259 / 625
動乱の故郷
第六章第32話 森の魔物駆除
しおりを挟む
翌日、私たちは再び南の森の魔物の駆除へと向かうこととなった。今回はアロイスさんの小隊だけではなく別の小隊が三つ、つまり一個中隊に加えてハンターたちも 100 人ほどが参加している。
これは一週間前から計画されていたことで、町に近い場所の魔物を一気に狩って殲滅する作戦だったのだそうだ。
ただ、南の森で魔物が異常に大量発生しているということを受けて急遽全戦力を南に振り向けるのだという。
今回、ハンターたちは自前で魔石や素材を剥ぎ取ることは禁止されていて、ハンターギルドの派遣した剥ぎ取り専門部隊が私たちの後ろからついてくる。そして彼らが剥ぎ取った素材は騎士団とハンターギルドで折半することになっているとのことだ。
さて、私たちの側には騎士団の代表として駐屯部隊長のラザレさんとアロイスさんが、そしてハンターたちの代表としてアイロールの盾というパーティーが付いている。
「聖女様、はじめまして。俺はハンターパーティー『アイロールの盾』のリーダー、ディオンです。こちらは同じくメンバーのグレッグ、そしてギーです。よろしくおねがいします」
「おう、聖女様。よろしく頼むぜ!」
「きひひ、よろしく頼んまさぁ」
最初に挨拶をしてくれたのが藍色の髪に緑色の瞳をしたあどけなさの残る青年がディオンさん、次がガチムチスキンヘッドで褐色の肌に黒い瞳の青年がグレッグさん、そして最後がヒョロヒョロで少しくたびれた感じのおじさんがギーさんだ。ディオンさんとグレッグさんは同い年くらいかもしれないが、ギーさんは随分と年上のように見える。
「はい。よろしくおねがいします」
とは答えたものの、私たちが直接戦うようなことは無いのではないだろうか。
もし出番があるとしても遠隔攻撃のできるルーちゃんくらいだろう。
何やらありがたい訓示とやらをラザレ隊長がしているが、案の定ハンターは誰も聞いていない。ついでに言うと私も聞いていない。
だって、もうかれこれ五分くらい話しているのだ。
校長先生と偉い人の話は長いとはよく言ったものだが、ラザレ隊長もそのカテゴリに入るようだ。
「それでは、最後に聖女フィーネ・アルジェンタータ様よりお言葉を頂戴する」
うん? 聞いてないよ? 大体、そんな大声を出せないから聞こえないと思うんだけどな。
しかし集まった騎士とハンターたちまでもが静まり返ってこちらを見ている。
ええい、仕方ない。
私はお立ち台に登ると精一杯大きな声で語りかける。
「皆さん。ここアイロールで、そして故郷で帰りを待つ大切な人たちのために、必ず生きて帰ることを約束してください。皆さんに神のお導きがあらんことを」
そう言った瞬間、総勢 300 人近い人たちが一斉にブーンからのジャンピング土下座を決める。
私も慌ててブーンからのジャンピング土下座を決めるとこの会は終了となり、私たちは森へと出発することとなったのだった。
ああ、それにしてもびっくりした。
あの人数が一斉にやるとさすがに壮観だ。
動きはてんでバラバラだったけれど、あの人数が一斉にやったという迫力を加味すると 7 点ってところかな?
****
さて、先ほど私たちの出番はないと言ったな。あれは嘘だ。
というわけで、私たちも前線に出て森に溢れる魔物の駆除を行っている。
今のところ、私が結界を張ってマシロちゃんが狙撃していくという鉄壁の布陣は健在だ。
町を出て南側の森に着いた私たちは山狩りならぬ森狩りをするため、広く散開してローラー作戦で駆除をすることになった。ハンターはパーティー毎に、騎士団は分隊と言う 10 人くらいのチームごとに別れると一定の間隔を保ちながら森の奥へ奥へと分け入っていく。
こうすればかなりの範囲の魔物を全て排除できるというわけだ。
もちろん左右の端の人たちは正面と横の相手をしなければならないため、その後ろから騎士団の分隊が適宜サポートする形をとっている。
そしてその後ろからハンターギルドの素材回収部隊と後詰として騎士団の一個小隊がついてきている。
「マシロっ、次は害獣。あそことあそことあそこつ!」
ルーちゃんの掛け声でマシロちゃんが風の刃を飛ばしてはゴブリンやその上位種、それにフォレストウルフ、ホーンラビット、たまにオークといった魔物たちを次々と倒していく。
何だかマシロちゃんは肥えてからというもの、風の刃のパワーが増したような気がするのは私だけだろうか?
それにしても、ひっきりなしに魔物が襲ってくる。
どう考えても昨日よりも魔物の数が多い。
たった一日でここまで増えるものなのだろうか?
そんなことを考えていると、右のほうから誰かの悲鳴が上がった。
「うわぁぁぁぁ、オーガだっ!」
「こ、殺されるっ!」
この悲鳴はハンターたちだろうか? でも昨日シズクさんが瞬殺していたし、それほど取り乱すような相手なんだろうか?
