! あのダーククロウ……」
「本当にリーダーの言うとおり、何もしてこなかったわね」
テオとキアーラさんが不思議そうにその姿を見送っている。
すると、元従騎士の一人が話に割り込んできた。
「キアーラ卿、すみません。詳しく教えていただけませんか? ダーククロウがどうしたんですか?」
「え? ええ。私たちが森の中にいる間、ダーククロウがずっと付いて来ていたのよ。何もされなかったんだけど、ただ、モンスターなのにずっと襲ってこなかったのが変でね」
「やっぱり」
「やっぱり? それってどういうこと?」
「実は最近、各地でダーククロウの数がものすごい減ったんですよ。それに、人を襲わなくなっているんです」
「え? そうなの? そういえばここしばらくダーククロウに襲われた記憶がないわね。弱いモンスターだから気にも留めていなかったけれど……」
なるほど。そういうことか。理由はなんとなく察しがつくが、今は話すべきではないだろう。
「まあ、数が減ったのはいいことなんじゃないか?」
「それはそうですけど、やっぱり気持ち悪いじゃないですか。どうせならアサシンラットとかが減ってくれればいいんですけど……」
「ああ、たしかにそうね」
「はい……」」
「うーん、よく分からないけど、あたしたちの荷物、運ぶの手伝ってくれる?」
「はい!」
こうして俺たちは大量の素材を背負い、帰路に就くのだった。
◆◇◆
俺たちがレムロスへと戻ってくると、すでに六月になっていた。予定外の長期遠征となってしまったが、それだけの価値のある遠征だったと思う。
だが……。
「レクスくん、いくらマッシモ様に言われたからってどうしてこんなにずるずると予定を伸ばしたのかしら?」
「すみません」
帰ってくるなり、俺はニーナさんに大目玉をくらってしまった。
「もともと四月中には帰ってくる予定だったはずよね? しかも討伐依頼じゃなくてただの興味本位でしょう? どうして予定どおりにちゃんと戻って来ないのかしら? 銀狼の顎はレクスくんがリーダーでしょう? リーダーがきっちりしていないと信用をなくすわよ?」
「はい。すみません」
「じゃあ、依頼を頑張ってくれているマルツィオ卿とクレメンテ卿にちゃんとお礼を言っておいて。二人が上手くやりくりして依頼を回してくれてるんだから」
「はい。あの、二人はどこに?」
「出張中よ。それより、レクスくんは今から働いてもらうわよ」
「え?」
「レッサーポーションと光の矢、それに光のナイフも。もう在庫が空で、予約分もこんなにあるのよ。光属性魔法が使えるのはレクスくんだけなんだから、しっかり働いてもらうわよ」
「は、はい」
こうして俺は疲れた体を休める暇もなく、商品在庫の補充を行うのだった。
◆◇◆
そうして必死に在庫の補充を行っていると、国王様と王妃の連名で召喚状が届いた。詳しくは書かれていないが、何やらパーティーを開くので出席しろとのことだ。そして俺に引き合わせたい人がいるらしい。
王妃の名前が入っている時点で嫌な予感しかないが、さすがにこれを無視するわけにはいかない。
俺はキアーラさんにホーリーを込めるのを任せ、一人でお城のパーティー会場へとやってきた。会場が大ホールではなく小ホールなので、パーティーの規模はあまり大きくないようだ。
会場の隅でパーティーの開始を待っていると、続々と参加者がやってくる。こういうパーティーでは参加者が入ってくると名前が会場に告げられるのだが、大臣やら団長やら貴族家の長男やら、人数が少ない割にはやたらと呼ばれる名前が豪華なのは一体どういうことだろうか?
疑問に思っていると、ファンファーレが鳴り響いた。
「国王陛下、王妃陛下のご到着です」
そう告げられ、国王様と王妃が俺たちの入場した扉とは別の扉から入ってきた。高齢の国王様に若い王妃が寄り添っている。
「皆さん、今日はようこそお越しくださいました」
王妃が通る声でホールに集まった招待客に話し掛ける。
「本日は我が国に新たに現れた希望の光、聖女リーサを皆さんにご紹介します」
聖女リーサ? あれ? どこかで聞き覚えがあるような?
……だめだ。思い出せない。絶対に知っている名前のはずなのだが……。
そうしてモヤモヤしながら登場を待っていると、第二王子が隣にピンク色のやたらと目立つ髪色の美少女を連れて入室してきた。
あっ! 思い出した! 聖女リーサって、ブラウエルデ・クロニクルのオープニングムービーにだけ登場した原作小説の聖女様じゃないか!
たしか……聖女リーサの力は受け継がれなかった、みたいな文言が添えられていたような?
