ドン底から始まる下剋上~悪魔堕ちして死亡する幼馴染を救うためにゲームの知識で成り上がります~

一色孝太郎

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第73話 領都リツァルノ

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 カネロを出発し、二か月ほどかけて俺は目的地であるアプリア伯爵領の領都リツァルノへとやってきた。

 俺は真っすぐに冒険者ギルドアプリア伯爵領本部へと向かう。ここの領本部はベルトーニ子爵領本部よりは大きいが、モラッツァーニ伯爵領本部よりはかなり小さいといった規模のようだ。

 受付はどの窓口にもずらりと長い列ができている。どうやらそれぞれに並ぶ方式のようだ。

 俺は一番短い列の後ろに並び、しばらく待つ。一人、また一人と列が進み、ようやく俺の順番が回ってきた。

「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「滞在登録と依頼の紹介をお願いします。俺はDランク冒険者のレクスです」

 俺はそう言って自分の冒険者カードを提示した。

「ご提示ありがとうございます。滞在登録をお受けしました。依頼のご紹介ですが、どういったものをご希望でしょうか? レクス様はクランに所属していらっしゃるようですが、クランの方もいらっしゃるご予定ですか?」
「いえ、事情があって今は単独行動中です」
「左様でございますか。それでは、お一人で受けられる依頼をお探しということですね?」
「はい」
「では、ご希望の期間や条件などはございますか?」
「少しの間、一ヵ所に腰を落ち着けたいと思っていますので、二か月以上一年未満のものを希望します。あとはできればシングルルームが提供されるとありがたいです」
「かしこまりました。報酬面につきましてはいかがでしょう?」
「そうですね。まず、素材についてはこちらにください。依頼の報酬について相談できます。たとえば、提供される宿で食事がでるのでしたらその相当金額分を減らしていただいても構いません」
「なるほど。となると、定住しての防衛依頼になりそうですね。ただシングルルームとなると……いえ、お調べしますね。少々お待ちください」

 受付嬢はそう言うと受付の奥へと向かった。それからしばらくして、一枚の紙を持って戻ってきた。

「報酬面で折り合えないかもしれませんが、こちらはいかがでしょう? この依頼は、この町から南にあるガルポーレという漁村での住み込みでの防衛依頼となり、期間は三か月となります」
「住み込みですか?」
「はい。滞在中は村の建物を一棟まるごとお貸しし、そちらに滞在しながら防衛を行っていただきます。その間の朝食と夕食は村が用意し、ルームサービスも村の者が行いますので、待遇面ではレクス様のご希望にピッタリかと存じます」
「それはいいですね。報酬面はどうなっていますか?」

 すると受付嬢は、申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 え? どんだけ安いんだ?

「それが、50リレとなります」
「え? 50ですか? それってものすごくいいんじゃないですか?」
「いえ、三か月合計です。しかも、人数が増えても金額は変わりません」
「えっ? ということは、一日1リレにもならないんですか?」
「はい。今のところ他に受ける冒険者はいませんが、増員されればその分だけ報酬は分割されることとなります」
「……なるほど」

 一日1リレにも満たないとなると、Eランク冒険者を一人雇えるかどうかだ。

「なんでそんなに安いんですか?」
「ガルポーレ村はほぼ自給自足の暮らしをしているため、ほとんど現金収入がないのです」
「ああ、なるほど。それで、どんなモンスターがでるんですか?」
「はい。ホーンラビットやジャイアントラット、フォレストディア、フォレストウルフ、ワイルドボアといったモンスターが主となります」
「そのあたりは普通ですね。ということは、数が多いんですか?」
「いえ、そうではありません」
「え? じゃあなんでわざわざ冒険者を雇うんですか?」
「それが、定期的に海賊に襲われているため、その海賊の撃退も依頼に含まれているのです」
「えっ? 海賊ですか!?」
「はい」
「あの、それって冒険者じゃなく、騎士団の仕事なのでは?」
「それはそうなのですが、騎士団も忙しいのか手が回っておらず……」
「え? それなら騎士団がギルドに直接依頼すればいいのでは?」

 すると受付嬢は困ったような表情を浮かべ、言いにくそうに小声で話す。

「そこは騎士団にも面子というものがありますので……」
 
 ああ、そうか。なるほど。なんともくだらない理由だが、そういう原理が働くことも理解はできる。

「あの、もしかしてこの依頼って、塩漬けだったりします?」
「おっしゃるとおりです」
「ですよねぇ」

 この条件で受ける奴はさすがにいないだろう。いくらなんでもこの依頼は……いや、待てよ?

「こちらから条件ってつけられますか?」
「どういった内容でしょうか? 報酬の積み増しは無理だと思いますが」
「いえ、そういうんじゃないです。達成したらランクアップをしてくれるというんでしたら、この依頼を受けてもいいですよ」
「……ランクアップですか。私の一存では決めかねますので、明日またお越し頂けますか?」
「はい」
「では、本日はお立ち寄りいただきありがとうございました」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 こうして俺はギルドを後にしたのだった。

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 次回更新は通常どおり、2024/01/28 (日) 18:00 を予定しております。
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