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第四章
第四章第105話 授業再開です
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二週間経ち、授業が再開しました。リリアちゃんはまだ見つかっていません。騎士の人たちが頑張って探してくれたそうなんですが、あの地下道で町の外に通じているものはなかったそうです。でもいくつかは普通の家につながっていて、そこもルクシアの奴らの隠れ家だったそうです。
しかも恐ろしいことに、そこには大量の武器が保管されていて、何人もの人たちが捕まって処刑されたそうです。
それとあの古井戸なんですけど、それ自体はものすごい昔からあったものらしいです。ただ、あの横道は多分後から作られたものなんじゃないかって聞きました。
怖いですよね。いつの間にそんなものを作ったんでしょうか。
それとですね。今回のこと、王様がものすごく怒っているらしくって、ルクシアの奴らを邪教に認定したんです。聖職者は全員処刑、信者も逮捕だそうです。それで王都は大騒ぎになっていましたし、この国中の町でも同じような感じらしいです。
いきなり処刑って聞いてちょっとびっくりしましたけど、でも仕方ないですよね。だって、何を言っても話が通じないんですから。
本当に、理解不能です。あれならまだ、ゴブリンのほうが理解できます。思い出すのも嫌ですけど……。
えっと、はい。そんな話はもうやめましょう。
それでですね。あたしはお義姉さまと一緒に寮に戻ってきました。するとアリアドナさんが優しい微笑みを浮かべながら出迎えてくれています。
「レジーナさん、ローザさん、おかえりなさい」
「アリアドナ先生、ただいま戻りましたわ」
あたしたちはアリアドナ先生に向かってカーテシーをします。
「ええ。それじゃあ、邪教検査をします。気持ち悪いかもしれないけれど、これを踏みつけてちょうだい」
アリアドナ先生はそう言って、地面に転がっているあの気持ち悪いルクシアのシンボルを指さしました。
実はこの邪教検査、なんと王都の全住民に義務付けられているんです。しかも町中で抜き打ち検査もあるうえに、食品店や食堂はお客さんに売る前にこの検査をしないといけないんです。
あと、町に入るときと出るときは門で必ずこの検査をしていて、拒否したらその場で逮捕されるそうです。
ちょっと過激ですけど、王様はそれだけ本気だってことだと思います。
「もちろんですわ」
お義姉さまは躊躇なく、いえ、やや憎しみもこもっているかもしれません。気持ち悪いシンボルを何度も踏みつけました。
「はい。それじゃあ、ローザさんも」
「はい」
ああ、気持ち悪いですね。正直靴とはいえ触るもの嫌ですけど……でも、こいつらのせいで!
えい! えい! えい!
あたしは精一杯の怒りと憎しみを込めて、何度も気持ち悪いシンボルを踏みつけました。
ゴブリンも絶滅してほしいですけど、ルクシアの奴らも絶対許せません。
「ああ、もう大丈夫ですよ。さあ、中にお入りなさい」
「はい」
こうしてあたしたちは自室へと向かうのでした。
◆◇◆
翌日の放課後、あたしは生徒会室にやってきました。何か大事な会議があるらしいんですけど、まだあたしとレアンドルさんしかいません。
レアンドルさんはあたしと目も合わせてくれず、ブスッとしたまま頬杖をついたまま外を見ています。
……ものすごく、気まずいです。
早くお義姉さまか公子さまが来てくれると嬉しいんですけど……。
そうしてしばらくじっとしていると、今度はドレスク先輩がやってきました。
「おや? 二人だけですか。ローザ嬢、ごきげんよう。レアンドルも」
「はい。こんにちは。ドレスク先輩」
「どうも」
レアンドルさんは相変わらず、ぶっきらぼうな感じです。するとドレスク先輩は小さくため息をつきました。
「ローザ嬢、もしよろしければ少しお話しましょう」
「え? あ、はい。う……」
久しぶりにドレスク先輩が話しかけてきたかと思ったら、なんとまたあの目だけ笑っていないあの笑顔をしています。
ううっ……久しぶりに見ましたけど、やっぱり気持ち悪いです。悪意がないっていうのは分かってるんですけど……。
ドレスク先輩はあたしの隣に座りました。でも気持ち悪い笑顔をしているのは相変わらずです。
う……ちゃ、ちゃんと言わないと!
