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滅びの神託
第十章第39話 謎の大穴
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あれから私たちは生き残った三十人ほどのルマ人男性の皆さんと合流した。彼らに洗浄魔法をかけてきれいにしてあげ、収納の中から食べ物を分けてあげて栄養を付けてもらった。
これから長旅になるのだから、ちょっとでも栄養をつけて元気になってもらおうというわけだ。
ちなみにあのもうもうと上がっていた黒煙は、人や家畜の遺体を燃やして出たのだそうだ。
なるほど。たしかに葬送魔法を使える人がいないのに遺体を放置すると、ゾンビが発生しかねないものね。
それともちろんこの町にもリーチェの種を植えたわけだが、今回は港の一角にしてみた。特に理由があるわけではなく、そこに花が咲いていたらきれいそうだなという単なる思いつきだ。
その花が咲くころにこの町がきちんと復興しているかは分からないけれど、できれば港の一角に咲く花を見てみたいものだ。
◆◇◆
翌朝、私たちは西にある炎の神殿を目指してダルハだった場所を出発した。というのも、アービエルさんの情報によると魔物の大群は西からやってきたと聞いているからだ。
そこで西に何かあるかと聞かれて真っ先に思いついたのは炎の神殿だったため、とりあえずの目的地を炎の神殿にしてみたというわけだ。
ちなみにダルハの町の西側はアービエルさんの言うとおり、竜の炎で滅茶苦茶にされたであろう痕跡が残っていた。
建物は溶けて変形しており、地面も一部砂がガラス状になっていたのだ。ということは、イザール東にある戦場跡はその竜のせいということで間違いないのだろう。
そうして歩くこと三日、私たちは炎の神殿に到着した。前回は五日かけてゆっくり歩いてきたのだが、今回はかなり急いで三日で踏破したのだ。
スピードアップできた理由は、砂の上を歩く代わりに結界の上を歩いてもらったからだ。足が取られない平坦な場所を歩くだけでこれほどのスピードアップにつながるのだから、舗装された道路がいかに大切かがよく分かる。
あ、ちなみにランベルトさんにはアービエルさんたちを守ってもらうという名目でダルハに残ってもらった。
だって、今の私たちの実力を考えるとランベルトさんたちは申し訳ないけれど足手まといだもの。
と、そんな風に大急ぎでやってきたわけなのだが……。
なんと炎の神殿は半壊していた。あまりのことに私も少し唖然としてしまった。
「ええと、どういうことでしょうか?」
私の問いに答えられないほどクリスさんとシズクさんもあまりの状況に唖然としているようだが、それも無理はないだろう。
だって、以前この神殿を訪れたときには聖なる結界で守られていたのだ。
ということは、あの竜には聖なる結界を破るだけの力があったということなのだろうか?
「姉さまっ! 今回はこの門、くぐれますよっ!」
ルーちゃんがどことなく楽しそうに前回通れなかった門らしき場所を出入りしている。
うーん? ということはやっぱり結界が破られたということなのだろう。
私もルーちゃんと同じように門をくぐってみるが、やはり何も感じない。どうやら結界は完全に消滅しているようだ。
「拙者も通れるでござるな」
「私もだ。やはり何者かが結界を破壊し、この神殿をも破壊したと考えるのが妥当か」
「そう思うでござるよ」
そんな気はするけれど、なんのために破壊したのだろうか?
「姉さまっ! こっちです! すっごい大きな穴があります!」
「え?」
気が付くとルーちゃんが向こうで手を振っている。
「ルーちゃん。あんまり離れないでください」
「えー、でも。なんか同じところにずっといるじゃないですかっ。だからあたしが調べようかなって」
「ああ、そうですね。ありがとうございます。でも、心配なのであまり離れないでくださいね。あの虎の魔物が襲ってきたら、遠くだと守り切れないかもしれません」
「んー、わかりました」
ルーちゃんは渋々といった感じではあるが納得してくれたようだ。
「それにしても、なんでしょうね? この穴は」
「すごく大きくて、すごく深そうです」
「これは、地面が溶けたのでござるか?」
「そのようだな。砂もガラス状になっている」
ということは、これはやはり竜の仕業だろうか?
