278 / 625
動乱の故郷
第六章第51話 森の調査
しおりを挟む
2020/10/29 誤字を修正しました
================
「聖女様、お待ちしておりました」
私たちが駐屯地前の広場に到着すると、アロイスさんと騎士が 30 人くらい、それに魔術師っぽい格好の人と、そしてアイロールの盾の二人が既に私たちを待っていた。
「おはようございます。アロイスさん、もしかしてお待たせしてしまいましたか?」
「いえ。我々は準備のために先に来ていただけです」
「そうでしたか。そちらの二人は、ええと、確かディオンさんとグレッグさんでしたっけ?」
「はい! この前はグレッグを治療していただきありがとうございました!」
ディオンさんとグレッグさんがブーンからのジャンピング土下座で礼を言う。
うん、キレはあったし力強さはあったけど、揃っていないし手先までしっかり気を配れていなかったから 6 点かな。
「いえ。それが仕事ですから。お元気そうで何よりです」
私は営業スマイルでそう言うと何故か顔を赤くしている。
そんな彼らにアロイスさんが小さく咳払いをすると説明を始めた。
「さて、本日の我々の任務ですが聖女様が発見されたという謎の祭壇の調査です」
「はい」
「特に初回ですので、今回の第一の目的は祭壇への道を確認することです。詳しい調査は王都の学者や王宮の魔術師たちに任せることになりますが、できれば危険性の有無だけは確認しておきたいところです」
「そうですね」
真面目な表情で話すアロイスさんに私は小さく頷く。
「そこでその祭壇への道なのですが、そこのアイロールの盾の二人が森に詳しいという事ですので、特徴などをお教えいただければ近い場所には行けるかと存じます」
「はい! 任せてください! この森は俺たちの庭みたいなものですから!」
「ああ。俺たちに任せてくれ!」
何やらディオンさんとグレッグさんがすごい勢いで自己アピールしてきている。きっと鼻息を荒くするってこんな状態の事を言うんだろうな、などと思いつつも場所の特徴を告げようとしてふと思いついた。
「ええと、ルーちゃん。あのエビルトレントと戦ったあの祭壇のある場所まで行けたりしませんか?」
「え? 行けますよ?」
私がルーちゃんにそう尋ねると、ルーちゃんは事もなげそう答えた。
「だそうですので、出発しましょう」
「「「へ?」」」
アロイスさんと立場を無くしたディオンさんとグレッグさんが妙に間の抜けた声を出すが、私たちは構わず歩き始める。
あれ? ついてこない?
「行きますよ?」
私が振り返って声をかけると、アロイスさん達は弾かれたように後を追って来たのだった。
****
「到着ですっ!」
ルーちゃんの案内で一切迷うことなくエビルトレントと最初に遭遇した祭壇のある空き地へとやってきた。
「あれがその祭壇ですね。それであっちの木が枯れている辺りはエビルトレントとトレントがいた場所です」
私の説明にアロイスさんや魔術師風の人たちがそれぞれ検分して回っている。
「この場所には夏のはじめくらいに採集で来たことがありますが、こんなものはなかったですね」
ディオンさんが祭壇を見ながら不思議そうな表情で私にそう言う。
「やはり儀式の跡のようには見えるでござるがな」
「下草がちゃんと刈ってありますからねぇ。でもオタエヶ淵の身投げ岩のような魔力は感じないんですよね」
「オタエヶ淵ってなんすか?」
グレッグさんが私たちの会話に横から乱入してきた。
「遥か東方の国にそう言う場所があって、呪われた岩があったんです」
「はぁー、そんなんがあるんすか。すげえですね」
そう言って感心しているが、グレッグさんが調査で役に立つことはなさそうだ。
そしてしばらく調査を続けたのだが、結局分かったことは何者かがこの祭壇を夏以降に設置したということだけだった。残念ながら、誰が何のために設置したのか、そしてそれが今回の魔物暴走に何か関係があるのかといった肝心な事は分からずじまいだ。
「うーん、エビルトレントも出ましたし、一応浄化しておきます?」
私は念のためにアロイスさんに提案してみると、是非に、とのことなので久しぶりにリーチェを呼んで浄化を行うことにした。
花びらを舞い散らせ、種を植えてからの浄化の光景は本当にきれいだし、うちのリーチェは本当にかわいかった。
と、こんな事を考えている余裕があるのは、今回は大して浄化するべきものがなかったようでほとんど魔力を使わずに済んだからだ。そのおかげでうちのかわいいリーチェのかわいい晴れ姿をばっちり見ることができた。
大事なことだからね。二回言ったよ?
「聖女様、大変お疲れ様でした。これ以上は我々ではどうにもならないと思いますので、王都からの調査団の専門家たちに任せようと思います。それまでこの現場は我々騎士団で保全いたします」
「そうですか」
保全すると言っているのに浄化してしまって良かったんだろうか?
