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第四章
第四章第88話 帰宅しました
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おはようございます。ローザです。
ようやくお家に帰ってこられたんですけど、昨日は疲れてて部屋に入るなりそのまま寝ちゃいました。
ああ、それにしても本当に大変でした。
あんまり実感はなかったんですけど、貴族ってこんなに大変なんですね。それに、王様の前で失敗しちゃいましたし……。
「はぁ」
「ミャ?」
「あ、ユキ、おはようございます」
「ミャー」
ユキがあたしのほっぺにおでこをすりすりしてきました。なんだかそれだけで暖かい気分になってきます。
「ピッ」
「あれ? あ! 今どきますね」
あたしったらピーちゃんを枕にして寝ていました。だからあんなに気持ちよかったんですね。
あたしが上体を起こすと、ピーちゃんはピョーンとジャンプしてあたしの膝の上に乗ってきました。
「ピピッ」
「えへへ、おはようございます」
「ピピ~」
なんだかピーちゃん、心なしかご機嫌な感じですね。ピーちゃんがご機嫌だとあたしも嬉しくなっちゃいます。
あ、そうだ。ホーちゃんは……寝ていますね。今日はタンスの上を寝床にしています。
「朝ごはん、食べますか?」
「ピッ!」
「ミャー!」
「えへへ、順番ですよ」
あたしはピーちゃんとユキに朝ごはんの魔力をあげるのでした。
◆◇◆
それから着替え、お義父さまと一緒に朝ごはんを食べます。お義母さまとお義姉さまは今、クルージュにいるので二人だけの食卓です。
「ローザ、おはよう」
「おはようございます、お義父さま」
「昨日はよく眠れたかい?」
「はい。ただ、昨日はすぐに寝ちゃって、お出迎えが出来なくてごめんなさい」
「いや、いいよ。疲れていただろう?」
「はい……」
「さあ、それより食べようか」
「はい」
あたしはお祈りをしてから朝ごはんを食べます。
「ところでローザ」
「はい」
「昨日の御前会議、あのあとも君のことを話し合ったんだ」
「はい……」
あたし、失敗しちゃいましたし、やっぱりお義父さま、怒られちゃったんでしょうか?
「単刀直入に聞きたいんだけど」
「は、はい」
「君は本当に御使いなのかい?」
「へっ?」
お義父さままでおかしくなっちゃんたんですか!?
「ローザ、どうなんだい?」
「えっと……知りません。その、ミツカイ? っていうのはなんなんですか?」
「……御使いというのはね。正教会の教えの中にある神の意を受けて地上に遣わされた者のことだよ」
「えっと、神様の?」
「そう。君が御使いではないか、という話が出ているんだ。本来助かるはずのない重傷者を治療したそうだね」
「は、はい」
「それで、正教会が君は御使いだから、正教会の慈善活動に参加してほしいと要請してきたんだ」
「えっと……あたし、そんなミツカイ? なんてすごい人じゃないんですけど……」
「……分かったよ。君は御使いではない。そういうことにしよう」
「はい」
「大丈夫だよ。君が嫌がることはしないからね。安心していいよ」
「ありがとうございます」
するとお義父さまはなぜか少し寂しげに微笑みました。
あ、あれ? えっと?
「それとね。これからは君の護衛騎士を増員するよ。本当は女性騎士だけで固めたいけど、あまり集まらなくてね。一番近くで守るのはラダ卿に引き続きお願いするけど、男性騎士も混ざることになるよ」
「は、はい」
「それから、魔法学園にも騎士を配備するよ。これは多分、国王陛下の騎士が任に当たることになると思う」
「はい」
「くれぐれも、勝手に出掛けないように。出掛ける時は必ず許可を取りなさい。いいね? ルクシアの連中はこの町にもいるんだよ」
「はい……」
こんな話をしつつ、あたしは朝食を食べ終えたのでした。
◆◇◆
特にやることもないので、あたしは庭園に出てきました。色とりどりの綺麗な花がたくさん咲いていますね。
あたしはベンチに腰掛け、ぼんやりとお庭を眺めます。
はぁ。どうしてこんなことになっちゃったんでしょう?
何を間違えたんでしょうか?
あたし、ルクシアの人たちに何もしてないですよね?
