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聖女の旅路
第十三章第17話 アーユトール風焼きそば
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べクックの町はさながら労働者たちの町といったところだろうか?
通りにはやたらと体格のいい男たちがたくさん歩いている。
彼らは動きやすい格好をしており、あちこちに泥などの汚れがついている。
もしかして彼らは外での仕事を終えて戻ってきたところだろうか?
男たちは皆同じ方向へと向かって歩いており、例のいい匂いもそちらから漂ってきている。
「あっちですね」
「はいっ!」
美味しいものが食べられそうだということでテンションの高いルーちゃんを先頭に、私たちは男たちと同じ方へと歩きだす。
男たちはちらちらとこちらを見てくるが、これだけぞろぞろと護衛の兵士を引き連れているのだから無理もないだろう。ああ、それに私たちがあきらかに外国人だということもあるかもしれない。歩いている人たちは私たち以外全員黒目黒髪だ。レッドスカイ帝国もゴールデンサン巫国もそうだったのだが、彼らと比べると肌が少し浅黒い。
やはり南のほうは日差しが強いため、肌の色が濃くなるのだろう。
あれ? でもホワイトムーン王国だってそれなりに南な気はするね。
うーん?
そんなどうでもいいことを考えつつ歩いていると、屋台がずらりと並んだ場所にやってきた。
なるほど。あの美味しそうな匂いの発生源はここだったのか。
「姉さま、あれが美味しそうですっ!」
ルーちゃんはそう言うと屋台街の中ほどにある、十人ほどが並んでいる屋台の前へとやってきた。
ううん、なんともおいしそうな匂いだ。色々な屋台からの匂いが混ざっているが、あの屋台から漂ってくる匂いは……エビの香りかな?
それになんとも独特な匂いもする。
そうしていると、すぐにルーちゃんと護衛の兵士の人が四人分のお皿を持ってきてくれた。
「姉さま、あのテーブルに座って食べるみたいですよっ!」
ルーちゃんの指さすほうにテーブルはあるが、かなりの混雑具合のため開いている場所がない。
「聖女様、もうしわけございません。今すぐにどくように――」
「待ってください。空いている席を探しましょう。空いてなくても相席すればきっと座れますよ」
「えっ!?」
兵士の人は驚いているが、私を一体なんだと思っているのだろうか?
もしかして、先に座っている人をどかして席を奪い取るような人間だとでも思われているのだろうか?
どこかに開いている場所はないかと見回すと、大きなテーブルの一角にちょうど四人が座れそうなスペースがある。
「あ、あそこに四人、座れそうですね」
「そうですね。交渉して参ります」
クリスさんがすぐにその席に駆け寄り、何かを話している。すぐにクリスさんは座れることを身振りで教えてくれた。
「失礼します」
私たちが着席すると、相席する相手の男性たちがぎょっとした表情でこちらを見てくる。
「あれ? 何かありましたか?」
「い、いや……こんな小汚ぇ場所にこんな上品な嬢ちゃんたちが来るなんて思ってなくてよ」
「ホテルにいたんですが、このとても美味しそうな香り釣られてきてしまいました」
「お、おう。しかも一発目でチャダのオヤジのパッタイを頼むたぁ中々だな」
「有名なお店なんですか?」
「おうよ。チャダの親父のパッタイといやぁ、このべクック屋台街でも一番ってぇ評判だからな」
「そうなんですね」
私はテーブルに置いたパッタイという食べ物をじっと観察してみる。
見たところ、これは焼きそばのようだ。なんのソースかは分からないが茶色い調味料で炒めてあり、麺が透明なのが特徴だ。
あ! そうか! これはお米の麺だ。ええと、あれはなんという名前だったっけ?
……思い出せないのがもどかしいが、具は豚肉と小エビ、ニラ、もやし、玉ねぎ、そして玉子だ。
よし、まずはこの名前を思い出せないお米の麺からいただこう。
んんっ! これは……なんとも独特な歯ごたえだ。むちっとしたものすごいコシがあり、この食感がなんとも堪らない。味付けはやや甘めだが、塩味と酸味、さらに複雑な出汁のうま味が絶妙に混ざっている。それと、この独特の香りは一体……?
あ! 分かった。これは魚醤だ。今まで食べたものとはちょっと違った香りだが、魚醤に違いない。イヤな臭みはなく、他の味付けの引き立て役としてきっちりといい仕事をしている。
よし、次は小エビをいただこう。
うん。これも中々だ。小エビはプリプリしており、噛めばじゅわりとエビの汁が溢れてくる。そしてそれがパッタイ全体に付けられた味と混ざりあい、なんともいい塩梅だ。屋台の食事として提供されているのにこのクオリティというのは素晴らしい。
続いて豚肉、ニラ、もやしと次々に口に放り込む。
うんうん、いいね。油が多めの豚肉とこの味付けがまたよく合う。それにニラの香りともやしのシャキシャキ感もたまらない。
そうだね。なんというか、これぞファストフードといった感じだ。これ以上食べると夜食べられなくなってしまうので残りはルーちゃんにあげることにするが、夜ごはんがないならこれだけで十分かも知れない。
「なんだい? もう食べねぇのかい?」
「はい。私は小食ですので。はい、ルーちゃん。お願いします」
「わーいっ!」
ルーちゃんはもうすでに食べ終えており、私の残りもあっという間に食べてしまったのだった。
通りにはやたらと体格のいい男たちがたくさん歩いている。
彼らは動きやすい格好をしており、あちこちに泥などの汚れがついている。
もしかして彼らは外での仕事を終えて戻ってきたところだろうか?
