テイマー少女の逃亡日記

一色孝太郎

文字の大きさ
上 下
23 / 268
第一章

第23話 町にやってきました

しおりを挟む
2020/12/16 誤字を修正しました
================

 どうもこんにちは。ローザです。あたしは今、オフェリアさんの部隊の荷馬車に乗せてもらって町へと向かっているところです。

 えっと、とってもお尻が痛いです。

 それでですね。オフェリアさん達の部隊はあの森のゴブリンの調査に来ていたんだそうです。というのも、あの森にあるミツェという村の人がゴブリンの集団が襲ってきたからと助けを呼びに来たそうなんです。

 ただ、その人も大けがを負っていたらしくその後すぐに亡くなってしまったそうで、現在の状況が分からなくて困っていたのでまずは少人数で調査に来たのだそうです。

 ちなみにオフェリアさんの第七隊は女性のみの部隊だそうです。普段は女性の要人を警護するのが主な仕事なのだそうですが、今回は相手がゴブリンという事で狩り出されたんだとか。

 あ、えっと、ゴブリンは男性だと殺されますけど女性だとその、殺されはしないじゃないですか。だから、えっと、はい。そういうことです。

 それと、女性を見るとゴブリンは興奮して単純な行動を取りがちなので女性の方が倒しやすいという事もあるらしいです。つまり、あたしが魔力弾を当てられた要因の一つは興奮して単純に突っ込んで来たからってこともあるのかもしれません。

 えっと、はい。それでですね。あたしの見つけたあのゴブリンの村ですけど、あそこがミツェの村なんだそうです。

 あたしがゴブリンの村の方向を指さしてですね。「向こうにゴブリンの村があります」と言ったらそれが道だったらしくて、そのまま納得されてしまいました。

 逃げている時になんだか走りやすいなとは思っていたんですが、まさか道だとは思ってもみませんでした。道幅も一人分くらいしかなかったですし、それに何より逃げるのに必死でしたからね。

 全く気付きませんでした。

 ただ、そのおかげで村に向かっていたオフェリアさんたちに助けてもらえましたし、何百匹もいるゴブリンの村にオフェリアさんたちが突入せずに済んだので結果的には良かったのかもしれません。

「ねぇねぇ、ローザちゃんだっけ?」
「はい」

 そんなことを考えていたあたしに茶髪に茶色い瞳でショートヘアの女性が話しかけてきました。

「わたしはシルヴィエよ。オフェリア隊長の副官なの。よろしくね?」
「あ、はい」
「今いくつなの? 八つ? 九つ?」
「え? え? えっと、十一です」
「えっ? もうすぐ洗礼なの?」
「ええと、もう、終わってます」
「あら? そう。まあいいわ。でも十一でこんなに小さいなんてダメよ。お姉さんたちがたくさん食べさせてあげるからね」

 完全に子供扱いです。あ、でも実際あたしは子供ですしね。洗礼を受けてはいますがまだ十二歳にはなっていないので未成年ですからね。そこは仕方ないのかもしれませんが、それでも八つや九つは酷いと思います。

「あら? すねちゃったかしら? ごめんなさいね。でもやっぱり体が小さいからお姉さんは心配なの」

 むむむ。そう言われると何だかあたしが悪いような気もしてきました。

「ね。だから、心配しないでお姉さんたちに甘えちゃいなさい」

 そういってあたしはぎゅっと抱きしめられたのでした。

 え? どうだったかですか? えっと、鎧が硬くて少しひんやりしていました。

****

 そのまま荷馬車に揺られること三日、あたし達はものすごく高い壁に囲まれた町にやってきました。

「わぁー、おっきいです!」
「我がオーデルラーヴァはどの国にも属さない独立した都市国家だからな。いざという時のためにも戦への備えはしっかりしているのだ」

 思わず驚いて声をあげたあたしにオフェリアさんがどこか誇らしげにそう言いました。

「隊長。あんまり難しい事言ってもローザちゃんは分からないですよ?」
「む。戦争くらいわかりますよ」
「そっかぁ。ローザちゃんは賢いねぇ」

 あたしがすねてそう言いましたがシルヴィエさんはあたしのことを完全に子供扱いしてきます。もう洗礼も受けましたし来年になれば大人なのに。

 これも孤児院でたくさんご飯を食べられなくて町の子のように背が伸びなかったせいに違いありません。

「やや。オフェリア隊長! お疲れ様です」
「ああ。諸君もお勤めご苦労。通してもらうぞ?」
「ははっ!」

 さすが、隊長さんというだけあってオフェリアさんは顔パスです。あっさりと門をくぐると町のメインストリートを進んでいきます。

「わぁ、すごい!」

 その光景はラポリスクの町とは比べ物になりません。建物の造形はダイナミックなのに整然と並んでいて街並みとしての統一感がしっかりあります。それぞれの建物の壁や柱にはそれはそれは豪華な彫刻が掘り込まれていて、その豪華さに何だか圧倒されてしまいます。

 ラポリスクは雑然とした町でしたし、こんな見事な彫刻はありませんでした。

「ふふふ。そうだろう。ローザはオーデルラーヴァに来るのははじめてか?」
「はい!」
「ここは交易の要衝でもあるからな。各国の商人が行き交いここで取引が行われ、それが税収となってオーデルラーヴァを潤しているのだ」
「隊長。そんなことローザちゃんにはまだ早いですよ?」
「む、そうか。すまなかったな。しばらくはこの景色を楽しんでみているといい」

 えっと、はい。よく分からないですけど賑やかだってことは分かりました。

「ありがとうございます」
「ふ。言葉遣いは立派な大人だな」

 ぶー。もうすぐあたしは大人ですよーだ。
しおりを挟む
感想 118

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。

よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...