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第一章
第21話 探し物を見つけました
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2020/12/15 誤字を修正しました
================
どうもおはようございます。ローザです。昨日は散々な目に遭いました。
せっかく建てたマイホームは壊されるし、親玉ゴブリンに数少ない服のうちの一着をビリビリに引き裂かれるし、それに何より!
あたしの大事なユキとホーちゃんがちょっと怪我しちゃいました。
それからあいつらの死体のせいで辺りは血まみれで、いくらなんでもいつもの場所では寝られないので夜なのに無理して移動してから眠りました。
その間の見張りはホーちゃんがしてくれたのでそこは助かったんですけどね。さすがホーちゃんです。
それにしても、あれだけ頑張って遠くに逃げたのにあたしを追いかけて丘を一つ越えて来るなんて、ゴブリンの執着って恐ろしいですね。気持ち悪い!
やっぱりゴブリンは滅びるべきだと思います。
さて。何とか撃退したとはいえ、もしかしたらまだゴブリンの残党もいるかもしれません。あの辺りは諦めてもっと遠くに逃げたほうが良いと思います。
それにしても、あの場所は気に入っていたので残念です。
また同じように水場へもすぐに行けて平らな場所が見つかれば良いですけど……。
漠然とした不安を覚えつつもあたし達はゴブリンの洞窟から遠ざかる様にゆっくりと移動を開始しました。
あ、一晩中見張りをしてくれたホーちゃんはあたしの肩にとまったまま眠っています。
あたしが歩いて揺れているのに目が覚めないなんて、すごいですよね!
****
そうして森の中を歩いて三日が経ちました。薬草や果物を採取したり見かけたウサギを捕まえたりしながらも何とか丘の上にやってきました。
あ、もちろんあたしがゴブリンの洞窟から逃げてきたときに越えた丘とは別の丘ですよ。
丘の上は少し開けていたので後ろを振り返って見てみると一面緑です。
あ、でも森を抜けてきたんだから当たり前でしたね。
翻って進行方向を見てみると、ええと、はい。やっぱり緑です。あ、でも遠くの方では森が途切れているような気もします。
いっそのことこのまま突っ切って森を抜けててしまうのはどうでしょうか? 森を抜ければゴブリンに追いかけられる心配も減るんじゃないでしょうか?
あ、でもそうするとオーナー様の追手が心配ですし。
うーん。どうしたらいいんでしょう。
「ミャー」
ユキに言われてハッと気付きます。いけません。そろそろ野営の準備をしなくちゃいけない時間でした。
「そうでした。早く野営に良さそうな場所を探しましょう」
「ミャー」
ユキはまるで「わかればよろしい」とでも言いたげな満足そうな様子で小さく鳴きます。
うーん。ユキは本当に賢いですよね。なんだか、時々あたしよりも賢いんじゃないかって思う時もあります。
さすが魔物ですね。
あっといけない。まずは野営する場所を探さなきゃですね。
そう思い直したあたしはゆっくりと丘を下り始めたのでした。
****
今日の野営地は崖に開いていた洞窟です。洞窟に入るのはちょっと怖いんですが、ここはあの饐えたイヤな匂いはしないのでなんとか大丈夫です。
それにそんなに深い洞窟じゃないですし、中には何もいなかったので大丈夫だと思います。
あたしは入り口に切り出した岩を置いて危険な魔物が入ってこられないように塞ぐと魔法の光で明かりを灯します。
洞窟の岩肌はごつごつとして複雑な形をしていて、魔法の光があちこちに陰影を作り出しています。
それに地面に岩がいくつも転がっているので、躓かない様に気を付けないといけませんね。転んで怪我をしたらたいへんですから。
って、あっと!
危ない。そう考えたそばから転ぶところでした。
地面に手をついちゃいましたけどお尻も膝も打ってないのでギリギリセーフです。
あたしが体を起こそうと顔を上げると目の前の岩に妙な違和感があることに気付きました。
違和感の正体が分からないであたしが首を捻っていると、ユキがミャーと心配そうに声をかけてきます。
「え? あ、えっと。怪我をしたわけじゃなくてですね。その、何と言うか、そのあたりの岩が何となく変な気がするんです」
「ミャー?」
ユキはそう言うとトコトコと歩いて行くと、あたしの指さした壁の岩肌をぺろりと舐めました。
「ミ゛ャッ」
なんだかユキが聞いたこともないような声を出すと飛び退ります。舌をでろんと出して不快そうに顔を歪めています。
「ユキ? 大丈夫ですか?」
「ミ゛ャー」
弱っている感じしないので毒ではなさそうですが、それでもよほどイヤだったのでしょう。舌を出したままです。
「えっと、お水いりますか?」
「ミ゛ャー」
これは、多分欲しいってことですよね?