男たちは皆同じ方向へと向かって歩いており、例のいい匂いもそちらから漂ってきている。
「あっちですね」
「はいっ!」
美味しいものが食べられそうだということでテンションの高いルーちゃんを先頭に、私たちは男たちと同じ方へと歩きだす。
男たちはちらちらとこちらを見てくるが、これだけぞろぞろと護衛の兵士を引き連れているのだから無理もないだろう。ああ、それに私たちがあきらかに外国人だということもあるかもしれない。歩いている人たちは私たち以外全員黒目黒髪だ。レッドスカイ帝国もゴールデンサン巫国もそうだったのだが、彼らと比べると肌が少し浅黒い。
やはり南のほうは日差しが強いため、肌の色が濃くなるのだろう。
あれ? でもホワイトムーン王国だってそれなりに南な気はするね。
うーん?
そんなどうでもいいことを考えつつ歩いていると、屋台がずらりと並んだ場所にやってきた。
なるほど。あの美味しそうな匂いの発生源はここだったのか。
「姉さま、あれが美味しそうですっ!」
ルーちゃんはそう言うと屋台街の中ほどにある、十人ほどが並んでいる屋台の前へとやってきた。
ううん、なんともおいしそうな匂いだ。色々な屋台からの匂いが混ざっているが、あの屋台から漂ってくる匂いは……エビの香りかな?
それになんとも独特な匂いもする。
そうしていると、すぐにルーちゃんと護衛の兵士の人が四人分のお皿を持ってきてくれた。
「姉さま、あのテーブルに座って食べるみたいですよっ!」
ルーちゃんの指さすほうにテーブルはあるが、かなりの混雑具合のため開いている場所がない。
「聖女様、もうしわけございません。今すぐにどくように――」
「待ってください。空いている席を探しましょう。空いてなくても相席すればきっと座れますよ」
「えっ!?」
兵士の人は驚いているが、私を一体なんだと思っているのだろうか?
もしかして、先に座っている人をどかして席を奪い取るような人間だとでも思われているのだろうか?
どこかに開いている場所はないかと見回すと、大きなテーブルの一角にちょうど四人が座れそうなスペースがある。
「あ、あそこに四人、座れそうですね」
「そうですね。交渉して参ります」
クリスさんがすぐにその席に駆け寄り、何かを話している。すぐにクリスさんは座れることを身振りで教えてくれた。
「失礼します」
私たちが着席すると、相席する相手の男性たちがぎょっとした表情でこちらを見てくる。
「あれ? 何かありましたか?」
「い、いや……こんな小汚ぇ場所にこんな上品な嬢ちゃんたちが来るなんて思ってなくてよ」
「ホテルにいたんですが、このとても美味しそうな香り釣られてきてしまいました」
「お、おう。しかも一発目でチャダのオヤジのパッタイを頼むたぁ中々だな」
「有名なお店なんですか?」
「おうよ。チャダの親父のパッタイといやぁ、このべクック屋台街でも一番ってぇ評判だからな」
「そうなんですね」
私はテーブルに置いたパッタイという食べ物をじっと観察してみる。
見たところ、これは焼きそばのようだ。なんのソースかは分からないが茶色い調味料で炒めてあり、麺が透明なのが特徴だ。
あ! そうか! これはお米の麺だ。ええと、あれはなんという名前だったっけ?
……思い出せないのがもどかしいが、具は豚肉と小エビ、ニラ、もやし、玉ねぎ、そして玉子だ。
よし、まずはこの名前を思い出せないお米の麺からいただこう。
んんっ! これは……なんとも独特な歯ごたえだ。むちっとしたものすごいコシがあり、この食感がなんとも堪らない。味付けはやや甘めだが、塩味と酸味、さらに複雑な出汁のうま味が絶妙に混ざっている。それと、この独特の香りは一体……?
あ! 分かった。これは魚醤だ。今まで食べたものとはちょっと違った香りだが、魚醤に違いない。イヤな臭みはなく、他の味付けの引き立て役としてきっちりといい仕事をしている。
よし、次は小エビをいただこう。
うん。これも中々だ。小エビはプリプリしており、噛めばじゅわりとエビの汁が溢れてくる。そしてそれがパッタイ全体に付けられた味と混ざりあい、なんともいい塩梅だ。屋台の食事として提供されているのにこのクオリティというのは素晴らしい。
続いて豚肉、ニラ、もやしと次々に口に放り込む。
うんうん、いいね。油が多めの豚肉とこの味付けがまたよく合う。それにニラの香りともやしのシャキシャキ感もたまらない。
そうだね。なんというか、これぞファストフードといった感じだ。これ以上食べると夜食べられなくなってしまうので残りはルーちゃんにあげることにするが、夜ごはんがないならこれだけで十分かも知れない。
「なんだい? もう食べねぇのかい?」
「はい。私は小食ですので。はい、ルーちゃん。お願いします」
「わーいっ!」
ルーちゃんはもうすでに食べ終えており、私の残りもあっという間に食べてしまったのだった。
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