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第二章
第58話 オリエンテーションを受けました
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2021/07/24 誤字を修正しました
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どうもこんにちは。ローザです。いよいよ今日から学生生活がスタートです。
というわけで最初の授業であるオリエンテーションを受けるため、指定された大きな教室にやってきました。あたしはヴィーシャさんとリリアちゃんと並んで教室の真ん中の方の席に座っています。
あ、そうそう。リリアちゃんは相変わらずルームメイトのイングリーさんには口も利いてもらえないそうです。
同じ部屋なのに話もしないって、何だかすごい話ですよね。イングリーさんは貴族でお金持ちなんでしょうから、お金を払って上の階のお部屋にすればいいのにって思います。
そのイングリーさんはというと、後ろのほうの席に座っています。クラスで一番偉いらしい公爵令嬢のレジーナさんがそのお友達三人と一緒に並んで座っていて、さらにその隣にイングリーさんが座っている感じです。
しばらくして教室の空席がなくなってきた頃、扉が開いて先生が入ってきました。緑の髪に茶色い瞳の 40 歳くらいの眼鏡を掛けた知的な、それでいて鋭い目つきのおじさんです。
「おはよう、諸君。私はゲラシム・ドレスクだ。諸君の魔術基礎とこのオリエンテーションを担当する。さて、諸君は栄えある魔法学園の一員となったわけだが、誰でも卒業できるわけでないことは知ってのとおりだ」
ゲラシム先生が恐ろしいことを言います。でも聞き取りやすいのにとても威厳のある声で喋っているので、なんだかついつい聞き入ってしまいます。
「魔法学園の生徒諸君のおよそ半数は志半ばで去ることとなる。そこには身分の貴賤は関係ない。特に貴族の諸君! 諸君らは今まで生まれた家で多くの者に守られ、師に恵まれて育ってきたが故、平民の諸君よりも必然的に実力を伸ばせる環境にあった。だが、これからは違う。貴族の諸君は平民の諸君と比べて二年間のアドバンテージを持っているが、三年後はどうなっているかな? 下からの突き上げをバネにさらなる飛躍を遂げることを期待しよう」
ゲラシム先生はそう言うとコツコツと革靴で床を鳴らしながら数歩、教壇の上を歩きます。
「平民の諸君! 諸君らは貴族の諸君のような英才教育なくしてこの場にたどり着いたのだ。言うなれば諸君は才能と可能性の塊だ。今はまだ貴族の諸君と同列に並ぶことはできていないだろうが、それを恥じ入ることはない! 諸君らの成長はこれから始まるのだ。良く学び、良く競い、向上心を持って勉学に励みたまえ。三年間の諸君の成長に期待しよう」
そう言うと先生は再びコツコツと歩いて教卓の前へと戻ってきました。
「さて、それではまずは学年代表を決める必要がある。学年代表は全生徒を取りまとめてもらうリーダーの役目だ。誰かやりたいという強い希望のある者はいるか?」
ゲラシム先生が教室を見回しますが誰も手を上げません。
あたしももちろん立候補なんてしませんよ。
だって、ただでさえ右も左も分からないんですからね。これ以上やることが増えたらパニックになるに決まっています。
「では、レジーナ・マレスティカ君にお願いしよう」
「お引き受けいたしますわ」
レジーナさんが通る声で優雅にそう言いました。
「では、何か困ったことがあればレジーナ君に相談すると良い。副代表を普通科の男子生徒と従魔科の生徒から一名ずつ選び、報告に来るように」
「かしこまりましたわ」
「うむ。それでは今後の授業について説明しよう。一年次の間は普通科と従魔科の授業内容に差はない。貴族の諸君には復習になるだろうが、平民の諸君に指導をしてやりたまえ。指導をするということが諸君のさらなる理解に繋がる」
少しだけ教室内がざわつきました。
「そして、平民の諸君。配布資料にあるとおり、宮廷作法とダンスを学んでもらう」
え? 宮廷作法とダンスですか? それ、絶対魔法と関係ないですよね?
