5 / 261
第一章
第5話 甘い果物を見つけました
しおりを挟む
2020/12/18 誤字を修正しました
2020/12/30 誤字を修正しました
================
「はぁ、はぁ、はぁ」
今までで一番走ったような気がします。ゴブリンの根城からどうやって走ってきたのかよく覚えていませんが、気付けば小川のそばにいました。
これで逃げ切れたんでしょうか?
それともあの凄惨な同士討ちを生き残ったゴブリンがあたしを捕まえにやってくるんでしょうか?
ゴブリンがやってくるところを想像するとあの恐怖が蘇り、背筋に悪寒が走ります。
今回はとんでもない幸運のおかげでどうにかなりましたが、次は絶対ないだろうと断言できます。
これは、やっぱりもっと逃げておいた方が良いですよね?
うん。そうしよう。そうしましょう。
あ、でもその前に水を。
そのまま川の水面に口をつけてごくごくと飲みます。
うん。美味しい! 冷たくて澄んでいて、すごくおいしいです。
ゴブリンに飲まされたあの毒の水、捕まっていた時は気づきませんでしたけど今にして思えば変な味がしていましたね。
これから先もこんな美味しい水を飲みたいですし、って、そうだ! あたし、【収納】なんていうスキルを貰っていたんでした。
あれ? でも水って入るんでしょうか。
うーん?
・
・
・
試しにやってみましょう。
「収納!」
あたしが入れようと思った分だけまとめて小川の水が一瞬で無くなりました。もちろん、上流から流れてきた水ですぐに小川は元通りになりましたけどね。
これって、収納の中に水が入っているんですよね? じゃあ、取り出すとどうなるんでしょうか?
「えっと、取り出し?」
そう呟いて収納から水を取り出そうとすると中に入っていた水が周りに撒き散らされ、あたしの周りが水浸しになってしまいました。
どうやら中に入っている水をまとめて全部出してしまったみたいです。
そこであたしは気付きました。
「あたしの着替え!」
そうなんです。実は、孤児院を出発する時にあたしの服とかを少し持ち出していたんです。だって、最初はオーナー様の迎えが来る前に孤児院から逃げ出すつもりだったんですから。
あたしは慌てて着替えの服を一つ取り出します。
「あれ? 乾いている? 何でですか?」
収納の中でびしょ濡れになっていると思ったあたしの服は全く濡れていません。
ええと、これはどういう事なんでしょう?
うーん?
はい。あたしに分かるわけありませんね。とりあえず、水を収納に入れても濡れないみたいです。
よくわかりませんけど、すごい!
というわけで、遠慮なく水を収納して出発することにします。
ゴブリンが追いかけてきたらイヤですからね。
それではまた!
****
どうもこんにちは。ローザです。
あれからもう五日も慣れない森の中を歩きました。ちょっとした丘を越えたのでさすがにもうあのゴブリンのテリトリーは抜けたんじゃないかと思います。
ここまでの道中は野イチゴなんかを食べて何とか飢えを凌いでいました。
そしてあたしは今、オレンジ色の甘い果物のなっている木を見つけたんです。【鑑定】スキルによると、ビワっていう名前の食べられる果物らしいですよ?
と、いうわけで登って採ってこようと思います。
え? 登れるわけないですか?
いえいえ。そんなに大きな木じゃないですし、低いところで二股に分かれているから登りやすいですよ?
それに孤児院の木はこのビワの木よりも登りにくかったですし。
ほら、孤児院って基本的に遊ぶものが無いじゃないですか。だから女の子だって木登りはするんです。
それに、いじめっ子の二人から逃げて木の上で見つからないようにしていたっていうのもありますからね。
と、まあそんなわけですので、行ってきます。
あたしは二股になっているところに手をかけるとよいしょと体を持ち上げ、そしてすいすいと登っていくとすぐに実のなっている場所まで登ってきました。
そして黄色っぽいオレンジ色の実をもぐと口にパクリと含みます。
「あ、あま~いっ!」
思わず声が出てしまいました。孤児院では果物なんて食べたことなかったんですけど、果物ってこんなに甘かったんですね。
これまでに食べた野イチゴも甘酸っぱくてびっくりしましたけど、それとは比べ物にならないほど美味しいです。こんなに美味しいものが食べられるなら森で暮らすのも悪くないかもしれません。
ただ、あたしはまだ火を熾せていないんですよね。孤児院ではみんな着火の魔道具を使ってたので、魔道具無しでどうやって火を熾せばいいのか分からないんです。火さえあればキノコが食べられますので食生活もかなり安定すると思うんですよね。
あーあ。あたしに火属性魔法の適性があればいいんですけどね。
あたしはそんなことを考えつながらもビワをもう一つ口に運びます。
「んー、甘い~」
あまりのおいしさに二個目だというのについ声が出てしまいます。
そしてこの甘くて幸せな感覚の中ふと閃きました。
もしかしたら自分を鑑定すれば適性が分かるかもしれない、と。
あたしはドキドキしながら自分に鑑定を使ってみました。
するとその結果はあたしの予想を遥かに越えたものだったのでした。
2020/12/30 誤字を修正しました
================
「はぁ、はぁ、はぁ」
今までで一番走ったような気がします。ゴブリンの根城からどうやって走ってきたのかよく覚えていませんが、気付けば小川のそばにいました。
これで逃げ切れたんでしょうか?
それともあの凄惨な同士討ちを生き残ったゴブリンがあたしを捕まえにやってくるんでしょうか?
