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第一章

第18話 泥棒を捕まえようと思います

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2020/12/13 誤字を修正しました
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 どうもおはようございます。ローザです。

 昨日もあの鳥に食事を盗まれてしまいました。ですが、今日こそはあの泥棒の好きにはさせません。

「ユキ、ピーちゃん。今日こそは、あの泥棒鳥に食事を盗ませませんよ」
「ミャー」
「ピピー」

 あれ? 二人のやる気がイマイチっぽいですね。

「ダメですよ。あたし達の食料なんですから、取られたらあたし達がひもじい思いをすることになりますよ?」
「ミャー」
「ピピッ」

 やっぱりやる気はなさそうですが、さっきよりはやる気になってくれたようです。

 さて、そう前のめりで言ってはみたものの、これといって良い作戦があるわけではありません。

 捕まえるって言っても暗闇の中から音もなく現れて食事を盗んでまた音もなく飛び去るんですから大変です。あんなに動いている鳥に魔力弾も当たる気はしないですし、それにもし当たったら確実に殺しちゃいそうです。

 殺されそうになったならともかく食べ物を盗んでいくくらいで魔力弾はさすがにちょっとやりすぎなような気もします。

 こういう時はやっぱり友達に相談するのが一番ですよね。

「それじゃあ、ユキ、ピーちゃん。あいつに食べ物を盗まれないようにする作戦を考えましょう」
「ミャー?」
「ピピー?」

 う。やっぱり二人のやる気が全然ないですね。

「もしかして、盗まれたのは仕方ないって思ってます?」
「ミャー」
「ピピッ」

 ……そうですか。あたしがボーとしてたからって事ですね。それだったら。

「わかりました。じゃあ、今日の食事はマイホームの中で食べることにしましょう。これならきっと盗まれることは無いはずです」
「ミャー」
「ピピッ」

 賛同を得られました。短いですけど作戦会議はこれで終わりです。さあ、今日も狩猟と採集に出掛けましょう。

****

 夕飯の時間がやってきました。今日はウサギが取れたので丸焼きです。毛皮はピーちゃんにきれいにしてもらいましたよ。

 あ、そうそう。この間ピーちゃんにきれいしてもらった毛皮なんですか、どうも今までのやつより長持ちしている気がします。

 いつもだとすぐに硬くなったり腐ってきたりしていたんですが、不思議ですよね。

 さて、あたしは盛り付けを終えるとお皿に盛り付けた食事を運びます。まずはユキとピーちゃんの食事です。

「はい、どうぞ」

 それから急いで戻ってあたしの食事を持ってきます。

 って、ない!

「あー! また取られたっ! もぉー!」

 ちょっと目を離した隙にお皿の上に盛り付けておいたあたしのお肉はあいつに持っていかれてしまいました。

 むむむ。許すまじです。

****

 またまた夕飯の時間がやってきました。今日はクワの実という果物が採れました。この実は甘酸っぱくてなかなか美味しいんですよね。それにウサギも捕まえられたのでクワの実と一緒に食べることにします。

 いつも通りに丸焼きにするとお皿に盛り付けていきます。

 ですが、今日のあたしは一味違いますよ。盛り付けたお皿を丸ごと収納の中に入れます。

 こうして全員分の食事を収納に入れたあたしは悠々とマイホームの中に入り、久しぶりにあいつに盗まれずにしっかり食べることができたのでした。

 ふふふ。あたしの勝利ですね!

****

 またまた夕食の時間になりました。今日はお魚です。

 え? 同じメニューばっかり食べているって?

 それはそうなんですけど、毎日こうやってお肉かお魚を食べられているのであたしは満足です。

 普段はウサギ肉、鹿肉、お魚でたまに猪肉も食べられますし。そこに果物とかえぐくない野草とかキノコを焼いて付け合わせにしています。

 お鍋が無いので煮物は作れませんし、お塩がないので味気ないのがちょっと残念ですけど、でも孤児院にいた時はカチカチの小さなパン一つとほとんど具の入ってないクズ野菜のスープなんて日がしょっちゅうありましたからね。

 それと比べたらあたしは今の生活で幸せです。それにユキとピーちゃんもいるので寂しくないですし。

 あっと、お魚が焼けましたね。それじゃあ、火から遠ざけてって、あ!

 あいつが来てますね。あたしが火から遠ざけたところを狙おうとこっちに飛んできています。

 日も沈んで薄暗くなっている森の上空を小さなミミズクっぽい鳥があたしの方に向かって飛んできています。

 ですが、あたしは慌てません。お魚を焼く串ごとまとめて収納に入れます。

「残念でしたね。このお魚はあたしたちの食事ですからあなたにはあげられません」

 そしてすぐそばに転がっていた細い木の枝を振り上げて威嚇します。

 すると諦めてくれたのか、ミミズクっぽい鳥はそのまま森の奥へと消えていったのでした。

 ふふふ。今回も大勝利ですね。

****

 それから三日が経ちました。調理が終わったら収納に入れてマイホームに運ぶ作戦が見事にはまり、あいつとの勝負はあたしの白星が先行しています。

 もうそろそろ諦めてくれると良いんですけどね。

 それとですね。最近はあいつが来たことが何となく分かる様になりました。だって、いつも同じ木の上から飛んでくるんですよ。だからそこを気にしていれば見つけられるという寸法です。

 それにしても、今日は来るのが随分と早いですね。

 ですが、もうあいつの行動パターンは分かりました。そして火に近づかないようなのでやっぱり怖がっているという事なんでしょう。

 あたしはさっと火をおこすと今日の獲物であるウサギを焼いていきます。遠火でじっくりとあぶるいつもの調理です。

 さて、その間に付け合わせのバジルをと思った丁度その時でした。

 なんと、あいつが火にあぶられている肉を鷲掴みにするとそのまま火の上に渡している棒ごと持って行ったではないですか。

 ドサッと音を立てて棒を支えていた柱が倒れます。そしてあいつは棒が予想外に重かったのか、いつものようにすぐに高く飛び上がるのではなく低空をよろよろと飛んでいます。

「ま、待ちなさい!」

 あたしが慌てて走り出し、そしてあたしの隣をユキがものすごいスピードで走って追い抜いて行きました。

「シャーッ」

 ユキはジャンプすると棒に飛びつきました。そしてそれでもお肉を手放さないあいつはそのままバランスを崩して地面に落下しました。

 派手に落下したユキとあいつは地面を何回か転がり、そしてユキが素早く起き上がるとあいつの上にのしかかりました。

 そんなユキに対してあいつは暴れる様子もなく取り押さえられています。

 あれ? おかしいですね。何だかもっと抵抗すると思っていましたけど。

「ユキ。お手柄です!」
「ミャー」

 どうだと言わんばかりにユキが返事をしてきました。さすがユキです。

 そんなユキに組み敷かれている小憎たらしいあいつはどうやらフクロウ、いえ耳のような角のような羽が頭にあるのでミミズクだったようです。

 そしてそのミミズクですが、何やらどうもぐったりしていて元気がありません。それにすごく痩せこけているように見えます。

 何だかこのまま放っておいたら死んじゃいそうですし、何だかんだ言ってここ数日の知恵比べは楽しかったんですよね。

 あ、でも鳥の丸焼きにしたら美味しいかもしれません。

 これは……悩ましいです。
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