200 / 268
第四章
第四章第50話 公王様に謁見しました
しおりを挟む
十日ほどかけ、あたしたちはカルリア公国の公都プレシキンにある宮殿にやってきました。
え? 感想ですか?
えっとですね。すごいです。あ! もちろんトレスカのお城もすごいんですけど、こっちの宮殿はもっとすごいんです。
まずですね。敷地の広さが全然違うんです。プレシキンの町はオレグ湖っていうとても大きな湖の岸辺にあるんですけど、その東岸が全部宮殿の敷地なんだそうですよ! しかも、そのすごく広い敷地にきっちり庭園が整備されていているんです。噴水とかもあって、お庭も綺麗な模様みたいになっていて、本当にビックリしました。
宮殿の中は、えっと、そうですね。これはトレスカのお城とあんまり変わらない気がします。
あ! でもですね。あたしはこれから公王様に謁見してお手紙を渡すことになってるんですけど、その部屋の壁がですね。なんと全部琥珀でできているらしいんです。
いったいどんな部屋なんでしょう? 全然想像できないですよね。そんなにピカピカしてたら目がチカチカしちゃいそうです。
そんなこんなで緊張しながら宮殿の中を歩き、あたしたちは立派な装飾のある扉の前にやってきました。するとすぐに門番の人が扉を開いてくれます。
うっ……、なんだか、ものすごい金ぴかなお部屋です。本当に壁が全部琥珀なんですね。ただ、柱は琥珀じゃなくて金でできているみたいです。金のレリーフとかもあって、そこにランプの光が反射していて、やっぱり目がちょっとチカチカしちゃいます。
「マルダキア魔法王国よりタルヴィア子爵アルマンド様、タルヴィア子爵夫人イヴァンナ様、マレスティカ公爵令嬢ローザ様がいらっしゃいました」
名前を呼ばれながらあたしたちは金ぴかな謁見の間に入ります。正面には二つの玉座があって、中年の男女が座っています。きっとあれが公王様と公妃様なんだと思います。
公妃様、なんだか公子様と似ています。そんな公妃様の隣には公子様が立っていて、あたしに向かって微笑みかけてくれています。
それと、公王様の隣にも公子様よりちょっと年上の男性が立っていますけど、その人は公王様を若くしたような感じです。だからきっとあの人は公子様のお兄さんなんだと思います。
あたしはタルヴィア子爵の斜め後ろを歩き、ゆっくりと公王様の近くまできました。
「マルダキア魔法王国より参りましたタルヴィア子爵アルマンドが公王陛下に拝謁いたします」
そう口上を述べ、タルヴィア子爵が礼を執りました。それに合わせてあたしもカーテシーをします。
「うむ。楽にするがよい」
威厳たっぷりな声で公王様はそう言ってくれたので、カーテシーをやめます。
「この度は歓迎いただきありがとうございます。マルダキア魔法王国を代表し、公王公妃両陛下に感謝申し上げると共に……」
タルヴィア子爵は長々と口上を述べています。
う……そろそろ出番です。なんだかすごく緊張してきました。
「我が国といたしましては、益々の友好関係の発展を望み、ここに我が王ミハイ三世の親書をお持ちいたしました。マレスティカ公爵家が次女、ローザより公王陛下にお渡ししたく」
「許す」
で、出番が来ちゃいました。笑顔、笑顔です。
あたしはなんとか微笑むと、親書入りの封筒だけを持って前に出ます。
えっと、裾を踏まないように、ゆっくり、ゆっくり……。
ふう。公王様の前まで来ました。えっと、そうです。封筒を持っていないほうの手でスカートの裾を摘まんで、ちょこんとカーテシーです。
それからまた笑顔を頑張って作って、すー、はー。
よしっ! あたしはできます!
「マレスティカ公爵家が次女、ローザでございます。公王陛下のお招きに与り、我が王の使いとして参上いたしました。貴国との友好を願い、我が王より親書をお受け取り下さい」
「うむ」
あたしは封蝋が見えるようにして公王様に差し出しました。公王様はそれを受け取るとすぐに封筒を開け、さっと中身を確認しました。
「うむ。マルダキア魔法王国国王からの親書、たしかに受け取ったぞ。両国の友好関係を益々発展させようではないか」
公王様はなんだか上機嫌な様子です。もしかして、何かいいことでも書いてあったんでしょうか?
「追って返事を書こう。ローザ嬢、下がって良いぞ」
「かしこまりました」
あたしはもう一度カーテシーをすると、転ばないように注意しながらタルヴィア子爵の斜め後ろのポジションに戻りました。
ふ、ふう。できました。なんとかなりました。ちゃんと間違えずに全部言えました。
「ローザちゃん、まだ謁見は終わっていませんわ」
「っ!?」
あ、危ない。そうでした。まだ気を抜いちゃダメですよね。
……あ、あれ? なんだか公子様が笑っているような?
も、も、も、もしかしてあたしが気を抜いているの、バレちゃってます!?
