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第77話 海賊襲来(前編)
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それから二週間ほどマジックポーションで魔力を回復しつつ、ボルトでモンスターを狩るという日々を続けた。そのおかげもあってか、最近は少しずつ雷属性魔法の発動がスムーズになってきている。
今日もがんばろうとトスカさんの作ってくれる美味しい朝食を食べていると、突然血相を変えた村の人たちがやってきた。
「レクスさん! 大変だ!」
「え? どうしたんですか?」
「海賊が来たんだ。追い払ってくれるんだろう? 頼むよ」
「ああ、はい。分かりました。今どんな状況ですか?」
「まだ向こうに見えてるだけだけど、きっと来るに決まってる」
「分かりました。トスカさん、ちょっと行ってきます」
「ああ、頼んだよ!」
こうして俺は朝食もそこそこに、村の人たちと一緒に天然の港となっている入り江へと向かった。到着するとその沖合には帆船――いや、オールが見えるのでガレー船か――が浮かんでおり、こちらに向かってゆっくりと近づいてくる。
「あれが海賊船ですか」
「ああ。あいつら、いつも食料を奪っていくんだ」
村の人たちは苦々しい表情でそう答えた。
「一応聞きますけど、交渉して帰ってもらうとかは無理なんですよね?」
「ああ。前にやろうとしたが、騙されて村の娘たちまで連れていかれたことがある」
「なるほど。じゃあ、女性と子供に隠れてもらわないといけませんね」
「もちろん、もう避難は始まってるはずだ」
煮え湯を飲まされ続けていることもあってか、対応はかなり手際がいい。
「どこから上陸してくるんですか?」
「大体、あのへんだな」
そう言って入り江の奥にある砂浜を指さした。
「え? あんなところまであの船が入って来られるんですか?」
「ん? いや、そうじゃない。近くまで来て、あとは小舟で乗りつけてくるんだ」
「そういうことですか。わかりました」
「ああ。頼んだぞ」
村の人たちはそう言って村のほうへと戻っていった。それからしばらく様子を見ていると、入り江の入口までやってきた海賊船が錨を降ろし始めた。
続いて三艘の小舟が降ろされ、次々と剣や弓矢で武装した小汚い格好の男たちが乗り込んでいく。なるほど。あれはどう見ても海賊だ。
やがて乗り込み終えた小舟から順に入り江の中に侵入してきた。
湾の両岸は海面よりもだいぶ高いので、そこから一斉に矢を射掛ければ一網打尽にできそうな気もするが……といっても、この小さな漁村でそれをやるのは難しいか。
俺は身体強化を使って一気に砂浜まで先回りし、上陸しようとしている彼らの行く手を遮るように立ちはだかった。
「止まれ! ここに何をしに来た!」
「ああ? なんだ? このガキは」
「剣とかいっちょ前に持っていやがるぞ」
「ぎゃはははは。もしかして護衛気取りか?」
「切り刻んで魚のエサにしてやろうぜ!」
そんなやり取りをしているうちに、すべての小舟が接岸し、大勢の海賊たちが上陸した。
「キャプテン! なんかあいつ、村の護衛みたいですぜ!」
「ああ? ガキ一人で何ができるっつーんだ。さっさと殺せ。男に用はねぇ。さっさと食料と女を奪え!」
「へい!」
「させるか!」
俺を無視して歩きだそうとした海賊との距離を、身体強化を使って一気に詰めるとボルトをエンチャントした剣で先頭の男の太ももをすれ違いざまに斬りつけた。
バチン!
ボルトの効果が発動し、そして――
バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチン!
