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第一章
第10話 一人は寂しいのです
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2020/12/08 誤字を修正しました
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どうもおはようございます。ローザです。昨日はウサギのお肉をお腹いっぱいになるまで食べてしまいました。
まさか満腹になるという事がこんなに幸せなことだとは思いませんでした。夢が一つ叶って幸せです。
さて、今日はですね。あの子猫ちゃんにご飯をあげに行こうと思います。
え? 食料も少ないのに野良猫に餌をあげるなんてもったいない、ですか?
えっと、それを言われるとぐうの音も出ないんですがね。ただ、あたしが孤児院を出てもうかなり経ってるじゃないですか。いい加減、誰かと話したいなーって思ってきたわけなんですよ。
はい。そうです。あたし、寂しいんです。今までずっと何十人もいる中で生活してきたのに、いきなり一人で誰とも喋らずにっていうのが段々耐えられなくなってきたんですよ。
かといって、ラポリスクの孤児院に帰ったらオーナー様に見つかって奴隷にされるかもしれないですし、そもそももうラポリスクにどうやって行ったらいいのかも分からないですからね。
それにそもそもほとぼりが冷めるまでは人里に行くのは難しいでしょう。
そこで、あの子猫ちゃんが懐いてくれれば寂しくないかなって思ったんです。
というわけで、あの子猫ちゃんのいた場所に行ってみましょう。貢物のビワと昨日の残りのウサギ肉も持ちました。
では、行ってみましょー! おー!
****
昨日、子猫ちゃんがいた茂みの前にやってきました。あの子はまだいるでしょうか?
あたしはそーっと茂みをかき分けて中の様子を伺います。
いました!
あれ? でも様子がおかしいような?
ぐったりと地面に横たわっています。あたしを見て警戒している様子ではありますが、昨日みたいにシャーッって威嚇してきません。
あ! 血が!
子猫ちゃんの背中に何かで刺されたような傷があって、そこから血が滲んでいます。
ハッとして辺りを見回すと、すぐ近くにあの角の生えているウサギがいるではありませんか!
そしてそいつは角をあたしに向けて突撃してきました。
「魔力弾!」
あたしはとっさに魔力弾を三発打ち込み、そのうちの一発がウサギの顔面を正面から撃ち抜きました。
やりました。意図せずお肉のおかわりをゲットしました。
「子猫ちゃん。あたしが悪いウサギは退治しましたからもう大丈夫ですよ」
そうは言ったものの、どうしましょう。
やっぱりこのままここに放置する訳にもいかないですよね。
ということはですね。そうです。そうですよね。ここは一つ、この子を連れて帰っちゃいましょう。そうしましょう。
うん。手当てするためなんだから仕方ないですよね。
あたしは仕留めたウサギを収納にしまうと子猫ちゃんにそっと手を伸ばします。
やっぱり口を開けて威嚇しようとしていますがほとんど元気がありません。
ああ、こんなに弱ってしまって。今手当てしてあげますからね。
あたしはそっと子猫を捕まえるとそのまま拠点まで戻ったのでした。
****
帰ってくるまでの道のりはちょっと大変でしたが、なんとか無事に子猫ちゃんを連れて帰ることができました。
いや、だって。子猫ちゃんが途中で逃げ出そうとして暴れたりあたしの指を噛んだりしたんですから。しかも暴れた後は余計にぐったりしちゃってましたし。
とはいえ、拠点まで連れてくることができましたので早速お手当です。まずは水で背中の傷を洗って、それから自生していた薬草を石ですり潰しただけの簡単なお薬を傷口に塗ってあげます。
その時はギャーと痛そうな叫び声を上げていましたが仕方ありません。こうしてあげないと多分この子は死んじゃいますから。
あとはあたしが昨日剥ぎ取ったウサギの毛皮の上に子猫ちゃんを乗せて安静にしてもらうだけです。
毛皮の上に乗った子猫ちゃんはそのふわふわの毛に気持ちよくなったのか、すぐにうつらうつらと船を漕ぎ始め、そしてコテンと眠りについたのでした。
きっと、すごく疲れていたんでしょうね。
こんなに小さな体でウサギの角で刺されたんでしょうから、よく頑張ったと思います。
あたしはそっと子猫ちゃんの頭を撫でてみます。
ああ、最高です! これが猫を撫でるってことなんですね!
すごい!
さっきまで抱っこして運んできたとはいえ、あたしも焦っていたので堪能する余裕なんてありませんでした。なので、これが初のなでなでです。
それにしても最高の手触りですね。お金持ちが猫を飼いたがる理由がよく分かりました。
ああ、もう! この子、このままあたしの子になってくれないですかね?
もう、名前とかつけても良いですよね?
真っ白だからシロ? いえ、さすがに安直すぎますよね。白と言えば、雪でしょうか?
