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第三章
第三章第11話 バーベキューの準備です
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収納を持っていることがバレてしまいましたが、レジーナさんのおかげでどうにかりなってキャンプは続行できることになりました。それと、ヘラジカはあまりにも大きすぎてあたしたちだけでは食べきれないので、一緒に来ている護衛の人たちにもおすそ分けすることにしました。残ったお肉と毛皮と角はあたしが収納に入れて持って帰ります。
お肉の他にネダさんとリリアちゃんが釣ってくれたお魚と、ヴィーシャさんとレジーナさんが採ってきてくれたキノコ、それから運んできたお野菜を焼いて食べるんです。
……あれ? あのキノコは?
あたしは二人が採ってきてくれたキノコの中になんとなく見覚えのあるものが混じっているのに気が付きました。
あれ、どこで見たんでしたっけ?
うーん?
思い出せません。えっと、ここは鑑定先生の出番ですね。
あたしはすぐにそのキノコを鑑定しました。
────
名前:ツキヨタケ
説明:毒キノコ。暗闇で青白く発光する
────
「あっ!」
あたしは思わず声を上げました。そうでした。これは森でサバイバルしていたときに食べられないからってパスしていたキノコでした。
「どうしたの? ローザちゃん」
「えっと、毒キノコが混ざっているんです。これ、食べられないやつです」
「まあ、そうでしたの? てっきりヒラタケだと思いましたわ」
「そうなんだ。すごいね、ローザ。私の採ってきたやつは大丈夫かな?」
「えっと……」
あたしはザルの上にあるキノコをひとつずつチェックしていきます。するとなんと、ものすごい量の毒キノコが混ざっていました。
「あの、これと、これと、これと、あとここからここまで全部毒キノコです」
「あ、あはは。そうなんだ。失敗しちゃったなぁ」
「まあ、そうですの? これはナメコでこっちはシメジじゃあないんですの?」
「このナメコに見えるのはニガクリタケで、こっちのシメジに見えるのはクサウラベニタケっていう毒キノコです」
「あら、ローザ。詳しいんですのね?」
「はい。あたし、これでも冒険者ですから。森の中でキノコを食べることだってあるんです」
本当はサバイバルしていたときによく食べていたんですけどね。
「ああ、冒険者というのはそこまで詳しいんですのね。わたくし、てっきりローザが【鑑定】まで使えるのかと思いましたわ」
「!?」
「魔法が使えるんですもの。もう何が出てきたってわたくし、驚きませんわ」
え? え? どうしてレジーナさん、そんなことまで分かるんでしょうか?
「……ってローザ? もしかして、本当に【鑑定】なんですの?」
「え? あ、い、いえ。そ、そんなわけないじゃないですか」
「……まあ、それもそうですわね。いくらなんでも【収納】と【鑑定】が両方使えるなんて、ありえませんわね」
「そ、そうですよ。ぼ、冒険者はきっとこのくらい見分けられます」
「まあ、いいですわ。それよりも、毒キノコは捨ててバーベキューを始めますわよ。さ、ローザ。着火してくださる?」
「はい」
あたしは目の前に置かれた薪に火をつけます。するとよく乾いた薪はあっという間に燃え上がりました。
「うーん。すごいなぁ。やっぱり火属性は便利だね」
えへへ。このくらいはサバイバルをしていたときに毎日やっていましたからね。
「それにしても、見事ですわね」
「本当に詠唱していませんでしたの」
「魔法、いいなぁ」
なんだか、すごく褒められて照れくさいです。
そう思ってちらりと視線を外すと、なんと遠くのほうからドレスク先輩が望遠鏡を片手にこちらを覗いています。
「え? ドレスク先輩!?」
「エルネスト様がどうしたんですの?」
「あの、あそこから望遠鏡でこっちを見てるんです」
「……」
レジーナさんはこめかみに手を当てると大きなため息を吐きました。
「もう、あれはあれで病気ですわね。ローザ、もし良かったらエルネスト様の好奇心を満たしてやってくれないかしら?」
「え?」
言われた瞬間、あの目だけ笑っていない恐ろしい顔が脳裏をよぎります。
「わたくしが隣について、あの顔を見ないで済むようにしてあげますわ。エルネスト様、きっと満足するまでずっとローザを観察し続けますわよ?」
「うえぇ」
あの顔を見るのは嫌ですが、遠巻きに監視されるのはもっと嫌です。
それにレジーナさんが一緒にいてくれるなら大丈夫、ですかね?
はい。そうですよ。きっとそのはずです。
だって、レジーナさんはあたしがイングリーさんに嫌がらせをされていたときも公平に見てくれていました。それに王太子様からもちゃんと守ってくれています。
「えっと、はい。その、お願いします」
「ええ。わたくしにお任せなさい。ちゃんと守って差し上げますわ。それじゃあ、三人は調理を頼みますわ」
「任されましたの」
「はい。かしこまりました」
「わかりました。ローザちゃん、がんばってね」
リリアちゃんがそう言って心配そうにあたしを見つめてきました。そんなリリアちゃんを安心させるため、笑顔で返事をします。
「はい。がんばります」
「それじゃあローザ、行きますわよ」
こうして三人にバーベキューの調理を任せると、レジーナさんの後についてドレスク先輩のほうへと向かうのでした。
お肉の他にネダさんとリリアちゃんが釣ってくれたお魚と、ヴィーシャさんとレジーナさんが採ってきてくれたキノコ、それから運んできたお野菜を焼いて食べるんです。
……あれ? あのキノコは?