「ふむ。やはり半数以上の諸君は困惑しているようだな。だが、甘い! 学園の卒業生の多くは魔術師団など貴族社会と関わりのある場所に就職するだろう。場合によっては平民の生徒諸君でも貴族家の婿養子や夫人として社交界の仲間入りをすることもあるだろう。もちろん大学に進み教授を目指したとしてもそういったものと無縁でいることはできない。自分には関係ないと甘く見ていたら、将来必ず痛い目を見ることになるぞ?」
そ、そうなんですね。そんなこと想像したこともありませんでした。
でも、あたしはオフェリアさんにちゃんと頑張って偉くなるって約束しましたからね。宮廷作法もダンスも、ちゃんとがんばります。
それに、宮廷作法やダンスなんて孤児院じゃ絶対に学べなかったはずのことですからね。学べるなんてすごくラッキーだと思います。
「さて、それでは今後の授業の説明を始めるぞ」
その後もゲラシム先生は色々なことを説明をしてくれたのでした。
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どうもこんにちは。ローザです。いよいよ今日から学生生活がスタートです。
というわけで最初の授業であるオリエンテーションを受けるため、指定された大きな教室にやってきました。あたしはヴィーシャさんとリリアちゃんと並んで教室の真ん中の方の席に座っています。
あ、そうそう。リリアちゃんは相変わらずルームメイトのイングリーさんには口も利いてもらえないそうです。
同じ部屋なのに話もしないって、何だかすごい話ですよね。イングリーさんは貴族でお金持ちなんでしょうから、お金を払って上の階のお部屋にすればいいのにって思います。
そのイングリーさんはというと、後ろのほうの席に座っています。クラスで一番偉いらしい公爵令嬢のレジーナさんがそのお友達三人と一緒に並んで座っていて、さらにその隣にイングリーさんが座っている感じです。
しばらくして教室の空席がなくなってきた頃、扉が開いて先生が入ってきました。緑の髪に茶色い瞳の 40 歳くらいの眼鏡を掛けた知的な、それでいて鋭い目つきのおじさんです。
「おはよう、諸君。私はゲラシム・ドレスクだ。諸君の魔術基礎とこのオリエンテーションを担当する。さて、諸君は栄えある魔法学園の一員となったわけだが、誰でも卒業できるわけでないことは知ってのとおりだ」
ゲラシム先生が恐ろしいことを言います。でも聞き取りやすいのにとても威厳のある声で喋っているので、なんだかついつい聞き入ってしまいます。
「魔法学園の生徒諸君のおよそ半数は志半ばで去ることとなる。そこには身分の貴賤は関係ない。特に貴族の諸君! 諸君らは今まで生まれた家で多くの者に守られ、師に恵まれて育ってきたが故、平民の諸君よりも必然的に実力を伸ばせる環境にあった。だが、これからは違う。貴族の諸君は平民の諸君と比べて二年間のアドバンテージを持っているが、三年後はどうなっているかな? 下からの突き上げをバネにさらなる飛躍を遂げることを期待しよう」
ゲラシム先生はそう言うとコツコツと革靴で床を鳴らしながら数歩、教壇の上を歩きます。
「平民の諸君! 諸君らは貴族の諸君のような英才教育なくしてこの場にたどり着いたのだ。言うなれば諸君は才能と可能性の塊だ。今はまだ貴族の諸君と同列に並ぶことはできていないだろうが、それを恥じ入ることはない! 諸君らの成長はこれから始まるのだ。良く学び、良く競い、向上心を持って勉学に励みたまえ。三年間の諸君の成長に期待しよう」
そう言うと先生は再びコツコツと歩いて教卓の前へと戻ってきました。
「さて、それではまずは学年代表を決める必要がある。学年代表は全生徒を取りまとめてもらうリーダーの役目だ。誰かやりたいという強い希望のある者はいるか?」
ゲラシム先生が教室を見回しますが誰も手を上げません。
あたしももちろん立候補なんてしませんよ。
だって、ただでさえ右も左も分からないんですからね。これ以上やることが増えたらパニックになるに決まっています。
「では、レジーナ・マレスティカ君にお願いしよう」
「お引き受けいたしますわ」
レジーナさんが通る声で優雅にそう言いました。
「では、何か困ったことがあればレジーナ君に相談すると良い。副代表を普通科の男子生徒と従魔科の生徒から一名ずつ選び、報告に来るように」
「かしこまりましたわ」
「うむ。それでは今後の授業について説明しよう。一年次の間は普通科と従魔科の授業内容に差はない。貴族の諸君には復習になるだろうが、平民の諸君に指導をしてやりたまえ。指導をするということが諸君のさらなる理解に繋がる」
少しだけ教室内がざわつきました。
「そして、平民の諸君。配布資料にあるとおり、宮廷作法とダンスを学んでもらう」
え? 宮廷作法とダンスですか? それ、絶対魔法と関係ないですよね?
「ふむ。やはり半数以上の諸君は困惑しているようだな。だが、甘い! 学園の卒業生の多くは魔術師団など貴族社会と関わりのある場所に就職するだろう。場合によっては平民の生徒諸君でも貴族家の婿養子や夫人として社交界の仲間入りをすることもあるだろう。もちろん大学に進み教授を目指したとしてもそういったものと無縁でいることはできない。自分には関係ないと甘く見ていたら、将来必ず痛い目を見ることになるぞ?」
そ、そうなんですね。そんなこと想像したこともありませんでした。
でも、あたしはオフェリアさんにちゃんと頑張って偉くなるって約束しましたからね。宮廷作法もダンスも、ちゃんとがんばります。
それに、宮廷作法やダンスなんて孤児院じゃ絶対に学べなかったはずのことですからね。学べるなんてすごくラッキーだと思います。
「さて、それでは今後の授業の説明を始めるぞ」
その後もゲラシム先生は色々なことを説明をしてくれたのでした。
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