じゃあユキにしましょう。そうしましょう。
それじゃあ、ユキ。一日も早く元気になって下さいね。
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明日も 12:00 と 20:00 の二回更新となります。
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どうもおはようございます。ローザです。昨日はウサギのお肉をお腹いっぱいになるまで食べてしまいました。
まさか満腹になるという事がこんなに幸せなことだとは思いませんでした。夢が一つ叶って幸せです。
さて、今日はですね。あの子猫ちゃんにご飯をあげに行こうと思います。
え? 食料も少ないのに野良猫に餌をあげるなんてもったいない、ですか?
えっと、それを言われるとぐうの音も出ないんですがね。ただ、あたしが孤児院を出てもうかなり経ってるじゃないですか。いい加減、誰かと話したいなーって思ってきたわけなんですよ。
はい。そうです。あたし、寂しいんです。今までずっと何十人もいる中で生活してきたのに、いきなり一人で誰とも喋らずにっていうのが段々耐えられなくなってきたんですよ。
かといって、ラポリスクの孤児院に帰ったらオーナー様に見つかって奴隷にされるかもしれないですし、そもそももうラポリスクにどうやって行ったらいいのかも分からないですからね。
それにそもそもほとぼりが冷めるまでは人里に行くのは難しいでしょう。
そこで、あの子猫ちゃんが懐いてくれれば寂しくないかなって思ったんです。
というわけで、あの子猫ちゃんのいた場所に行ってみましょう。貢物のビワと昨日の残りのウサギ肉も持ちました。
では、行ってみましょー! おー!
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昨日、子猫ちゃんがいた茂みの前にやってきました。あの子はまだいるでしょうか?
あたしはそーっと茂みをかき分けて中の様子を伺います。
いました!
あれ? でも様子がおかしいような?
ぐったりと地面に横たわっています。あたしを見て警戒している様子ではありますが、昨日みたいにシャーッって威嚇してきません。
あ! 血が!
子猫ちゃんの背中に何かで刺されたような傷があって、そこから血が滲んでいます。
ハッとして辺りを見回すと、すぐ近くにあの角の生えているウサギがいるではありませんか!
そしてそいつは角をあたしに向けて突撃してきました。
「魔力弾!」
あたしはとっさに魔力弾を三発打ち込み、そのうちの一発がウサギの顔面を正面から撃ち抜きました。
やりました。意図せずお肉のおかわりをゲットしました。
「子猫ちゃん。あたしが悪いウサギは退治しましたからもう大丈夫ですよ」
そうは言ったものの、どうしましょう。
やっぱりこのままここに放置する訳にもいかないですよね。
ということはですね。そうです。そうですよね。ここは一つ、この子を連れて帰っちゃいましょう。そうしましょう。
うん。手当てするためなんだから仕方ないですよね。
あたしは仕留めたウサギを収納にしまうと子猫ちゃんにそっと手を伸ばします。
やっぱり口を開けて威嚇しようとしていますがほとんど元気がありません。
ああ、こんなに弱ってしまって。今手当てしてあげますからね。
あたしはそっと子猫を捕まえるとそのまま拠点まで戻ったのでした。
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帰ってくるまでの道のりはちょっと大変でしたが、なんとか無事に子猫ちゃんを連れて帰ることができました。
いや、だって。子猫ちゃんが途中で逃げ出そうとして暴れたりあたしの指を噛んだりしたんですから。しかも暴れた後は余計にぐったりしちゃってましたし。
とはいえ、拠点まで連れてくることができましたので早速お手当です。まずは水で背中の傷を洗って、それから自生していた薬草を石ですり潰しただけの簡単なお薬を傷口に塗ってあげます。
その時はギャーと痛そうな叫び声を上げていましたが仕方ありません。こうしてあげないと多分この子は死んじゃいますから。
あとはあたしが昨日剥ぎ取ったウサギの毛皮の上に子猫ちゃんを乗せて安静にしてもらうだけです。
毛皮の上に乗った子猫ちゃんはそのふわふわの毛に気持ちよくなったのか、すぐにうつらうつらと船を漕ぎ始め、そしてコテンと眠りについたのでした。
きっと、すごく疲れていたんでしょうね。
こんなに小さな体でウサギの角で刺されたんでしょうから、よく頑張ったと思います。
あたしはそっと子猫ちゃんの頭を撫でてみます。
ああ、最高です! これが猫を撫でるってことなんですね!
すごい!
さっきまで抱っこして運んできたとはいえ、あたしも焦っていたので堪能する余裕なんてありませんでした。なので、これが初のなでなでです。
それにしても最高の手触りですね。お金持ちが猫を飼いたがる理由がよく分かりました。
ああ、もう! この子、このままあたしの子になってくれないですかね?
もう、名前とかつけても良いですよね?
真っ白だからシロ? いえ、さすがに安直すぎますよね。白と言えば、雪でしょうか?
じゃあユキにしましょう。そうしましょう。
それじゃあ、ユキ。一日も早く元気になって下さいね。
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