上 下
25 / 261
第一章

第25話 キレイにしてもらいました

しおりを挟む
2020/12/19 誤字を修正しました
================

 どうもこんにちは。ローザです。オーデルラーヴァの国民として保護してもらえることになったあたしはそのまま騎士団の女子寮へと連れて来てもらいました。

「おい、ソニャはいるか?」

 オフェリアさんが大きな声で建物の中に声を掛けます。

「はーい。ただいまー」

 ぱたぱたという音がしてメイドさんが走ってきました。

 見たところ、三十くらいでしょうか?

 茶髪に黒目の少し地味な顔立ちですが、程よくふくよかでとても優しそうな感じの女性です。

「オフェリア様。どうなさいました? あら? その子は?」
「この子はローザ。住んでいた村がゴブリンに占領されたらしくてな。何とか逃げてきたところを保護したのでそのままここでしばらく預かることにした」

 それを聞いたソニャさんは目に涙を浮かべます。

「ああっ! なんてこと! ローザちゃん。そんなに小さいのに大変だったわねぇ。大丈夫。このソニャお姉さんがちゃーんとお世話してあげますからね!」

 そう言って思い切り抱きしめられてしまいました。

 ええっと。はい。その、何だか騙しててごめんなさい。

「ソニャ。ローザに適当に服を身繕ってやれ。それから風呂に入れてやってほしい」
「ええ! ええ! このソニャにどうぞお任せください! 必ずや期待以上の成果を出して見せます!」

 どうしてこんなにソニャさんは鼻息が荒いんでしょう?

「さあ、ローザちゃん。まずはお風呂に行きますよ!」

 あたしはそのパワーに完全に圧倒され、なすすべなく抱き上げられるとそのままお風呂へと連行されたのでした。 

****

 服をあっという間に脱がされたあたしはユキ達を脱衣所で待たせるとお風呂に連行されました。そうして目に飛び込んできた光景に思わず見とれてしまいます。

「ふわぁ。これが、お風呂ですか……」

 これはすごいです。夢で見た温泉というものにとても似ていますが、こちらの方が湯船やお湯の出ている場所などに細かい装飾が施されていて豪華な感じです。

「さあ、全身をきっちり洗いますからね」

 そうして何故かあたしよりも気合の入っているソニャさんに全身をくまなく洗われます。それからいつの間にか持っていたハサミで髪の毛も整えてもらいました。

「はい。おしまいです。それじゃあ湯船につかってくださいね」
「は、はい」

 あたしは言われるがままにお湯につかります。

 あ、なんでしょう。ものすごく気持ちいです。体がポカポカして、ふわぁってなって。

 えっと、好きです。お風呂。

「それじゃあ、大人しく十分くらいそのままにしていてくださいね」
「はいー」

 そう言い残すとソニャさんは上の空で返事をするあたしを一人残してお風呂から出ていったのでした。

****

 ああ、もうダメです。あたしふにゃふにゃになっちゃいました。このままお風呂に住みたいです。

「ほら、ローザちゃん。あんまり入っているとのぼせちゃいますよ」
「ふえぇ?」
「ほーら。よっと」

 ソニャさんがあたしのわきの下に両手を入れると湯船からあたしを引っ張り上げました。

「あー、もっとぉ」

 あたしがそう言ってお風呂に戻ろうとした瞬間、クラっとなって倒れそうになります。

「ほら。やっぱりのぼせましたね。いいですか? 長くお湯につかりすぎるとこうなるんですよ。わかりましたね」
「はいー」

 どうやらお風呂には時間制限があるみたいです。お風呂の床にそのまましばらくへたり込んでいました。

 その後、ソニャさんに支えてもらい、あたしはゆっくりと立ち上がると脱衣所へと戻りました。脱衣所に戻ったあたしはソニャさんに大きくてふわふわのバスタオルであたしをくるまれ、全身をくまなく拭いてくれます。

 しかも、こんなものすごく高そうなバスタオルを次々と交換して拭いていくんですよ?

 ものすごい贅沢です。

 それから肌触りもすべすべで光沢もあって、何だかものすごく高級そうな服を着せられました。ひらひらが沢山ついていて、レースがふんだんに使われてて、それに刺繍がされていて、とにかくすごいです。

 どうしてあたしがこんな高そうな服を着ているんでしょう?

 あたし、ただの孤児ですよ?

 しかも今は村娘っていう設定でしたよね?

「ああ、やっぱり似合いますね。ここの子供服はすべて古着でして、ローザちゃんが着ている服もこの前娘さんが着られなくなったからという事で譲り受けたものなんですよ」

 そうなんですか。こんな高いものを譲るなんて、もう何が何だかさっぱりです。騎士団はやっぱりお金持ちなんですね。

「さ、ローザちゃん、できましたよ」

 そう言ってソニャさんが大きな鏡を持ってきてくれました。

 鏡の中には完全にあたしの知らないものすごい美少女が不思議そうな表情をしてこちらを見つめています。

 薄い金色の長い髪はつやつやしていて輝いていますし、肌はほんのりと赤みを帯びていて、宝石のように美しい青紫の大きな瞳は吸い込まれそうになります。そして整った形の眉と小さな顔、そこにピンクの小さな唇が彩を添えています。

 はい。これは文句なしの美少女です。

「あの、これって誰ですか?」

 あたしがそう言うとソニャさんはぷっと小さくふき出しガッツポーズをしました。

「ふふ。大変身しましたね。ローザちゃん。お姫様みたいですよ」

 そう言われてものすごく恥ずかしくなったあたしは頬が熱くなり、そして鏡の中の美少女も顔が真っ赤になっています。

 何だか自分の事なのに、自分と鏡の中の女の子がどうしても同じに見えず、あたしはまるで夢でも見ているかのような気分でぽーっとしてしまったのでした。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「たかが一男爵家の分際で、一々口を挟むなよ?」  そんな言葉を皮切りに、王太子殿下から色々と言われました。  曰く、「我が家は王族の温情で、辛うじて貴族をやれている」のだとか。  当然の事を言っただけだと思いますが、どうやら『でしゃばるな』という事らしいです。  そうですか。  ならばそのような温情、賜らなくとも結構ですよ?  私達、『領』から『国』になりますね?  これは、そんな感じで始まった異世界領地改革……ならぬ、建国&急成長物語。 ※現在、3日に一回更新です。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

処理中です...