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人と魔物と魔王と聖女
第九章第40話 別れ
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翌日、ベルードはワイバーンという魔物を置いて去っていった。ワイバーンは翼のある竜のような魔物なのだが、これは竜ではなくトカゲの魔物なのだそうだ。
違いはよくわからないが、魔王を目指しているベルードがそう言っているのだからトカゲの魔物なのだろう。
「フィーネ。寂しいゴブ」
「そうだニャン。ずっと一緒に暮らすんだニャン」
「そうだっち。行っちゃやだっち」
アイリスタウンのみんなが口々に別れを惜しんでくれる。私としても思い入れはあるし、その言葉に甘えてこのまま一緒に暮らしたいという気持ちもある。
だが、いつまでもクリスさんたちを待たせるわけにはいかないのだ。
「ヴェラ。カリン。アルベルト。ベルードのように飛ぶ力を身につけたら、私は必ずまたこのアイリスタウンへ遊びに来ます。そのときは世界中のお土産や美味しいごはん、それに作物を持ってきますから、楽しみにしていてくださいね」
「ううっ。フィーネ~」
みんな、私との別れを惜しんで泣いてくれている。
私だって、本当は寂しい。離れ難いという気持ちがこみ上げてきて、これ以上いたら私はきっと旅立てなくなってしまう。
私は頭を振ってその気持ちを振り払うとベルードの残してくれたワイバーンの背にまたがった。そしてその背の上からみんなに声をかける。
「みんな、本当にありがとうございました。また会いましょう」
あえてさようならは言わない。絶対に、また会いに来るのだから。
「フィーネ、またゴブ~」
ワイバーンが羽ばたくとふわりとその巨体が浮き上がった。そして徐々に高度を上げていき、大好きなアイリスタウンのみんなの顔が少しずつ小さくなっていく。
私はみんなに見えるように大きく手を振った。
「みんな~! ありがとう~!」
その言葉がみんなに届いたのかどうかはわからない。
ワイバーンは数百メートルの高さまで上昇するとゆっくりと北に向かって移動を始め、そして徐々にスピードを上げていく。
行き先はベルードがあらかじめ伝えておいてくれた。ホワイトムーン王国の南東部、ファレン半島だ。
あの辺りは人間の集落も少ないため、こっそりと私を下ろすには最適なのだそうだ。
後ろを振り返ると、もうアイリスタウンのある島は見えなくなっていた。
ホワイトムーン王国へと戻れる喜びと、一抹の寂しさが交錯する。
うん。でも、私のいるべき場所はあそこじゃない。クリスさんの、ルーちゃんの、そしてシズクさんのそばが私のいるべき場所なのだ。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、ワイバーンはすさまじいスピードで大空を飛ぶのだった。
◆◇◆
やがて日が沈み、夜の帳に包まれると私を乗せたワイバーンは海沿いの森に着陸した。
ここまでにかかった時間はおよそ十時間くらいだろうか?
休む間もなく飛び続けてくれたおかげで、私は無事にファレン半島に到着したようだ。
「ありがとうございました」
「ぐるぅ」
私がお礼を言って頭を軽く撫でてやると、ワイバーンは気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「ベルードにも、よろしく伝えてくださいね」
「ぐるるぅ」
ワイバーンはまるで私の言葉を理解したかのように再び喉を鳴らすと大きく翼を広げ、ゆっくりと飛び立っていく。
私はそれを大きく手を振って見送った。
やがてワイバーンの姿も見えなくなり、私は夜の森に一人で取り残されることになった。
だが、特に問題はない。だって、あの島で私は一人で野宿したからね。
そんなことを考えるとみんなの顔が、そして穏やかな暮らしを思い出して何だかしんみりした気分になってきてしまった。
いやいや。今の私にはもうあの島へと戻る術はないのだ。
より発展したアイリスタウンを再訪することを楽しみに、今はがんばってクリスさんたちと合流しよう。
アイリスさんは温泉を本当に気に入ってくれたし、ベルードだって昨晩こっそり男湯に入っていたのを知っている。
きっと。きっと住民の増えた素晴らしいアイリスタウンになっているに違いない。
そう自分に言い聞かせると、平らな場所に寝転んで結界を張った。
やはり眠っている間に結界が解除されなくなったというのは本当に大きい。おかげで襲撃など気にせず、どこでも眠ることができる。
