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正義と武と吸血鬼
第十二章第17話 ミサキへ
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それから二日後、アニキさんが一人の船長さんを連れて私たちの部屋を訪ねてきた。
「皆さん、この男がゴールデンサン巫国の船長チカナガ・コウノでやす」
「チカナガ・コウノだ。嬢ちゃんたちか? 俺の船に乗せて欲しいってのは」
「そうでござる。拙者はミヤコのシズク・ミエシロでござる」
「フィーネ・アルジェンタータです」
「クリスティーナだ。それとこの子はルミアだ」
「おう。だがタダでって……ん? フィーネ・アルジェンタータ? って、もしかしてあの?」
ん? あのってなんだ?
よく分からずに首をかしげていると、チカナガさんがさらに質問をしてくる。
「嬢ちゃん、もしかしてスイキョウ様の?」
「え? ああ、はい。その話でしたら多分そうですね」
「そういうことか。分かった。そんならお代は要らねぇ。嬢ちゃんたちを運んだってだけで元は取れる」
「はぁ。ありがとうございます」
元が取れるって、一体なんの話だろうか?
よく分からないが私たちはチカナガさんの船にタダで乗せてもらえることになったのだった。
◆◇◆
チカナガさんの船団は大量の荷物を積み込み、シュアンユーの港を出港した。積み荷は生糸や絹織物、陶磁器、香辛料といったで、ゴールデンサン巫国からの輸出品は硫黄や銅などの鉱物のほか、干しアワビや干しナマコなどといった海産物の干物もあるのだそうだ。
密貿易と言っても別に怪しげな商品を運んでいるわけではなく、正規ではないルートで取引をしているということなのだろう。
航海は至って順調で、魔物に襲われることもなく私たちは予定どおりサキモリの港が見えるところまでやってきた。
……ん? なんだかサキモリの港の様子がおかしいような?
じっと目を凝らして見てみると、どうやら町のあちこちで工事をしているようだ。
ええと? 再開発でもするのかな?
そんなことを思ってみていると、サキモリの港から一艘の小舟がこちらに近づいてくる。
「止まりなさい!」
「こちらはコウノ商会第一船団の団長チカナガ・コウノだ! シュアンユーより交易品を持ち帰った! 入港許可を願いたい!」
「……コウノ商会第一船団の情報を確認した! だがサキモリへの入港は許可できない! 現在、サキモリの港は封鎖されており、いかなる船の入港も許可していない! コウノ商会第一船団はミサキへと向かうように」
「なんだって!? 一体なんで!」
「上からの命令である! 入港は認めない! ミサキへと向かうように!」
「くっ! 仕方ない。了解した! コウノ商会第一船団はこれよりミサキへと進路を変える。面舵一杯!」
何だかよくわからないが、あの工事と何か関係があるのだろうか?
水炊きと豚骨ラーメンを楽しみにしていたのだが……仕方がない。
私たちは進路を南に変え、ミサキの町を目指すのだった。
◆◇◆
それから海岸に近い場所を航行し、私たちはミサキの港に到着した。
「チカナガさん、ありがとうございました」
「いや、とんでもねぇ。またなんかあったらよろしくな」
こうしてミサキに降り立った私たちがまず向かうのは食堂だ。今はちょうどお昼どきなので、ミサキ名物のキンメダイを食べようという算段だ。
私たちは港の目の前にあるキンメ食堂に向かう。ここはチカナガさんに教えてもらった食堂で、新鮮なキンメダイが食べられるのだそうだ。
「ごめんくださーい」
食堂の扉を開けて中に入ると、そこは大勢のお客さんで賑わっていた。
「はい、いらっしゃい。そこの窓際の席にどうぞ」
食堂のお姉さんはそう言って私たちのすぐ近くの座敷席を指さした。
うん。久しぶりの畳だ。いいね。
私たちはさっそく畳の上に腰を下ろした。
ああ、うん。これだよこれ。なんだか落ち着くなぁ。
「ご注文は?」
すぐにお姉さんが注文を取りに来た。
「ええと、私はキンメ定食ご飯少なめで」
「拙者もキンメ定食。ご飯は普通で」
「あ、あたしは、超まんぷく定食!」
「私は……このキンメの煮つけ定食を。ご飯は普通で」
やはりクリスさんはお刺身の入っていない定食を頼んでいる。
「はいよ。超まんぷく定食は量が多いけど大丈夫?」
「もちろんですっ! 足りないかもしれませんっ!」
「ええ? 本当? そっかぁ。それなら、こっちの大食い挑戦定食に挑戦する? おかずは超まんぷく定食四食分で、ご飯が一升。お味噌汁はおかわり自由だよ」
「それにしますっ!」
「いいの? 一時間以内に食べられたら無料だけど、食べきれなかった場合は金貨一枚だよ?」
「食べきれますっ!」
「払えないはナシだよ?」
「もちろんですっ!」
「はい。じゃあ、キンメ定食二つで一つがご飯少なめ、キンメの煮つけ定食が一つ、それから大食い挑戦定食一つね」
「はいっ!」
「かしこまりました。大将! 大食い挑戦定食入りまーす!」
店員のお姉さんの声に、ざわついていた店内が一瞬静まり返ったのだった。
================
皆さまあけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
本作は本年も変わらず毎週三回、火木日の 19:00 更新を予定しております。従いまして、次回更新は 2023/01/03 (火) 19:00 となります。
「皆さん、この男がゴールデンサン巫国の船長チカナガ・コウノでやす」
「チカナガ・コウノだ。嬢ちゃんたちか? 俺の船に乗せて欲しいってのは」
「そうでござる。拙者はミヤコのシズク・ミエシロでござる」
「フィーネ・アルジェンタータです」
「クリスティーナだ。それとこの子はルミアだ」
「おう。だがタダでって……ん? フィーネ・アルジェンタータ? って、もしかしてあの?」
ん? あのってなんだ?
