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第三章
第三章第5話 レジーナさんがやってきました
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鍛練を終えたヴィーシャさんと一緒にお庭を散歩していると、なんだかお屋敷のほうが慌ただしくなってきました。
何かあったんでしょうか?
「お客様。お嬢様が到着なさいます。どうぞお戻りください」
あ、なるほど。そういうことですね。レジーナさんがいないとは思っていましたが、どうやらまだ到着していなかったみたいです。
「さ、こちらへ」
「はい」
あたしたちはメイドさんに連れられて建物の入口へと向かいました。
するとそこにはすでにメイドさんと執事さん、それに騎士さんたちまでずらりと並んでお出迎えの準備をしています。
「お客様はどうぞあちらの応接室でお待ちください」
そうしてあたしたちはずらりと並んだ皆さんの後ろを通ってお屋敷の中へと案内されましたが、中に入ろうとした瞬間に門が開いてとても豪華な馬車が入ってきました。
「あ、もう来ちゃいました?」
「みたいだね」
「だったらここでお出迎えします?」
「いえ、お客様にそのようなことは……」
「「「お帰りなさいませ。お嬢様」」」
そんなことを話している間に馬車からレジーナさんが出てきてしまいました。
「ええ。皆も元気そうで何よりですわ。それよりも、ローザたちはもう着いているかしら?」
「はい。皆様すでにご到着なさっております」
「そう。あら? どうしてわたくしの客であるローザが出迎えの列にいるんですの? 失礼ではなくて?」
すっと目を細めたレジーナさんの声は冷たく、執事の人は少したじたじになっています。
「あ、そ、それは……」
「それにリリアとヴィーシャまでいますわね」
そう言ってレジーナさんがあたしたちのところに歩いてきました。
「あなたたちはわたくしの使用人ではなくてよ? このようなことをする必要はありませんわ。誰ですの? こんな失礼なことを命じたのは? まさかパウラですの? いえ、あなたがそのようなことをするとはとても思えませんわね」
「はい。そのようなことはしておりません」
「じゃあ、誰ですの?」
「それは……」
「あ、あの。ごめんなさい。あたしたち、お庭の散歩をしていたら戻ってくるのが遅くなってしまって。それで、その、中に入ろうとしたらちょうどレジーナ様が帰ってきて。その、だったらここでご挨拶しようかなって……」
あたしがなんとか状況を説明すると、レジーナさんは困ったような表情を浮かべました。
「そうでしたの。それでしたら挨拶など後でよかったんですのよ?」
「あ、えっと……」
「でも、わたくしの家の別荘を気に入ってもらえたなら何よりですわ。さ、お入りなさい」
レジーナさんはそう言って中に入るとあたしたちを招き入れてくれたのでした。
◆◇◆
応接室に入り、ふかふかのソファーに座ったあたしたちはレジーナさんとお話をしています。そこでヴィーシャさんの鍛練の話になったので、あたしとも模擬戦をしたという話をしました。
「そう。ロバートがそんなことを……」
レジーナさんが少し険しい顔をしています。
「あ、でもロバートさんはあたしたちを護衛するためにどのくらいの力があるのかを知りたかったみたいで……」
あたしがそう言うと、レジーナさんは呆れたような表情になりました。
「ローザ、あなたはロバートの護衛対象ですのよ? ローザも冒険者なのだからわかるはずですわ。護衛依頼を受けた冒険者が、護衛対象に模擬戦を挑むなどあり得ないのではなくて? 護衛対象が誰であろうとも、護衛対象の手を煩わせずに守り切るのが護衛の務めですわよ」
「あ……」
言われてみればそうですね。
「わざわざ怪我をするかもしれないようなことをする必要などありませんわ。きっと、ローザが決闘で戦ったという話を聞いて試したくなったのでしょうね。本当にあの男は……」
そういってレジーナさんは額に手を当てていかにも呆れたといった表情を浮かべます。
「あ、でも、その、怪我もしなかったですし……」
「ええ。それは何よりでしたわ。ロバートにはきつく言い聞かせておくから、どうかそれで失礼を許してくださる?」
「あ、そんな。失礼だなんて。あの、あたし、全然気にしてませんから」
「ふふ。そう。ありがとう」
レジーナさんが笑顔を浮かべてそう言いました。
「あの、レジーナ様」
「何かしら? リリア」
「あたしたちの他に、誰か来るんですか?」
「明日、わたくしの親友のネダが来ますわ。あとは王太子殿下が来たいと仰っていましたが、きっぱりお断りしましたわ」
「え?」
「だって、あんなに胸ばかりジロジロ見られたら落ち着けませんもの。去年までは毎年ご招待していましたけれど、今年は女だけで楽しみましょう?」
「は、はい」
えっと、王太子様を無下にしちゃって大丈夫なんでしょうか?
