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動乱の故郷
第六章第38話 アイロール防衛線(3)
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2020/10/15 誤字を修正しました
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戦闘が始まってかれこれ 4 時間が経過し、私たちは今ランチタイムの真っ最中だ。
水堀のおかげで城壁には取りつかれることも無く、魔物たちが侵入できるのは跳ね橋のある門からだけなので、数の不利をものともしない戦いができている。
いや、むしろ地の利を活かして有利に戦っていると言っていいだろう。
壁の上から矢や魔法を打ち込まれ、また石を投げつけられ、そして跳ね橋の前では騎士たちが魔物たちを退治する。その騎士たちも 3 つの小隊が 1 時間交代で外で戦う部隊、門の上から弓矢や投石で攻撃する部隊、そして休憩する部隊とローテーションを回しており、今のところ犠牲者は一人も出ていない。
「今のところは良い感じで守れていますね」
「そうですね。ただ、オーガやトレントが出てきた場合はどうなるかわかりません。油断は禁物です」
「お腹すきました~」
「ルミア殿はマシロ殿を召喚しっぱなしでござったからな」
今のところ、私たちの出番はほとんどなく、マシロちゃんが壁の上から一方的に蹂躙しているだけだ。私も防壁で嫌がらせをしたり、切られそうになった騎士を助けたりしたくらいでほとんどやることはない。
この分であればポーションの出番も無いかもしれない。
ランチも特別なものではなく、普通のシチューと普通のパンだ。これと言って特筆すべきものはない。その証拠にルーちゃんが無表情で食べている。
ささっと食べて戻ろうとしたとき、外から声が聞こえてきた。
「ブラッドクロウの群れだ! 矢を準備しろ!」
うん? 聞いたことのない魔物だ。
「クリスさん、ブラッドクロウって何ですか?」
「はい。ブラッドクロウというのは巨大なカラスの魔物です。血のように真っ赤な体をしているのが特徴です。まずいですね。鳥なので城壁は意味がありません」
「ルーちゃん、行きましょう!」
「はいっ」
元気に返事はしてくれたものの、ルーちゃんはやや疲れているように見える。その証拠に、私が渡した MP ポーションをすぐに飲み干している。
「ありがとうございます、姉さまっ! これでまだまだいけますっ!」
そうして私たちが門の上までやってくると、なるほど、確かに赤くて巨大なカラスの大群が私たちの方をこちらを目掛けて飛んでくるのが見える。
「聖女様! ここは危険です! 早く建物の中にお下がりください」
騎士の一人が私たちに警告する。
「大丈夫ですよ。それと、こっちに引きつけますよ」
私は浄化魔法で光を出すと、シャルに貰った手鏡を使って光をちかちかとブラッドクロウに向かって断続的に照射する。
「フィーネ様? 一体何を?」
「あの赤いカラスにはこっちに来てもらおうかと思いまして」
「???」
いや、だって、カラスって光るもの好きって言わない?
これで興味を示してこっちに来てくれれば良いんだけど。
そう思った瞬間、ブラッドクロウの群れは一直線に私のほうへと向かってきた。
「あ、やっぱりカラスは光るものが、って、あれ?」
何だか怒っているように見えるのは気のせいかな?
「ああ、やはり怒らせてしまいましたね。ブラッドクロウはとても短気な魔物でして、何かあるとああしてすぐに集団で襲って来るんです」
「あ、でもそれはそれで好都合ですね。引きつけますよ」
私は再度手鏡で挑発する。するとブラッドクロウたちは私を目掛けて一直線に飛んでくる。
「お任せください。フィーネ様には触れさせません」
「拙者が全て叩き斬ってやるでござるよ」
「あたしもいますよ」
私の左右と後ろにポジションを取るクリスさん、シズクさん、そしてルーちゃんだ。
距離はあと 30 メートル、20 メートル、どんどん近づいてくる。
ブラッドクロウの大きさは大体 1 メートルくらいか
「せ、聖女様!」
「引きつけます! 下の敵を攻撃してください!」
一瞬攻撃の手が止まった騎士たちだが、私が短く指示を出すと騎士の皆さんは眼下の魔物たちへの攻撃を再開する。
10 メートル、5 メートル、巨体が、群れがすぐそこに迫ってきている。
「まだ、引きつけます」
4 メートル、3 メートル。
「姉さまっ」
「まだです」
2 メートル。
「フィーネ様!」
「まだっ!」
1 メートル。
「フィーネ殿」
「ここっ!」
私は巨大な防壁を作り出す。
ガガガガガガガガガ
止まりきれなかったブラッドクロウ達が次々と私の防壁に衝突していく。
そしてしばらくの間衝突が続き、衝突を免れた群れの後ろにいたブラッドクロウ達が離脱していく。
「ルーちゃん!」
「はいっ」
ルーちゃんは私の後ろから飛び出して射線を確保するとマシロちゃん、そして弓矢で逃げるブラッドクロウ達を次々と撃ち落としていく。
あ、そろそろかな?