いや、でもそこは私が気にすることでもないだろう。
こうして私たちは森の中での調査を終え、アイロールの町へと戻ったのだった。その帰り道でも魔物に襲われることはほとんどなく、襲ってきた魔物も騎士団とアイロールの盾のお二人が全て倒してくれたのだった。
そしてその翌日になるとすっかり魔物は町周辺から追い払われ、こうしてアイロールに平和が戻ったのだった。
================
「聖女様、お待ちしておりました」
私たちが駐屯地前の広場に到着すると、アロイスさんと騎士が 30 人くらい、それに魔術師っぽい格好の人と、そしてアイロールの盾の二人が既に私たちを待っていた。
「おはようございます。アロイスさん、もしかしてお待たせしてしまいましたか?」
「いえ。我々は準備のために先に来ていただけです」
「そうでしたか。そちらの二人は、ええと、確かディオンさんとグレッグさんでしたっけ?」
「はい! この前はグレッグを治療していただきありがとうございました!」
ディオンさんとグレッグさんがブーンからのジャンピング土下座で礼を言う。
うん、キレはあったし力強さはあったけど、揃っていないし手先までしっかり気を配れていなかったから 6 点かな。
「いえ。それが仕事ですから。お元気そうで何よりです」
私は営業スマイルでそう言うと何故か顔を赤くしている。
そんな彼らにアロイスさんが小さく咳払いをすると説明を始めた。
「さて、本日の我々の任務ですが聖女様が発見されたという謎の祭壇の調査です」
「はい」
「特に初回ですので、今回の第一の目的は祭壇への道を確認することです。詳しい調査は王都の学者や王宮の魔術師たちに任せることになりますが、できれば危険性の有無だけは確認しておきたいところです」
「そうですね」
真面目な表情で話すアロイスさんに私は小さく頷く。
「そこでその祭壇への道なのですが、そこのアイロールの盾の二人が森に詳しいという事ですので、特徴などをお教えいただければ近い場所には行けるかと存じます」
「はい! 任せてください! この森は俺たちの庭みたいなものですから!」
「ああ。俺たちに任せてくれ!」
何やらディオンさんとグレッグさんがすごい勢いで自己アピールしてきている。きっと鼻息を荒くするってこんな状態の事を言うんだろうな、などと思いつつも場所の特徴を告げようとしてふと思いついた。
「ええと、ルーちゃん。あのエビルトレントと戦ったあの祭壇のある場所まで行けたりしませんか?」
「え? 行けますよ?」
私がルーちゃんにそう尋ねると、ルーちゃんは事もなげそう答えた。
「だそうですので、出発しましょう」
「「「へ?」」」
アロイスさんと立場を無くしたディオンさんとグレッグさんが妙に間の抜けた声を出すが、私たちは構わず歩き始める。
あれ? ついてこない?
「行きますよ?」
私が振り返って声をかけると、アロイスさん達は弾かれたように後を追って来たのだった。
****
「到着ですっ!」
ルーちゃんの案内で一切迷うことなくエビルトレントと最初に遭遇した祭壇のある空き地へとやってきた。
「あれがその祭壇ですね。それであっちの木が枯れている辺りはエビルトレントとトレントがいた場所です」
私の説明にアロイスさんや魔術師風の人たちがそれぞれ検分して回っている。
「この場所には夏のはじめくらいに採集で来たことがありますが、こんなものはなかったですね」
ディオンさんが祭壇を見ながら不思議そうな表情で私にそう言う。
「やはり儀式の跡のようには見えるでござるがな」
「下草がちゃんと刈ってありますからねぇ。でもオタエヶ淵の身投げ岩のような魔力は感じないんですよね」
「オタエヶ淵ってなんすか?」
グレッグさんが私たちの会話に横から乱入してきた。
「遥か東方の国にそう言う場所があって、呪われた岩があったんです」
「はぁー、そんなんがあるんすか。すげえですね」
そう言って感心しているが、グレッグさんが調査で役に立つことはなさそうだ。
そしてしばらく調査を続けたのだが、結局分かったことは何者かがこの祭壇を夏以降に設置したということだけだった。残念ながら、誰が何のために設置したのか、そしてそれが今回の魔物暴走に何か関係があるのかといった肝心な事は分からずじまいだ。
「うーん、エビルトレントも出ましたし、一応浄化しておきます?」
私は念のためにアロイスさんに提案してみると、是非に、とのことなので久しぶりにリーチェを呼んで浄化を行うことにした。
花びらを舞い散らせ、種を植えてからの浄化の光景は本当にきれいだし、うちのリーチェは本当にかわいかった。
と、こんな事を考えている余裕があるのは、今回は大して浄化するべきものがなかったようでほとんど魔力を使わずに済んだからだ。そのおかげでうちのかわいいリーチェのかわいい晴れ姿をばっちり見ることができた。
大事なことだからね。二回言ったよ?
「聖女様、大変お疲れ様でした。これ以上は我々ではどうにもならないと思いますので、王都からの調査団の専門家たちに任せようと思います。それまでこの現場は我々騎士団で保全いたします」
「そうですか」
保全すると言っているのに浄化してしまって良かったんだろうか?
いや、でもそこは私が気にすることでもないだろう。
こうして私たちは森の中での調査を終え、アイロールの町へと戻ったのだった。その帰り道でも魔物に襲われることはほとんどなく、襲ってきた魔物も騎士団とアイロールの盾のお二人が全て倒してくれたのだった。
そしてその翌日になるとすっかり魔物は町周辺から追い払われ、こうしてアイロールに平和が戻ったのだった。
0
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる