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第二章
第77話 予想外の展開です
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「さあ、このゴーレムはいくらでも増えますわよ? 死なないうちに降参することですわね」
二体に増えたゴーレムの後ろからバラサさんが勝ち誇っています。口元にはいつもどおり意地の悪い笑みを浮かべていて、本当に腹立たしいです。
こんなずるくて卑怯な人に負けるなんて、絶対ダメです。
それなら倒しても増えるんだった、バラサさんをゴーレムごと撃ち抜いちゃえば……。
あ、でもそこまでやったらバラサさんが死んでしまうかもしれません。
やられたのは嫌がらせだけですから、殺してしまうのはやりすぎな気もします。
あ! でも階段から落とされたのは下手したら死んでいたかもしれません。
だったら……あ、でも……。
「ミャーッ」
あっと。危ない。ユキが声を注意してくれたおかげで助かりました。
あと少しでゴーレムの腕が届く位置まで近づかれてしまうところでした。
何とか後ろに下がって距離をとるとバラサさんの足を狙って炎弾を発射します。
ですが、さすがに動きながらだとまるでコントロールがつきません。
かなり上に向かって撃ってしまい、ツェツィーリエさんが張ってくれた結界にぶつかりました。
すると「ピシィィィィィィィッ!」というものすごい音がして、それからピキピキというまるでガラスにひびが入っていくような音がしました。
あ、あれれ?
ちらりと観客席を見ると、ツェツィーリエさんが大慌てて何か魔法を掛けています。それに他の先生や公子様、レジーナさんも目を丸くしています。
あ、あの目の笑っていないドレスク先輩は逆に面白いものを見たと言わんばかりに目を輝かせていますね。公子様が近づこうとするドレスク先輩を掴んで前に行こうとするのを止めています。
立会人の王太子様は……結界を見て少し驚いた様子ですがすぐにあたしに視線を戻しました。
……また胸を見てるんじゃないでしょうね?
最後にバラサさんですが……結界を見て顔が引きつっています。
次の瞬間でした。
ゴスン。
何か鈍い音がし、いきなりバラサさんが崩れ落ちました。
「えっ?」
何が起きたのかさっぱり分かりませんが、バラサさんは地面に突っ伏したまま動きません。すると、そんなバラサさんの後頭部にホーちゃんが舞い降りてきました。
「ホー!」
ホーちゃんはいかにも誇らしげに片方の翼を上げるとそう言いました。
え? もしかしてホーちゃん、空中で隙を窺っていてくれたんですか?
「ホーちゃん! ありがとう!」
あたしはホーちゃんに駆け寄ろうとしましたが、そのあたしの前にゴーレムが立ちはだかりました。
どうやらこのゴーレム。バラサさんがやられても自分で動くようです。ということは、これを倒さないとの勝負は相討ちということでしょうか?
「勝負あり! 勝者、ローザ嬢!」
そうではなかったようです。
あれ? でもこの状況、どうしたら?
「ローザ嬢! 下がれ! 従魔も戻せ! 学園長!」
王太子様がかなり慌てた様子で次々と指示を出していきます。
「は、はい。戻って!」
あたしはユキたち全員を戻らせると王太子様は剣を抜き、まるであたしを守るかのようにあたしとゴーレムの間に割って入ってくれました。
あ、あれれ? この人、胸にしか興味がない人だと思ってましたけど意外とかっこ……いえ、そんなことはないですね。マイナス100点だったのがマイナス90点になったくらいです。
「生徒の皆さん。先生の誘導に従い、すぐに避難してください」
「え?」
いきなり学園長先生がそんな指示を出しました。
どういうことなんでしょうか?
わけがわからずにいると、王太子様があたしに背を向けたまま教えてくれました。
「ローザ。よく聞け。あのゴーレムの術者はあいつではない」
「ええっ!?」
「ゴーレムというのはな。術者の魔力供給が途絶えれば機能が停止するのだ」
あ、そういう仕組みだったんですね。
「だから、あのゴーレムは他の術者の魔力で動いていることは間違いない。だが、その目的がわからん」
「目的? バラサさんを勝たせることじゃないんですか?」
「……違う。そうであればもうゴーレムを止めているはずだ。もうすでに負けは確定しているのだからな。勝たせるのが目的ならこの状況で術者が別にいることをバラす理由はない」
言われてみれば!
たしかにそうですね。
って、あれ? あたし、王太子様と普通に話せてます。
もしかすると、王太子様がこっちを見ていなければ話せるのかもしれません。
「いいか。ここでまずやるべきことは時間稼ぎだ。生徒は教師が上手く避難させるだろう。そうすれば後はオレたち生徒会と教師であれを止めるだけだ」
「あ、あの……あたしも避難したほうが?」
「術者の狙いはお前の可能性もあるのだぞ? お前を追って外に行かれては手間だ」
「ええっ!?」
どうしてあたしなんかを? もしかしてレオシュかオーナー様の追手でしょうか?