私は防壁を解除してルーちゃんとの間に防壁を作り出す。
ガコン
次の瞬間、狙いすましたように私の顔面に向かって飛んできた矢は防壁によって防がれたのだった。
「えへへ」
「ルーちゃん、大丈夫ですよ」
「はいっ!」
そんなやり取りをしつつも、ルーちゃんは逃げるブラッドクロウを全て撃ち落とし、私の防壁に激突したブラッドクロウはクリスさんとシズクさんで全て片づけられたのだった。
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戦闘が始まってかれこれ 4 時間が経過し、私たちは今ランチタイムの真っ最中だ。
水堀のおかげで城壁には取りつかれることも無く、魔物たちが侵入できるのは跳ね橋のある門からだけなので、数の不利をものともしない戦いができている。
いや、むしろ地の利を活かして有利に戦っていると言っていいだろう。
壁の上から矢や魔法を打ち込まれ、また石を投げつけられ、そして跳ね橋の前では騎士たちが魔物たちを退治する。その騎士たちも 3 つの小隊が 1 時間交代で外で戦う部隊、門の上から弓矢や投石で攻撃する部隊、そして休憩する部隊とローテーションを回しており、今のところ犠牲者は一人も出ていない。
「今のところは良い感じで守れていますね」
「そうですね。ただ、オーガやトレントが出てきた場合はどうなるかわかりません。油断は禁物です」
「お腹すきました~」
「ルミア殿はマシロ殿を召喚しっぱなしでござったからな」
今のところ、私たちの出番はほとんどなく、マシロちゃんが壁の上から一方的に蹂躙しているだけだ。私も防壁で嫌がらせをしたり、切られそうになった騎士を助けたりしたくらいでほとんどやることはない。
この分であればポーションの出番も無いかもしれない。
ランチも特別なものではなく、普通のシチューと普通のパンだ。これと言って特筆すべきものはない。その証拠にルーちゃんが無表情で食べている。
ささっと食べて戻ろうとしたとき、外から声が聞こえてきた。
「ブラッドクロウの群れだ! 矢を準備しろ!」
うん? 聞いたことのない魔物だ。
「クリスさん、ブラッドクロウって何ですか?」
「はい。ブラッドクロウというのは巨大なカラスの魔物です。血のように真っ赤な体をしているのが特徴です。まずいですね。鳥なので城壁は意味がありません」
「ルーちゃん、行きましょう!」
「はいっ」
元気に返事はしてくれたものの、ルーちゃんはやや疲れているように見える。その証拠に、私が渡した MP ポーションをすぐに飲み干している。
「ありがとうございます、姉さまっ! これでまだまだいけますっ!」
そうして私たちが門の上までやってくると、なるほど、確かに赤くて巨大なカラスの大群が私たちの方をこちらを目掛けて飛んでくるのが見える。
「聖女様! ここは危険です! 早く建物の中にお下がりください」
騎士の一人が私たちに警告する。
「大丈夫ですよ。それと、こっちに引きつけますよ」
私は浄化魔法で光を出すと、シャルに貰った手鏡を使って光をちかちかとブラッドクロウに向かって断続的に照射する。
「フィーネ様? 一体何を?」
「あの赤いカラスにはこっちに来てもらおうかと思いまして」
「???」
いや、だって、カラスって光るもの好きって言わない?
これで興味を示してこっちに来てくれれば良いんだけど。
そう思った瞬間、ブラッドクロウの群れは一直線に私のほうへと向かってきた。
「あ、やっぱりカラスは光るものが、って、あれ?」
何だか怒っているように見えるのは気のせいかな?
「ああ、やはり怒らせてしまいましたね。ブラッドクロウはとても短気な魔物でして、何かあるとああしてすぐに集団で襲って来るんです」
「あ、でもそれはそれで好都合ですね。引きつけますよ」
私は再度手鏡で挑発する。するとブラッドクロウたちは私を目掛けて一直線に飛んでくる。
「お任せください。フィーネ様には触れさせません」
「拙者が全て叩き斬ってやるでござるよ」
「あたしもいますよ」
私の左右と後ろにポジションを取るクリスさん、シズクさん、そしてルーちゃんだ。
距離はあと 30 メートル、20 メートル、どんどん近づいてくる。
ブラッドクロウの大きさは大体 1 メートルくらいか
「せ、聖女様!」
「引きつけます! 下の敵を攻撃してください!」
一瞬攻撃の手が止まった騎士たちだが、私が短く指示を出すと騎士の皆さんは眼下の魔物たちへの攻撃を再開する。
10 メートル、5 メートル、巨体が、群れがすぐそこに迫ってきている。
「まだ、引きつけます」
4 メートル、3 メートル。
「姉さまっ」
「まだです」
2 メートル。
「フィーネ様!」
「まだっ!」
1 メートル。
「フィーネ殿」
「ここっ!」
私は巨大な防壁を作り出す。
ガガガガガガガガガ
止まりきれなかったブラッドクロウ達が次々と私の防壁に衝突していく。
そしてしばらくの間衝突が続き、衝突を免れた群れの後ろにいたブラッドクロウ達が離脱していく。
「ルーちゃん!」
「はいっ」
ルーちゃんは私の後ろから飛び出して射線を確保するとマシロちゃん、そして弓矢で逃げるブラッドクロウ達を次々と撃ち落としていく。
あ、そろそろかな?
私は防壁を解除してルーちゃんとの間に防壁を作り出す。
ガコン
次の瞬間、狙いすましたように私の顔面に向かって飛んできた矢は防壁によって防がれたのだった。
「えへへ」
「ルーちゃん、大丈夫ですよ」
「はいっ!」
そんなやり取りをしつつも、ルーちゃんは逃げるブラッドクロウを全て撃ち落とし、私の防壁に激突したブラッドクロウはクリスさんとシズクさんで全て片づけられたのだった。
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