それに正教会までそんなことを言ってくるなんて……。
そりゃあ、あたしが育った孤児院は正教会ですから、正教会がイヤってわけじゃありません。
でも、ミツカイ? でもなんでもないですし、それに正教会の孤児院はあたしをオーナー様の奴隷として売ろうとしていました。
だから正教会のために何かをしようなんて、とてもじゃないですけどそんな気にはなれません。
もちろん、傷ついている人は助けてあげたいですけど……。
「ミャッ」
「あ……」
悩んでいると、ユキがピョンと膝の上に乗ってきました。
えへへ、ふわふわです。ユキの毛並みはいつだって最高ですね。これもピーちゃんが毎日綺麗にしてくれているおかげですね。
「ピピッ」
ピーちゃんが高くジャンプして、地面から一気にあたしの頭の上に乗ってきました。
ぷにぷにした感触が心地いいですね。
はぁ。なんだかこうしていると少しイヤなことが忘れられますね。
思い返してみると、森の中に逃げたときはこんな悩みはなかったですね。
そうだ。いっそ、森の中にでも逃げてしまえば……。
「ホー」
そんな考えが頭をよぎったのですが、ちょうどそのタイミングでホーちゃんが飛んできました。
「あ、ホーちゃん。おはようございます」
「ホー」
ホーちゃんはあたしの隣に降りてくると、片方の羽を広げて挨拶をしてきました。
「ホーちゃん、ご飯はいりますか?」
「ホー!」
ホーちゃんがトコトコと近づいてきたので、あたしは指を差し出しました。ホーちゃんは指を軽くくわえ、あたしの魔力を食べ始めます。
……森の中に逃げたら、こんなにゆっくりご飯をあげることもできないですよね。ゴブリンに追われて、ギガントスノーベアだって来るかもしれません。きっとルクシアの人たちは諦めないでしょうし、もしかしたら正教会の人たちも!
そうですよね。頑張るしかありません。あたし、絶対にルクシアの奴らの思い通りになんてなってはやりませんよ! 正教会だって!
魔力を美味しそうに食べるホーちゃんを見ながら、あたしはそんなことを考えるのでした。
================
次回更新は通常どおり、2024/08/10 (土) 20:00 を予定しております。
ようやくお家に帰ってこられたんですけど、昨日は疲れてて部屋に入るなりそのまま寝ちゃいました。
ああ、それにしても本当に大変でした。
あんまり実感はなかったんですけど、貴族ってこんなに大変なんですね。それに、王様の前で失敗しちゃいましたし……。
「はぁ」
「ミャ?」
「あ、ユキ、おはようございます」
「ミャー」
ユキがあたしのほっぺにおでこをすりすりしてきました。なんだかそれだけで暖かい気分になってきます。
「ピッ」
「あれ? あ! 今どきますね」
あたしったらピーちゃんを枕にして寝ていました。だからあんなに気持ちよかったんですね。
あたしが上体を起こすと、ピーちゃんはピョーンとジャンプしてあたしの膝の上に乗ってきました。
「ピピッ」
「えへへ、おはようございます」
「ピピ~」
なんだかピーちゃん、心なしかご機嫌な感じですね。ピーちゃんがご機嫌だとあたしも嬉しくなっちゃいます。
あ、そうだ。ホーちゃんは……寝ていますね。今日はタンスの上を寝床にしています。
「朝ごはん、食べますか?」
「ピッ!」
「ミャー!」
「えへへ、順番ですよ」
あたしはピーちゃんとユキに朝ごはんの魔力をあげるのでした。
◆◇◆
それから着替え、お義父さまと一緒に朝ごはんを食べます。お義母さまとお義姉さまは今、クルージュにいるので二人だけの食卓です。
「ローザ、おはよう」
「おはようございます、お義父さま」
「昨日はよく眠れたかい?」
「はい。ただ、昨日はすぐに寝ちゃって、お出迎えが出来なくてごめんなさい」
「いや、いいよ。疲れていただろう?」
「はい……」
「さあ、それより食べようか」
「はい」
あたしはお祈りをしてから朝ごはんを食べます。
「ところでローザ」
「はい」
「昨日の御前会議、あのあとも君のことを話し合ったんだ」
「はい……」
あたし、失敗しちゃいましたし、やっぱりお義父さま、怒られちゃったんでしょうか?