ということはつまり、原作小説の敵役だったティティを殺した女でもあるということでもある。
聖女なのだからきっと善人なんだろうとは思うが、ティティにとっては最悪の敵ということにもなりかねない相手だ。念には念を入れて、警戒しておくに越したことはないだろう。
そんなことを考えつつ、俺は入場してくる聖女リーサと第二王子の姿をじっと見つめるのだった。
================
次回更新は通常どおり、2024/04/11 (木) 18:00 を予定しております。
「レクス卿! お帰りなさい! 良かった! 無事だったんですね!」
「ああ、ただいま。それに遅くなってすまない」
「いえ! それにしても、すごい量ですね」
「ああ。だが魔の森の奥にあった次元の裂け目は閉じたぞ。これで魔の森も少しは落ち着くはずだ」
すると元従騎士のメンバーたちはわぁっと歓声を上げる。
俺はちらりと森のほうを振り返った。すると俺たちをずっと上空で監視していたダーククロウが森のほうへと帰っていくのが見える。
「あ! あのダーククロウ……」
「本当にリーダーの言うとおり、何もしてこなかったわね」
テオとキアーラさんが不思議そうにその姿を見送っている。
すると、元従騎士の一人が話に割り込んできた。
「キアーラ卿、すみません。詳しく教えていただけませんか? ダーククロウがどうしたんですか?」
「え? ええ。私たちが森の中にいる間、ダーククロウがずっと付いて来ていたのよ。何もされなかったんだけど、ただ、モンスターなのにずっと襲ってこなかったのが変でね」
「やっぱり」
「やっぱり? それってどういうこと?」
「実は最近、各地でダーククロウの数がものすごい減ったんですよ。それに、人を襲わなくなっているんです」
「え? そうなの? そういえばここしばらくダーククロウに襲われた記憶がないわね。弱いモンスターだから気にも留めていなかったけれど……」
なるほど。そういうことか。理由はなんとなく察しがつくが、今は話すべきではないだろう。
「まあ、数が減ったのはいいことなんじゃないか?」
「それはそうですけど、やっぱり気持ち悪いじゃないですか。どうせならアサシンラットとかが減ってくれればいいんですけど……」
「ああ、たしかにそうね」
「はい……」」
「うーん、よく分からないけど、あたしたちの荷物、運ぶの手伝ってくれる?」
「はい!」
こうして俺たちは大量の素材を背負い、帰路に就くのだった。
◆◇◆
俺たちがレムロスへと戻ってくると、すでに六月になっていた。予定外の長期遠征となってしまったが、それだけの価値のある遠征だったと思う。
だが……。
「レクスくん、いくらマッシモ様に言われたからってどうしてこんなにずるずると予定を伸ばしたのかしら?」
「すみません」
帰ってくるなり、俺はニーナさんに大目玉をくらってしまった。
「もともと四月中には帰ってくる予定だったはずよね? しかも討伐依頼じゃなくてただの興味本位でしょう? どうして予定どおりにちゃんと戻って来ないのかしら? 銀狼の顎はレクスくんがリーダーでしょう? リーダーがきっちりしていないと信用をなくすわよ?」
「はい。すみません」
「じゃあ、依頼を頑張ってくれているマルツィオ卿とクレメンテ卿にちゃんとお礼を言っておいて。二人が上手くやりくりして依頼を回してくれてるんだから」
「はい。あの、二人はどこに?」
「出張中よ。それより、レクスくんは今から働いてもらうわよ」
「え?」
「レッサーポーションと光の矢、それに光のナイフも。もう在庫が空で、予約分もこんなにあるのよ。光属性魔法が使えるのはレクスくんだけなんだから、しっかり働いてもらうわよ」
「は、はい」
こうして俺は疲れた体を休める暇もなく、商品在庫の補充を行うのだった。
◆◇◆
そうして必死に在庫の補充を行っていると、国王様と王妃の連名で召喚状が届いた。詳しくは書かれていないが、何やらパーティーを開くので出席しろとのことだ。そして俺に引き合わせたい人がいるらしい。
王妃の名前が入っている時点で嫌な予感しかないが、さすがにこれを無視するわけにはいかない。
俺はキアーラさんにホーリーを込めるのを任せ、一人でお城のパーティー会場へとやってきた。会場が大ホールではなく小ホールなので、パーティーの規模はあまり大きくないようだ。
会場の隅でパーティーの開始を待っていると、続々と参加者がやってくる。こういうパーティーでは参加者が入ってくると名前が会場に告げられるのだが、大臣やら団長やら貴族家の長男やら、人数が少ない割にはやたらと呼ばれる名前が豪華なのは一体どういうことだろうか?
疑問に思っていると、ファンファーレが鳴り響いた。
「国王陛下、王妃陛下のご到着です」
そう告げられ、国王様と王妃が俺たちの入場した扉とは別の扉から入ってきた。高齢の国王様に若い王妃が寄り添っている。
「皆さん、今日はようこそお越しくださいました」
王妃が通る声でホールに集まった招待客に話し掛ける。
「本日は我が国に新たに現れた希望の光、聖女リーサを皆さんにご紹介します」
聖女リーサ? あれ? どこかで聞き覚えがあるような?
……だめだ。思い出せない。絶対に知っている名前のはずなのだが……。
そうしてモヤモヤしながら登場を待っていると、第二王子が隣にピンク色のやたらと目立つ髪色の美少女を連れて入室してきた。
あっ! 思い出した! 聖女リーサって、ブラウエルデ・クロニクルのオープニングムービーにだけ登場した原作小説の聖女様じゃないか!
たしか……聖女リーサの力は受け継がれなかった、みたいな文言が添えられていたような?
ということはつまり、原作小説の敵役だったティティを殺した女でもあるということでもある。
聖女なのだからきっと善人なんだろうとは思うが、ティティにとっては最悪の敵ということにもなりかねない相手だ。念には念を入れて、警戒しておくに越したことはないだろう。
そんなことを考えつつ、俺は入場してくる聖女リーサと第二王子の姿をじっと見つめるのだった。
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