密集していた海賊たちに次々とボルトが連鎖して発動し、全員まとめて行動不能した。
「あ、が……」
「な、何が……」
俺は動けなくなった海賊たちの首に次々と剣を突き立てていく。
「ひっ」
「た、たすけ……」
自分たちの行いを顧みずに命乞いをしてくるが、海賊などというものは盗賊と同じで生かしておいてはいけない。モンスターと同じなのだ。
こうして俺は上陸してきたすべての盗賊を始末し終えた。
すると村のほうから銛や鉈を持った村の男たちが走ってくるのが見えた。
「おーい! 加勢するぞ!」
「レクスさん! 大丈……え?」
首から血を流す海賊たちの姿を見て、村の男たちは固まった。
「ああ、ありがとうございます。でももう終わりましたよ」
「お、おお」
「たった一人で……」
「すげぇ」
「こんな強かったのか」
村の男たちが尊敬するような眼差しで俺のほうを見てきた。
ん? これってもしかして、ずっとホーンラビットばかり狩っていたせいで大したことない奴だと思われていたのか?
……いや、まあいいか。
「あの、こいつらの死体、どうしましょうか? あと、あっちの船にも海賊が残っていると思うんですけど、どうします? 舟を出してくれるなら乗り込みますけど」
「え? あ、ああ。そうだな。舟なら俺が出してやる。レクスさん! 頼むぞ!」
「こいつらは俺らで片づけておいてやる」
村の男たちがそう言ってくれたので、俺は漁船に乗って海賊船へと向かった。近付くと矢を射掛けられるが、数が少ないので対処は簡単だ。
俺は剣でそれらをすべて叩き落とす。
そうしているうちに十分近付いた。
「乗り移ります。矢に気を付けてください」
「え? この距離からか?」
「はい。揺れますよ!」
俺は身体強化を使って一気に海賊船の甲板に飛び移った。
「はっ!?」
「なんだこいつ! 本当に人間か!?」
俺は返事をせず、一気に距離を詰めて近くにいた盗賊を斬り捨てた。
バチン!
ボルトの効果が発動する。
「こいつ!」
近くにいた海賊が矢を構えようとするが、その時にはすでにボルトが連鎖していた。
バチン! バチン!
まとめて二人が行動不能したので、きっちりとトドメを刺す。
おっと!
海賊の一人が遠くから矢を放ってきたが、素早くそれを躱し、マストの裏に隠れる。
敵の数は……あと五人ほどだな。
俺はボルトをエンチャントし、タイミングをうかがうのだった。
================
次回更新は通常どおり、2024/02/01 (木) 18:00 を予定しております。
今日もがんばろうとトスカさんの作ってくれる美味しい朝食を食べていると、突然血相を変えた村の人たちがやってきた。
「レクスさん! 大変だ!」
「え? どうしたんですか?」
「海賊が来たんだ。追い払ってくれるんだろう? 頼むよ」
「ああ、はい。分かりました。今どんな状況ですか?」
「まだ向こうに見えてるだけだけど、きっと来るに決まってる」
「分かりました。トスカさん、ちょっと行ってきます」
「ああ、頼んだよ!」
こうして俺は朝食もそこそこに、村の人たちと一緒に天然の港となっている入り江へと向かった。到着するとその沖合には帆船――いや、オールが見えるのでガレー船か――が浮かんでおり、こちらに向かってゆっくりと近づいてくる。
「あれが海賊船ですか」
「ああ。あいつら、いつも食料を奪っていくんだ」
村の人たちは苦々しい表情でそう答えた。
「一応聞きますけど、交渉して帰ってもらうとかは無理なんですよね?」
「ああ。前にやろうとしたが、騙されて村の娘たちまで連れていかれたことがある」
「なるほど。じゃあ、女性と子供に隠れてもらわないといけませんね」
「もちろん、もう避難は始まってるはずだ」
煮え湯を飲まされ続けていることもあってか、対応はかなり手際がいい。
「どこから上陸してくるんですか?」
「大体、あのへんだな」
そう言って入り江の奥にある砂浜を指さした。
「え? あんなところまであの船が入って来られるんですか?」
「ん? いや、そうじゃない。近くまで来て、あとは小舟で乗りつけてくるんだ」
「そういうことですか。わかりました」
