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第二章

第54話 実技試験を受けました

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 実技試験の時間がやってきました。実技試験では、広い校庭に三十人くらいずつが集まって試験官の前で適性検査の時に指定された魔法を披露するのだそうです。どんな魔法を使っても良いらしく、攻撃魔法を使うための的も用意されています。

 あたしは火属性魔法を指定されているので火属性魔法の第二グループに並んでいますが、リリアちゃんはその他のグループなので校庭の反対側です。

 周りの人を何となく観察しながら待っていると全員に小さな木の杖が手渡され、実技試験が始まりました。

 この杖は火属性魔法の発動を手助けしてくれるらしいんですけど、ちょっと試してみた感じあたしには使いづらいかもしれません。いつも杖なんて使わずに指で発動していましたからね。

 あたしは残念ながら最後から数えて五番目という微妙な順番なのでしばらくは見学です。できれば一番最初か最後が目立って良いと思っていたんですが、自分で順番を選べるわけではないですからね。仕方ありません。

 あたしたちの列の最初の人が担当の男性試験官の前に出てきました。受験生の方は背の高い男の人です。

 あれ? 何か呪文のようなものを長々と唱えていますね。どういうことでしょうか?

 オフェリアさんもシルヴィエさんも、それにあのレオシュだってそんなことはしていませんでしたよ?

 それからしばらくすると彼の手元に小さな炎が出ました。あれはあたしがサバイバルしていたとき、薪に火を点けるために良く使っていた魔法です。

 試験官の人はそれをしばらく観察してから手元の紙に何かを書き込み、そして一言彼に声をかけてから拍手をしました。それに呼応するかのように周りの受験生たちも拍手したのであたしも拍手をします。

 そしてそのまま列を離れると悔しそうな表情をしながら会場を後にしました。

 え? もしかしてこの場で合否を言い渡されるんですか?

 それから次の人が前に進みます。またも背の高い男の人です。

 それからまた呪文のようなものを唱えて手元に火を出しました。先ほどの彼よりは大きい炎ですね。その後はまた先ほどと全く同じような光景が繰り返されました。

 そして次の人も、その次の人も、それからずっと似たような光景が続きます。
 
 あれ? もしかしてあたしの魔法って実は普通じゃなかったりするんですかね?

 だとするとこれはチャンスかもしれません。

 そしてそうこうしているうちにあたしの番になりました。

「次は受験番号 389、ローザさん。どうぞ」
「はい」

 緊張しますが、この日のためにとっておきを練習してきましたからね。

 あたしは一度大きく深呼吸してドキドキする心臓を落ち着けるとイメージを膨らませます。

 杖は使いにくいので左手で持っておきましょう。それから右手に大きな赤い炎を作り出しまた。今までの人達の大体十倍くらいの大きさです。

 これだけでもインパクトはあると思いますが、ここからが今回のために考えた内容です。温度を上げるイメージをすると同時に炎を圧縮していくイメージを作ります。

 すると、炎が小さくなりつつ徐々に炎の色が変化していきます。赤かった炎が徐々にオレンジ、黄色と色が変わり、そして白くなりました。

 そしてこの炎を魔力弾にまとわせて、撃つ!

 白い炎をまとったあたしの炎弾――白炎弾とでも呼びましょうか――が的の真ん中をきれいに撃ち抜き、その向こう側にある盛り土をも貫通するとさらにその向こう側にある石造りの壁にぶつかりました。

 パリン、と何かが砕ける音がし、さらにドンと重たい音がします。

「なっ! ちょっとここで待っていなさい」

 慌てた様子の試験官がそう叫ぶと的を確認するのか走って向こうに行ってしまいました。

 盛り土を確認しています。それからさらに裏手にも回って姿が見えなくなりました。

 一方、あたしの後の四人の受験生たちは不安そうな表情でそれを見守っています。

 それから試験官の人がまた慌てた様子で戻ってきて、またもうしばらく待つようにあたしたち五人に言うとまたどこかへと走っていきました。

 あ、ええと。あたしもしかして何かまずいことをしちゃったんでしょうか?