ゴブリンがやってくるところを想像するとあの恐怖が蘇り、背筋に悪寒が走ります。
今回はとんでもない幸運のおかげでどうにかなりましたが、次は絶対ないだろうと断言できます。
これは、やっぱりもっと逃げておいた方が良いですよね?
うん。そうしよう。そうしましょう。
あ、でもその前に水を。
そのまま川の水面に口をつけてごくごくと飲みます。
うん。美味しい! 冷たくて澄んでいて、すごくおいしいです。
ゴブリンに飲まされたあの毒の水、捕まっていた時は気づきませんでしたけど今にして思えば変な味がしていましたね。
これから先もこんな美味しい水を飲みたいですし、って、そうだ! あたし、【収納】なんていうスキルを貰っていたんでした。
あれ? でも水って入るんでしょうか。
うーん?
・
・
・
試しにやってみましょう。
「収納!」
あたしが入れようと思った分だけまとめて小川の水が一瞬で無くなりました。もちろん、上流から流れてきた水ですぐに小川は元通りになりましたけどね。
これって、収納の中に水が入っているんですよね? じゃあ、取り出すとどうなるんでしょうか?
「えっと、取り出し?」
そう呟いて収納から水を取り出そうとすると中に入っていた水が周りに撒き散らされ、あたしの周りが水浸しになってしまいました。
どうやら中に入っている水をまとめて全部出してしまったみたいです。
そこであたしは気付きました。
「あたしの着替え!」
そうなんです。実は、孤児院を出発する時にあたしの服とかを少し持ち出していたんです。だって、最初はオーナー様の迎えが来る前に孤児院から逃げ出すつもりだったんですから。
あたしは慌てて着替えの服を一つ取り出します。
「あれ? 乾いている? 何でですか?」
収納の中でびしょ濡れになっていると思ったあたしの服は全く濡れていません。
ええと、これはどういう事なんでしょう?
うーん?
はい。あたしに分かるわけありませんね。とりあえず、水を収納に入れても濡れないみたいです。
よくわかりませんけど、すごい!
というわけで、遠慮なく水を収納して出発することにします。
ゴブリンが追いかけてきたらイヤですからね。
それではまた!
****
どうもこんにちは。ローザです。
あれからもう五日も慣れない森の中を歩きました。ちょっとした丘を越えたのでさすがにもうあのゴブリンのテリトリーは抜けたんじゃないかと思います。
ここまでの道中は野イチゴなんかを食べて何とか飢えを凌いでいました。
そしてあたしは今、オレンジ色の甘い果物のなっている木を見つけたんです。【鑑定】スキルによると、ビワっていう名前の食べられる果物らしいですよ?
と、いうわけで登って採ってこようと思います。
え? 登れるわけないですか?
いえいえ。そんなに大きな木じゃないですし、低いところで二股に分かれているから登りやすいですよ?
それに孤児院の木はこのビワの木よりも登りにくかったですし。
ほら、孤児院って基本的に遊ぶものが無いじゃないですか。だから女の子だって木登りはするんです。
それに、いじめっ子の二人から逃げて木の上で見つからないようにしていたっていうのもありますからね。
と、まあそんなわけですので、行ってきます。
あたしは二股になっているところに手をかけるとよいしょと体を持ち上げ、そしてすいすいと登っていくとすぐに実のなっている場所まで登ってきました。
そして黄色っぽいオレンジ色の実をもぐと口にパクリと含みます。
「あ、あま~いっ!」
思わず声が出てしまいました。孤児院では果物なんて食べたことなかったんですけど、果物ってこんなに甘かったんですね。
これまでに食べた野イチゴも甘酸っぱくてびっくりしましたけど、それとは比べ物にならないほど美味しいです。こんなに美味しいものが食べられるなら森で暮らすのも悪くないかもしれません。
ただ、あたしはまだ火を熾せていないんですよね。孤児院ではみんな着火の魔道具を使ってたので、魔道具無しでどうやって火を熾せばいいのか分からないんです。火さえあればキノコが食べられますので食生活もかなり安定すると思うんですよね。
あーあ。あたしに火属性魔法の適性があればいいんですけどね。
あたしはそんなことを考えつながらもビワをもう一つ口に運びます。
「んー、甘い~」
あまりのおいしさに二個目だというのについ声が出てしまいます。
そしてこの甘くて幸せな感覚の中ふと閃きました。
もしかしたら自分を鑑定すれば適性が分かるかもしれない、と。
あたしはドキドキしながら自分に鑑定を使ってみました。
するとその結果はあたしの予想を遥かに越えたものだったのでした。
101
お気に入りに追加
974
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜
楠ノ木雫
ファンタジー
孤児院で暮らしていた女の子リンティの元へ、とある男達が訪ねてきた。その者達が所持していたものには、この国の紋章が刻まれていた。そう、この国の皇城から来た者達だった。その者達は、この国の皇女を捜しに来ていたようで、リンティを見た瞬間間違いなく彼女が皇女だと言い出した。
言い合いになってしまったが、リンティは皇城に行く事に。だが、この国の皇帝の二つ名が〝冷血の最強皇帝〟。そして、タイミング悪く首を撥ねている瞬間を目の当たりに。
こんな無慈悲の皇帝が自分の父。そんな事実が信じられないリンティ。だけど、あれ? 皇帝が、ぬいぐるみをプレゼントしてくれた?
リンティがこの城に来てから、どんどん皇帝がおかしくなっていく姿を目の当たりにする周りの者達も困惑。一体どうなっているのだろうか?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる