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第三章

第三章第59話 野菜のポタージュを作りました

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「あと、こっちのほうれん草も収穫できるよ。このハサミでこうやって……」

 ベティーナさんが隣の列に植えられていたほうれん草をハサミでちょきんと切って収穫しました。

「うん。これなら食べごろかな? ローザさんもやってみる?」
「はい!」

 あたしはベティーナさんからハサミを借り、収穫に挑戦します。

「そう。その根元の赤いところを残して、そうそう。その下」
「ここですか?」
「そう。そのまま切って」
「んんっ! えい!」

 思い切り力を入れると、なんとかハサミが閉じました。

「切れました! えへへ、結構硬いですね」
「え? そうかな? あー、でも角度によっては硬いかもね。でもちゃんとできてるよ」
「あ! あたしも!」
「リリアさんもどうぞ」
「うん」

 リリアちゃんもほうれん草の収穫に挑戦しますが、あたしと違って簡単に切れたみたいです。

「できたぁ」
「うん。ありがとう。もう少し収穫してくれる?」
「はい」

 こうしてあたしたちはニンジンとほうれん草を収穫し、調理室へとやってきました。

「おっ? どうした? 今日は食材持参か?」
「はい。ザビーネ先輩」
「園芸同好会のベティーナちゃんの畑でさっき収穫してきたんですよ!」
「おおー、新鮮でいいほうれん草とニンジンじゃん。何作るんだ?」
「えっと……」
「決まってないなら、ポタージュにでもするか。こんだけ新鮮なら美味いポタージュができるぜ」

 ポタージュって、食堂でたまに出てくるどろっとしたスープですよね。どうやって作るか知らなかったのでちょっと楽しみです。

「はい。そうしましょう」
「よっしゃ。なら早速始めるか。まずはニンジンの皮をむいて、適当に細かく切る。それとほうれん草も洗って同じな」
「はい」

 あたしたちはザビーネ先輩の指示に従って調理を始めます。

「ああ、そうだ。玉ねぎもあったほうがいいな。よし。これも適当に細かくする」
「はい」

 玉ねぎは切ると目にしみて涙が出てくるのでちょっと苦手ですが、入れると美味しくなりますよね。

「リリアはジャガイモだ。洗って薄切りにしてくれ」
「はーい」
「あ、ローザ。できたな?そいつらをバターでじっくり炒める」
「はい」

 言われたとおりに弱火でじっくり炒めます。

「塩入れるぞ」

 ザビーネ先輩はそういって横からお塩をフライパンに入れてきました。

「このまま野菜が汗かくくらいまでやってくれ」
「はい」

 そうししばらく炒めていると、野菜がしっとりしてきました。

「お、そんな感じだな」
「え? まだニンジンに火は通ってませんよね?」
「ああ、それでいいんだ。これから水分を入れてじっくり煮詰めるからよ」

 そうなんですね。初めて聞くやり方です。

「よーし。あとは三分の一くらいになるまでじっくり煮詰めるぞ。あ、コンソメスープがねぇな。ちょっと待ってろ。持ってくるから」

 ザビーネ先輩はそう言って準備室に行き、氷室で保存されているコンソメスープを持ってきました。

「じゃ、ジャガイモも入れろ」
「はい」

 リリアちゃんがじゃがいもを入れるとザビーネ先輩はコンソメスープを入れ、さらにその倍くらいの量の水を入れてひたひたにします。

「よし。あとはこのまま中火で煮詰めるぞ」

 それからしばらく雑談しながら待っていると、三分の一くらいまで水分が減ってきました。

「お、そろそろだな。あとは牛乳を入れて、こいつで野菜を潰していく」

 ザビーネ先輩はそう言って牛乳を回し入れ、先端がちょっととげとげしている不思議な道具で野菜を潰していきます。

「後は塩で味を調えて、完成だ。うまいぜー、これ」

 ザビーネ先輩は嬉しそうにそう言うと、お玉で完成したポタージュを盛り付け、さらに乾燥パセリを振りかけました。緑色のどろりとしたスープからほかほかと美味しそうに湯気が上がっています。

「うわー、美味しそう! 私の畑で獲れた野菜がこんなになるなんて!」

 ベティーナさんは目を輝かせて喜んでいます。

「おう。あんだけ新鮮でいい野菜なら絶対うまいぜ」

 あたしたちは近くの席に座り、さっそくポタージュをいただきます。

 んん! どろっとしていて、甘いです。苦味とかえぐみとかが全然なくって、野菜の甘みがしっかり出ていて、とっても美味しいです!

「はー、美味しい。やっぱり料理研究会はすごいですねー」

 ベティーナさんも満足そうです。

「でも、ベティーナさんの野菜が美味しいからですよね?」
「ああ、そうだぜ。この鮮度の野菜はそうそう手に入らねぇからな。まだあるならまた持ってきてくれよ」
「もちろんです。まだありますから、ぜひご馳走してください」
「おう」

 ザビーネ先輩はそう言ってニカッと笑います。

 こうしてあたしたちはベティーナさんの育てた野菜ポタージュを堪能したのでした。

 あたしもいつかは先輩たちのような料理上手になりたいものです。

 ……なれますかね?

 なれるといいなぁ。
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