あたしは二人が採ってきてくれたキノコの中になんとなく見覚えのあるものが混じっているのに気が付きました。
あれ、どこで見たんでしたっけ?
うーん?
思い出せません。えっと、ここは鑑定先生の出番ですね。
あたしはすぐにそのキノコを鑑定しました。
────
名前:ツキヨタケ
説明:毒キノコ。暗闇で青白く発光する
────
「あっ!」
あたしは思わず声を上げました。そうでした。これは森でサバイバルしていたときに食べられないからってパスしていたキノコでした。
「どうしたの? ローザちゃん」
「えっと、毒キノコが混ざっているんです。これ、食べられないやつです」
「まあ、そうでしたの? てっきりヒラタケだと思いましたわ」
「そうなんだ。すごいね、ローザ。私の採ってきたやつは大丈夫かな?」
「えっと……」
あたしはザルの上にあるキノコをひとつずつチェックしていきます。するとなんと、ものすごい量の毒キノコが混ざっていました。
「あの、これと、これと、これと、あとここからここまで全部毒キノコです」
「あ、あはは。そうなんだ。失敗しちゃったなぁ」
「まあ、そうですの? これはナメコでこっちはシメジじゃあないんですの?」
「このナメコに見えるのはニガクリタケで、こっちのシメジに見えるのはクサウラベニタケっていう毒キノコです」
「あら、ローザ。詳しいんですのね?」
「はい。あたし、これでも冒険者ですから。森の中でキノコを食べることだってあるんです」
本当はサバイバルしていたときによく食べていたんですけどね。
「ああ、冒険者というのはそこまで詳しいんですのね。わたくし、てっきりローザが【鑑定】まで使えるのかと思いましたわ」
「!?」
「魔法が使えるんですもの。もう何が出てきたってわたくし、驚きませんわ」
え? え? どうしてレジーナさん、そんなことまで分かるんでしょうか?
「……ってローザ? もしかして、本当に【鑑定】なんですの?」
「え? あ、い、いえ。そ、そんなわけないじゃないですか」
「……まあ、それもそうですわね。いくらなんでも【収納】と【鑑定】が両方使えるなんて、ありえませんわね」
「そ、そうですよ。ぼ、冒険者はきっとこのくらい見分けられます」
「まあ、いいですわ。それよりも、毒キノコは捨ててバーベキューを始めますわよ。さ、ローザ。着火してくださる?」
「はい」
あたしは目の前に置かれた薪に火をつけます。するとよく乾いた薪はあっという間に燃え上がりました。
「うーん。すごいなぁ。やっぱり火属性は便利だね」
えへへ。このくらいはサバイバルをしていたときに毎日やっていましたからね。
「それにしても、見事ですわね」
「本当に詠唱していませんでしたの」
「魔法、いいなぁ」
なんだか、すごく褒められて照れくさいです。
そう思ってちらりと視線を外すと、なんと遠くのほうからドレスク先輩が望遠鏡を片手にこちらを覗いています。
「え? ドレスク先輩!?」
「エルネスト様がどうしたんですの?」
「あの、あそこから望遠鏡でこっちを見てるんです」
「……」
レジーナさんはこめかみに手を当てると大きなため息を吐きました。
「もう、あれはあれで病気ですわね。ローザ、もし良かったらエルネスト様の好奇心を満たしてやってくれないかしら?」
「え?」
言われた瞬間、あの目だけ笑っていない恐ろしい顔が脳裏をよぎります。
「わたくしが隣について、あの顔を見ないで済むようにしてあげますわ。エルネスト様、きっと満足するまでずっとローザを観察し続けますわよ?」
「うえぇ」
あの顔を見るのは嫌ですが、遠巻きに監視されるのはもっと嫌です。
それにレジーナさんが一緒にいてくれるなら大丈夫、ですかね?
はい。そうですよ。きっとそのはずです。
だって、レジーナさんはあたしがイングリーさんに嫌がらせをされていたときも公平に見てくれていました。それに王太子様からもちゃんと守ってくれています。
「えっと、はい。その、お願いします」
「ええ。わたくしにお任せなさい。ちゃんと守って差し上げますわ。それじゃあ、三人は調理を頼みますわ」
「任されましたの」
「はい。かしこまりました」
「わかりました。ローザちゃん、がんばってね」
リリアちゃんがそう言って心配そうにあたしを見つめてきました。そんなリリアちゃんを安心させるため、笑顔で返事をします。
「はい。がんばります」
「それじゃあローザ、行きますわよ」
こうして三人にバーベキューの調理を任せると、レジーナさんの後についてドレスク先輩のほうへと向かうのでした。
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