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欲と業
第十一章第41話 歓待
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素晴らしい歓迎を受けた私たちは、そのままお城のバルコニーへとやってきた。バルコニーからは港と広がる青い海が一望できる。
中々に素晴らしい眺めだ。
しかもそのバルコニーにはテーブルがあり、白いテーブルクロスが敷かれている。
「聖女様、よろしければここでランチなどいかがでしょうか? 我が国自慢のシーフードをご用意いたしますよ」
なるほど、今はちょうどお昼どきだ。
「ありがとうございます。ぜひ」
「ではどうぞ、そちらの席におかけください」
「はい」
私たちは勧められた席に座る。するとすぐに料理が運ばれてきた。大きなプレートの上に生牡蠣の他にムール貝、ワタリガニ、エビと様々なシーフードが盛り付けられている。
「我が国では新鮮なシーフードをこのようにプレートに盛り付けて提供するのが一般的です。特にこちらのグリーンオイスターは我が国でしか獲れない特別な牡蠣でして、他国のものよりも甘くまろやかで上品な味わわいが特徴となっております」
そう言われて牡蠣をよく見てみると、たしかに身の一部に緑色の筋のようなものがある。
「なるほど、これは不思議な牡蠣でござるな」
シズクさんも興味深そうに牡蠣を眺めている。
すると、私たちそれぞれの前にソースの入った小皿が三皿ずつ並べられた。
「ソースは搾りたてのレモン汁の他にフィーネ式ホワイトソース、ムール貝の蒸し汁を使った白ワインソースがございます。お好みに合わせてお召し上がりください」
ん? 私?
って、ああ、そうか。マヨネーズのことか。どうやらもうアイロールから伝わってきたらしい。
「ありがとうございます」
私はまず牡蠣を食べようと手を伸ばす。
「お取りいたします」
傍で控えてくれていたメイドさんがプレートの上から牡蠣を取り、身をキレイに殻から取ってくれた。
「ありがとうございます」
私はそこにレモン汁を垂らすとフォークで突き刺し、一口でパクリと口に入れた。
「あ、おいしいですね」
うん。これは素晴らしい。プリプリの身もさることながら、まるでミルクのように濃厚な牡蠣の味わいとほんのわずかな磯の香り、そこにフレッシュなレモン汁の酸味が絶妙にマッチしている。しかもジルベール七世が自慢していたとおり甘みもしっかりあり、濃厚な味わいにもかかわらず後味は全くと言っていいほどくどくない。ものすごく上品な味だ。
「なかなかでござるな」
シズクさんもグリーンオイスターに舌鼓を打っており、ルーちゃんはすごい勢いで食べている。
クリスさんは……やはり生ものはダメなようだ。だがムール貝にエビにと美味しそうに食べている。もちろんマヨネーズをたっぷりつけて。
ええと、うん。今度はエビかな。
「すみません。エビを取ってもらえますか?」
「かしこまりました」
メイドさんがまたしてもキレイに殻をむいてくれた。
自分でむいて食べるのもいいけれど、こういうのも楽ちんでいいね。
今度はマヨネーズをつけていただいてみる。
うん。ちょうどいい茹で加減でものすごくプリプリだ。エビ本来の甘みがしっかり残っていて、それがまた絶妙にマヨネーズのこってりした味わいによく合っている。マヨネーズもアイロールで食べたマリーさんのものよりもすこしあっさりしていて、それがまたエビの美味しさを引き立てている。
きっとこの町でシーフードに合わせてマヨネーズも進化したのだろう。
そんなことを考えながら味わっていると、あっという間にエビを食べきってしまった。
「今度はムール貝をお願いします」
「かしこまりました」
またもやメイドさんがキレイに殻から身をはがしてくれた。
よし、せっかくだから白ワインソースでいただこう。
私はムール貝の身をフォークで突き刺し、白ワインソースにディップしてからいただいた。
おお! これもまた素晴らしい。
まずこの白ワインソースにはムール貝のうま味が凝縮されている。蒸し汁を使ったと言っていたけれど、きっと他に入っているのは白ワインと胡椒とオリーブオイルだけだろう。とてもシンプルな味付けなのに、貝から出てきたうま味と塩味、そして胡椒とオリーブオイルが絶妙にマッチしている。
これほどまでに見事なバランスを取るのは至難の業ではないだろうか。しかも蒸し汁にこれほどのうま味が出ているというのにムール貝の身にもまだまだうま味が残っており、適度な弾力感のあるその身を噛み切れば口の中にじゅわりと貝の汁が広がっていく。
うん、これは美味しい!
