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第二章
第57話 身分って面倒です
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「ねえねえ、聞いてよローザちゃん」
「どうしたんですか? リリアちゃん」
夕飯を食べに行こうとお向かいのリリアちゃんの部屋をノックすると、リリアちゃんがが出てきて開口一番そう言われました。
どうやらあの元気で明るいリリアちゃんが参っているようです。
「なんだかね。あたしのルームメイトの子、平民とは話しませんって言って出ていっちゃったの。レジーナ様のお友達である自分は平民とは口を利かないって」
「えー、それはすごいですね。この学園では身分は関係ないって言っていたのに」
「ホントだよー」
そう言ってあたしにぎゅーっと抱きついてきました。
それからしばらくするとリリアちゃんはあたしのことを放してヴィーシャさんに自己紹介をしました。
「あ、えっと、ごめんなさい。ローザちゃんのお友達でリリアです」
「あ、ああ。構わないよ。私はヴィクトリア。コドルツィ騎士爵家の娘で愛称はヴィーシャ。よろしく」
「あ、はい。えっと、よろしくお願いします。ヴィーシャ様」
「あはは。様は要らないよ。敬語もね。それ、楽な喋り方じゃないでしょ?」
「あ、そう、だね。うん。じゃあ、よろしく、ヴィーシャ」
「うん。よろしくリリア」
あれ? あたしの時はどうして敬語止めてって言われなかったんでしょうか?
「ねえ、ヴィーシャさん。どうしてあたしの時は敬語を止めてって言わなかったんですか?」
「え? だってその話し方の方が楽そうだったからね。違った?」
「いえ、違わないですけど……」
「それならちょうど良かったでしょ?」
すごいです。ヴィーシャさんとは今日会ったばかりなのによく分かりましたね。
「あ、あたしもそう思ってローザちゃんに敬語をやめてって言わなかったんだよ?」
あれれ? あたしってそんなに分かりやすかったんでしょうか?
「うん。顔にばっちり出るタイプだよ?」
「ひぇっ」
あたしはいきなり心の中で思った疑問を言い当てられて変な声が出てしまいました。
そんなあたしを見て二人が楽しそうに笑っています。
「ははは。ほら、もういいから夕飯を食べに行こう?」
「さんせー。あたし、お腹ぺこぺこだもん」
こうして和やかな雰囲気になったあたし達は女子寮の一階にある食堂へと向かったのでした。
****
夕食を食べたあたし達はそのままあたしとヴィーシャさんの部屋にリリアちゃんを連れてきました。リリアちゃんのルームメイトはそのレジーナ様のところに行ってしまったので部屋に戻っても一人で寂しいのだそうです。
その結果なんですが……。
「あー、ユキちゃーん」
リリアちゃんがユキをもふってはだらしない表情になっています。あたしもユキをもふりたかったのですが仕方ありません。今日はホーちゃんにします。
あたしが撫でてあげるとホーちゃんは気持ちよさそうに目を細めています。
「食堂では話せなかったけど、リリアのルームメイトはイングリー・バラサ男爵令嬢だね。それとレジーナ様はマレスティカ公爵家のご令嬢だよ。ローザも入学式の時にスピーチをしているのを見たよね? 彼女がこの学年で一番身分の高い人で、一学年上の王太子様の婚約者だよ」
え? じゃあこの国の未来の王妃様ってことですか?
じゃあ、それは取り巻きの人達も必死になるわけですね。
「あれ? ローザはイヤそうな顔しているね。興味ないの? 王子様とかお姫様とか」
「あんまり良い印象はないんですよね。何だか、その。こう、権力者って感じで」
「そっか。ああ、そういえばオーデルラーヴァは貴族がいないのに身分差別がかなりひどいって聞いたことがあるね。それに比べたらうちの国はマシだと思うよ。この学園だって、身分は関係ないことになってるしね。もちろん差別をする人はいるから一応、だけど」
「そうですか……」
それにしても、身分って面倒ですよね。どうして身分が低いだけで酷い目に合わなきゃいけないんでしょうか?
「学園の中なら暴言を吐くとか、よほど失礼なことをしなければ大丈夫だよ。それにマナーの授業とかもあるし、そういったところは彼女たちを見習うと良いんじゃないかな。少なくとも先生の目のあるところならちゃんと教えてくれるしね」
「はい」
きっとこれは仕方のないことなんですよね。はぁ。
「それよりも、私にホーちゃんを撫でさせてよ。ユキちゃんも良いけどホーちゃんも気持ちよさそう」
そう言ってヴィーシャさんは手を伸ばしてきましたが、ホーちゃんは気に入らなかったのか翼を広げて威嚇します。
「うわっと。ごめんごめん。怖がらせちゃったかな?」
「ホーちゃん、大丈夫ですよ。やさしく撫でてくれますよ」
あたしはホーちゃんを撫でて落ち着けてあげます。
「ゆっくりと下から手を出してあげてください」
「こ、こうかな?」
今度はホーちゃんも威嚇をしませんでした。顎の下あたりを撫でさせてあげています。
「わ、わ、ふわふわだ。すごい」
ヴィーシャさんが感動の声を上げるとだらしない表情になります。
やっぱりもふもふの魔力に勝てる人はいないようです。
あたしはピーちゃんをぷにぷにしながらもう片方の手でホーちゃんの頭を撫でてあげます。するとホーちゃんとピーちゃんは気持ちよさそうに小さく鳴いたのでした。
================
次回更新は 2021/03/13(土) 20:00 を予定しております。
「どうしたんですか? リリアちゃん」
夕飯を食べに行こうとお向かいのリリアちゃんの部屋をノックすると、リリアちゃんがが出てきて開口一番そう言われました。
どうやらあの元気で明るいリリアちゃんが参っているようです。
「なんだかね。あたしのルームメイトの子、平民とは話しませんって言って出ていっちゃったの。レジーナ様のお友達である自分は平民とは口を利かないって」
「えー、それはすごいですね。この学園では身分は関係ないって言っていたのに」
「ホントだよー」
そう言ってあたしにぎゅーっと抱きついてきました。
それからしばらくするとリリアちゃんはあたしのことを放してヴィーシャさんに自己紹介をしました。
「あ、えっと、ごめんなさい。ローザちゃんのお友達でリリアです」
「あ、ああ。構わないよ。私はヴィクトリア。コドルツィ騎士爵家の娘で愛称はヴィーシャ。よろしく」
「あ、はい。えっと、よろしくお願いします。ヴィーシャ様」
「あはは。様は要らないよ。敬語もね。それ、楽な喋り方じゃないでしょ?」
「あ、そう、だね。うん。じゃあ、よろしく、ヴィーシャ」
「うん。よろしくリリア」
あれ? あたしの時はどうして敬語止めてって言われなかったんでしょうか?