よく分からずに首をかしげていると、チカナガさんがさらに質問をしてくる。
「嬢ちゃん、もしかしてスイキョウ様の?」
「え? ああ、はい。その話でしたら多分そうですね」
「そういうことか。分かった。そんならお代は要らねぇ。嬢ちゃんたちを運んだってだけで元は取れる」
「はぁ。ありがとうございます」
元が取れるって、一体なんの話だろうか?
よく分からないが私たちはチカナガさんの船にタダで乗せてもらえることになったのだった。
◆◇◆
チカナガさんの船団は大量の荷物を積み込み、シュアンユーの港を出港した。積み荷は生糸や絹織物、陶磁器、香辛料といったで、ゴールデンサン巫国からの輸出品は硫黄や銅などの鉱物のほか、干しアワビや干しナマコなどといった海産物の干物もあるのだそうだ。
密貿易と言っても別に怪しげな商品を運んでいるわけではなく、正規ではないルートで取引をしているということなのだろう。
航海は至って順調で、魔物に襲われることもなく私たちは予定どおりサキモリの港が見えるところまでやってきた。
……ん? なんだかサキモリの港の様子がおかしいような?
じっと目を凝らして見てみると、どうやら町のあちこちで工事をしているようだ。
ええと? 再開発でもするのかな?
そんなことを思ってみていると、サキモリの港から一艘の小舟がこちらに近づいてくる。
「止まりなさい!」
「こちらはコウノ商会第一船団の団長チカナガ・コウノだ! シュアンユーより交易品を持ち帰った! 入港許可を願いたい!」
「……コウノ商会第一船団の情報を確認した! だがサキモリへの入港は許可できない! 現在、サキモリの港は封鎖されており、いかなる船の入港も許可していない! コウノ商会第一船団はミサキへと向かうように」
「なんだって!? 一体なんで!」
「上からの命令である! 入港は認めない! ミサキへと向かうように!」
「くっ! 仕方ない。了解した! コウノ商会第一船団はこれよりミサキへと進路を変える。面舵一杯!」
何だかよくわからないが、あの工事と何か関係があるのだろうか?
水炊きと豚骨ラーメンを楽しみにしていたのだが……仕方がない。
私たちは進路を南に変え、ミサキの町を目指すのだった。
◆◇◆
それから海岸に近い場所を航行し、私たちはミサキの港に到着した。
「チカナガさん、ありがとうございました」
「いや、とんでもねぇ。またなんかあったらよろしくな」
こうしてミサキに降り立った私たちがまず向かうのは食堂だ。今はちょうどお昼どきなので、ミサキ名物のキンメダイを食べようという算段だ。
私たちは港の目の前にあるキンメ食堂に向かう。ここはチカナガさんに教えてもらった食堂で、新鮮なキンメダイが食べられるのだそうだ。
「ごめんくださーい」
食堂の扉を開けて中に入ると、そこは大勢のお客さんで賑わっていた。
「はい、いらっしゃい。そこの窓際の席にどうぞ」
食堂のお姉さんはそう言って私たちのすぐ近くの座敷席を指さした。
うん。久しぶりの畳だ。いいね。
私たちはさっそく畳の上に腰を下ろした。
ああ、うん。これだよこれ。なんだか落ち着くなぁ。
「ご注文は?」
すぐにお姉さんが注文を取りに来た。
「ええと、私はキンメ定食ご飯少なめで」
「拙者もキンメ定食。ご飯は普通で」
「あ、あたしは、超まんぷく定食!」
「私は……このキンメの煮つけ定食を。ご飯は普通で」
やはりクリスさんはお刺身の入っていない定食を頼んでいる。
「はいよ。超まんぷく定食は量が多いけど大丈夫?」
「もちろんですっ! 足りないかもしれませんっ!」
「ええ? 本当? そっかぁ。それなら、こっちの大食い挑戦定食に挑戦する? おかずは超まんぷく定食四食分で、ご飯が一升。お味噌汁はおかわり自由だよ」
「それにしますっ!」
「いいの? 一時間以内に食べられたら無料だけど、食べきれなかった場合は金貨一枚だよ?」
「食べきれますっ!」
「払えないはナシだよ?」
「もちろんですっ!」
「はい。じゃあ、キンメ定食二つで一つがご飯少なめ、キンメの煮つけ定食が一つ、それから大食い挑戦定食一つね」
「はいっ!」
「かしこまりました。大将! 大食い挑戦定食入りまーす!」
店員のお姉さんの声に、ざわついていた店内が一瞬静まり返ったのだった。
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皆さまあけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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