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人と魔物と魔王と聖女
第九章第20話 開湯
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「それでは、道づくりをする班と浴場を建築する班に別れましょう」
「建築なら、ゴブとゴンザレスがやるゴブ。アルベルトもいると助かるゴブ」
「あれ? でも道づくりもゴンザレスさんとアルベルトさんが得意でしたよね?」
「そうゴブ。こういった仕事はゴンザレスとアルベルトがやるゴブ」
なるほど。言われてみると確かに他の子たちは厳しそうだ。
「そういうことでしたら、まずはアルベルトとゴンザレス、ミミーの三名で道づくりをお願いできますか?」
「ちっちっ。オレッチに任せるっち」
そう言うとアルベルトたちは地面を掘り返しては木を引っこ抜き始めた。
どうやって道を作るのが正解なのかはわからないけれど、少なくともあのどこにも繋がっていない道はちゃんとできていたのだ。きっとしっかりした道を作ってくれることだろう。
「ゴブはフィーネと浴場を建てるゴブ?」
「はい。ですが、お湯が沸いているのは少し下ですからね。ここからあそこまでの道を作らないといけません」
「そうゴブな。落ちたら大変そうゴブ」
「はい。なので、ヴェラは安全に通れるルートを探してください」
「分かったゴブ。あれ? フィーネは何するゴブ?」
「浴場を作れそうな場所と、お湯を流すルートを考えます」
「??? 難しそうだけど任せるゴブ」
「はい」
そう答えた私を他の子たちがジーっと見つめていた。
「ええと、お手伝いできそうなことはありますか?」
「んー、アチシは日向ぼっこしながら応援しているニャ」
「ボクたちはここで追いかけっこをしているワン」
「ワン」
「くーんくーん」
「オイラは道を作るの手伝うピョン」
「じゃ、じゃあぼくもそうするゲコ」
「はい。それじゃあ、よろしくお願いしますね」
無事に担当が決まった。
何やら仕事じゃないことを担当している子がいる気もするが、細かいことは気にしても仕方ないだろう。
私は妖精化をして飛んでいくと崖の中腹にある美人の湯へとやってきた。
前回はこの温泉が湧き出ている場所から直接結界で作った浴槽に流し込んだわけだが……。
うーん。さすがにここにはそれ以上のスペースはないしな。屋根付きの露天風呂は厳しい気がする。
となると……あ! あそこなら?
四メートルくらい下にダブルベッドくらいの大きさの平らになっている場所がある。
よし、行ってみよう。
再び妖精化を使ってその場所へと降りてみた。
なるほど。このくらいの広さだったら小さな小屋くらいは建てられそうだ。
んん? いや、待てよ? これだったらこの崖の岩をくりぬいて洞窟露天風呂にして、この平らな場所を脱衣所兼休憩スペースにすればいいんじゃないかな?
うん。ナイスアイデアな気がする。
それならここに無理して小屋を建てずに済むじゃないか。
と、そこまで妄想してはたと気が付いた。
それ、どうやれば良いんだろうか?
ええと、金属のつるはしはなさそうだから掘るのは難しいよね。
となると魔法でどうにかする?
うーん?
あ、そうだ! 私は【土属性魔法】も持っていたんだった。
レベルが 1 なのでしょぼいのは確かだろうが、それでも岩を多少変形することくらいはできるはずだ。
よし。じゃあ、この崖に洞窟を掘るイメージで、えい!
ぽこん。
小さな音と共に私の握りこぶし一つ分くらいの穴が出来上がった。
……えっと。ま、まあ、レベル 1 だしね。
だが私はこの程度では諦めない。一度で握りこぶし一つ分の穴を掘ることができたのならば、それをやり続ければ良いだけなのだ。
そう考えた私は夢中で穴を広げていくのだった。
◆◇◆
それから一週間ほどが経過し、洞窟浴場が完成した。アイリスタウン初の温泉施設だ。
名前はどうしようかな?
崖の中ほどに掘られているから、崖中温泉でいいか。
それじゃあ、その崖中温泉の施設を紹介しよう。まずお風呂は男湯と女湯を分かれており、広さ十畳くらいの浴槽と体を洗うためのスペースをそれぞれ確保されている。さらに浴槽は崖からせり出すように作ってあるので絶景露天風呂がいつでも楽しめるようになっているのだ。
もちろん屋根付きなので上から覗かれる心配もないし雨の日だって入浴する可能となっている。
え? やりすぎ?
いや、まあ、ほら。これまで【土属性魔法】なんて一度も使っていなかったわけで。
何というか、ほら。こう、やっているうちに楽しくなってきてしまったのだ。
いやはや。自分がここまで凝り性だったとは思わなかったけど、でも良いものはできたんじゃないかと思う。
それから、元々平らになっていた部分には石のベンチを置いて休憩スペースも作ったみた。
これでのぼせてしまっても休憩できるし、誰かが入っているときはここで順番待ちもできる。
もはや無人島とは思えないレベルで充実した温泉施設が完成してしまった。
そうそう。お湯は【土属性魔法】で作った岩の水道管を使って浴槽へと直接引き込む仕組みになっていて、もちろん源泉かけ流しだ。
このロケーションで美人の湯が源泉かけ流しだなんて、ここはもしや天国なのではないだろうか?