「あ、あのっ!」
「なんですか?」
「そ、その顔は……」
「え? おっと、失礼しました。またレジーナ嬢に叱られて――」
「ハァ。礼儀もなってないのか」
突然レアンドルさんが大きなため息をつき、そんなことを呟きました。
「ん? どういうことですか? レアンドル」
「いいえ。ただ、いくらマレスティカ公爵家の養女だからって、ドレスク侯爵家ご令息にそんな態度を取るのはどうかと思っただけですよ」
「う……」
「レアンドル! そのような言い方は!」
「あーあー、いいですねぇ。光属性の魔法使いってだけでこうやって庇ってもらえるんですから。先輩だって今のがどれだけ失礼か、分かっているでしょうに」
「……だがまだ彼女は!」
「貴族になってからまだ日が浅い、ですか? なら一旦退学して、家で教育を受けるべきなんじゃないですかね?」
「……」
「こいつは、貴族だったらまだ入学してない年齢なんですよ? それを特例扱いだなんておかしくないですか?」
「それは……」
「はぁ。なんでこんなやつのせいで」
レアンドルさんはそう言うと、ブスッとした表情でそっぽを向いてしまいました。
えっと、何か声を掛けたほうが……。
あたしが迷っていると扉がノックされ、すぐに開きます。そして王太子さまとお義姉さまが入ってきて、そのすぐ後に公子さまも入ってきました。三人とも、何かの書類の束を持っています。
あたしがそちらを見ると、王太子さまが声を掛けてきます。
「揃っているようだな……ん? 何かあったのか?」
================
次回更新は通常どおり、2024/12/07 (土) 20:00 を予定しております。
しかも恐ろしいことに、そこには大量の武器が保管されていて、何人もの人たちが捕まって処刑されたそうです。
それとあの古井戸なんですけど、それ自体はものすごい昔からあったものらしいです。ただ、あの横道は多分後から作られたものなんじゃないかって聞きました。
怖いですよね。いつの間にそんなものを作ったんでしょうか。
それとですね。今回のこと、王様がものすごく怒っているらしくって、ルクシアの奴らを邪教に認定したんです。聖職者は全員処刑、信者も逮捕だそうです。それで王都は大騒ぎになっていましたし、この国中の町でも同じような感じらしいです。
いきなり処刑って聞いてちょっとびっくりしましたけど、でも仕方ないですよね。だって、何を言っても話が通じないんですから。
本当に、理解不能です。あれならまだ、ゴブリンのほうが理解できます。思い出すのも嫌ですけど……。
えっと、はい。そんな話はもうやめましょう。
それでですね。あたしはお義姉さまと一緒に寮に戻ってきました。するとアリアドナさんが優しい微笑みを浮かべながら出迎えてくれています。
「レジーナさん、ローザさん、おかえりなさい」
「アリアドナ先生、ただいま戻りましたわ」
あたしたちはアリアドナ先生に向かってカーテシーをします。
「ええ。それじゃあ、邪教検査をします。気持ち悪いかもしれないけれど、これを踏みつけてちょうだい」
アリアドナ先生はそう言って、地面に転がっているあの気持ち悪いルクシアのシンボルを指さしました。
実はこの邪教検査、なんと王都の全住民に義務付けられているんです。しかも町中で抜き打ち検査もあるうえに、食品店や食堂はお客さんに売る前にこの検査をしないといけないんです。
あと、町に入るときと出るときは門で必ずこの検査をしていて、拒否したらその場で逮捕されるそうです。
ちょっと過激ですけど、王様はそれだけ本気だってことだと思います。
「もちろんですわ」
お義姉さまは躊躇なく、いえ、やや憎しみもこもっているかもしれません。気持ち悪いシンボルを何度も踏みつけました。
「はい。それじゃあ、ローザさんも」
「はい」
ああ、気持ち悪いですね。正直靴とはいえ触るもの嫌ですけど……でも、こいつらのせいで!
えい! えい! えい!
あたしは精一杯の怒りと憎しみを込めて、何度も気持ち悪いシンボルを踏みつけました。
ゴブリンも絶滅してほしいですけど、ルクシアの奴らも絶対許せません。
「ああ、もう大丈夫ですよ。さあ、中にお入りなさい」
「はい」
こうしてあたしたちは自室へと向かうのでした。
◆◇◆
翌日の放課後、あたしは生徒会室にやってきました。何か大事な会議があるらしいんですけど、まだあたしとレアンドルさんしかいません。
レアンドルさんはあたしと目も合わせてくれず、ブスッとしたまま頬杖をついたまま外を見ています。
……ものすごく、気まずいです。
早くお義姉さまか公子さまが来てくれると嬉しいんですけど……。
そうしてしばらくじっとしていると、今度はドレスク先輩がやってきました。
「おや? 二人だけですか。ローザ嬢、ごきげんよう。レアンドルも」
「はい。こんにちは。ドレスク先輩」
「どうも」
レアンドルさんは相変わらず、ぶっきらぼうな感じです。するとドレスク先輩は小さくため息をつきました。
「ローザ嬢、もしよろしければ少しお話しましょう」
「え? あ、はい。う……」
久しぶりにドレスク先輩が話しかけてきたかと思ったら、なんとまたあの目だけ笑っていないあの笑顔をしています。
ううっ……久しぶりに見ましたけど、やっぱり気持ち悪いです。悪意がないっていうのは分かってるんですけど……。
ドレスク先輩はあたしの隣に座りました。でも気持ち悪い笑顔をしているのは相変わらずです。
う……ちゃ、ちゃんと言わないと!
「あ、あのっ!」
「なんですか?」
「そ、その顔は……」
「え? おっと、失礼しました。またレジーナ嬢に叱られて――」
「ハァ。礼儀もなってないのか」
突然レアンドルさんが大きなため息をつき、そんなことを呟きました。
「ん? どういうことですか? レアンドル」
「いいえ。ただ、いくらマレスティカ公爵家の養女だからって、ドレスク侯爵家ご令息にそんな態度を取るのはどうかと思っただけですよ」
「う……」
「レアンドル! そのような言い方は!」
「あーあー、いいですねぇ。光属性の魔法使いってだけでこうやって庇ってもらえるんですから。先輩だって今のがどれだけ失礼か、分かっているでしょうに」
「……だがまだ彼女は!」
「貴族になってからまだ日が浅い、ですか? なら一旦退学して、家で教育を受けるべきなんじゃないですかね?」
「……」
「こいつは、貴族だったらまだ入学してない年齢なんですよ? それを特例扱いだなんておかしくないですか?」
「それは……」
「はぁ。なんでこんなやつのせいで」
レアンドルさんはそう言うと、ブスッとした表情でそっぽを向いてしまいました。
えっと、何か声を掛けたほうが……。
あたしが迷っていると扉がノックされ、すぐに開きます。そして王太子さまとお義姉さまが入ってきて、そのすぐ後に公子さまも入ってきました。三人とも、何かの書類の束を持っています。
あたしがそちらを見ると、王太子さまが声を掛けてきます。
「揃っているようだな……ん? 何かあったのか?」
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次回更新は通常どおり、2024/12/07 (土) 20:00 を予定しております。
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