「単刀直入に聞きたいんだけど」
「は、はい」
「君は本当に御使いなのかい?」
「へっ?」
お義父さままでおかしくなっちゃんたんですか!?
「ローザ、どうなんだい?」
「えっと……知りません。その、ミツカイ? っていうのはなんなんですか?」
「……御使いというのはね。正教会の教えの中にある神の意を受けて地上に遣わされた者のことだよ」
「えっと、神様の?」
「そう。君が御使いではないか、という話が出ているんだ。本来助かるはずのない重傷者を治療したそうだね」
「は、はい」
「それで、正教会が君は御使いだから、正教会の慈善活動に参加してほしいと要請してきたんだ」
「えっと……あたし、そんなミツカイ? なんてすごい人じゃないんですけど……」
「……分かったよ。君は御使いではない。そういうことにしよう」
「はい」
「大丈夫だよ。君が嫌がることはしないからね。安心していいよ」
「ありがとうございます」
するとお義父さまはなぜか少し寂しげに微笑みました。
あ、あれ? えっと?
「それとね。これからは君の護衛騎士を増員するよ。本当は女性騎士だけで固めたいけど、あまり集まらなくてね。一番近くで守るのはラダ卿に引き続きお願いするけど、男性騎士も混ざることになるよ」
「は、はい」
「それから、魔法学園にも騎士を配備するよ。これは多分、国王陛下の騎士が任に当たることになると思う」
「はい」
「くれぐれも、勝手に出掛けないように。出掛ける時は必ず許可を取りなさい。いいね? ルクシアの連中はこの町にもいるんだよ」
「はい……」
こんな話をしつつ、あたしは朝食を食べ終えたのでした。
◆◇◆
特にやることもないので、あたしは庭園に出てきました。色とりどりの綺麗な花がたくさん咲いていますね。
あたしはベンチに腰掛け、ぼんやりとお庭を眺めます。
はぁ。どうしてこんなことになっちゃったんでしょう?
何を間違えたんでしょうか?
あたし、ルクシアの人たちに何もしてないですよね?
それに正教会までそんなことを言ってくるなんて……。
そりゃあ、あたしが育った孤児院は正教会ですから、正教会がイヤってわけじゃありません。
でも、ミツカイ? でもなんでもないですし、それに正教会の孤児院はあたしをオーナー様の奴隷として売ろうとしていました。
だから正教会のために何かをしようなんて、とてもじゃないですけどそんな気にはなれません。
もちろん、傷ついている人は助けてあげたいですけど……。
「ミャッ」
「あ……」
悩んでいると、ユキがピョンと膝の上に乗ってきました。
えへへ、ふわふわです。ユキの毛並みはいつだって最高ですね。これもピーちゃんが毎日綺麗にしてくれているおかげですね。
「ピピッ」
ピーちゃんが高くジャンプして、地面から一気にあたしの頭の上に乗ってきました。
ぷにぷにした感触が心地いいですね。
はぁ。なんだかこうしていると少しイヤなことが忘れられますね。
思い返してみると、森の中に逃げたときはこんな悩みはなかったですね。
そうだ。いっそ、森の中にでも逃げてしまえば……。
「ホー」
そんな考えが頭をよぎったのですが、ちょうどそのタイミングでホーちゃんが飛んできました。
「あ、ホーちゃん。おはようございます」
「ホー」
ホーちゃんはあたしの隣に降りてくると、片方の羽を広げて挨拶をしてきました。
「ホーちゃん、ご飯はいりますか?」
「ホー!」
ホーちゃんがトコトコと近づいてきたので、あたしは指を差し出しました。ホーちゃんは指を軽くくわえ、あたしの魔力を食べ始めます。
……森の中に逃げたら、こんなにゆっくりご飯をあげることもできないですよね。ゴブリンに追われて、ギガントスノーベアだって来るかもしれません。きっとルクシアの人たちは諦めないでしょうし、もしかしたら正教会の人たちも!
そうですよね。頑張るしかありません。あたし、絶対にルクシアの奴らの思い通りになんてなってはやりませんよ! 正教会だって!
魔力を美味しそうに食べるホーちゃんを見ながら、あたしはそんなことを考えるのでした。
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