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欲と業
第十一章第3話 ブルースター共和国へようこそ
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2022/06/20 誤字を修正しました
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イルミシティの中央広場に種を植えると、私たちはすぐにブルースター共和国へと向けて出発した。
同じ場所へ向かうので以前通った道なわけだが、ここでも魔物が活性化しているらしくやたらと魔物に襲われるという結果となった。やはり魔物が増えているという傾向はこのあたりでも変わらないらしい。
もちろん今の私たちにとって魔物に襲われる程度はどうということはないが、旅人が減るというのは少し寂しい気がする。
そんなこんなで襲ってくる魔物たちを浄化してあげながらゆっくりと進み、私たちはようやくブルースター共和国の検問所へ到着した。
今回は前回とは違い、検問所の前にずらりと出迎えの兵士たちが並んでいる。
検問所には『ようこそ! ブルースター共和国へ!』という横断幕が掲げられており、私たちを乗せた馬車が到着するとファンファーレが鳴らされた。
「聖女フィーネ・アルジェンタータ様! このような時期にようこそお越しくださいました! 我らブルースター共和国一同、聖女様のご訪問を心より歓迎いたします! どうぞお通りください!」
最敬礼でそう言ったこのちょっと偉そうな人は【人物鑑定】によると、どうやら前にこの検問所で私たちを検問しようとして隊長さんに取り次いだ人らしい。
なるほど、ずいぶんと出世したようだ。
私たちは前回と同様に観光ガイドの最新版をもらい、検問所を後にする。
前回もそうだったが、きちんと持ち物検査をしなくていいのだろうか?
まあ、この国は聖女様にやたらと憧れを持っている人の多い国だしね。無条件で信じているのだろうが……。
◆◇◆
無事に検問を抜けて山道をしばらく進むと、ヒュッテンホルンの町が見えてきた。
前にきたときはあそこに横断幕が掲げられていたけれど今回はどうだろうか?
ちょっと恥ずかしいのであまりああいうことはしないでほしいのだが……ん? 遠くで何か争うような音が?
「シズクさん、聞こえますか?」
「ん? なんでござ……これは! 出るでござる!」
「シズク殿!?」
シズクさんが走行中の馬車から飛び降りると大急ぎでヒュッテンホルンのほうへと走っていった。そんなシズクさんを御者台にいるクリスさんが唖然とした表情で見送る。
ええと? あの音の正体は……。
「あ! 町が魔物に襲われていますね」
「えっ?」
「でもゴブリンの群れなので、シズクさんが一人で大丈夫だと思います。あ、こっちにも向かってきますね」
「そうですか。では馬車を止めて迎撃しましょう」
「はい」
向かってきているのはゴブリンで、その数は二十匹ほどだ。別に泊らなくてもどうということはないが、馬もいるので無傷では済まないかもしれないので念のためだ。
馬車を止めると、ルーちゃんが向かってくるゴブリンに次々と矢を放っては撃ち抜いていく。
こちらに矢が飛んでくる気配がまるでないところを見るに、ルーちゃんはずいぶんと腕を上げたようだ。
そうして矢を放つルーちゃんを見ていると、ゴブリンたちはあっさりと全滅した。
うん。ルーちゃんも、もうゴブリンくらいであればもうどうってことはないね。
前回ブルースター共和国に来たときは森の中でゴブリンに追われて逃げ回っていたけれど、今のルーちゃんであればあっさり撃退できそうだ。
こうなればあとは私の出番だ。
私はきっちりとリーチェの力を借りてゴブリンの遺体を浄化してあげると、芽吹いた種を道のわきにそっと植えてやる。そして完全に浄化された魔石を拾い、収納にしまいこんだ。
「さあ、行きましょう」
「はい!」
私たちはヒュッテンホルンの町へと向かって馬車を進めるのだった。
◆◇◆
「そちらに何匹か行っていたでござるが、大丈夫でござったか?」
ヒュッテンホルンの門の前で合流すると、シズクさんが開口一番そう聞いてきた。
「はい。ルーちゃんが全て仕留めてくれましたよ」
「そうでござるか」
「そうですっ! あたしだってちゃんと役に立てるんですっ!」
ルーちゃんはそう言って胸を張った。
私はルーちゃんがいるおかげで助かっているのでそんなこと気にしなくていいと思うのだが、やはりシズクさんやクリスさんと比べてしまうのだろう。
「ところでフィーネ殿、あれもお願いするでござるよ」
そう言ってシズクさんの指さした先には大量のゴブリンの死体があった。
さっき見たときよりも随分と数が増えているようだが、もしかすると森の奥からやってきたのかもしれない。
いつぞやの将軍のいる国で遭遇した魔物暴走並みとまでは言わないが、それでもかなりの数だ。
ああ、でも瘴気をまとめて浄化できると考えればそれはそれでありかも知れないね。
私は再びリーチェを呼び出すと、ゴブリンたちの遺体を浄化した。
すると街壁の上から私たちの様子を見守っていた兵士たちから「おおっ」という歓声が上がる。
「シズクさん、彼らは?」
「ああ、拙者が着いたときにはすでに門を閉ざして籠城していたでござるよ。だからこの魔石は貰ってしまって構わないでござるよ」
「はあ、そうですか」
もしかして私たちが来ていなければ危なかったのではないだろうか?