「ああ。頼んだぞ」
村の人たちはそう言って村のほうへと戻っていった。それからしばらく様子を見ていると、入り江の入口までやってきた海賊船が錨を降ろし始めた。
続いて三艘の小舟が降ろされ、次々と剣や弓矢で武装した小汚い格好の男たちが乗り込んでいく。なるほど。あれはどう見ても海賊だ。
やがて乗り込み終えた小舟から順に入り江の中に侵入してきた。
湾の両岸は海面よりもだいぶ高いので、そこから一斉に矢を射掛ければ一網打尽にできそうな気もするが……といっても、この小さな漁村でそれをやるのは難しいか。
俺は身体強化を使って一気に砂浜まで先回りし、上陸しようとしている彼らの行く手を遮るように立ちはだかった。
「止まれ! ここに何をしに来た!」
「ああ? なんだ? このガキは」
「剣とかいっちょ前に持っていやがるぞ」
「ぎゃはははは。もしかして護衛気取りか?」
「切り刻んで魚のエサにしてやろうぜ!」
そんなやり取りをしているうちに、すべての小舟が接岸し、大勢の海賊たちが上陸した。
「キャプテン! なんかあいつ、村の護衛みたいですぜ!」
「ああ? ガキ一人で何ができるっつーんだ。さっさと殺せ。男に用はねぇ。さっさと食料と女を奪え!」
「へい!」
「させるか!」
俺を無視して歩きだそうとした海賊との距離を、身体強化を使って一気に詰めるとボルトをエンチャントした剣で先頭の男の太ももをすれ違いざまに斬りつけた。
バチン!
ボルトの効果が発動し、そして――
バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチン!
密集していた海賊たちに次々とボルトが連鎖して発動し、全員まとめて行動不能した。
「あ、が……」
「な、何が……」
俺は動けなくなった海賊たちの首に次々と剣を突き立てていく。
「ひっ」
「た、たすけ……」
自分たちの行いを顧みずに命乞いをしてくるが、海賊などというものは盗賊と同じで生かしておいてはいけない。モンスターと同じなのだ。
こうして俺は上陸してきたすべての盗賊を始末し終えた。
すると村のほうから銛や鉈を持った村の男たちが走ってくるのが見えた。
「おーい! 加勢するぞ!」
「レクスさん! 大丈……え?」
首から血を流す海賊たちの姿を見て、村の男たちは固まった。
「ああ、ありがとうございます。でももう終わりましたよ」
「お、おお」
「たった一人で……」
「すげぇ」
「こんな強かったのか」
村の男たちが尊敬するような眼差しで俺のほうを見てきた。
ん? これってもしかして、ずっとホーンラビットばかり狩っていたせいで大したことない奴だと思われていたのか?
……いや、まあいいか。
「あの、こいつらの死体、どうしましょうか? あと、あっちの船にも海賊が残っていると思うんですけど、どうします? 舟を出してくれるなら乗り込みますけど」
「え? あ、ああ。そうだな。舟なら俺が出してやる。レクスさん! 頼むぞ!」
「こいつらは俺らで片づけておいてやる」
村の男たちがそう言ってくれたので、俺は漁船に乗って海賊船へと向かった。近付くと矢を射掛けられるが、数が少ないので対処は簡単だ。
俺は剣でそれらをすべて叩き落とす。
そうしているうちに十分近付いた。
「乗り移ります。矢に気を付けてください」
「え? この距離からか?」
「はい。揺れますよ!」
俺は身体強化を使って一気に海賊船の甲板に飛び移った。
「はっ!?」
「なんだこいつ! 本当に人間か!?」
俺は返事をせず、一気に距離を詰めて近くにいた盗賊を斬り捨てた。
バチン!
ボルトの効果が発動する。
「こいつ!」
近くにいた海賊が矢を構えようとするが、その時にはすでにボルトが連鎖していた。
バチン! バチン!
まとめて二人が行動不能したので、きっちりとトドメを刺す。
おっと!
海賊の一人が遠くから矢を放ってきたが、素早くそれを躱し、マストの裏に隠れる。
敵の数は……あと五人ほどだな。
俺はボルトをエンチャントし、タイミングをうかがうのだった。
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