あたしは木のお皿に収納の中に入っている水を注いで差し出します。するとユキはすぐに水をペロペロと飲み始めたのでした。
それにしてもユキのこんな反応ははじめてです。一体どうしたんでしょうか。
「あ、そうでした」
鑑定先生に聞いてみれば分かるかもしれません。というわけで、ユキの舐めた岩肌の事を鑑定してみます。
────
名前:岩塩
説明:大地の中で何らかの原因で塩が固まり結晶となったもの
────
「あー! お塩!」
あたしの声が狭い洞窟内に反響して何だか不思議な感じです。
そしてユキの反応の理由が分かりました。お塩をそのまま舐めたらそれはしょっぱいですよね。
そしてこんなところにあたしの求めていたお塩があるなんて予想外でした。ここは一つ、たくさんもらっていくことにしましょう。そうしましょう。
魔力で刃を作ると岩を切り出す時と同じように慎重に切り出していきます。
まずは目指す場所にさくっと四角形の切り込みを入れます。これで切り出したい岩塩のブロックは奥側だけで繋がっている状態になりました。
そこで、差し込んでいる魔力の刃を横に曲げて、内側の切り離す向きに伸ばします。そして、この伸ばした部分で奥の繋がっている部分を一周させれば、ほら!
きれいに岩塩のブロックが切り出せました。そしてあとはこれを収納すれば、はい。切り出せました。
あたしはそのまま岩塩を五ブロックほど切り出して収納に入れました。ブロック一つは一辺が 20 cm くらいの立方体なのであんまりたくさん取ると他の物が入らなくなっちゃいますからね。
とはいえ、これで今日からはお塩で味付けをした食事が食べられるようになりました。
ふふふ。早速使ってみましょう。
そこの岩塩の欠片を魔力弾で、えい!
上手くいきました。粉々になりました。
そしてこの粉を収納から取り出したウサギ肉にほんの少しだけパラパラとかけます。
それからお祈りをして、食べます。
「ん~~~~~~!!!」
久しぶりの塩味はすごくおいしいです。あの、控えめに言ってですね?
最高です。
「ミャー」
「ピピー」
「ホー」
あ、いけない。お塩が嬉しすぎてみんなの分を忘れていました。慌ててみんなの分のウサギ肉を渡してあげます。
ああ、でも本当に美味しいです。塩味って素晴らしいですね!
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どうもおはようございます。ローザです。昨日は散々な目に遭いました。
せっかく建てたマイホームは壊されるし、親玉ゴブリンに数少ない服のうちの一着をビリビリに引き裂かれるし、それに何より!
あたしの大事なユキとホーちゃんがちょっと怪我しちゃいました。
それからあいつらの死体のせいで辺りは血まみれで、いくらなんでもいつもの場所では寝られないので夜なのに無理して移動してから眠りました。
その間の見張りはホーちゃんがしてくれたのでそこは助かったんですけどね。さすがホーちゃんです。
それにしても、あれだけ頑張って遠くに逃げたのにあたしを追いかけて丘を一つ越えて来るなんて、ゴブリンの執着って恐ろしいですね。気持ち悪い!
やっぱりゴブリンは滅びるべきだと思います。
さて。何とか撃退したとはいえ、もしかしたらまだゴブリンの残党もいるかもしれません。あの辺りは諦めてもっと遠くに逃げたほうが良いと思います。
それにしても、あの場所は気に入っていたので残念です。
また同じように水場へもすぐに行けて平らな場所が見つかれば良いですけど……。
漠然とした不安を覚えつつもあたし達はゴブリンの洞窟から遠ざかる様にゆっくりと移動を開始しました。
あ、一晩中見張りをしてくれたホーちゃんはあたしの肩にとまったまま眠っています。
あたしが歩いて揺れているのに目が覚めないなんて、すごいですよね!
****
そうして森の中を歩いて三日が経ちました。薬草や果物を採取したり見かけたウサギを捕まえたりしながらも何とか丘の上にやってきました。
あ、もちろんあたしがゴブリンの洞窟から逃げてきたときに越えた丘とは別の丘ですよ。
丘の上は少し開けていたので後ろを振り返って見てみると一面緑です。
あ、でも森を抜けてきたんだから当たり前でしたね。
翻って進行方向を見てみると、ええと、はい。やっぱり緑です。あ、でも遠くの方では森が途切れているような気もします。
いっそのことこのまま突っ切って森を抜けててしまうのはどうでしょうか? 森を抜ければゴブリンに追いかけられる心配も減るんじゃないでしょうか?