だとすれば、私たちは随分といいタイミングで来たことになるね。
こうして私たちはヒュッテンホルンの町へと入るのだった。
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イルミシティの中央広場に種を植えると、私たちはすぐにブルースター共和国へと向けて出発した。
同じ場所へ向かうので以前通った道なわけだが、ここでも魔物が活性化しているらしくやたらと魔物に襲われるという結果となった。やはり魔物が増えているという傾向はこのあたりでも変わらないらしい。
もちろん今の私たちにとって魔物に襲われる程度はどうということはないが、旅人が減るというのは少し寂しい気がする。
そんなこんなで襲ってくる魔物たちを浄化してあげながらゆっくりと進み、私たちはようやくブルースター共和国の検問所へ到着した。
今回は前回とは違い、検問所の前にずらりと出迎えの兵士たちが並んでいる。
検問所には『ようこそ! ブルースター共和国へ!』という横断幕が掲げられており、私たちを乗せた馬車が到着するとファンファーレが鳴らされた。
「聖女フィーネ・アルジェンタータ様! このような時期にようこそお越しくださいました! 我らブルースター共和国一同、聖女様のご訪問を心より歓迎いたします! どうぞお通りください!」
最敬礼でそう言ったこのちょっと偉そうな人は【人物鑑定】によると、どうやら前にこの検問所で私たちを検問しようとして隊長さんに取り次いだ人らしい。
なるほど、ずいぶんと出世したようだ。
私たちは前回と同様に観光ガイドの最新版をもらい、検問所を後にする。
前回もそうだったが、きちんと持ち物検査をしなくていいのだろうか?
まあ、この国は聖女様にやたらと憧れを持っている人の多い国だしね。無条件で信じているのだろうが……。
◆◇◆
無事に検問を抜けて山道をしばらく進むと、ヒュッテンホルンの町が見えてきた。
前にきたときはあそこに横断幕が掲げられていたけれど今回はどうだろうか?
ちょっと恥ずかしいのであまりああいうことはしないでほしいのだが……ん? 遠くで何か争うような音が?
「シズクさん、聞こえますか?」
「ん? なんでござ……これは! 出るでござる!」
「シズク殿!?」
シズクさんが走行中の馬車から飛び降りると大急ぎでヒュッテンホルンのほうへと走っていった。そんなシズクさんを御者台にいるクリスさんが唖然とした表情で見送る。
ええと? あの音の正体は……。
「あ! 町が魔物に襲われていますね」
「えっ?」
「でもゴブリンの群れなので、シズクさんが一人で大丈夫だと思います。あ、こっちにも向かってきますね」
「そうですか。では馬車を止めて迎撃しましょう」
「はい」
向かってきているのはゴブリンで、その数は二十匹ほどだ。別に泊らなくてもどうということはないが、馬もいるので無傷では済まないかもしれないので念のためだ。
馬車を止めると、ルーちゃんが向かってくるゴブリンに次々と矢を放っては撃ち抜いていく。
こちらに矢が飛んでくる気配がまるでないところを見るに、ルーちゃんはずいぶんと腕を上げたようだ。
そうして矢を放つルーちゃんを見ていると、ゴブリンたちはあっさりと全滅した。
うん。ルーちゃんも、もうゴブリンくらいであればもうどうってことはないね。
前回ブルースター共和国に来たときは森の中でゴブリンに追われて逃げ回っていたけれど、今のルーちゃんであればあっさり撃退できそうだ。
こうなればあとは私の出番だ。
私はきっちりとリーチェの力を借りてゴブリンの遺体を浄化してあげると、芽吹いた種を道のわきにそっと植えてやる。そして完全に浄化された魔石を拾い、収納にしまいこんだ。
「さあ、行きましょう」
「はい!」
私たちはヒュッテンホルンの町へと向かって馬車を進めるのだった。
◆◇◆
「そちらに何匹か行っていたでござるが、大丈夫でござったか?」
ヒュッテンホルンの門の前で合流すると、シズクさんが開口一番そう聞いてきた。
「はい。ルーちゃんが全て仕留めてくれましたよ」
「そうでござるか」
「そうですっ! あたしだってちゃんと役に立てるんですっ!」
ルーちゃんはそう言って胸を張った。
私はルーちゃんがいるおかげで助かっているのでそんなこと気にしなくていいと思うのだが、やはりシズクさんやクリスさんと比べてしまうのだろう。
「ところでフィーネ殿、あれもお願いするでござるよ」
そう言ってシズクさんの指さした先には大量のゴブリンの死体があった。
さっき見たときよりも随分と数が増えているようだが、もしかすると森の奥からやってきたのかもしれない。
いつぞやの将軍のいる国で遭遇した魔物暴走並みとまでは言わないが、それでもかなりの数だ。
ああ、でも瘴気をまとめて浄化できると考えればそれはそれでありかも知れないね。
私は再びリーチェを呼び出すと、ゴブリンたちの遺体を浄化した。
すると街壁の上から私たちの様子を見守っていた兵士たちから「おおっ」という歓声が上がる。
「シズクさん、彼らは?」
「ああ、拙者が着いたときにはすでに門を閉ざして籠城していたでござるよ。だからこの魔石は貰ってしまって構わないでござるよ」
「はあ、そうですか」
もしかして私たちが来ていなければ危なかったのではないだろうか?
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