は、恥ずかしい……!
え? 感想ですか?
えっとですね。すごいです。あ! もちろんトレスカのお城もすごいんですけど、こっちの宮殿はもっとすごいんです。
まずですね。敷地の広さが全然違うんです。プレシキンの町はオレグ湖っていうとても大きな湖の岸辺にあるんですけど、その東岸が全部宮殿の敷地なんだそうですよ! しかも、そのすごく広い敷地にきっちり庭園が整備されていているんです。噴水とかもあって、お庭も綺麗な模様みたいになっていて、本当にビックリしました。
宮殿の中は、えっと、そうですね。これはトレスカのお城とあんまり変わらない気がします。
あ! でもですね。あたしはこれから公王様に謁見してお手紙を渡すことになってるんですけど、その部屋の壁がですね。なんと全部琥珀でできているらしいんです。
いったいどんな部屋なんでしょう? 全然想像できないですよね。そんなにピカピカしてたら目がチカチカしちゃいそうです。
そんなこんなで緊張しながら宮殿の中を歩き、あたしたちは立派な装飾のある扉の前にやってきました。するとすぐに門番の人が扉を開いてくれます。
うっ……、なんだか、ものすごい金ぴかなお部屋です。本当に壁が全部琥珀なんですね。ただ、柱は琥珀じゃなくて金でできているみたいです。金のレリーフとかもあって、そこにランプの光が反射していて、やっぱり目がちょっとチカチカしちゃいます。
「マルダキア魔法王国よりタルヴィア子爵アルマンド様、タルヴィア子爵夫人イヴァンナ様、マレスティカ公爵令嬢ローザ様がいらっしゃいました」
名前を呼ばれながらあたしたちは金ぴかな謁見の間に入ります。正面には二つの玉座があって、中年の男女が座っています。きっとあれが公王様と公妃様なんだと思います。
公妃様、なんだか公子様と似ています。そんな公妃様の隣には公子様が立っていて、あたしに向かって微笑みかけてくれています。
それと、公王様の隣にも公子様よりちょっと年上の男性が立っていますけど、その人は公王様を若くしたような感じです。だからきっとあの人は公子様のお兄さんなんだと思います。
あたしはタルヴィア子爵の斜め後ろを歩き、ゆっくりと公王様の近くまできました。
「マルダキア魔法王国より参りましたタルヴィア子爵アルマンドが公王陛下に拝謁いたします」
そう口上を述べ、タルヴィア子爵が礼を執りました。それに合わせてあたしもカーテシーをします。
「うむ。楽にするがよい」
威厳たっぷりな声で公王様はそう言ってくれたので、カーテシーをやめます。
「この度は歓迎いただきありがとうございます。マルダキア魔法王国を代表し、公王公妃両陛下に感謝申し上げると共に……」
タルヴィア子爵は長々と口上を述べています。
う……そろそろ出番です。なんだかすごく緊張してきました。
「我が国といたしましては、益々の友好関係の発展を望み、ここに我が王ミハイ三世の親書をお持ちいたしました。マレスティカ公爵家が次女、ローザより公王陛下にお渡ししたく」
「許す」
で、出番が来ちゃいました。笑顔、笑顔です。
あたしはなんとか微笑むと、親書入りの封筒だけを持って前に出ます。
えっと、裾を踏まないように、ゆっくり、ゆっくり……。
ふう。公王様の前まで来ました。えっと、そうです。封筒を持っていないほうの手でスカートの裾を摘まんで、ちょこんとカーテシーです。
それからまた笑顔を頑張って作って、すー、はー。
よしっ! あたしはできます!
「マレスティカ公爵家が次女、ローザでございます。公王陛下のお招きに与り、我が王の使いとして参上いたしました。貴国との友好を願い、我が王より親書をお受け取り下さい」
「うむ」
あたしは封蝋が見えるようにして公王様に差し出しました。公王様はそれを受け取るとすぐに封筒を開け、さっと中身を確認しました。
「うむ。マルダキア魔法王国国王からの親書、たしかに受け取ったぞ。両国の友好関係を益々発展させようではないか」
公王様はなんだか上機嫌な様子です。もしかして、何かいいことでも書いてあったんでしょうか?
「追って返事を書こう。ローザ嬢、下がって良いぞ」
「かしこまりました」
あたしはもう一度カーテシーをすると、転ばないように注意しながらタルヴィア子爵の斜め後ろのポジションに戻りました。
ふ、ふう。できました。なんとかなりました。ちゃんと間違えずに全部言えました。
「ローザちゃん、まだ謁見は終わっていませんわ」
「っ!?」
あ、危ない。そうでした。まだ気を抜いちゃダメですよね。
……あ、あれ? なんだか公子様が笑っているような?
も、も、も、もしかしてあたしが気を抜いているの、バレちゃってます!?
は、恥ずかしい……!
37
お気に入りに追加
976
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?


初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる