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第一章
第34話 あいつら大嫌いです
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「レオシュ殿。手柄の横取りはいかがなものかと思いますよ?」
シルヴィエさんが低い声でそう言うとレオシュを睨み付けました。
あたしも本当にそう思います。どう考えてもあれはずるいですよ!
大体ですよ? 何であんなに必死に戦ったオフェリアさんとシルヴィエさんじゃなくて横取りしたレオシュなんかが討ち取った事になるんですか?
「おや? 私はオフェリア殿の要請にお応えしてゴブリンの変異種を討った。ただそれだけです」
「ですが!」
「オフェリア殿は確かに『第一隊も協力を』と仰っておりました。そうですね? オフェリア殿」
「……ああ、そうだな」
「では何の問題もない。討伐証明部位は頂いていきますよ。ああ、そうそう。死体はきちんと燃やしておいてください」
そう言い放つとレオシュは右耳を拾い、そのまま勝ち誇ったような表情を浮かべて立ち去ったのでした。
そんなレオシュをオフェリアさんを始め第七隊のみんなは冷たい、あるいは怒りのこもった表情で見送ります。周りの騎士の人たちもレオシュに付き従っている人たち以外は微妙な表情を浮かべています。
「仕方ない。さっさと処分をして戻るぞ」
「はっ」
そして親玉ゴブリンの死体を燃やした私たちはようやく帰途に就いたのでした。
****
「あの、ブラジェナさん」
「なあに? ローザちゃん」
「どうして、あんな酷いことをされているのに黙っているんですか? 寮にいる時だって嫌がらせされているじゃないですか」
あたしの質問にブラジェナさんは困ったような表情を浮かべます。
「ローザ、私が説明しよう」
オフェリアさんが助け船を出すかのように話に割って入ってきました。
「あれは私にも非がある。第一隊にも協力を呼び掛けたのは確かなのだから理屈としては間違っていない。それに奴らの方が実質的な身分が上なのだ」
「え? じゃあレオシュは貴族なんですか?」
「オーデルラーヴァには貴族は存在しないが似たようなものだ。全ての国民は平民という事になっており、建前上は身分というものは存在しないことにはなっているのだがな。実際は違うのだ」
「え? どういうことですか?」
「あいつらは第一区画と呼ばれる第一城壁の内側に居を構えているのだ。そして意図的に高い魔力を持つ者同士で結婚を繰り返すことでその家系の魔力を保持してきたのだ。そうすれば魔力の低い者は実質的に逆らえない。そうやって魔力の強い家系を作り上げ、その力を利用して身内で国の要職を独占し続けているのだ」
なんだか、酷い話です。
「でも、だからってあんな事は! それに嫌がらせだって!」
「そして、私は第二区画の出身なのだが何故か高い魔力を持っていてな。それに目をつけた連中は私を妾として娶ろうとしたのだがな。私は騎士の家系なのでそれを断って騎士団に入ったのだ。そのせいか、余計に目の敵にされているのだよ」
「え? じゃあ魔法を使えるのって?」
「そうだ。攻撃魔術として実戦で十分に使えるクラスになるとほとんどいない。第七隊ならば私とシルヴィエだけだ。他の隊も隊長と副隊長クラスの者に限られる。ただ、第一隊は第一区画の出身者のみで占められており、攻撃魔術を全員が使えるのだ」
なるほど。この前、魔法の才能があるだけでも面倒な事になるって言っていたのはこの事だったみたいです。
「だからな。彼らに逆らったところで良いことは何も無いのだよ」
オフェリアさんはそう言って寂しそうに、そしてどこか遠い目をしながらあたしの頭を軽く撫でてくれたのでした。
****
オーデルラーヴァに無事に戻ったあたしは引き続き女子寮でしばらくの間保護してもらえることになりました。
ただ、やっぱりレオシュのやったあの卑怯な行為は許せません。
だって、散々オフェリアさん達を利用してゴブリンの集落のリーダーを倒して、さらにほとんどオフェリアさんとシルヴィエさんで倒したのに最後のトドメだけ持って行ったわけじゃないですか。
あんなのが出世して偉くなっていくなんて、きっとこの騎士団はそのうち崩壊すると思うんです。
でも、結局今回のゴブリン討伐で一番の手柄をあげたのはレオシュの率いる第一隊の分隊だそうです。
それと、帰り道であたし達の後ろにいたのは第六隊の騎士だったそうなんですが、彼らを中心に四十名以上の死者が出てしまいました。あの親玉ゴブリンに吹っ飛ばされた人達の他にも、集落での戦いで命を落としてしまった人もいたそうです。
聞いた話によると、第六隊の人達はこのオーデルラーヴァの第四区画というこの町の一番外側にある貧しい地域の出身の人達なのだそうです。だからあんな感じに捨て駒扱いされることが多いらしいです。
そして貧しい地区の人達は攻撃魔法は使えないので強い魔物が出てくるとどうしようもないのだそうです。
それなのに第一隊の攻撃魔法が使える強い奴らが後ろでこそこそと隠れているなんて、最悪だと思いませんか?