それから道づくりのほうも割と簡単に解決した。
町からの道はアルベルトたちがしっかりがんばってくれたし、ここに降りてくるための道はヴェラが安全なそうなルートを見つけてくれた。
なのであとはそこにちょっと転落防止の手すりのようなでっぱりを【土属性魔法】で作って完成だ。
「これで完成ゴブ?」
「はい。完成です」
「これはどうやって使うゴブか?」
「はい。これはですね――」
=========
次回更新は 2021/06/28 (月) 19:00 を予定しております。
「建築なら、ゴブとゴンザレスがやるゴブ。アルベルトもいると助かるゴブ」
「あれ? でも道づくりもゴンザレスさんとアルベルトさんが得意でしたよね?」
「そうゴブ。こういった仕事はゴンザレスとアルベルトがやるゴブ」
なるほど。言われてみると確かに他の子たちは厳しそうだ。
「そういうことでしたら、まずはアルベルトとゴンザレス、ミミーの三名で道づくりをお願いできますか?」
「ちっちっ。オレッチに任せるっち」
そう言うとアルベルトたちは地面を掘り返しては木を引っこ抜き始めた。
どうやって道を作るのが正解なのかはわからないけれど、少なくともあのどこにも繋がっていない道はちゃんとできていたのだ。きっとしっかりした道を作ってくれることだろう。
「ゴブはフィーネと浴場を建てるゴブ?」
「はい。ですが、お湯が沸いているのは少し下ですからね。ここからあそこまでの道を作らないといけません」
「そうゴブな。落ちたら大変そうゴブ」
「はい。なので、ヴェラは安全に通れるルートを探してください」
「分かったゴブ。あれ? フィーネは何するゴブ?」
「浴場を作れそうな場所と、お湯を流すルートを考えます」
「??? 難しそうだけど任せるゴブ」
「はい」
そう答えた私を他の子たちがジーっと見つめていた。
「ええと、お手伝いできそうなことはありますか?」
「んー、アチシは日向ぼっこしながら応援しているニャ」
「ボクたちはここで追いかけっこをしているワン」
「ワン」
「くーんくーん」
「オイラは道を作るの手伝うピョン」
「じゃ、じゃあぼくもそうするゲコ」
「はい。それじゃあ、よろしくお願いしますね」
無事に担当が決まった。
何やら仕事じゃないことを担当している子がいる気もするが、細かいことは気にしても仕方ないだろう。
私は妖精化をして飛んでいくと崖の中腹にある美人の湯へとやってきた。
前回はこの温泉が湧き出ている場所から直接結界で作った浴槽に流し込んだわけだが……。
うーん。さすがにここにはそれ以上のスペースはないしな。屋根付きの露天風呂は厳しい気がする。
となると……あ! あそこなら?
四メートルくらい下にダブルベッドくらいの大きさの平らになっている場所がある。
よし、行ってみよう。
再び妖精化を使ってその場所へと降りてみた。
なるほど。このくらいの広さだったら小さな小屋くらいは建てられそうだ。
んん? いや、待てよ? これだったらこの崖の岩をくりぬいて洞窟露天風呂にして、この平らな場所を脱衣所兼休憩スペースにすればいいんじゃないかな?
うん。ナイスアイデアな気がする。
それならここに無理して小屋を建てずに済むじゃないか。
と、そこまで妄想してはたと気が付いた。
それ、どうやれば良いんだろうか?
ええと、金属のつるはしはなさそうだから掘るのは難しいよね。
となると魔法でどうにかする?
うーん?
あ、そうだ! 私は【土属性魔法】も持っていたんだった。
レベルが 1 なのでしょぼいのは確かだろうが、それでも岩を多少変形することくらいはできるはずだ。
よし。じゃあ、この崖に洞窟を掘るイメージで、えい!
ぽこん。
小さな音と共に私の握りこぶし一つ分くらいの穴が出来上がった。
……えっと。ま、まあ、レベル 1 だしね。
だが私はこの程度では諦めない。一度で握りこぶし一つ分の穴を掘ることができたのならば、それをやり続ければ良いだけなのだ。
そう考えた私は夢中で穴を広げていくのだった。
◆◇◆
それから一週間ほどが経過し、洞窟浴場が完成した。アイリスタウン初の温泉施設だ。
名前はどうしようかな?
崖の中ほどに掘られているから、崖中温泉でいいか。
それじゃあ、その崖中温泉の施設を紹介しよう。まずお風呂は男湯と女湯を分かれており、広さ十畳くらいの浴槽と体を洗うためのスペースをそれぞれ確保されている。さらに浴槽は崖からせり出すように作ってあるので絶景露天風呂がいつでも楽しめるようになっているのだ。
もちろん屋根付きなので上から覗かれる心配もないし雨の日だって入浴する可能となっている。
え? やりすぎ?
いや、まあ、ほら。これまで【土属性魔法】なんて一度も使っていなかったわけで。
何というか、ほら。こう、やっているうちに楽しくなってきてしまったのだ。
いやはや。自分がここまで凝り性だったとは思わなかったけど、でも良いものはできたんじゃないかと思う。
それから、元々平らになっていた部分には石のベンチを置いて休憩スペースも作ったみた。
これでのぼせてしまっても休憩できるし、誰かが入っているときはここで順番待ちもできる。
もはや無人島とは思えないレベルで充実した温泉施設が完成してしまった。
そうそう。お湯は【土属性魔法】で作った岩の水道管を使って浴槽へと直接引き込む仕組みになっていて、もちろん源泉かけ流しだ。
このロケーションで美人の湯が源泉かけ流しだなんて、ここはもしや天国なのではないだろうか?
それから道づくりのほうも割と簡単に解決した。
町からの道はアルベルトたちがしっかりがんばってくれたし、ここに降りてくるための道はヴェラが安全なそうなルートを見つけてくれた。
なのであとはそこにちょっと転落防止の手すりのようなでっぱりを【土属性魔法】で作って完成だ。
「これで完成ゴブ?」
「はい。完成です」
「これはどうやって使うゴブか?」
「はい。これはですね――」
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次回更新は 2021/06/28 (月) 19:00 を予定しております。
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