もしかしてこの国では、あたしの育ったベルーシとは違ってそこまで身分のことを気にしなくてもいいんでしょうか?
何かあったんでしょうか?
「お客様。お嬢様が到着なさいます。どうぞお戻りください」
あ、なるほど。そういうことですね。レジーナさんがいないとは思っていましたが、どうやらまだ到着していなかったみたいです。
「さ、こちらへ」
「はい」
あたしたちはメイドさんに連れられて建物の入口へと向かいました。
するとそこにはすでにメイドさんと執事さん、それに騎士さんたちまでずらりと並んでお出迎えの準備をしています。
「お客様はどうぞあちらの応接室でお待ちください」
そうしてあたしたちはずらりと並んだ皆さんの後ろを通ってお屋敷の中へと案内されましたが、中に入ろうとした瞬間に門が開いてとても豪華な馬車が入ってきました。
「あ、もう来ちゃいました?」
「みたいだね」
「だったらここでお出迎えします?」
「いえ、お客様にそのようなことは……」
「「「お帰りなさいませ。お嬢様」」」
そんなことを話している間に馬車からレジーナさんが出てきてしまいました。
「ええ。皆も元気そうで何よりですわ。それよりも、ローザたちはもう着いているかしら?」
「はい。皆様すでにご到着なさっております」
「そう。あら? どうしてわたくしの客であるローザが出迎えの列にいるんですの? 失礼ではなくて?」
すっと目を細めたレジーナさんの声は冷たく、執事の人は少したじたじになっています。
「あ、そ、それは……」
「それにリリアとヴィーシャまでいますわね」
そう言ってレジーナさんがあたしたちのところに歩いてきました。
「あなたたちはわたくしの使用人ではなくてよ? このようなことをする必要はありませんわ。誰ですの? こんな失礼なことを命じたのは? まさかパウラですの? いえ、あなたがそのようなことをするとはとても思えませんわね」
「はい。そのようなことはしておりません」
「じゃあ、誰ですの?」
「それは……」
「あ、あの。ごめんなさい。あたしたち、お庭の散歩をしていたら戻ってくるのが遅くなってしまって。それで、その、中に入ろうとしたらちょうどレジーナ様が帰ってきて。その、だったらここでご挨拶しようかなって……」
あたしがなんとか状況を説明すると、レジーナさんは困ったような表情を浮かべました。
「そうでしたの。それでしたら挨拶など後でよかったんですのよ?」
「あ、えっと……」
「でも、わたくしの家の別荘を気に入ってもらえたなら何よりですわ。さ、お入りなさい」
レジーナさんはそう言って中に入るとあたしたちを招き入れてくれたのでした。
◆◇◆
応接室に入り、ふかふかのソファーに座ったあたしたちはレジーナさんとお話をしています。そこでヴィーシャさんの鍛練の話になったので、あたしとも模擬戦をしたという話をしました。
「そう。ロバートがそんなことを……」
レジーナさんが少し険しい顔をしています。
「あ、でもロバートさんはあたしたちを護衛するためにどのくらいの力があるのかを知りたかったみたいで……」
あたしがそう言うと、レジーナさんは呆れたような表情になりました。
「ローザ、あなたはロバートの護衛対象ですのよ? ローザも冒険者なのだからわかるはずですわ。護衛依頼を受けた冒険者が、護衛対象に模擬戦を挑むなどあり得ないのではなくて? 護衛対象が誰であろうとも、護衛対象の手を煩わせずに守り切るのが護衛の務めですわよ」
「あ……」
言われてみればそうですね。
「わざわざ怪我をするかもしれないようなことをする必要などありませんわ。きっと、ローザが決闘で戦ったという話を聞いて試したくなったのでしょうね。本当にあの男は……」
そういってレジーナさんは額に手を当てていかにも呆れたといった表情を浮かべます。
「あ、でも、その、怪我もしなかったですし……」
「ええ。それは何よりでしたわ。ロバートにはきつく言い聞かせておくから、どうかそれで失礼を許してくださる?」
「あ、そんな。失礼だなんて。あの、あたし、全然気にしてませんから」
「ふふ。そう。ありがとう」
レジーナさんが笑顔を浮かべてそう言いました。
「あの、レジーナ様」
「何かしら? リリア」
「あたしたちの他に、誰か来るんですか?」
「明日、わたくしの親友のネダが来ますわ。あとは王太子殿下が来たいと仰っていましたが、きっぱりお断りしましたわ」
「え?」
「だって、あんなに胸ばかりジロジロ見られたら落ち着けませんもの。去年までは毎年ご招待していましたけれど、今年は女だけで楽しみましょう?」
「は、はい」
えっと、王太子様を無下にしちゃって大丈夫なんでしょうか?
もしかしてこの国では、あたしの育ったベルーシとは違ってそこまで身分のことを気にしなくてもいいんでしょうか?
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