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正義と武と吸血鬼
第十二章第7話 ルミア vs. 皇帝(前編)
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私たちはイェンアンにやってきた。前回来たときは色々あったが、ディアォ・イーファさんは元気にしているだろうか?
ルゥー・フェイ将軍は……まあ、きっと元気だろう。
イーファさんと仲良くしていてくれればいいのだが……。
そんなことを考えつつ、私たちは宮殿へと続く大通りにやってきた。
「じゃあフィーネさん。ここまでかな」
「はい。ありがとうございました」
「こっちこそ。また機会があったらぜひ」
「はい」
こうしてマルコさんと別れた私たちは、とりあえず皇帝に挨拶をしに行くことにした。
アポは取っていないけれど、顔くらいは見せておいたほうがいいだろう。
そうして宮殿の正門前まであるいてやってくると、当然のことながら警備の兵士が私たちの前に立ちはだかる。
「何者だ?」
するとクリスさんが前に出て対応する。
「私は聖騎士クリスティーナ。聖女フィーネ・アルジェンタータ様が皇帝陛下にご挨拶をされたいとのことだ。取り次ぎを願いたい」
「何!? 聖女様が? しばし待たれよ」
そう言って兵士の一人が奥へと走っていき、すぐに少し立派な服を着た人を連れて戻ってきた。
「おお! クリスティーナ様! 聖女様も! シズク殿にルミア殿も! お元気そうで何よりです。さあ、どうぞお入りください」
ん? 誰だっけ?
ええと……なるほど。この人はチィーティエンへ行ったときに私が剣に付与をしてあげたうちの一人らしい。あのときは兵たちのうちの一人だったが、どうやら少し出世したようだ。
「お久しぶりです。チィーティエン以来ですね」
「っ! まさかたったあれだけのことで覚えていただいていたなんて! 感激です」
「いえ、はい。」
単なるチートなのでやや申し訳ない気もするが、喜んでもらえるならそれでいいだろう。
「さあ、どうぞこちらへ」
私たちはこうして宮殿の中へと案内されるのだった。
◆◇◆
宮殿の一室に泊めてもらうことになったが、皇帝との面会はできずに日没を迎えた。
いきなり来たわけだし、それに宮殿の中はずいぶんと慌ただしい様子だった。私たちもそこまで急いでいるわけではないし、気長に待てばいいだろう。
そうしてのんびりしていると夕飯の準備ができたとのことで、女官さんに案内してもらって別の部屋へとやってきた。その部屋は賓客をもてなすために使われるであろうことが容易に想像できる豪華な内装となっており、中央には大きな円卓が置かれている。
「こちらに皇帝陛下が参ります。しばらくお待ちください」
「ありがとうございます」
私たちが座って待っていると、皇帝がやたらと着飾った四人の美女を連れてやってきた。
それを見てクリスさんとシズクさんは立ち上がり、続いて私も立ち上がった。
「ルーちゃん」
「え? あ、はーい」
ルーちゃんも思い出したのか、立ち上がる。
「うむ。聖女殿、よく来たな」
「聖女殿、陛下は――」
「お久しぶりです」
謎の伝言をするお付きの人も健在なようだが、私はその言葉を遮って返事をする。するとやはり伝言係の人の顔に憤怒の色が浮かぶ。
「……うむ。さあ、掛けるがよい」
「聖女殿、陛下は――」
「ありがとうございます」
私はさっさと椅子に腰かける。
伝言係の人は屈辱からか顔をゆがめているが、無視していいことになっているのにまた連れてくるほうが悪いと思う。
「下がれ」
「……ははっ」
伝言係の人は皇帝に言われ、悔しそうに部屋から出ていった。
それから皇帝は椅子にドカッと腰を下ろすと、女性たちも着席した。
「この者たちは朕の妻たちだ。この者が皇后のフー・ヂェン。順に第一皇妃のイェン・ショウ、第二皇妃のイン・ミィァオ、第三皇妃のドウ・リーファだ」
「フィーネ・アルジェンタータです。よろしくお願いします」
「お会いできて光栄ですわ」
皇后のフー・ヂェンさんは三十五歳くらいだろうか? かなり貫禄がある感じだ。第一皇妃のイェン・ショウさんは少し若くて三十前後だと思う。第二皇妃は二十五くらい、第三皇妃は間違いなく十代だと思う。
十年おきくらいに若い女性をお妃さまに迎えているらしい。
……いや、まあ、いいけどね。
「うむ。突然ではあったが、朕が馳走を用意した故、存分に味わってほしい」
「ありがとうございます」
何やら前回よりもちょっと待遇が上がっている気がする。
これも聖女候補ではなく正式な聖女になったからだろうか?