「ちょっと降りてみましょう」
「え? フィーネ様?」
私はひょいと飛び降りるとすぐさま【妖精化】して地下へと降りていく。そのまま百メートルほど地下に降りたところで着地した。
周囲を見回してみると、そこは何やらホールのようになっていた。出入口らしきものも見える。
ということは、これは中から外へ出るために天井を破壊したのではないだろうか?
うん? 中から破壊? 地下のホールで、竜?
ものすごく、嫌な予感がする。
ここは火の神様を祀った神殿なんかじゃなくてもしかして!
私は急いで【蝙蝠化】を使って地上へと舞い戻る。
「ああ、フィーネ様! よくぞご無事で」
地上へと戻ってきた私を見たクリスさんがものすごく心配した様子でそう声をかけてきた。
「すみません。ご心配をおかけしました」
「フィーネ殿。地下には何があったでござるか?」
「はい。皆さんの意見を聞きたいのですが、地下には巨大なホールのような空間がありました。そしておそらくこの炎の神殿の中から続いているであろう出入口のようなものもありました」
クリスさんはいまいちピンと来ていない様子だ。シズクさんは眉間に皺をよせ、難しい表情をしている。
「……あの、姉さま。もしかしてそれって白銀の里やあのスイキョウのやつと同じっていうことですか?」
「拙者も同感でござるな」
「そんな! まさか! ではこの炎の神殿は火の神を祀った神殿などではなく、炎龍王を封じていた神殿だと仰るのですか!?」
私はこくりと頷いた。
「では! エイブラからダルハにかけてを滅ぼして回った竜はあの伝説の炎龍王だと?」
「そう、なりますね」
そう答えた瞬間、私たちの上を大きな影が通過した。
「え?」
思わず上を見上げると、信じられないほど巨大な赤い竜が南西方向に飛び去っていく姿がある。
「あれは……まさか!?」
これから長旅になるのだから、ちょっとでも栄養をつけて元気になってもらおうというわけだ。
ちなみにあのもうもうと上がっていた黒煙は、人や家畜の遺体を燃やして出たのだそうだ。
なるほど。たしかに葬送魔法を使える人がいないのに遺体を放置すると、ゾンビが発生しかねないものね。
それともちろんこの町にもリーチェの種を植えたわけだが、今回は港の一角にしてみた。特に理由があるわけではなく、そこに花が咲いていたらきれいそうだなという単なる思いつきだ。
その花が咲くころにこの町がきちんと復興しているかは分からないけれど、できれば港の一角に咲く花を見てみたいものだ。
◆◇◆
翌朝、私たちは西にある炎の神殿を目指してダルハだった場所を出発した。というのも、アービエルさんの情報によると魔物の大群は西からやってきたと聞いているからだ。
そこで西に何かあるかと聞かれて真っ先に思いついたのは炎の神殿だったため、とりあえずの目的地を炎の神殿にしてみたというわけだ。
ちなみにダルハの町の西側はアービエルさんの言うとおり、竜の炎で滅茶苦茶にされたであろう痕跡が残っていた。
建物は溶けて変形しており、地面も一部砂がガラス状になっていたのだ。ということは、イザール東にある戦場跡はその竜のせいということで間違いないのだろう。
そうして歩くこと三日、私たちは炎の神殿に到着した。前回は五日かけてゆっくり歩いてきたのだが、今回はかなり急いで三日で踏破したのだ。
スピードアップできた理由は、砂の上を歩く代わりに結界の上を歩いてもらったからだ。足が取られない平坦な場所を歩くだけでこれほどのスピードアップにつながるのだから、舗装された道路がいかに大切かがよく分かる。
あ、ちなみにランベルトさんにはアービエルさんたちを守ってもらうという名目でダルハに残ってもらった。
だって、今の私たちの実力を考えるとランベルトさんたちは申し訳ないけれど足手まといだもの。
と、そんな風に大急ぎでやってきたわけなのだが……。
なんと炎の神殿は半壊していた。あまりのことに私も少し唖然としてしまった。
「ええと、どういうことでしょうか?」
私の問いに答えられないほどクリスさんとシズクさんもあまりの状況に唖然としているようだが、それも無理はないだろう。
だって、以前この神殿を訪れたときには聖なる結界で守られていたのだ。
ということは、あの竜には聖なる結界を破るだけの力があったということなのだろうか?
