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第一章
第25話 キレイにしてもらいました
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2020/12/19 誤字を修正しました
================
どうもこんにちは。ローザです。オーデルラーヴァの国民として保護してもらえることになったあたしはそのまま騎士団の女子寮へと連れて来てもらいました。
「おい、ソニャはいるか?」
オフェリアさんが大きな声で建物の中に声を掛けます。
「はーい。ただいまー」
ぱたぱたという音がしてメイドさんが走ってきました。
見たところ、三十くらいでしょうか?
茶髪に黒目の少し地味な顔立ちですが、程よくふくよかでとても優しそうな感じの女性です。
「オフェリア様。どうなさいました? あら? その子は?」
「この子はローザ。住んでいた村がゴブリンに占領されたらしくてな。何とか逃げてきたところを保護したのでそのままここでしばらく預かることにした」
それを聞いたソニャさんは目に涙を浮かべます。
「ああっ! なんてこと! ローザちゃん。そんなに小さいのに大変だったわねぇ。大丈夫。このソニャお姉さんがちゃーんとお世話してあげますからね!」
そう言って思い切り抱きしめられてしまいました。
ええっと。はい。その、何だか騙しててごめんなさい。
「ソニャ。ローザに適当に服を身繕ってやれ。それから風呂に入れてやってほしい」
「ええ! ええ! このソニャにどうぞお任せください! 必ずや期待以上の成果を出して見せます!」
どうしてこんなにソニャさんは鼻息が荒いんでしょう?
「さあ、ローザちゃん。まずはお風呂に行きますよ!」
あたしはそのパワーに完全に圧倒され、なすすべなく抱き上げられるとそのままお風呂へと連行されたのでした。
****
服をあっという間に脱がされたあたしはユキ達を脱衣所で待たせるとお風呂に連行されました。そうして目に飛び込んできた光景に思わず見とれてしまいます。
「ふわぁ。これが、お風呂ですか……」
これはすごいです。夢で見た温泉というものにとても似ていますが、こちらの方が湯船やお湯の出ている場所などに細かい装飾が施されていて豪華な感じです。
「さあ、全身をきっちり洗いますからね」
そうして何故かあたしよりも気合の入っているソニャさんに全身をくまなく洗われます。それからいつの間にか持っていたハサミで髪の毛も整えてもらいました。
「はい。おしまいです。それじゃあ湯船につかってくださいね」
「は、はい」
あたしは言われるがままにお湯につかります。
あ、なんでしょう。ものすごく気持ちいです。体がポカポカして、ふわぁってなって。
えっと、好きです。お風呂。
「それじゃあ、大人しく十分くらいそのままにしていてくださいね」
「はいー」
そう言い残すとソニャさんは上の空で返事をするあたしを一人残してお風呂から出ていったのでした。
****
ああ、もうダメです。あたしふにゃふにゃになっちゃいました。このままお風呂に住みたいです。
「ほら、ローザちゃん。あんまり入っているとのぼせちゃいますよ」
「ふえぇ?」
「ほーら。よっと」
ソニャさんがあたしのわきの下に両手を入れると湯船からあたしを引っ張り上げました。
「あー、もっとぉ」
あたしがそう言ってお風呂に戻ろうとした瞬間、クラっとなって倒れそうになります。
「ほら。やっぱりのぼせましたね。いいですか? 長くお湯につかりすぎるとこうなるんですよ。わかりましたね」
「はいー」
どうやらお風呂には時間制限があるみたいです。お風呂の床にそのまましばらくへたり込んでいました。
その後、ソニャさんに支えてもらい、あたしはゆっくりと立ち上がると脱衣所へと戻りました。脱衣所に戻ったあたしはソニャさんに大きくてふわふわのバスタオルであたしを包まれ、全身をくまなく拭いてくれます。
しかも、こんなものすごく高そうなバスタオルを次々と交換して拭いていくんですよ?
ものすごい贅沢です。
それから肌触りもすべすべで光沢もあって、何だかものすごく高級そうな服を着せられました。ひらひらが沢山ついていて、レースがふんだんに使われてて、それに刺繍がされていて、とにかくすごいです。
どうしてあたしがこんな高そうな服を着ているんでしょう?
あたし、ただの孤児ですよ?
しかも今は村娘っていう設定でしたよね?
「ああ、やっぱり似合いますね。ここの子供服はすべて古着でして、ローザちゃんが着ている服もこの前娘さんが着られなくなったからという事で譲り受けたものなんですよ」
そうなんですか。こんな高いものを譲るなんて、もう何が何だかさっぱりです。騎士団はやっぱりお金持ちなんですね。
「さ、ローザちゃん、できましたよ」
そう言ってソニャさんが大きな鏡を持ってきてくれました。
鏡の中には完全にあたしの知らないものすごい美少女が不思議そうな表情をしてこちらを見つめています。
薄い金色の長い髪はつやつやしていて輝いていますし、肌はほんのりと赤みを帯びていて、宝石のように美しい青紫の大きな瞳は吸い込まれそうになります。そして整った形の眉と小さな顔、そこにピンクの小さな唇が彩を添えています。
はい。これは文句なしの美少女です。
「あの、これって誰ですか?」
あたしがそう言うとソニャさんはぷっと小さくふき出しガッツポーズをしました。
「ふふ。大変身しましたね。ローザちゃん。お姫様みたいですよ」
そう言われてものすごく恥ずかしくなったあたしは頬が熱くなり、そして鏡の中の美少女も顔が真っ赤になっています。
何だか自分の事なのに、自分と鏡の中の女の子がどうしても同じに見えず、あたしはまるで夢でも見ているかのような気分でぽーっとしてしまったのでした。
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どうもこんにちは。ローザです。オーデルラーヴァの国民として保護してもらえることになったあたしはそのまま騎士団の女子寮へと連れて来てもらいました。
「おい、ソニャはいるか?」
オフェリアさんが大きな声で建物の中に声を掛けます。
「はーい。ただいまー」
ぱたぱたという音がしてメイドさんが走ってきました。
見たところ、三十くらいでしょうか?