あっという間にメイドさんが取り分けてくれた分を食べきってしまった。
「最後に、カニをお願いします」
「かしこまりました」
メイドさんがこれまた器用にカニの殻を割り、身だけを取り出してくれた。ハサミの部分と甲羅の下の部分の身だけ取って残りはそのまま捨ててしまうらしい。どうやら、カニの大きさと比べて食べられる部分は少ないようだ。
どのソースで食べようかな……。
よし、やっぱりレモン汁かな。
私はカニの身にレモン汁を掛けると、そのまま口に放り込んだ。
うん。ええと、美味しいね。甘みもあって美味しいのだけれど、なんというか、普通のカニだ。
ここまでが素晴らしかったおかげか、逆にカニのほうが見劣りする結果となってしまった。もちろん美味しいのだが、私はグリーンオイスターのほうが好きかな。
そんなことを考えつつカニを完食した私は最後にグリーンオイスターをもう一つ楽しむのだった。
中々に素晴らしい眺めだ。
しかもそのバルコニーにはテーブルがあり、白いテーブルクロスが敷かれている。
「聖女様、よろしければここでランチなどいかがでしょうか? 我が国自慢のシーフードをご用意いたしますよ」
なるほど、今はちょうどお昼どきだ。
「ありがとうございます。ぜひ」
「ではどうぞ、そちらの席におかけください」
「はい」
私たちは勧められた席に座る。するとすぐに料理が運ばれてきた。大きなプレートの上に生牡蠣の他にムール貝、ワタリガニ、エビと様々なシーフードが盛り付けられている。
「我が国では新鮮なシーフードをこのようにプレートに盛り付けて提供するのが一般的です。特にこちらのグリーンオイスターは我が国でしか獲れない特別な牡蠣でして、他国のものよりも甘くまろやかで上品な味わわいが特徴となっております」
そう言われて牡蠣をよく見てみると、たしかに身の一部に緑色の筋のようなものがある。
「なるほど、これは不思議な牡蠣でござるな」
シズクさんも興味深そうに牡蠣を眺めている。
すると、私たちそれぞれの前にソースの入った小皿が三皿ずつ並べられた。
「ソースは搾りたてのレモン汁の他にフィーネ式ホワイトソース、ムール貝の蒸し汁を使った白ワインソースがございます。お好みに合わせてお召し上がりください」
ん? 私?
って、ああ、そうか。マヨネーズのことか。どうやらもうアイロールから伝わってきたらしい。
「ありがとうございます」
私はまず牡蠣を食べようと手を伸ばす。
「お取りいたします」
傍で控えてくれていたメイドさんがプレートの上から牡蠣を取り、身をキレイに殻から取ってくれた。
「ありがとうございます」
私はそこにレモン汁を垂らすとフォークで突き刺し、一口でパクリと口に入れた。
「あ、おいしいですね」
うん。これは素晴らしい。プリプリの身もさることながら、まるでミルクのように濃厚な牡蠣の味わいとほんのわずかな磯の香り、そこにフレッシュなレモン汁の酸味が絶妙にマッチしている。しかもジルベール七世が自慢していたとおり甘みもしっかりあり、濃厚な味わいにもかかわらず後味は全くと言っていいほどくどくない。ものすごく上品な味だ。
「なかなかでござるな」
シズクさんもグリーンオイスターに舌鼓を打っており、ルーちゃんはすごい勢いで食べている。
クリスさんは……やはり生ものはダメなようだ。だがムール貝にエビにと美味しそうに食べている。もちろんマヨネーズをたっぷりつけて。
ええと、うん。今度はエビかな。
「すみません。エビを取ってもらえますか?」
「かしこまりました」
メイドさんがまたしてもキレイに殻をむいてくれた。
自分でむいて食べるのもいいけれど、こういうのも楽ちんでいいね。
今度はマヨネーズをつけていただいてみる。
うん。ちょうどいい茹で加減でものすごくプリプリだ。エビ本来の甘みがしっかり残っていて、それがまた絶妙にマヨネーズのこってりした味わいによく合っている。マヨネーズもアイロールで食べたマリーさんのものよりもすこしあっさりしていて、それがまたエビの美味しさを引き立てている。
きっとこの町でシーフードに合わせてマヨネーズも進化したのだろう。
そんなことを考えながら味わっていると、あっという間にエビを食べきってしまった。
「今度はムール貝をお願いします」
「かしこまりました」
またもやメイドさんがキレイに殻から身をはがしてくれた。
よし、せっかくだから白ワインソースでいただこう。
私はムール貝の身をフォークで突き刺し、白ワインソースにディップしてからいただいた。
おお! これもまた素晴らしい。
まずこの白ワインソースにはムール貝のうま味が凝縮されている。蒸し汁を使ったと言っていたけれど、きっと他に入っているのは白ワインと胡椒とオリーブオイルだけだろう。とてもシンプルな味付けなのに、貝から出てきたうま味と塩味、そして胡椒とオリーブオイルが絶妙にマッチしている。
これほどまでに見事なバランスを取るのは至難の業ではないだろうか。しかも蒸し汁にこれほどのうま味が出ているというのにムール貝の身にもまだまだうま味が残っており、適度な弾力感のあるその身を噛み切れば口の中にじゅわりと貝の汁が広がっていく。
うん、これは美味しい!
あっという間にメイドさんが取り分けてくれた分を食べきってしまった。
「最後に、カニをお願いします」
「かしこまりました」
メイドさんがこれまた器用にカニの殻を割り、身だけを取り出してくれた。ハサミの部分と甲羅の下の部分の身だけ取って残りはそのまま捨ててしまうらしい。どうやら、カニの大きさと比べて食べられる部分は少ないようだ。
どのソースで食べようかな……。
よし、やっぱりレモン汁かな。
私はカニの身にレモン汁を掛けると、そのまま口に放り込んだ。
うん。ええと、美味しいね。甘みもあって美味しいのだけれど、なんというか、普通のカニだ。
ここまでが素晴らしかったおかげか、逆にカニのほうが見劣りする結果となってしまった。もちろん美味しいのだが、私はグリーンオイスターのほうが好きかな。
そんなことを考えつつカニを完食した私は最後にグリーンオイスターをもう一つ楽しむのだった。
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