「姉さまっ! 今回はこの門、くぐれますよっ!」
ルーちゃんがどことなく楽しそうに前回通れなかった門らしき場所を出入りしている。
うーん? ということはやっぱり結界が破られたということなのだろう。
私もルーちゃんと同じように門をくぐってみるが、やはり何も感じない。どうやら結界は完全に消滅しているようだ。
「拙者も通れるでござるな」
「私もだ。やはり何者かが結界を破壊し、この神殿をも破壊したと考えるのが妥当か」
「そう思うでござるよ」
そんな気はするけれど、なんのために破壊したのだろうか?
「姉さまっ! こっちです! すっごい大きな穴があります!」
「え?」
気が付くとルーちゃんが向こうで手を振っている。
「ルーちゃん。あんまり離れないでください」
「えー、でも。なんか同じところにずっといるじゃないですかっ。だからあたしが調べようかなって」
「ああ、そうですね。ありがとうございます。でも、心配なのであまり離れないでくださいね。あの虎の魔物が襲ってきたら、遠くだと守り切れないかもしれません」
「んー、わかりました」
ルーちゃんは渋々といった感じではあるが納得してくれたようだ。
「それにしても、なんでしょうね? この穴は」
「すごく大きくて、すごく深そうです」
「これは、地面が溶けたのでござるか?」
「そのようだな。砂もガラス状になっている」
ということは、これはやはり竜の仕業だろうか?
「ちょっと降りてみましょう」
「え? フィーネ様?」
私はひょいと飛び降りるとすぐさま【妖精化】して地下へと降りていく。そのまま百メートルほど地下に降りたところで着地した。
周囲を見回してみると、そこは何やらホールのようになっていた。出入口らしきものも見える。
ということは、これは中から外へ出るために天井を破壊したのではないだろうか?
うん? 中から破壊? 地下のホールで、竜?
ものすごく、嫌な予感がする。
ここは火の神様を祀った神殿なんかじゃなくてもしかして!
私は急いで【蝙蝠化】を使って地上へと舞い戻る。
「ああ、フィーネ様! よくぞご無事で」
地上へと戻ってきた私を見たクリスさんがものすごく心配した様子でそう声をかけてきた。
「すみません。ご心配をおかけしました」
「フィーネ殿。地下には何があったでござるか?」
「はい。皆さんの意見を聞きたいのですが、地下には巨大なホールのような空間がありました。そしておそらくこの炎の神殿の中から続いているであろう出入口のようなものもありました」
クリスさんはいまいちピンと来ていない様子だ。シズクさんは眉間に皺をよせ、難しい表情をしている。
「……あの、姉さま。もしかしてそれって白銀の里やあのスイキョウのやつと同じっていうことですか?」
「拙者も同感でござるな」
「そんな! まさか! ではこの炎の神殿は火の神を祀った神殿などではなく、炎龍王を封じていた神殿だと仰るのですか!?」
私はこくりと頷いた。
「では! エイブラからダルハにかけてを滅ぼして回った竜はあの伝説の炎龍王だと?」
「そう、なりますね」
そう答えた瞬間、私たちの上を大きな影が通過した。
「え?」
思わず上を見上げると、信じられないほど巨大な赤い竜が南西方向に飛び去っていく姿がある。
「あれは……まさか!?」
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