「可能性は……ええい。話は後だ!」
襲い掛かってきたゴーレムを王太子様が一刀両断しました。
きれいに左右にパカリと分かれたゴーレムですが、すぐに復活して二体に分裂しました。
「クソ! これじゃあキリがない」
王太子様は悪態をつくとゆっくりと警戒しながら距離を取ります。
そんな私たちのほうへ二体に分裂したうちの一体がゆっくりと歩き始めました。
もう一体はなんとバラサさんのほうへと近づいていき、王太子様は焦ったような声を出します。
「なっ!? まずい!」
そしてゴーレムは拳を大きく振り上げたのでした。
============
次回更新は通常どおり、2021/06/26 (土) 20:00 を予定しております。
二体に増えたゴーレムの後ろからバラサさんが勝ち誇っています。口元にはいつもどおり意地の悪い笑みを浮かべていて、本当に腹立たしいです。
こんなずるくて卑怯な人に負けるなんて、絶対ダメです。
それなら倒しても増えるんだった、バラサさんをゴーレムごと撃ち抜いちゃえば……。
あ、でもそこまでやったらバラサさんが死んでしまうかもしれません。
やられたのは嫌がらせだけですから、殺してしまうのはやりすぎな気もします。
あ! でも階段から落とされたのは下手したら死んでいたかもしれません。
だったら……あ、でも……。
「ミャーッ」
あっと。危ない。ユキが声を注意してくれたおかげで助かりました。
あと少しでゴーレムの腕が届く位置まで近づかれてしまうところでした。
何とか後ろに下がって距離をとるとバラサさんの足を狙って炎弾を発射します。
ですが、さすがに動きながらだとまるでコントロールがつきません。
かなり上に向かって撃ってしまい、ツェツィーリエさんが張ってくれた結界にぶつかりました。
すると「ピシィィィィィィィッ!」というものすごい音がして、それからピキピキというまるでガラスにひびが入っていくような音がしました。
あ、あれれ?
ちらりと観客席を見ると、ツェツィーリエさんが大慌てて何か魔法を掛けています。それに他の先生や公子様、レジーナさんも目を丸くしています。
あ、あの目の笑っていないドレスク先輩は逆に面白いものを見たと言わんばかりに目を輝かせていますね。公子様が近づこうとするドレスク先輩を掴んで前に行こうとするのを止めています。
立会人の王太子様は……結界を見て少し驚いた様子ですがすぐにあたしに視線を戻しました。
……また胸を見てるんじゃないでしょうね?
最後にバラサさんですが……結界を見て顔が引きつっています。
次の瞬間でした。
ゴスン。
何か鈍い音がし、いきなりバラサさんが崩れ落ちました。
「えっ?」
何が起きたのかさっぱり分かりませんが、バラサさんは地面に突っ伏したまま動きません。すると、そんなバラサさんの後頭部にホーちゃんが舞い降りてきました。
「ホー!」
ホーちゃんはいかにも誇らしげに片方の翼を上げるとそう言いました。
え? もしかしてホーちゃん、空中で隙を窺っていてくれたんですか?
「ホーちゃん! ありがとう!」
あたしはホーちゃんに駆け寄ろうとしましたが、そのあたしの前にゴーレムが立ちはだかりました。
どうやらこのゴーレム。バラサさんがやられても自分で動くようです。ということは、これを倒さないとの勝負は相討ちということでしょうか?
「勝負あり! 勝者、ローザ嬢!」
そうではなかったようです。
あれ? でもこの状況、どうしたら?
「ローザ嬢! 下がれ! 従魔も戻せ! 学園長!」
王太子様がかなり慌てた様子で次々と指示を出していきます。
「は、はい。戻って!」
あたしはユキたち全員を戻らせると王太子様は剣を抜き、まるであたしを守るかのようにあたしとゴーレムの間に割って入ってくれました。
あ、あれれ? この人、胸にしか興味がない人だと思ってましたけど意外とかっこ……いえ、そんなことはないですね。マイナス100点だったのがマイナス90点になったくらいです。
「生徒の皆さん。先生の誘導に従い、すぐに避難してください」
「え?」
いきなり学園長先生がそんな指示を出しました。
どういうことなんでしょうか?
わけがわからずにいると、王太子様があたしに背を向けたまま教えてくれました。
「ローザ。よく聞け。あのゴーレムの術者はあいつではない」
「ええっ!?」
「ゴーレムというのはな。術者の魔力供給が途絶えれば機能が停止するのだ」
あ、そういう仕組みだったんですね。
「だから、あのゴーレムは他の術者の魔力で動いていることは間違いない。だが、その目的がわからん」
「目的? バラサさんを勝たせることじゃないんですか?」
「……違う。そうであればもうゴーレムを止めているはずだ。もうすでに負けは確定しているのだからな。勝たせるのが目的ならこの状況で術者が別にいることをバラす理由はない」
言われてみれば!
たしかにそうですね。
って、あれ? あたし、王太子様と普通に話せてます。
もしかすると、王太子様がこっちを見ていなければ話せるのかもしれません。
「いいか。ここでまずやるべきことは時間稼ぎだ。生徒は教師が上手く避難させるだろう。そうすれば後はオレたち生徒会と教師であれを止めるだけだ」
「あ、あの……あたしも避難したほうが?」
「術者の狙いはお前の可能性もあるのだぞ? お前を追って外に行かれては手間だ」
「ええっ!?」
どうしてあたしなんかを? もしかしてレオシュかオーナー様の追手でしょうか?
「可能性は……ええい。話は後だ!」
襲い掛かってきたゴーレムを王太子様が一刀両断しました。
きれいに左右にパカリと分かれたゴーレムですが、すぐに復活して二体に分裂しました。
「クソ! これじゃあキリがない」
王太子様は悪態をつくとゆっくりと警戒しながら距離を取ります。
そんな私たちのほうへ二体に分裂したうちの一体がゆっくりと歩き始めました。
もう一体はなんとバラサさんのほうへと近づいていき、王太子様は焦ったような声を出します。
「なっ!? まずい!」
そしてゴーレムは拳を大きく振り上げたのでした。
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次回更新は通常どおり、2021/06/26 (土) 20:00 を予定しております。
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