421 / 625
滅びの神託
第十章第2話 海辺の夜
しおりを挟む
「そういえば姉さま。存在進化したんですよね。何か新しいことができるようになりましたか?」
「はい。【妖精化】という新しいスキルが使えるようになりましたよ。ほら」
私は妖精に変身し、ルーちゃんの前に浮いてみせた。
「わぁ! すごいですっ!」
「これは……」
「完全に妖精でござるな」
「鏡で見たことがないのでわかりませんが、そうなんですね」
「はい。フィーネ様をそのまま小さくして、羽根を生やしたようなお美しいお姿です」
「そうでしたか。町に戻って鏡で見るのが楽しみです」
ちなみに【妖精化】はアイリスタウンで毎日使っていたおかげか、いつの間にかスキルレベルが3に上がっていた。なんとなくだが、結構な時間飛び続けられるような気がしている。同じように【蝙蝠化】のほうも3に上がっている。
私は【妖精化】を解除して元の姿に戻ると、汚れた食器を洗浄魔法できれいにして収納の中にしまう。
「さて、私はそろそろ寝ますね。ああ、そうそう。結界は私が寝ても解けなくなったので、見張りはしなくても大丈夫だと思いますよ」
「え!?」
クリスさんは驚いた様子だけれど、解けないものは解けないのだから気にしても仕方ないだろう。最高レベルの【聖属性魔法】と【魔力操作】で張られた結界を破れる相手が来たら多分抵抗するだけ無駄だと思うし、ぐっすり寝るほうが健康に良いと思う。
「久しぶりのテント。楽しみです」
「あ、あたしもっ!」
私がテントに入るとルーちゃんが一緒にくっついてきた。なんだか子犬が後をついてくるみたいでちょっとかわいい。
でも、これはきっとルーちゃんにものすごい心配をかけたせいもあるのだろう。
「ほら、ルーちゃん。一緒に寝ましょう?」
「はいっ!」
「ああ、そうだ。マシロちゃんも一緒に」
「っ! はいっ!」
ルーちゃんがマシロちゃんを召喚すると、久しぶりの白いモフモフが現れた。相変わらずのずんぐりむっくりしているウサギだが、この気持ちよさはアイロールで体験済みだ。
その気持ちよさはもちろん健在で、私はマシロちゃんに顔を埋めるとあっという間に眠りに落ちたのだった。
◆◇◆
翌朝目を覚ますと、私は頭をマシロちゃんに預けていた。どうやら一晩中枕になってくれていたらしい。
「おはようございます。マシロちゃん。重かったですよね? 枕になってくれてありがとうございました」
なんとなく、気にするなと言われたような気がした。もしかしたら、精霊には重いという概念がなかったりするのだろうか?
そんなことを考えつつも私はテントからのそのそとはい出ると、外ではクリスさんがしっかり見張りをしてくれていたようだ。
もちろん、私の結界は健在のままだ。
「クリスさん? おはようございます」
「おはようございます。フィーネ様」
「あの、もしかして見張りをしてくれていたんですか?」
「はい。シズク殿と交代ではありますが……」
「そうでしたか」
やはり、心配だったんだろうね。
「もちろんフィーネ様の結界を信じてはおりますが、やはり朝起きたら周囲を魔物に囲まれているという状況は避けたいと思いまして」
なるほど。その気持ちはなんとなく理解できる。
「たしかにそれはあるかもしれません。クリスさんたちと合流する前に、起きたらゴブリンが結界に群がっていたことがありましたから」
「……どうされたんですか?」
「どうって、普通に倒しました。存在進化したときに【水属性魔法】のスキルレベルも上がったので、水の矢を作ってこう」
水の矢を空に向かって放ち、実演してみせる。
「これは! 素晴らしいですね。熟練の魔術師が放つような見事な水の矢です。しかも無詠唱とは……」
「そんなにすごいんですか?」
「はい。フィーネ様の水の矢は宮廷魔術師にも引けを取らないものです。いえ、無詠唱なことを加味すればフィーネ様のほうがレベルが上と言えるでしょう」
「そうですか……」
この世界はスキルレベルが3になれば一人前だ。ということは、宮廷魔術師ともなればきっと4や5はあるだろう。となると、レベル3の【水属性魔法】にレベル10の【魔力操作】がなんらかの影響を与えて実際のスキルレベルよりも上に見えていることだろう。
現に【魔力操作】のレベルがカンストしたおかげで、結界も防壁も驚くほどスムーズに発動できるようになっているのだ。
まあ、私は宮廷魔術師と張り合うことはないと思うので関係ないけれど。
そんな話をしていると二人が起きてきた。
「姉さま。クリスさん。おはようございます!」
「はい。おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはようでござる。そろそろ朝食の準備でござるな」
「そうですね。じゃあ、収納の中からサンドイッチを……あ、もう残っていませんでしたね」
あれだけたくさんあったというのに、ついに食べつくしてしまったようだ。
これは、急いで補充をしなければならないだろう。
あ、でもマヨネーズ味のサンドイッチはアイロールに行かないとダメなんだっけ?