私は寝袋に包まると目を閉じる。するとあっという間に睡魔が襲ってきた。
うん。どうやら自分で思っているよりも疲れていたらしい。
私はそのまま睡魔に身を任せ、夢の世界へと旅立つのだった。
違いはよくわからないが、魔王を目指しているベルードがそう言っているのだからトカゲの魔物なのだろう。
「フィーネ。寂しいゴブ」
「そうだニャン。ずっと一緒に暮らすんだニャン」
「そうだっち。行っちゃやだっち」
アイリスタウンのみんなが口々に別れを惜しんでくれる。私としても思い入れはあるし、その言葉に甘えてこのまま一緒に暮らしたいという気持ちもある。
だが、いつまでもクリスさんたちを待たせるわけにはいかないのだ。
「ヴェラ。カリン。アルベルト。ベルードのように飛ぶ力を身につけたら、私は必ずまたこのアイリスタウンへ遊びに来ます。そのときは世界中のお土産や美味しいごはん、それに作物を持ってきますから、楽しみにしていてくださいね」
「ううっ。フィーネ~」
みんな、私との別れを惜しんで泣いてくれている。
私だって、本当は寂しい。離れ難いという気持ちがこみ上げてきて、これ以上いたら私はきっと旅立てなくなってしまう。
私は頭を振ってその気持ちを振り払うとベルードの残してくれたワイバーンの背にまたがった。そしてその背の上からみんなに声をかける。
「みんな、本当にありがとうございました。また会いましょう」
あえてさようならは言わない。絶対に、また会いに来るのだから。
「フィーネ、またゴブ~」
ワイバーンが羽ばたくとふわりとその巨体が浮き上がった。そして徐々に高度を上げていき、大好きなアイリスタウンのみんなの顔が少しずつ小さくなっていく。
私はみんなに見えるように大きく手を振った。
「みんな~! ありがとう~!」
その言葉がみんなに届いたのかどうかはわからない。
ワイバーンは数百メートルの高さまで上昇するとゆっくりと北に向かって移動を始め、そして徐々にスピードを上げていく。
行き先はベルードがあらかじめ伝えておいてくれた。ホワイトムーン王国の南東部、ファレン半島だ。
あの辺りは人間の集落も少ないため、こっそりと私を下ろすには最適なのだそうだ。
後ろを振り返ると、もうアイリスタウンのある島は見えなくなっていた。
ホワイトムーン王国へと戻れる喜びと、一抹の寂しさが交錯する。
うん。でも、私のいるべき場所はあそこじゃない。クリスさんの、ルーちゃんの、そしてシズクさんのそばが私のいるべき場所なのだ。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、ワイバーンはすさまじいスピードで大空を飛ぶのだった。
◆◇◆
やがて日が沈み、夜の帳に包まれると私を乗せたワイバーンは海沿いの森に着陸した。
ここまでにかかった時間はおよそ十時間くらいだろうか?
休む間もなく飛び続けてくれたおかげで、私は無事にファレン半島に到着したようだ。
「ありがとうございました」
「ぐるぅ」
私がお礼を言って頭を軽く撫でてやると、ワイバーンは気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「ベルードにも、よろしく伝えてくださいね」
「ぐるるぅ」
ワイバーンはまるで私の言葉を理解したかのように再び喉を鳴らすと大きく翼を広げ、ゆっくりと飛び立っていく。
私はそれを大きく手を振って見送った。
やがてワイバーンの姿も見えなくなり、私は夜の森に一人で取り残されることになった。
だが、特に問題はない。だって、あの島で私は一人で野宿したからね。
そんなことを考えるとみんなの顔が、そして穏やかな暮らしを思い出して何だかしんみりした気分になってきてしまった。
いやいや。今の私にはもうあの島へと戻る術はないのだ。
より発展したアイリスタウンを再訪することを楽しみに、今はがんばってクリスさんたちと合流しよう。
アイリスさんは温泉を本当に気に入ってくれたし、ベルードだって昨晩こっそり男湯に入っていたのを知っている。
きっと。きっと住民の増えた素晴らしいアイリスタウンになっているに違いない。
そう自分に言い聞かせると、平らな場所に寝転んで結界を張った。
やはり眠っている間に結界が解除されなくなったというのは本当に大きい。おかげで襲撃など気にせず、どこでも眠ることができる。
私は寝袋に包まると目を閉じる。するとあっという間に睡魔が襲ってきた。
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