「ねえ、ヴィーシャさん。どうしてあたしの時は敬語を止めてって言わなかったんですか?」
「え? だってその話し方の方が楽そうだったからね。違った?」
「いえ、違わないですけど……」
「それならちょうど良かったでしょ?」
すごいです。ヴィーシャさんとは今日会ったばかりなのによく分かりましたね。
「あ、あたしもそう思ってローザちゃんに敬語をやめてって言わなかったんだよ?」
あれれ? あたしってそんなに分かりやすかったんでしょうか?
「うん。顔にばっちり出るタイプだよ?」
「ひぇっ」
あたしはいきなり心の中で思った疑問を言い当てられて変な声が出てしまいました。
そんなあたしを見て二人が楽しそうに笑っています。
「ははは。ほら、もういいから夕飯を食べに行こう?」
「さんせー。あたし、お腹ぺこぺこだもん」
こうして和やかな雰囲気になったあたし達は女子寮の一階にある食堂へと向かったのでした。
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夕食を食べたあたし達はそのままあたしとヴィーシャさんの部屋にリリアちゃんを連れてきました。リリアちゃんのルームメイトはそのレジーナ様のところに行ってしまったので部屋に戻っても一人で寂しいのだそうです。
その結果なんですが……。
「あー、ユキちゃーん」
リリアちゃんがユキをもふってはだらしない表情になっています。あたしもユキをもふりたかったのですが仕方ありません。今日はホーちゃんにします。
あたしが撫でてあげるとホーちゃんは気持ちよさそうに目を細めています。
「食堂では話せなかったけど、リリアのルームメイトはイングリー・バラサ男爵令嬢だね。それとレジーナ様はマレスティカ公爵家のご令嬢だよ。ローザも入学式の時にスピーチをしているのを見たよね? 彼女がこの学年で一番身分の高い人で、一学年上の王太子様の婚約者だよ」
え? じゃあこの国の未来の王妃様ってことですか?
じゃあ、それは取り巻きの人達も必死になるわけですね。
「あれ? ローザはイヤそうな顔しているね。興味ないの? 王子様とかお姫様とか」
「あんまり良い印象はないんですよね。何だか、その。こう、権力者って感じで」
「そっか。ああ、そういえばオーデルラーヴァは貴族がいないのに身分差別がかなりひどいって聞いたことがあるね。それに比べたらうちの国はマシだと思うよ。この学園だって、身分は関係ないことになってるしね。もちろん差別をする人はいるから一応、だけど」
「そうですか……」
それにしても、身分って面倒ですよね。どうして身分が低いだけで酷い目に合わなきゃいけないんでしょうか?
「学園の中なら暴言を吐くとか、よほど失礼なことをしなければ大丈夫だよ。それにマナーの授業とかもあるし、そういったところは彼女たちを見習うと良いんじゃないかな。少なくとも先生の目のあるところならちゃんと教えてくれるしね」
「はい」
きっとこれは仕方のないことなんですよね。はぁ。
「それよりも、私にホーちゃんを撫でさせてよ。ユキちゃんも良いけどホーちゃんも気持ちよさそう」
そう言ってヴィーシャさんは手を伸ばしてきましたが、ホーちゃんは気に入らなかったのか翼を広げて威嚇します。
「うわっと。ごめんごめん。怖がらせちゃったかな?」
「ホーちゃん、大丈夫ですよ。やさしく撫でてくれますよ」
あたしはホーちゃんを撫でて落ち着けてあげます。
「ゆっくりと下から手を出してあげてください」
「こ、こうかな?」
今度はホーちゃんも威嚇をしませんでした。顎の下あたりを撫でさせてあげています。
「わ、わ、ふわふわだ。すごい」
ヴィーシャさんが感動の声を上げるとだらしない表情になります。
やっぱりもふもふの魔力に勝てる人はいないようです。
あたしはピーちゃんをぷにぷにしながらもう片方の手でホーちゃんの頭を撫でてあげます。するとホーちゃんとピーちゃんは気持ちよさそうに小さく鳴いたのでした。
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次回更新は 2021/03/13(土) 20:00 を予定しております。
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