そんなことを考えいたら、ルーちゃんから不思議そうな顔で私を見つめられてしまった。
「姉さま?」
「あっと。そうですね。それじゃあ材料を出すのでみんなで作りましょう」
私は普通の食パンを取り出すと、サンドイッチを作り始めるのだった。
「はい。【妖精化】という新しいスキルが使えるようになりましたよ。ほら」
私は妖精に変身し、ルーちゃんの前に浮いてみせた。
「わぁ! すごいですっ!」
「これは……」
「完全に妖精でござるな」
「鏡で見たことがないのでわかりませんが、そうなんですね」
「はい。フィーネ様をそのまま小さくして、羽根を生やしたようなお美しいお姿です」
「そうでしたか。町に戻って鏡で見るのが楽しみです」
ちなみに【妖精化】はアイリスタウンで毎日使っていたおかげか、いつの間にかスキルレベルが3に上がっていた。なんとなくだが、結構な時間飛び続けられるような気がしている。同じように【蝙蝠化】のほうも3に上がっている。
私は【妖精化】を解除して元の姿に戻ると、汚れた食器を洗浄魔法できれいにして収納の中にしまう。
「さて、私はそろそろ寝ますね。ああ、そうそう。結界は私が寝ても解けなくなったので、見張りはしなくても大丈夫だと思いますよ」
「え!?」
クリスさんは驚いた様子だけれど、解けないものは解けないのだから気にしても仕方ないだろう。最高レベルの【聖属性魔法】と【魔力操作】で張られた結界を破れる相手が来たら多分抵抗するだけ無駄だと思うし、ぐっすり寝るほうが健康に良いと思う。
「久しぶりのテント。楽しみです」
「あ、あたしもっ!」
私がテントに入るとルーちゃんが一緒にくっついてきた。なんだか子犬が後をついてくるみたいでちょっとかわいい。
でも、これはきっとルーちゃんにものすごい心配をかけたせいもあるのだろう。
「ほら、ルーちゃん。一緒に寝ましょう?」
「はいっ!」
「ああ、そうだ。マシロちゃんも一緒に」
「っ! はいっ!」
ルーちゃんがマシロちゃんを召喚すると、久しぶりの白いモフモフが現れた。相変わらずのずんぐりむっくりしているウサギだが、この気持ちよさはアイロールで体験済みだ。
その気持ちよさはもちろん健在で、私はマシロちゃんに顔を埋めるとあっという間に眠りに落ちたのだった。
◆◇◆
翌朝目を覚ますと、私は頭をマシロちゃんに預けていた。どうやら一晩中枕になってくれていたらしい。
「おはようございます。マシロちゃん。重かったですよね? 枕になってくれてありがとうございました」
なんとなく、気にするなと言われたような気がした。もしかしたら、精霊には重いという概念がなかったりするのだろうか?
そんなことを考えつつも私はテントからのそのそとはい出ると、外ではクリスさんがしっかり見張りをしてくれていたようだ。
もちろん、私の結界は健在のままだ。
「クリスさん? おはようございます」
「おはようございます。フィーネ様」
「あの、もしかして見張りをしてくれていたんですか?」
「はい。シズク殿と交代ではありますが……」
「そうでしたか」
やはり、心配だったんだろうね。
「もちろんフィーネ様の結界を信じてはおりますが、やはり朝起きたら周囲を魔物に囲まれているという状況は避けたいと思いまして」
なるほど。その気持ちはなんとなく理解できる。
「たしかにそれはあるかもしれません。クリスさんたちと合流する前に、起きたらゴブリンが結界に群がっていたことがありましたから」
「……どうされたんですか?」
「どうって、普通に倒しました。存在進化したときに【水属性魔法】のスキルレベルも上がったので、水の矢を作ってこう」
水の矢を空に向かって放ち、実演してみせる。
「これは! 素晴らしいですね。熟練の魔術師が放つような見事な水の矢です。しかも無詠唱とは……」
「そんなにすごいんですか?」
「はい。フィーネ様の水の矢は宮廷魔術師にも引けを取らないものです。いえ、無詠唱なことを加味すればフィーネ様のほうがレベルが上と言えるでしょう」
「そうですか……」
この世界はスキルレベルが3になれば一人前だ。ということは、宮廷魔術師ともなればきっと4や5はあるだろう。となると、レベル3の【水属性魔法】にレベル10の【魔力操作】がなんらかの影響を与えて実際のスキルレベルよりも上に見えていることだろう。
現に【魔力操作】のレベルがカンストしたおかげで、結界も防壁も驚くほどスムーズに発動できるようになっているのだ。
まあ、私は宮廷魔術師と張り合うことはないと思うので関係ないけれど。
そんな話をしていると二人が起きてきた。
「姉さま。クリスさん。おはようございます!」
「はい。おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはようでござる。そろそろ朝食の準備でござるな」
「そうですね。じゃあ、収納の中からサンドイッチを……あ、もう残っていませんでしたね」
あれだけたくさんあったというのに、ついに食べつくしてしまったようだ。
これは、急いで補充をしなければならないだろう。
あ、でもマヨネーズ味のサンドイッチはアイロールに行かないとダメなんだっけ?
そんなことを考えいたら、ルーちゃんから不思議そうな顔で私を見つめられてしまった。
「姉さま?」
「あっと。そうですね。それじゃあ材料を出すのでみんなで作りましょう」
私は普通の食パンを取り出すと、サンドイッチを作り始めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる