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第二章
第64話 お腹が痛いです
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「ううっ……」
「ほら、ローザちゃん。頑張ろう?」
あたしはリリアちゃんに促されて何とか学園の中の廊下を王太子様がいるという教室へと向かっています。
本当はヴィーシャさんにも一緒に来て欲しかったんですが、剣術部の昼練があるそうで断られてしまいました。でも、こうしてリリアちゃんが一緒に来てくれているだけでもまだ良かったと思います。
きっと、あたし一人だったら逃げ出していたかもしません。
ただ、とても友好的とは言えなかったあの王太子様の態度を思うと一体何をされるか分かりません。もう、ストレスでお腹がきりきりと痛みます。
それから王太子様の教室についたあたしはドアをノックすると教室の扉を開けました。
リリアちゃんに文字通り背中を押してもらって何とか教室の中に入ると王太子様のところへ歩いていくと、昨日リリアちゃんに教えてもらったとおりにスカートの端をちょこんとつまんで膝を折るというよく分からないポーズを取りました。
「さすがに礼儀を勉強してきたようだな。その後ろの女は友達か?」
「は、はい。そうです」
「そうか。じゃあお前も一緒に来い。おい、行くぞ」
王太子様はそう言うとそのままずかずかと歩きだしました。
え? え?
「ほら、ローザちゃん。早くついて行かなきゃ」
「う、うん」
あたしたちは慌てて王太子様を追いかけたのでした。
◆◇◆
あたしたちは食堂へとやってきました。いつもあたしたちは生徒でごった返している広いエリアで食べているのですが、王太子様は脇の階段を登っていくのでその後を追います。
その階段を登った先にはゆったりしたスペースがあって見るからに高級そうな内装の食堂がそこにはありました。
あれ? ここ何ですか?
説明されたこともないですよ?
「おい。呆けてないで早く来い」
「ひぁっ。はいぃ」
王太子様にそう言われて思わず変な声が出てしまいました。リリアちゃんはあたしの手を握っていてくれますがあたしはもう緊張していて心臓がバクバクです。
そしてそのまま奥の個室に入ると、そこには何と昨日の突然やってきた先輩と、それから王太子様と一緒に歩いていた男の人が座っていました。
「おい、エルネスト。連れてきたぞ」
「ひっ」
「そう怯えないでください。さ、ローザ嬢。どうぞ」
ろ、ろーざ、じょう?
あたしは全身の肌が粟立つのを感じます。
「エルネスト。怖がられているぞ。平民の女の子に突然そんなことを言っても怖がられるだけだ」
「……それもそうですね」
青い瞳の人に言われてエルネストさんはそう同意しましたが、目はどう見ても納得していなさそうです。
これからあたしは何をされるんでしょうか?
怖いので早く終わってほしいです。それで帰ってユキたちに癒されたいです。
「おい。名を名乗れ」
「ひっ」
「王太子様、エルネスト様、それと王太子様のご友人のお方、はじめまして。あたしは普通科一年のリリアと申します。こちらのローザの友人です」
そう言うとリリアちゃんがあの礼儀のポーズをして、そしてあたしにも挨拶をするように促しました。
「あ、え、えっと。ローザ、です。その、はじめまして。えっと、普通科の一年で、その、オーデルラーヴァから来ました」
あたしもリリアちゃんを見習って窮屈な礼儀のポーズをします。
「ああ。俺はアンドレイ・マルダキア。我がマルダキア魔法王国の王太子だ。そしてこいつはエルネスト。ドレスク侯爵家の跡取りだ。それで、こいつはレフ・カルリア。カルリア公国の第二公子だ」
この人は本当に偉そうな態度です。あ、実際に偉いんでしたっけ。
はぁ。
「ローザ嬢にリリア嬢。はじめまして。エルネスト・ドレスクです」
ドレスク先輩の声を聞いてあたしは背筋がぞわりとなります。
ごめんなさい。あたし、どうもこの人は生理的に無理っぽいです。
「私はレフ・カルリアと申します。美しいお嬢さんお二人とお会いできて光栄です」
あれ? この人昨日はもっと冷たそうな感じでしたよね?
そして印象最悪な二人の後だったせいか、こっちの人は何だか普通に王子様っぽい感じで好印象です。
だって、声を聞いても怖くないですし鳥肌も立たなければ背筋に悪寒も走らないんですよ?
え? 評価基準がおかしい、ですか?
仕方ないじゃないですか。だって、あたしにとって身分の高い男の人の代表はあのレオシュと第一隊の取り巻き連中なんですから。
それに加えてこの国で会った偉い人は笑っているのに目が笑っていなくて怖いこのドレスク先輩と、横柄なうえに本当にあたしをどうにでもできる権力者でいつも胸に視線が固定されるこの王太子様ですよ?
なんか、こう、普通に話をしてくれる偉い人ってすごく貴重な気がするんですけど気のせいでしょうか?
「よし、では座っていいぞ」
王太子様に許されたのであたし達は着席しました。
これからランチなのですが、あたしは緊張できりきりとお腹が痛んでそれどころではありません。
ああ、逃げ出したいです。どうしてこんなことになっちゃったんでしょうか?