あたし、あいつら大嫌いです。
シルヴィエさんが低い声でそう言うとレオシュを睨み付けました。
あたしも本当にそう思います。どう考えてもあれはずるいですよ!
大体ですよ? 何であんなに必死に戦ったオフェリアさんとシルヴィエさんじゃなくて横取りしたレオシュなんかが討ち取った事になるんですか?
「おや? 私はオフェリア殿の要請にお応えしてゴブリンの変異種を討った。ただそれだけです」
「ですが!」
「オフェリア殿は確かに『第一隊も協力を』と仰っておりました。そうですね? オフェリア殿」
「……ああ、そうだな」
「では何の問題もない。討伐証明部位は頂いていきますよ。ああ、そうそう。死体はきちんと燃やしておいてください」
そう言い放つとレオシュは右耳を拾い、そのまま勝ち誇ったような表情を浮かべて立ち去ったのでした。
そんなレオシュをオフェリアさんを始め第七隊のみんなは冷たい、あるいは怒りのこもった表情で見送ります。周りの騎士の人たちもレオシュに付き従っている人たち以外は微妙な表情を浮かべています。
「仕方ない。さっさと処分をして戻るぞ」
「はっ」
そして親玉ゴブリンの死体を燃やした私たちはようやく帰途に就いたのでした。
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「あの、ブラジェナさん」
「なあに? ローザちゃん」
「どうして、あんな酷いことをされているのに黙っているんですか? 寮にいる時だって嫌がらせされているじゃないですか」
あたしの質問にブラジェナさんは困ったような表情を浮かべます。
「ローザ、私が説明しよう」
オフェリアさんが助け船を出すかのように話に割って入ってきました。
「あれは私にも非がある。第一隊にも協力を呼び掛けたのは確かなのだから理屈としては間違っていない。それに奴らの方が実質的な身分が上なのだ」
「え? じゃあレオシュは貴族なんですか?」
「オーデルラーヴァには貴族は存在しないが似たようなものだ。全ての国民は平民という事になっており、建前上は身分というものは存在しないことにはなっているのだがな。実際は違うのだ」
「え? どういうことですか?」
「あいつらは第一区画と呼ばれる第一城壁の内側に居を構えているのだ。そして意図的に高い魔力を持つ者同士で結婚を繰り返すことでその家系の魔力を保持してきたのだ。そうすれば魔力の低い者は実質的に逆らえない。そうやって魔力の強い家系を作り上げ、その力を利用して身内で国の要職を独占し続けているのだ」
なんだか、酷い話です。
「でも、だからってあんな事は! それに嫌がらせだって!」
「そして、私は第二区画の出身なのだが何故か高い魔力を持っていてな。それに目をつけた連中は私を妾として娶ろうとしたのだがな。私は騎士の家系なのでそれを断って騎士団に入ったのだ。そのせいか、余計に目の敵にされているのだよ」
「え? じゃあ魔法を使えるのって?」
「そうだ。攻撃魔術として実戦で十分に使えるクラスになるとほとんどいない。第七隊ならば私とシルヴィエだけだ。他の隊も隊長と副隊長クラスの者に限られる。ただ、第一隊は第一区画の出身者のみで占められており、攻撃魔術を全員が使えるのだ」
なるほど。この前、魔法の才能があるだけでも面倒な事になるって言っていたのはこの事だったみたいです。
「だからな。彼らに逆らったところで良いことは何も無いのだよ」
オフェリアさんはそう言って寂しそうに、そしてどこか遠い目をしながらあたしの頭を軽く撫でてくれたのでした。
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オーデルラーヴァに無事に戻ったあたしは引き続き女子寮でしばらくの間保護してもらえることになりました。
ただ、やっぱりレオシュのやったあの卑怯な行為は許せません。
だって、散々オフェリアさん達を利用してゴブリンの集落のリーダーを倒して、さらにほとんどオフェリアさんとシルヴィエさんで倒したのに最後のトドメだけ持って行ったわけじゃないですか。
あんなのが出世して偉くなっていくなんて、きっとこの騎士団はそのうち崩壊すると思うんです。
でも、結局今回のゴブリン討伐で一番の手柄をあげたのはレオシュの率いる第一隊の分隊だそうです。
それと、帰り道であたし達の後ろにいたのは第六隊の騎士だったそうなんですが、彼らを中心に四十名以上の死者が出てしまいました。あの親玉ゴブリンに吹っ飛ばされた人達の他にも、集落での戦いで命を落としてしまった人もいたそうです。
聞いた話によると、第六隊の人達はこのオーデルラーヴァの第四区画というこの町の一番外側にある貧しい地域の出身の人達なのだそうです。だからあんな感じに捨て駒扱いされることが多いらしいです。
そして貧しい地区の人達は攻撃魔法は使えないので強い魔物が出てくるとどうしようもないのだそうです。
それなのに第一隊の攻撃魔法が使える強い奴らが後ろでこそこそと隠れているなんて、最悪だと思いませんか?
あたし、あいつら大嫌いです。
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