あ、でもそうするとオーナー様の追手が心配ですし。
うーん。どうしたらいいんでしょう。
「ミャー」
ユキに言われてハッと気付きます。いけません。そろそろ野営の準備をしなくちゃいけない時間でした。
「そうでした。早く野営に良さそうな場所を探しましょう」
「ミャー」
ユキはまるで「わかればよろしい」とでも言いたげな満足そうな様子で小さく鳴きます。
うーん。ユキは本当に賢いですよね。なんだか、時々あたしよりも賢いんじゃないかって思う時もあります。
さすが魔物ですね。
あっといけない。まずは野営する場所を探さなきゃですね。
そう思い直したあたしはゆっくりと丘を下り始めたのでした。
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今日の野営地は崖に開いていた洞窟です。洞窟に入るのはちょっと怖いんですが、ここはあの饐えたイヤな匂いはしないのでなんとか大丈夫です。
それにそんなに深い洞窟じゃないですし、中には何もいなかったので大丈夫だと思います。
あたしは入り口に切り出した岩を置いて危険な魔物が入ってこられないように塞ぐと魔法の光で明かりを灯します。
洞窟の岩肌はごつごつとして複雑な形をしていて、魔法の光があちこちに陰影を作り出しています。
それに地面に岩がいくつも転がっているので、躓かない様に気を付けないといけませんね。転んで怪我をしたらたいへんですから。
って、あっと!
危ない。そう考えたそばから転ぶところでした。
地面に手をついちゃいましたけどお尻も膝も打ってないのでギリギリセーフです。
あたしが体を起こそうと顔を上げると目の前の岩に妙な違和感があることに気付きました。
違和感の正体が分からないであたしが首を捻っていると、ユキがミャーと心配そうに声をかけてきます。
「え? あ、えっと。怪我をしたわけじゃなくてですね。その、何と言うか、そのあたりの岩が何となく変な気がするんです」
「ミャー?」
ユキはそう言うとトコトコと歩いて行くと、あたしの指さした壁の岩肌をぺろりと舐めました。
「ミ゛ャッ」
なんだかユキが聞いたこともないような声を出すと飛び退ります。舌をでろんと出して不快そうに顔を歪めています。
「ユキ? 大丈夫ですか?」
「ミ゛ャー」
弱っている感じしないので毒ではなさそうですが、それでもよほどイヤだったのでしょう。舌を出したままです。
「えっと、お水いりますか?」
「ミ゛ャー」
これは、多分欲しいってことですよね?
あたしは木のお皿に収納の中に入っている水を注いで差し出します。するとユキはすぐに水をペロペロと飲み始めたのでした。
それにしてもユキのこんな反応ははじめてです。一体どうしたんでしょうか。
「あ、そうでした」
鑑定先生に聞いてみれば分かるかもしれません。というわけで、ユキの舐めた岩肌の事を鑑定してみます。
────
名前:岩塩
説明:大地の中で何らかの原因で塩が固まり結晶となったもの
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「あー! お塩!」
あたしの声が狭い洞窟内に反響して何だか不思議な感じです。
そしてユキの反応の理由が分かりました。お塩をそのまま舐めたらそれはしょっぱいですよね。
そしてこんなところにあたしの求めていたお塩があるなんて予想外でした。ここは一つ、たくさんもらっていくことにしましょう。そうしましょう。
魔力で刃を作ると岩を切り出す時と同じように慎重に切り出していきます。
まずは目指す場所にさくっと四角形の切り込みを入れます。これで切り出したい岩塩のブロックは奥側だけで繋がっている状態になりました。
そこで、差し込んでいる魔力の刃を横に曲げて、内側の切り離す向きに伸ばします。そして、この伸ばした部分で奥の繋がっている部分を一周させれば、ほら!
きれいに岩塩のブロックが切り出せました。そしてあとはこれを収納すれば、はい。切り出せました。
あたしはそのまま岩塩を五ブロックほど切り出して収納に入れました。ブロック一つは一辺が 20 cm くらいの立方体なのであんまりたくさん取ると他の物が入らなくなっちゃいますからね。
とはいえ、これで今日からはお塩で味付けをした食事が食べられるようになりました。
ふふふ。早速使ってみましょう。
そこの岩塩の欠片を魔力弾で、えい!
上手くいきました。粉々になりました。
そしてこの粉を収納から取り出したウサギ肉にほんの少しだけパラパラとかけます。
それからお祈りをして、食べます。
「ん~~~~~~!!!」
久しぶりの塩味はすごくおいしいです。あの、控えめに言ってですね?
最高です。
「ミャー」
「ピピー」
「ホー」
あ、いけない。お塩が嬉しすぎてみんなの分を忘れていました。慌ててみんなの分のウサギ肉を渡してあげます。
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