そんなことを考えている間に最初のメニューが運ばれてきた。
「本日の前菜は冷菜の五種盛り合わせでございます。クラゲの和え物、ピータン、豚耳の辛み和え、蒸し鶏のごまソース掛け、そして白菜の甘酢漬けとなります」
私の前には小皿に盛り付けられた冷菜が置かれ、さらに大皿に盛り付けられた冷菜がテーブルの中央に置かれる。
気付けば皇帝はもう食事に手をつけている。
なるほど。町でもそうだったが、宮廷であっても特に何も言わずに食べていいようだ。
「いただきます」
まずは白菜の甘酢漬けを口に運ぶ。
うん。白菜の歯ごたえがしっかり残っている。そこにスッキリとした甘酢の絶妙な酸味と甘み、塩味がマッチしているのが素晴らしい。そして白菜を噛めばその香りが鼻からスッと抜けていく。
うん。いいね。最初の一品にはピッタリだろう。
続いて私はピータンを口にする。独特の香りとプリプリした黒いゼリー状の白身、そして黒くなった黄身のコクはピータンらしい。うん。前菜といえばやはりこれだろう。そう感じさせてくれる素晴らしい一品だ。
次は、そうだね。クラゲの和え物にしよう。
茶色いクラゲとキュウリが和えられていて、口に含めばクラゲのコリコリとした食感とキュウリのシャキシャキとした食感が楽しめる。そのうえ醤油ベースのタレが絶妙な塩味とほのかな甘みを添え、さらに唐辛子の辛みが味を引き締めている。
うん。おいしい!
次は蒸し鶏だ。臭みのまったくない鶏肉は噛めば噛むほどうま味が出てきて、それが濃厚なごまのソースと相まって口の中はすぐさま幸せな空間へと変貌する。しかもわずかに辛みがあり、ごま一辺倒にならないように味を整えてくれている。
ああ、これも美味しいね。
最後は豚耳だ。コリコリとした豚の耳に薄切りのネギとキュウリが和えられており、その様々な食感が口を楽しませてくれる。そしてネギの香りに加えて醤油とお酢の香りが鼻から抜けていったかと思えば、醤油と牡の中に絶妙なバランスで甘みが配合されている。しかもそんな甘みの中でラー油のピリリとした辛さがしっかりと味を引き締めているのだ。このラー油によってすべての味は一つにまとまっているといっても過言ではないだろう。
これは美味しい!
それぞれの冷菜を二口ずつ食べて満足した私がちらりとルーちゃんのほうを見ると、給仕の女性がルーちゃんのお皿に次々と前菜を盛り付けている。
あれれ? そんなに食べたら他の人の分が無くなってしまうような?
「ルミアと言ったな。朕が晩餐を振る舞っておるのだ。お代わりはいくらでもある」
「ホントですかっ!?」
「うむ。安心するがよい」
皇帝は自信満々な様子でそう言った。
「やったぁ!」
ルーちゃんは嬉しそうにしているが、本当に大丈夫だろうか?
私はそのやり取りに一抹の不安を覚えたのだった。
ルゥー・フェイ将軍は……まあ、きっと元気だろう。
イーファさんと仲良くしていてくれればいいのだが……。
そんなことを考えつつ、私たちは宮殿へと続く大通りにやってきた。
「じゃあフィーネさん。ここまでかな」
「はい。ありがとうございました」
「こっちこそ。また機会があったらぜひ」
「はい」
こうしてマルコさんと別れた私たちは、とりあえず皇帝に挨拶をしに行くことにした。
アポは取っていないけれど、顔くらいは見せておいたほうがいいだろう。
そうして宮殿の正門前まであるいてやってくると、当然のことながら警備の兵士が私たちの前に立ちはだかる。
「何者だ?」
するとクリスさんが前に出て対応する。
「私は聖騎士クリスティーナ。聖女フィーネ・アルジェンタータ様が皇帝陛下にご挨拶をされたいとのことだ。取り次ぎを願いたい」
「何!? 聖女様が? しばし待たれよ」
そう言って兵士の一人が奥へと走っていき、すぐに少し立派な服を着た人を連れて戻ってきた。
「おお! クリスティーナ様! 聖女様も! シズク殿にルミア殿も! お元気そうで何よりです。さあ、どうぞお入りください」
ん? 誰だっけ?
