テイマー少女の逃亡日記

一色孝太郎

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第三章

第三章第32話 学園祭が始まりました

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 ついに学園祭が始まりました。制服はみんなも気に入ってしまったので、結局そのまま採用となってしまいました。王太子様が来ないように祈るばかりです。

 その話はさておき、あたしたち料理研究会は校舎の一室を借りて喫茶店をオープンしました。

 あたしたち一年生の最初のお仕事は接客です。最初のお客さんが少ない間は一年生が担当して、上級生は忙しい時間帯を担当してくれるそうです。

 あたしも来年は忙しい時間帯を担当することになるそうなので、今のうちにしっかり練習しておこうと思います。

 でも、やっぱりちょっと緊張しますね。

 そんなあたしを気遣ってか、リリアちゃんが明るく声を掛けてくれます。

「ローザちゃん、がんばろうね」
「はい」

 リリアちゃんはディタさんの制服が似合っていて、シルエットもキレイでとっても可愛いです。

 もちろん先輩の中には胸が大きくてあたしみたいな感じになっている人もいるんですけど、なんていうか、こう、大人の女性って感じなんですよね。

 あたしみたいにアンバランスな感じじゃないっていうか。

 あたしも大きくなれば先輩たちのように大人の女性って感じになれるんでしょうか?

 なれるといいんですけど……。

 そんなことを考えていると、さっそくお客さんが三人やってきました。皆さんロイヤルブルーのブレザーにライトブルーのリボンタイをしているので、普通科の二年生ですね。

「いらっしゃいませ~」
「い、いらっしゃいませ」

 リリアちゃんはすごく明るい声と笑顔でお客さんを出迎えました。あたしも教わったとおりにしましたけど、上手くできてたでしょうか?

「三名様ですね。こちらのお席にどうぞ」

 てきぱきとリリアちゃんが席に案内します。

 すごい。リリアちゃん、なんだかとっても手慣れています。

 あ、またお客さんが二人入ってきました。ダークグレーのジャケットにグリーンのネクタイをしているので、従魔科の三年生ですね。

「ほら、ローザ。お客さんだぜ」
「あ、はい。い、いらっしゃいませ」

 あたしは急いでお客さんのところに行きます。

「こ、こちらへどうぞ」
「え……」
「あ、ああ。ありがとう……」

 あれれ? なんだか様子がおかしいような?

 なんだかぼうっとしている感じですけど……。

「あ、えっと、こちらの席にどうぞ」
「ああ」
「……」

 えっと? 何か調子でも悪いんでしょうか?

 なんだかちょっと顔が赤いような?

 あっと、それよりもメニューを見せて説明しなくちゃいけませんね。

「えっと、こちらがメニューです。お勧めはハトラ産の紅茶と手作りクッキーです」
「「……」」

 二人はぼーっとあたしのほうを見ています。

 あの? メニュー、見てくれませんか?

「えっと、それではご注文が決まりましたら、そちらのベルでお呼びください」
「……ああ」

 どうにも上の空な感じですが、ちゃんとお勧めのメニューも紹介しましたし、もういいですよね?

「それでは、失礼します」
「待ってくれ!」

 あたしはそそくさとテーブルを離れようとしましたが、なんだか呼び止めてしまいました。

「え? あ、は、はい。ご注文はお決まりでしょうか?」
「いや! それよりも君の名前を教えてほしいんだ」

 え? いきなり何を言ってるんですか? この人?

「おい! 待て! 何抜け駆けしてるんだ!」

 え? え? こっちの人も?
「抜け駆けじゃない! こんなに可愛い子がいたなんて知らなかったぞ!」
「それを抜け駆けって言うんだ! ねえ、君。こいつじゃなくて俺に名前を教え――」
「そこまでだぜ!」
「げっ!?」

 ザビーネ先輩が割って入ってきてくれました。

「喫茶店でいきなりナンパとはいい度胸じゃねぇか」
「ザ、ザビーネ!?」
「ひぃっ」

 あれ? お知り合いなんですか?

 あ、そういえばザビーネ先輩も従魔科の三年生でしたね。

「おい。もう下がっていいぜ。こいつらの相手はあたいがしてやるからよ」
「あ、はい。ありがとうございます」

 あたしはそそくさとテーブルから離れました。ザビーネ先輩が二人にこってりとお説教をしていますが、そんな間にまたお客さんが入ってきました。今度は普通科三年の女性が二人です。

 ちらりとリリアちゃんを見ると、紅茶を運んでいるところです。

 これは、あたしが接客しないといけませんね。

「い、いらっしゃいませ」
「あら? かわいい子ね。一年生かしら」
「どの席に座ればいいのかしら?」
「は、はい。こちらのお席へどうぞ」

 あたしは二人を窓際の席に案内します。理由はよく分からないんですけど、女性が来たら窓際に案内するようにって言われているんです。

「あら? 今年は白猫とフクロウがいるのね」
「はい。あの子たちはあたしの従魔なんです」

 理由はよく分からないんですが、ユキとホーちゃんは喫茶店の窓際で日向ぼっことお昼寝をするというお仕事が与えられているんです。

 あ、ピーちゃんは調理室で皿洗い担当です。ピーちゃんは食材の残りから油汚れ、それに捨てる茶葉までなんでも食べてキレイにしてくれますからね。

「あれ? 従魔科に白猫とフクロウを従魔にしている子なんていたっけ?」
「あ! ほら! アレだよ。王太子殿下の」
「ああ! 噂の!」

 そういって二人はあたしの胸をじっとみました。

「え? えっと……」
「ああ、ごめんね。噂どおりだなって」

 ……なんだかろくでもない噂な気がします。

「それじゃあ、お勧めを二つ貰える?」
「は、はい。ハトラ産の紅茶と手作りクッキーを二つですね。しばらくお待ちください」
「は~い」

 軽い感じでそう返事をされました。

 えっと、とにかく注文は取ったので厨房に行かないといけません。

 あたしはやたらと短いスカートがめくれないように注意しつつ、厨房へと急ぐのでした。
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