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第三章
第三章第33話 王太子様が相変わらずです
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2022/05/11 誤字を修正しました
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えっと、こんにちは。ローザです。
喫茶店が開店してから一時間くらい経ったんですが、なんだかものすごいことになっています。
その、よく分からないんですけど、喫茶店にものすごい行列ができているんです。
しかも、並んでいるのが全員男子生徒なんです。
そんなに並んでいるので喫茶店はもちろんもう満席です。その席も半分以上は女子生徒が座っているんですが、あの人たちが帰ったら男子生徒だけが座っている状態になると思います。
そんな中必死にウェイトレスのお仕事をしていると、廊下のほうから並んでいる男子生徒たちの会話が聞こえてきます。
「なあ、さすがに長くねぇか? もう行こうぜ」
「いやいや、服がめっちゃエロいんだよ。マジですげぇらしいんだよ。」
う……。やっぱりそうですよね。この制服、やっぱりダメですよね?
「しかも、王太子殿下のアレなあの娘がウェイトレスやってるらしいぜ?」
「マジで!? それは見てぇな」
……王太子様のアレなあの娘って、やっぱり私のことですか?
「でもよ。先遣隊の報告によると、ザビーネの奴が守ってるらしいんだよな」
「ザビーネが?」
「あいつ、マジでウザいからな」
「でも、俺らじゃあいつの従魔には勝てねぇし」
「それもそうだな……」
えっと、ザビーネ先輩を呼び捨てにしてますし、ザビーネ先輩と同じ従魔科の三年生でしょうか?
それにしても、ザビーネ先輩って優秀な人なんですね。
「おーい、ローザちゃん。別のを注文したいんだけどいいかな?」
「あ、はい」
男子生徒のお客さんのテーブルに呼ばれてしまいました。ちなみに名前はリリアちゃんと話をしているときに聞かれてバレちゃいました。
「はい。ご注文はなんでしょうか?」
「お水をおかわり。それとさ、一緒に座ってお話しようよ」
「え?」
「こら! そこの男子たち! 注文でもないのに女の子を呼ぶんじゃねぇ!」
それを聞いていたザビーネ先輩がすっ飛んできました。
「それに、ウチは喫茶店だ! 女の子が接待する店じゃねぇ!」
「ひっ」
ザビーネ先輩に怒られ、お客さんは俯いてしまいました。
「大体、ローザもローザだ。名前を呼ばれたからって行くんじゃねぇ! ベルが鳴らされてから行け」
「は、はい。すみません……」
すると、なぜかお客さんがザビーネ先輩から私を庇い始めました。
「ローザちゃんは悪くないんだ! 俺たちがローザちゃんと話をしたくてつい呼んじゃったんだ。だからローザちゃんを叱らないでやってくれ!」
「はぁ!?」
「頼む! 叱るなら俺たちを叱ってくれ!」
「うわぁ……」
あまりの事態にザビーネ先輩はドン引きして、どこか汚いものでも見るかのような目でお客さんたちを見ています。
「と、とにかくローザは下がれ。あ、いや、違う。ローザは休憩だ」
「え? でもまだ交代の時間じゃ……」
「いいから! さっさと交代を呼んでこい!」
「は、はいっ!」
あたしは急いで交代を呼びに隣の控室に向かいます。
ですがそのとき、あたしの頭の中から外で行列を作っている男子生徒たちのことがすっぽり抜け落ちていました。
急いで扉を開けてお店となっている教室から廊下に出ると、大勢並んでいた男子生徒たちの視線があたしに一斉に注がれます。
「うおっ!」
「マジか!」
「すげぇ!」
「めっちゃカワイイ」
「さすが王太子殿下のアレ」
「やべぇ」
「うっ」
なんだか、色んな言葉が一瞬で飛び交いました。なんだか股間を抑えている人までいます。
「あのさ、君の名前、ローザちゃんだよね?」
「ねえねえ、シフトはいつ終わるの?」
誰かがそう言ったのを皮切りに行列が一気に崩れ、男子生徒たちが一斉に近寄ってきました。
「ひっ」
後ずさりしますが、あたしは男子生徒たちに取り囲まれてしまいました。もう周りには逃げ場が一切ありません。それにあたしよりも年上で背の高い人たちばかりなので、ものすごく怖いです。
「ねえ、彼氏はいるの?」
「その胸、いくつあるの?」
「ちょっと触ってもいい?」
「い、いやっ!」
「おい! やめろ!」
突然、男の子のそんな怒鳴り声が聞こえてきました。
「嫌がるローザを取り囲んで何やっていやがる! どけっ!」
えっと、聞き覚えのない声ですけど、どうしてあたしの名前を知ってるんでしょうか?
「ほら! 早くどけよ! 道を開けろ!」
もしかして、あたしを助けようとしてくれているんでしょうか?