ええと……なるほど。この人はチィーティエンへ行ったときに私が剣に付与をしてあげたうちの一人らしい。あのときは兵たちのうちの一人だったが、どうやら少し出世したようだ。
「お久しぶりです。チィーティエン以来ですね」
「っ! まさかたったあれだけのことで覚えていただいていたなんて! 感激です」
「いえ、はい。」
単なるチートなのでやや申し訳ない気もするが、喜んでもらえるならそれでいいだろう。
「さあ、どうぞこちらへ」
私たちはこうして宮殿の中へと案内されるのだった。
◆◇◆
宮殿の一室に泊めてもらうことになったが、皇帝との面会はできずに日没を迎えた。
いきなり来たわけだし、それに宮殿の中はずいぶんと慌ただしい様子だった。私たちもそこまで急いでいるわけではないし、気長に待てばいいだろう。
そうしてのんびりしていると夕飯の準備ができたとのことで、女官さんに案内してもらって別の部屋へとやってきた。その部屋は賓客をもてなすために使われるであろうことが容易に想像できる豪華な内装となっており、中央には大きな円卓が置かれている。
「こちらに皇帝陛下が参ります。しばらくお待ちください」
「ありがとうございます」
私たちが座って待っていると、皇帝がやたらと着飾った四人の美女を連れてやってきた。
それを見てクリスさんとシズクさんは立ち上がり、続いて私も立ち上がった。
「ルーちゃん」
「え? あ、はーい」
ルーちゃんも思い出したのか、立ち上がる。
「うむ。聖女殿、よく来たな」
「聖女殿、陛下は――」
「お久しぶりです」
謎の伝言をするお付きの人も健在なようだが、私はその言葉を遮って返事をする。するとやはり伝言係の人の顔に憤怒の色が浮かぶ。
「……うむ。さあ、掛けるがよい」
「聖女殿、陛下は――」
「ありがとうございます」
私はさっさと椅子に腰かける。
伝言係の人は屈辱からか顔をゆがめているが、無視していいことになっているのにまた連れてくるほうが悪いと思う。
「下がれ」
「……ははっ」
伝言係の人は皇帝に言われ、悔しそうに部屋から出ていった。
それから皇帝は椅子にドカッと腰を下ろすと、女性たちも着席した。
「この者たちは朕の妻たちだ。この者が皇后のフー・ヂェン。順に第一皇妃のイェン・ショウ、第二皇妃のイン・ミィァオ、第三皇妃のドウ・リーファだ」
「フィーネ・アルジェンタータです。よろしくお願いします」
「お会いできて光栄ですわ」
皇后のフー・ヂェンさんは三十五歳くらいだろうか? かなり貫禄がある感じだ。第一皇妃のイェン・ショウさんは少し若くて三十前後だと思う。第二皇妃は二十五くらい、第三皇妃は間違いなく十代だと思う。
十年おきくらいに若い女性をお妃さまに迎えているらしい。
……いや、まあ、いいけどね。
「うむ。突然ではあったが、朕が馳走を用意した故、存分に味わってほしい」
「ありがとうございます」
何やら前回よりもちょっと待遇が上がっている気がする。
これも聖女候補ではなく正式な聖女になったからだろうか?
そんなことを考えている間に最初のメニューが運ばれてきた。
「本日の前菜は冷菜の五種盛り合わせでございます。クラゲの和え物、ピータン、豚耳の辛み和え、蒸し鶏のごまソース掛け、そして白菜の甘酢漬けとなります」
私の前には小皿に盛り付けられた冷菜が置かれ、さらに大皿に盛り付けられた冷菜がテーブルの中央に置かれる。
気付けば皇帝はもう食事に手をつけている。
なるほど。町でもそうだったが、宮廷であっても特に何も言わずに食べていいようだ。
「いただきます」
まずは白菜の甘酢漬けを口に運ぶ。
うん。白菜の歯ごたえがしっかり残っている。そこにスッキリとした甘酢の絶妙な酸味と甘み、塩味がマッチしているのが素晴らしい。そして白菜を噛めばその香りが鼻からスッと抜けていく。
うん。いいね。最初の一品にはピッタリだろう。
続いて私はピータンを口にする。独特の香りとプリプリした黒いゼリー状の白身、そして黒くなった黄身のコクはピータンらしい。うん。前菜といえばやはりこれだろう。そう感じさせてくれる素晴らしい一品だ。
次は、そうだね。クラゲの和え物にしよう。
茶色いクラゲとキュウリが和えられていて、口に含めばクラゲのコリコリとした食感とキュウリのシャキシャキとした食感が楽しめる。そのうえ醤油ベースのタレが絶妙な塩味とほのかな甘みを添え、さらに唐辛子の辛みが味を引き締めている。
うん。おいしい!
次は蒸し鶏だ。臭みのまったくない鶏肉は噛めば噛むほどうま味が出てきて、それが濃厚なごまのソースと相まって口の中はすぐさま幸せな空間へと変貌する。しかもわずかに辛みがあり、ごま一辺倒にならないように味を整えてくれている。
ああ、これも美味しいね。
最後は豚耳だ。コリコリとした豚の耳に薄切りのネギとキュウリが和えられており、その様々な食感が口を楽しませてくれる。そしてネギの香りに加えて醤油とお酢の香りが鼻から抜けていったかと思えば、醤油と牡の中に絶妙なバランスで甘みが配合されている。しかもそんな甘みの中でラー油のピリリとした辛さがしっかりと味を引き締めているのだ。このラー油によってすべての味は一つにまとまっているといっても過言ではないだろう。
これは美味しい!
それぞれの冷菜を二口ずつ食べて満足した私がちらりとルーちゃんのほうを見ると、給仕の女性がルーちゃんのお皿に次々と前菜を盛り付けている。
あれれ? そんなに食べたら他の人の分が無くなってしまうような?
「ルミアと言ったな。朕が晩餐を振る舞っておるのだ。お代わりはいくらでもある」
「ホントですかっ!?」
「うむ。安心するがよい」
皇帝は自信満々な様子でそう言った。
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