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第四章
第四章第56話 お友達になりました
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公太后さまの治療した日の夜、そろそろ眠ろうと思っていると突然お部屋の扉がノックされました。
「えっと、誰ですか?」
「わたくしです。エカテリーナ・カルリアです」
えっ? 公女さま?
こ、こんな時間に来るなんて、あたし何かいけないことをしちゃったんでしょうか?
あたしが困惑していると、自分の部屋に戻ろうとしていたメラニアさんがそっと耳打ちしてくれます。
「お嬢様、お断りいただいても問題ございません。このような時間です。ラダ卿もお休みになられていますし、夜中に約束もなく訪ねてくることは無礼なことですから」
えっと……でもきっと何か急用があったんですよね?
ただでさえ嫌われてますし、ここで追い返したらさらに嫌われちゃいそうです。
あたしはメラニアさんに向かって首を小さく横に振ると、公女さまに返事をします。
「どうぞ」
すると扉が開き、公女さまがなんだか申し訳なさそうに入ってきました。
あれ? なんだか様子が変ですね。やっぱり何かあったんでしょうか?
そんな公女さまは、あたしの前に来ると突然頭を下げました。
「ごっ、ごめんなさい! わたくし! マレスティカ公爵令嬢にとてもひどいことをしました! お、おばあさまを治してくれたのに、詐欺師の言葉を信じてあんな風に言って……ほ、本当にごめんなさい!」
「えっ?」
あ、あれれ? えっと、えっと、ど、ど、ど、どうなっているんでしょう?
「マレスティカ公爵令嬢が鉛が原因だって見抜いてくださったのに! わたくしは鉛を飲ませようとした詐欺師の言葉を鵜呑みにして……うっうっ」
公女さまはそう言いながら肩を震わせています。
あ、そういうことだったんですね。
……えっと、はい。なら仕方ないですよね。クルージュの、えっと、名前は忘れちゃいましたけどなんとかっていう人も瀉血でなんでも治るって言ってて、それをたくさんの人が信じてましたもんね。
「わかりました。その謝罪を受け入れます」
「えっ?」
公女さまは顔を上げ、意外そうな表情であたしを見つめてきます。
「えっと、ですから、謝罪を受け入れたので、もう謝らなくて大丈夫です」
「ゆ、許して下さるの?」
「えっと、はい。公太后さまを大切に想っていたからなんですよね?」
「え、ええ。それはもちろん……」
「なら、もういいです」
すると公女さまの表情がぱぁっと明るくなりました。
「マレスティカ公爵令嬢はなんて寛大な心をお持ちなんでしょう!」
え? あ、えっと、知らなかったんですから仕方ないっていうだけなんですけど……。
「ねえ、マレスティカ公爵令嬢! わたくしとお友達になってくださらない?」
「え? え?」
あたしは突然の変わりようにビックリしてしまいました。すると公女さまはすぐに申し訳なさそうな表情になります。
「あ……そ、そうですよね。わたくしなんかといきなりお友達だなんて……」
「あ、えっと、い、嫌なわけじゃないです。ちょっとびっくりしただけですから……」
「なら、いいのですか?」
「は、はい」
すると公女さまの表情が再びぱぁっと明るくなります。
「じゃあ、今からご令嬢のことはローザと名前でお呼びしても?」
「は、はい」
「ええ、ローザ! ならわたくしのことはカーチャと呼んで?」
「え? えっと、カーチャ様?」
「そんな、呼び捨てにしてくださいな!」
「え、えっと、その、か、カーチャさん?」
「……もう。分かったわ。ローザ、これからよろしくね」
「は、はい」
こうしてあたしはカーチャさんとお友達になったのでした。
◆◇◆
それから数日間、公子さまとカーチャさんに色々なところを案内してもらいました。プレシキンの名所を色々と観光して、それから宮殿の敷地内ではあるんですけどオレグ湖の湖畔にも遊びに行きました。
それでですね! なんと! 湖に遊びに行ったのにゴブリンが出なかったんです!
なんだか、こう、湖って遊びに行くとゴブリンが襲ってくるっていうイメージがあるんですよね。
だからあのおぞましい魔物を気にせずに遊べたので楽しかったです。
え? 宮殿の敷地内なのにゴブリンがいるわけない、ですか?
えっと、はい。それはそうなんですけど……でも、ほら! カルヴェラ湖だって騎士の皆さんが一生懸命ゴブリンを駆除してくれたのに結局来たじゃないですか。
なので、宮殿だってゴブリンが紛れ込んでいてもおかしくはないです。
だって、ゴブリンは一匹見かけたら三十匹はいると思えってよく言うじゃないですか。
三十匹のゴブリン……うっ、気持ち悪いです。思わず想像して、鳥肌が立っちゃいました。
えっと、こういうときは……。
すー、はー、すー、はー。
ふぅ。はい、大丈夫です。落ち着きました。
やっぱり変なものを想像するのは良くないですね。
今日はプレシキンを出発する日なので、ちゃんと笑顔でお見送りに来てくれる皆さんとお別れしなくっちゃいけません。
この数日間の楽しい出来事を思い出していると、メラニアさんがやってきました。
「お嬢様、身支度のお手伝いをいたします」
「はい。お願いします」
こうしてあたしは出発の支度を始めるのでした。
================
次回更新は通常どおり、2023/12/30 (土) 20:00 を予定しております。
「えっと、誰ですか?」
「わたくしです。エカテリーナ・カルリアです」
えっ? 公女さま?