「ああん? お前があの子を落としたいだけだろうが」
「なっ!?」
「なんだよ。図星かよ。なら邪魔すんじゃねぇ」
「ち、違う! こんなことは!」
「ひゅー。一年坊主が三年に勝てると思ってるのか?」
「なんだと!?」
「何をしている!」
今度は聞き覚えのある声が聞こえてきました。この声は、王太子様です。
「その中心にいるのは誰だ!」
「あ、いや、その……」
「殿下! ローザが! 同級生のローザが取り囲まれているんです!」
「何!? おい、それは本当か?」
王太子様の言葉にあたしを取り囲んでいた男子生徒たちがさっと遠ざかり、王太子様との間に道ができました。
次の瞬間、やはりというか、王太子様の視線はあたしの胸に固定されました。
周りから「ああ、やっぱり」などといったひそひそ話が聞こえてきます。
「それでお前たちはなぜ大勢で一人の女の子を取り囲んでいたのだ?」
「そ、それは……」
「俺らは単に話してみたかっただけで……」
「この状況でか?」
えっと、一ついいでしょうか?
どうしてちゃんと話をしているのに王太子様の視線はあたしの胸に固定されたままなんでしょうか?
ちょっと、いえ、ものすごく気持ち悪いんですけど……。
そんなあたしをよそに、話はいつの間にかあらぬ方向へと勝手に進んでました。
「では、ローザを懸けて決闘をするがいい」
はい? どうしてそんな話になってるんですか?
「ここにいる男たちは全員ローザが欲しい。ならば、勝って己の力を証明してみせろ」
……あたしのときもそうでしたけど、王太子様って絶対決闘が好きですよね?
ツェツィーリエ先生に叱られたはずなのにまたやらせるなんて……。
「魔術選手権に参加登録をしていない者は今すぐ登録してこい。魔術選手権で優勝した者にはこの私がローザと話す場を作ってやる」
王太子様はぴしゃりとそう言い放ちました。それをきっかけに、あたしを取り囲んでいた男子生徒たちはすごすごと退散していきます。
えっと、王太子様? あたし、それを受けるなんて一言も言っていないんですけど?
それとですね? そんな話をしていたのに、どうして最初から最後までずっとあたしの胸を見ていたんでしょうか?
「さて、ローザ」
男子生徒たちがいなくなったのを確認した王太子様は、あたしの胸を凝視しながら声を掛けてきました。
き、気持ち悪いです。
「あっ! 殿下! 勝手にローザに近づきましたわね!」
「げっ! レジーナ!?」
「殿下!」
「いてっ! いてててっ! レジーナ! 踏んでいるぞ!」
「踏んでいるんですわ!」
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次回更新は通常どおり、2022/04/02 (土) 20:00 を予定しております。
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えっと、こんにちは。ローザです。
喫茶店が開店してから一時間くらい経ったんですが、なんだかものすごいことになっています。
その、よく分からないんですけど、喫茶店にものすごい行列ができているんです。
しかも、並んでいるのが全員男子生徒なんです。
そんなに並んでいるので喫茶店はもちろんもう満席です。その席も半分以上は女子生徒が座っているんですが、あの人たちが帰ったら男子生徒だけが座っている状態になると思います。
そんな中必死にウェイトレスのお仕事をしていると、廊下のほうから並んでいる男子生徒たちの会話が聞こえてきます。
「なあ、さすがに長くねぇか? もう行こうぜ」
「いやいや、服がめっちゃエロいんだよ。マジですげぇらしいんだよ。」
う……。やっぱりそうですよね。この制服、やっぱりダメですよね?
「しかも、王太子殿下のアレなあの娘がウェイトレスやってるらしいぜ?」
「マジで!? それは見てぇな」
……王太子様のアレなあの娘って、やっぱり私のことですか?
「でもよ。先遣隊の報告によると、ザビーネの奴が守ってるらしいんだよな」
「ザビーネが?」
「あいつ、マジでウザいからな」
「でも、俺らじゃあいつの従魔には勝てねぇし」
「それもそうだな……」
えっと、ザビーネ先輩を呼び捨てにしてますし、ザビーネ先輩と同じ従魔科の三年生でしょうか?