 そして、この寒風吹きすさぶ中外で待つのはちょっと厳しいです。いくらシルヴィエさんにもらった暖かいコートを着ているとはいってもさすがに寒いですからね。

 こういう時は炎を出して暖を取るのが一番ですよね。

 あたしは冷える足元に小さな炎を出して体を温めます。

 あれ? 何だか周りがざわついてきました。何かあったんでしょうか?

 辺りを見回してみるとどうやらみんなあたしを見て何かひそひそと言っています。

 どういうことですか? やっぱりあたし何か変なことをしているんでしょうか?

****

 それから十分くらいで試験官は戻ってきました。

「お待たせしました。ローザさんはこのまま残ってください。では次の人」
「はい」

 やがて残りの四人の試験が終わり、あたしは試験官の人に連れられて建物の中にやってきました。

「さて、ローザさん。突然ここに連れてこられて驚いたかもしれませんが、安心してください。悪い話ではありません」

 そう言われても一人だけ連れていかれるのは不安が残ります。

「ローザさんは従魔科で入学を志願していますが、良かったら普通科にしませんか?」
「え?」
「試験で見せてくれたローザさんの魔術ははっきり言って入学試験のレベルを大幅に超えています。あれだけ強力な魔術を使えるローザさんであれば普通科でも問題ないでしょう」
「でもあたしはテイマーなので、従魔のみんなをきちんと育てる方法を学びたいんです」
「安心してください。まず、一年次の授業は普通科と従魔科で完全に共通です。そして二年次以降も普通科の生徒が従魔科の授業を受講することはできます。ですが、その逆はかなり難しくなります」
「でも、奨学金がもらえないとあたし、通えないんです」
「では、三年分の奨学金と学費寮費教材費など必要となる費用の一切の免除をこの場でお約束しましょう」
「ええっ?」

 これってもしかして、ものすごくいい話なのではないでしょうか?

 従魔科の授業を受けられるなら普通科でも問題ないですよね。よし!

「わかりました。そうします」
「それは良かった。ではこちらの書類にサインを」

 あたしは二つ返事で頷くとその書類にサインをしたのでした。

****

「ええっ? あれをやったのってローザちゃんだったの?」

 今は魔法学園からの帰り道で、リリアちゃんと話ならがら歩いています。当然試験の話題になったのですが、あたしの試験の時の話をしたら驚かれてしまいました。

「じゃあ、結界壊したんだ。すごい……」
「え? 結界ですか?」
「そうだよ。あの校庭には攻撃魔術が暴発しても大丈夫なように結界が張られているんだって。普通は壊せないはずなのに壊れちゃったから試験官の人たちが大騒ぎだったし、危ないから試験が一時中断になっちゃったんだよ? すっごく寒かったんだから」
「ああ、それはすみませんでした」
「いいって。ローザちゃんが悪いわけじゃないからね。まさか結界が壊されるなんて思いもしないもん」

 そういってリリアちゃんは楽しそうに笑います。

「でもあれだけやればローザちゃんは合格だよね?」
「はい。普通科にしませんかって言われました」
「え? ローザちゃん普通科にしたの? じゃあ一緒だね」
「はい。あれ? じゃあリリアちゃんも?」
「うん。あたしも合格だって」
「おめでとうございます」
「ローザちゃんこそ、おめでとう」
「ありがとうございます」

 そう言ってもらえて、あたしもようやく素直に笑うことができたのでした。

────
名前:ローザ
種族:混血(人族、天空族、淫魔族)
性別:女性
年齢:12
職業:テイマー

HP:36/36
MP:132/132
STR:2
INT知力:32
AGI素早さ:4
DEX器用さ:9
VIT体力:4
MGK魔力:52
MND精神力:31
LUC:9
CHA魅力:59

スキル:
鑑定:1
収納:3
魅惑:2
火属性魔法:4
風属性魔法:1
光属性魔法:3
無属性魔法:5
魔力操作:6
従魔契約:1
狙撃:3
忍び足:1

魔法適性:火、風、光、闇
称号:星に導かれし者
従魔:ユキ、ピー、ホー
────
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