こ、こんな時間に来るなんて、あたし何かいけないことをしちゃったんでしょうか?
あたしが困惑していると、自分の部屋に戻ろうとしていたメラニアさんがそっと耳打ちしてくれます。
「お嬢様、お断りいただいても問題ございません。このような時間です。ラダ卿もお休みになられていますし、夜中に約束もなく訪ねてくることは無礼なことですから」
えっと……でもきっと何か急用があったんですよね?
ただでさえ嫌われてますし、ここで追い返したらさらに嫌われちゃいそうです。
あたしはメラニアさんに向かって首を小さく横に振ると、公女さまに返事をします。
「どうぞ」
すると扉が開き、公女さまがなんだか申し訳なさそうに入ってきました。
あれ? なんだか様子が変ですね。やっぱり何かあったんでしょうか?
そんな公女さまは、あたしの前に来ると突然頭を下げました。
「ごっ、ごめんなさい! わたくし! マレスティカ公爵令嬢にとてもひどいことをしました! お、おばあさまを治してくれたのに、詐欺師の言葉を信じてあんな風に言って……ほ、本当にごめんなさい!」
「えっ?」
あ、あれれ? えっと、えっと、ど、ど、ど、どうなっているんでしょう?
「マレスティカ公爵令嬢が鉛が原因だって見抜いてくださったのに! わたくしは鉛を飲ませようとした詐欺師の言葉を鵜呑みにして……うっうっ」
公女さまはそう言いながら肩を震わせています。
あ、そういうことだったんですね。
……えっと、はい。なら仕方ないですよね。クルージュの、えっと、名前は忘れちゃいましたけどなんとかっていう人も瀉血でなんでも治るって言ってて、それをたくさんの人が信じてましたもんね。
「わかりました。その謝罪を受け入れます」
「えっ?」
公女さまは顔を上げ、意外そうな表情であたしを見つめてきます。
「えっと、ですから、謝罪を受け入れたので、もう謝らなくて大丈夫です」
「ゆ、許して下さるの?」
「えっと、はい。公太后さまを大切に想っていたからなんですよね?」
「え、ええ。それはもちろん……」
「なら、もういいです」
すると公女さまの表情がぱぁっと明るくなりました。
「マレスティカ公爵令嬢はなんて寛大な心をお持ちなんでしょう!」
え? あ、えっと、知らなかったんですから仕方ないっていうだけなんですけど……。
「ねえ、マレスティカ公爵令嬢! わたくしとお友達になってくださらない?」
「え? え?」
あたしは突然の変わりようにビックリしてしまいました。すると公女さまはすぐに申し訳なさそうな表情になります。
「あ……そ、そうですよね。わたくしなんかといきなりお友達だなんて……」
「あ、えっと、い、嫌なわけじゃないです。ちょっとびっくりしただけですから……」
「なら、いいのですか?」
「は、はい」
すると公女さまの表情が再びぱぁっと明るくなります。
「じゃあ、今からご令嬢のことはローザと名前でお呼びしても?」
「は、はい」
「ええ、ローザ! ならわたくしのことはカーチャと呼んで?」
「え? えっと、カーチャ様?」
「そんな、呼び捨てにしてくださいな!」
「え、えっと、その、か、カーチャさん?」
「……もう。分かったわ。ローザ、これからよろしくね」
「は、はい」
こうしてあたしはカーチャさんとお友達になったのでした。
◆◇◆
それから数日間、公子さまとカーチャさんに色々なところを案内してもらいました。プレシキンの名所を色々と観光して、それから宮殿の敷地内ではあるんですけどオレグ湖の湖畔にも遊びに行きました。
それでですね! なんと! 湖に遊びに行ったのにゴブリンが出なかったんです!
なんだか、こう、湖って遊びに行くとゴブリンが襲ってくるっていうイメージがあるんですよね。
だからあのおぞましい魔物を気にせずに遊べたので楽しかったです。
え? 宮殿の敷地内なのにゴブリンがいるわけない、ですか?
えっと、はい。それはそうなんですけど……でも、ほら! カルヴェラ湖だって騎士の皆さんが一生懸命ゴブリンを駆除してくれたのに結局来たじゃないですか。
なので、宮殿だってゴブリンが紛れ込んでいてもおかしくはないです。
だって、ゴブリンは一匹見かけたら三十匹はいると思えってよく言うじゃないですか。
三十匹のゴブリン……うっ、気持ち悪いです。思わず想像して、鳥肌が立っちゃいました。
えっと、こういうときは……。
すー、はー、すー、はー。
ふぅ。はい、大丈夫です。落ち着きました。
やっぱり変なものを想像するのは良くないですね。
今日はプレシキンを出発する日なので、ちゃんと笑顔でお見送りに来てくれる皆さんとお別れしなくっちゃいけません。
この数日間の楽しい出来事を思い出していると、メラニアさんがやってきました。
「お嬢様、身支度のお手伝いをいたします」
「はい。お願いします」
こうしてあたしは出発の支度を始めるのでした。
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次回更新は通常どおり、2023/12/30 (土) 20:00 を予定しております。
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