それにしても、ザビーネ先輩って優秀な人なんですね。
「おーい、ローザちゃん。別のを注文したいんだけどいいかな?」
「あ、はい」
男子生徒のお客さんのテーブルに呼ばれてしまいました。ちなみに名前はリリアちゃんと話をしているときに聞かれてバレちゃいました。
「はい。ご注文はなんでしょうか?」
「お水をおかわり。それとさ、一緒に座ってお話しようよ」
「え?」
「こら! そこの男子たち! 注文でもないのに女の子を呼ぶんじゃねぇ!」
それを聞いていたザビーネ先輩がすっ飛んできました。
「それに、ウチは喫茶店だ! 女の子が接待する店じゃねぇ!」
「ひっ」
ザビーネ先輩に怒られ、お客さんは俯いてしまいました。
「大体、ローザもローザだ。名前を呼ばれたからって行くんじゃねぇ! ベルが鳴らされてから行け」
「は、はい。すみません……」
すると、なぜかお客さんがザビーネ先輩から私を庇い始めました。
「ローザちゃんは悪くないんだ! 俺たちがローザちゃんと話をしたくてつい呼んじゃったんだ。だからローザちゃんを叱らないでやってくれ!」
「はぁ!?」
「頼む! 叱るなら俺たちを叱ってくれ!」
「うわぁ……」
あまりの事態にザビーネ先輩はドン引きして、どこか汚いものでも見るかのような目でお客さんたちを見ています。
「と、とにかくローザは下がれ。あ、いや、違う。ローザは休憩だ」
「え? でもまだ交代の時間じゃ……」
「いいから! さっさと交代を呼んでこい!」
「は、はいっ!」
あたしは急いで交代を呼びに隣の控室に向かいます。
ですがそのとき、あたしの頭の中から外で行列を作っている男子生徒たちのことがすっぽり抜け落ちていました。
急いで扉を開けてお店となっている教室から廊下に出ると、大勢並んでいた男子生徒たちの視線があたしに一斉に注がれます。
「うおっ!」
「マジか!」
「すげぇ!」
「めっちゃカワイイ」
「さすが王太子殿下のアレ」
「やべぇ」
「うっ」
なんだか、色んな言葉が一瞬で飛び交いました。なんだか股間を抑えている人までいます。
「あのさ、君の名前、ローザちゃんだよね?」
「ねえねえ、シフトはいつ終わるの?」
誰かがそう言ったのを皮切りに行列が一気に崩れ、男子生徒たちが一斉に近寄ってきました。
「ひっ」
後ずさりしますが、あたしは男子生徒たちに取り囲まれてしまいました。もう周りには逃げ場が一切ありません。それにあたしよりも年上で背の高い人たちばかりなので、ものすごく怖いです。
「ねえ、彼氏はいるの?」
「その胸、いくつあるの?」
「ちょっと触ってもいい?」
「い、いやっ!」
「おい! やめろ!」
突然、男の子のそんな怒鳴り声が聞こえてきました。
「嫌がるローザを取り囲んで何やっていやがる! どけっ!」
えっと、聞き覚えのない声ですけど、どうしてあたしの名前を知ってるんでしょうか?
「ほら! 早くどけよ! 道を開けろ!」
もしかして、あたしを助けようとしてくれているんでしょうか?
「ああん? お前があの子を落としたいだけだろうが」
「なっ!?」
「なんだよ。図星かよ。なら邪魔すんじゃねぇ」
「ち、違う! こんなことは!」
「ひゅー。一年坊主が三年に勝てると思ってるのか?」
「なんだと!?」
「何をしている!」
今度は聞き覚えのある声が聞こえてきました。この声は、王太子様です。
「その中心にいるのは誰だ!」
「あ、いや、その……」
「殿下! ローザが! 同級生のローザが取り囲まれているんです!」
「何!? おい、それは本当か?」
王太子様の言葉にあたしを取り囲んでいた男子生徒たちがさっと遠ざかり、王太子様との間に道ができました。
次の瞬間、やはりというか、王太子様の視線はあたしの胸に固定されました。
周りから「ああ、やっぱり」などといったひそひそ話が聞こえてきます。
「それでお前たちはなぜ大勢で一人の女の子を取り囲んでいたのだ?」
「そ、それは……」
「俺らは単に話してみたかっただけで……」
「この状況でか?」
えっと、一ついいでしょうか?
どうしてちゃんと話をしているのに王太子様の視線はあたしの胸に固定されたままなんでしょうか?
ちょっと、いえ、ものすごく気持ち悪いんですけど……。
そんなあたしをよそに、話はいつの間にかあらぬ方向へと勝手に進んでました。
「では、ローザを懸けて決闘をするがいい」
はい? どうしてそんな話になってるんですか?
「ここにいる男たちは全員ローザが欲しい。ならば、勝って己の力を証明してみせろ」
……あたしのときもそうでしたけど、王太子様って絶対決闘が好きですよね?
ツェツィーリエ先生に叱られたはずなのにまたやらせるなんて……。
「魔術選手権に参加登録をしていない者は今すぐ登録してこい。魔術選手権で優勝した者にはこの私がローザと話す場を作ってやる」
王太子様はぴしゃりとそう言い放ちました。それをきっかけに、あたしを取り囲んでいた男子生徒たちはすごすごと退散していきます。
えっと、王太子様? あたし、それを受けるなんて一言も言っていないんですけど?
それとですね? そんな話をしていたのに、どうして最初から最後までずっとあたしの胸を見ていたんでしょうか?
「さて、ローザ」
男子生徒たちがいなくなったのを確認した王太子様は、あたしの胸を凝視しながら声を掛けてきました。
き、気持ち悪いです。
「あっ! 殿下! 勝手にローザに近づきましたわね!」
「げっ! レジーナ!?」
「殿下!」
「いてっ! いてててっ! レジーナ! 踏んでいるぞ!」
「踏んでいるんですわ!」
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