茶髪に黒目の少し地味な顔立ちですが、程よくふくよかでとても優しそうな感じの女性です。
「オフェリア様。どうなさいました? あら? その子は?」
「この子はローザ。住んでいた村がゴブリンに占領されたらしくてな。何とか逃げてきたところを保護したのでそのままここでしばらく預かることにした」
それを聞いたソニャさんは目に涙を浮かべます。
「ああっ! なんてこと! ローザちゃん。そんなに小さいのに大変だったわねぇ。大丈夫。このソニャお姉さんがちゃーんとお世話してあげますからね!」
そう言って思い切り抱きしめられてしまいました。
ええっと。はい。その、何だか騙しててごめんなさい。
「ソニャ。ローザに適当に服を身繕ってやれ。それから風呂に入れてやってほしい」
「ええ! ええ! このソニャにどうぞお任せください! 必ずや期待以上の成果を出して見せます!」
どうしてこんなにソニャさんは鼻息が荒いんでしょう?
「さあ、ローザちゃん。まずはお風呂に行きますよ!」
あたしはそのパワーに完全に圧倒され、なすすべなく抱き上げられるとそのままお風呂へと連行されたのでした。
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服をあっという間に脱がされたあたしはユキ達を脱衣所で待たせるとお風呂に連行されました。そうして目に飛び込んできた光景に思わず見とれてしまいます。
「ふわぁ。これが、お風呂ですか……」
これはすごいです。夢で見た温泉というものにとても似ていますが、こちらの方が湯船やお湯の出ている場所などに細かい装飾が施されていて豪華な感じです。
「さあ、全身をきっちり洗いますからね」
そうして何故かあたしよりも気合の入っているソニャさんに全身をくまなく洗われます。それからいつの間にか持っていたハサミで髪の毛も整えてもらいました。
「はい。おしまいです。それじゃあ湯船につかってくださいね」
「は、はい」
あたしは言われるがままにお湯につかります。
あ、なんでしょう。ものすごく気持ちいです。体がポカポカして、ふわぁってなって。
えっと、好きです。お風呂。
「それじゃあ、大人しく十分くらいそのままにしていてくださいね」
「はいー」
そう言い残すとソニャさんは上の空で返事をするあたしを一人残してお風呂から出ていったのでした。
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ああ、もうダメです。あたしふにゃふにゃになっちゃいました。このままお風呂に住みたいです。
「ほら、ローザちゃん。あんまり入っているとのぼせちゃいますよ」
「ふえぇ?」
「ほーら。よっと」
ソニャさんがあたしのわきの下に両手を入れると湯船からあたしを引っ張り上げました。
「あー、もっとぉ」
あたしがそう言ってお風呂に戻ろうとした瞬間、クラっとなって倒れそうになります。
「ほら。やっぱりのぼせましたね。いいですか? 長くお湯につかりすぎるとこうなるんですよ。わかりましたね」
「はいー」
どうやらお風呂には時間制限があるみたいです。お風呂の床にそのまましばらくへたり込んでいました。
その後、ソニャさんに支えてもらい、あたしはゆっくりと立ち上がると脱衣所へと戻りました。脱衣所に戻ったあたしはソニャさんに大きくてふわふわのバスタオルであたしを包まれ、全身をくまなく拭いてくれます。
しかも、こんなものすごく高そうなバスタオルを次々と交換して拭いていくんですよ?
ものすごい贅沢です。
それから肌触りもすべすべで光沢もあって、何だかものすごく高級そうな服を着せられました。ひらひらが沢山ついていて、レースがふんだんに使われてて、それに刺繍がされていて、とにかくすごいです。
どうしてあたしがこんな高そうな服を着ているんでしょう?
あたし、ただの孤児ですよ?
しかも今は村娘っていう設定でしたよね?
「ああ、やっぱり似合いますね。ここの子供服はすべて古着でして、ローザちゃんが着ている服もこの前娘さんが着られなくなったからという事で譲り受けたものなんですよ」
そうなんですか。こんな高いものを譲るなんて、もう何が何だかさっぱりです。騎士団はやっぱりお金持ちなんですね。
「さ、ローザちゃん、できましたよ」
そう言ってソニャさんが大きな鏡を持ってきてくれました。
鏡の中には完全にあたしの知らないものすごい美少女が不思議そうな表情をしてこちらを見つめています。
薄い金色の長い髪はつやつやしていて輝いていますし、肌はほんのりと赤みを帯びていて、宝石のように美しい青紫の大きな瞳は吸い込まれそうになります。そして整った形の眉と小さな顔、そこにピンクの小さな唇が彩を添えています。
はい。これは文句なしの美少女です。
「あの、これって誰ですか?」
あたしがそう言うとソニャさんはぷっと小さくふき出しガッツポーズをしました。
「ふふ。大変身しましたね。ローザちゃん。お姫様みたいですよ」
そう言われてものすごく恥ずかしくなったあたしは頬が熱くなり、そして鏡の中の美少女も顔が真っ赤になっています。
何だか自分の事なのに、自分と鏡の中の女の子がどうしても同じに見えず、あたしはまるで夢でも見ているかのような気分でぽーっとしてしまったのでした。
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