「ほら、ローザちゃん。頑張ろう?」
あたしはリリアちゃんに促されて何とか学園の中の廊下を王太子様がいるという教室へと向かっています。
本当はヴィーシャさんにも一緒に来て欲しかったんですが、剣術部の昼練があるそうで断られてしまいました。でも、こうしてリリアちゃんが一緒に来てくれているだけでもまだ良かったと思います。
きっと、あたし一人だったら逃げ出していたかもしません。
ただ、とても友好的とは言えなかったあの王太子様の態度を思うと一体何をされるか分かりません。もう、ストレスでお腹がきりきりと痛みます。
それから王太子様の教室についたあたしはドアをノックすると教室の扉を開けました。
リリアちゃんに文字通り背中を押してもらって何とか教室の中に入ると王太子様のところへ歩いていくと、昨日リリアちゃんに教えてもらったとおりにスカートの端をちょこんとつまんで膝を折るというよく分からないポーズを取りました。
「さすがに礼儀を勉強してきたようだな。その後ろの女は友達か?」
「は、はい。そうです」
「そうか。じゃあお前も一緒に来い。おい、行くぞ」
王太子様はそう言うとそのままずかずかと歩きだしました。
え? え?
「ほら、ローザちゃん。早くついて行かなきゃ」
「う、うん」
あたしたちは慌てて王太子様を追いかけたのでした。
◆◇◆
あたしたちは食堂へとやってきました。いつもあたしたちは生徒でごった返している広いエリアで食べているのですが、王太子様は脇の階段を登っていくのでその後を追います。
その階段を登った先にはゆったりしたスペースがあって見るからに高級そうな内装の食堂がそこにはありました。
あれ? ここ何ですか?
説明されたこともないですよ?
「おい。呆けてないで早く来い」
「ひぁっ。はいぃ」
王太子様にそう言われて思わず変な声が出てしまいました。リリアちゃんはあたしの手を握っていてくれますがあたしはもう緊張していて心臓がバクバクです。
そしてそのまま奥の個室に入ると、そこには何と昨日の突然やってきた先輩と、それから王太子様と一緒に歩いていた男の人が座っていました。
「おい、エルネスト。連れてきたぞ」
「ひっ」
「そう怯えないでください。さ、ローザ嬢。どうぞ」
ろ、ろーざ、じょう?
あたしは全身の肌が粟立つのを感じます。
「エルネスト。怖がられているぞ。平民の女の子に突然そんなことを言っても怖がられるだけだ」
「……それもそうですね」
青い瞳の人に言われてエルネストさんはそう同意しましたが、目はどう見ても納得していなさそうです。
これからあたしは何をされるんでしょうか?
怖いので早く終わってほしいです。それで帰ってユキたちに癒されたいです。
「おい。名を名乗れ」
「ひっ」
「王太子様、エルネスト様、それと王太子様のご友人のお方、はじめまして。あたしは普通科一年のリリアと申します。こちらのローザの友人です」
そう言うとリリアちゃんがあの礼儀のポーズをして、そしてあたしにも挨拶をするように促しました。
「あ、え、えっと。ローザ、です。その、はじめまして。えっと、普通科の一年で、その、オーデルラーヴァから来ました」
あたしもリリアちゃんを見習って窮屈な礼儀のポーズをします。
「ああ。俺はアンドレイ・マルダキア。我がマルダキア魔法王国の王太子だ。そしてこいつはエルネスト。ドレスク侯爵家の跡取りだ。それで、こいつはレフ・カルリア。カルリア公国の第二公子だ」
この人は本当に偉そうな態度です。あ、実際に偉いんでしたっけ。
はぁ。
「ローザ嬢にリリア嬢。はじめまして。エルネスト・ドレスクです」
ドレスク先輩の声を聞いてあたしは背筋がぞわりとなります。
ごめんなさい。あたし、どうもこの人は生理的に無理っぽいです。
「私はレフ・カルリアと申します。美しいお嬢さんお二人とお会いできて光栄です」
あれ? この人昨日はもっと冷たそうな感じでしたよね?
そして印象最悪な二人の後だったせいか、こっちの人は何だか普通に王子様っぽい感じで好印象です。
だって、声を聞いても怖くないですし鳥肌も立たなければ背筋に悪寒も走らないんですよ?
え? 評価基準がおかしい、ですか?
仕方ないじゃないですか。だって、あたしにとって身分の高い男の人の代表はあのレオシュと第一隊の取り巻き連中なんですから。
それに加えてこの国で会った偉い人は笑っているのに目が笑っていなくて怖いこのドレスク先輩と、横柄なうえに本当にあたしをどうにでもできる権力者でいつも胸に視線が固定されるこの王太子様ですよ?
なんか、こう、普通に話をしてくれる偉い人ってすごく貴重な気がするんですけど気のせいでしょうか?
「よし、では座っていいぞ」
王太子様に許されたのであたし達は着席しました。
これからランチなのですが、あたしは緊張できりきりとお腹が痛んでそれどころではありません。
ああ、逃げ出したいです。どうしてこんなことになっちゃったんでしょうか?
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