「クリスさん、オーガというのはそんなに強いんですか?」
「そうですね。一般的には強いと言われる部類になるでしょう。一般的な戦士が大体レベル 22 ~ 24 くらいになれば一人で倒せると言われています。もしかしたら前にお話したかもしれませんが、レベル 15 で一人前、レベル 20 で高レベルです。ですので、普通のハンターどもではとても太刀打ちできないでしょう」
ああ、確かに。そういえば、世間一般だとそういう感じなんだったね。
「助けに行かなくて大丈夫ですかね?」
「オーガは単体としての強さはゴブリンロードよりも下ですし、群れの数も少なく 5 ~ 6 匹程度であることが多いのです。知能もそれほど高くはありませんので我が国の騎士団であれば倒すことは造作もありません」
そんな会話をしている間に右の方から歓声が上がった。木々で隠れて見えないが、どうやらオーガが倒されたようだ。
「あ、倒されたみたいですね」
「はい。こういった陣形を組んでいる場合は持ち場を離れないことも大切なことなのです」
「はい。わかりました」
クリスさんとそんな会話をしつつ、私たちは森の奥へと進むのだった。
これは一週間前から計画されていたことで、町に近い場所の魔物を一気に狩って殲滅する作戦だったのだそうだ。
ただ、南の森で魔物が異常に大量発生しているということを受けて急遽全戦力を南に振り向けるのだという。
今回、ハンターたちは自前で魔石や素材を剥ぎ取ることは禁止されていて、ハンターギルドの派遣した剥ぎ取り専門部隊が私たちの後ろからついてくる。そして彼らが剥ぎ取った素材は騎士団とハンターギルドで折半することになっているとのことだ。
さて、私たちの側には騎士団の代表として駐屯部隊長のラザレさんとアロイスさんが、そしてハンターたちの代表としてアイロールの盾というパーティーが付いている。
「聖女様、はじめまして。俺はハンターパーティー『アイロールの盾』のリーダー、ディオンです。こちらは同じくメンバーのグレッグ、そしてギーです。よろしくおねがいします」
「おう、聖女様。よろしく頼むぜ!」
「きひひ、よろしく頼んまさぁ」
最初に挨拶をしてくれたのが藍色の髪に緑色の瞳をしたあどけなさの残る青年がディオンさん、次がガチムチスキンヘッドで褐色の肌に黒い瞳の青年がグレッグさん、そして最後がヒョロヒョロで少しくたびれた感じのおじさんがギーさんだ。ディオンさんとグレッグさんは同い年くらいかもしれないが、ギーさんは随分と年上のように見える。
「はい。よろしくおねがいします」
とは答えたものの、私たちが直接戦うようなことは無いのではないだろうか。
もし出番があるとしても遠隔攻撃のできるルーちゃんくらいだろう。
何やらありがたい訓示とやらをラザレ隊長がしているが、案の定ハンターは誰も聞いていない。ついでに言うと私も聞いていない。
だって、もうかれこれ五分くらい話しているのだ。
校長先生と偉い人の話は長いとはよく言ったものだが、ラザレ隊長もそのカテゴリに入るようだ。
「それでは、最後に聖女フィーネ・アルジェンタータ様よりお言葉を頂戴する」
うん? 聞いてないよ? 大体、そんな大声を出せないから聞こえないと思うんだけどな。
しかし集まった騎士とハンターたちまでもが静まり返ってこちらを見ている。
ええい、仕方ない。
私はお立ち台に登ると精一杯大きな声で語りかける。
「皆さん。ここアイロールで、そして故郷で帰りを待つ大切な人たちのために、必ず生きて帰ることを約束してください。皆さんに神のお導きがあらんことを」
そう言った瞬間、総勢 300 人近い人たちが一斉にブーンからのジャンピング土下座を決める。
私も慌ててブーンからのジャンピング土下座を決めるとこの会は終了となり、私たちは森へと出発することとなったのだった。
ああ、それにしてもびっくりした。
あの人数が一斉にやるとさすがに壮観だ。
動きはてんでバラバラだったけれど、あの人数が一斉にやったという迫力を加味すると 7 点ってところかな?
****
さて、先ほど私たちの出番はないと言ったな。あれは嘘だ。
というわけで、私たちも前線に出て森に溢れる魔物の駆除を行っている。
今のところ、私が結界を張ってマシロちゃんが狙撃していくという鉄壁の布陣は健在だ。
町を出て南側の森に着いた私たちは山狩りならぬ森狩りをするため、広く散開してローラー作戦で駆除をすることになった。ハンターはパーティー毎に、騎士団は分隊と言う 10 人くらいのチームごとに別れると一定の間隔を保ちながら森の奥へ奥へと分け入っていく。
こうすればかなりの範囲の魔物を全て排除できるというわけだ。
もちろん左右の端の人たちは正面と横の相手をしなければならないため、その後ろから騎士団の分隊が適宜サポートする形をとっている。
そしてその後ろからハンターギルドの素材回収部隊と後詰として騎士団の一個小隊がついてきている。
「マシロっ、次は害獣。あそことあそことあそこつ!」
ルーちゃんの掛け声でマシロちゃんが風の刃を飛ばしてはゴブリンやその上位種、それにフォレストウルフ、ホーンラビット、たまにオークといった魔物たちを次々と倒していく。
何だかマシロちゃんは肥えてからというもの、風の刃のパワーが増したような気がするのは私だけだろうか?
それにしても、ひっきりなしに魔物が襲ってくる。
どう考えても昨日よりも魔物の数が多い。
たった一日でここまで増えるものなのだろうか?
そんなことを考えていると、右のほうから誰かの悲鳴が上がった。
「うわぁぁぁぁ、オーガだっ!」
「こ、殺されるっ!」
この悲鳴はハンターたちだろうか? でも昨日シズクさんが瞬殺していたし、それほど取り乱すような相手なんだろうか?
「クリスさん、オーガというのはそんなに強いんですか?」
「そうですね。一般的には強いと言われる部類になるでしょう。一般的な戦士が大体レベル 22 ~ 24 くらいになれば一人で倒せると言われています。もしかしたら前にお話したかもしれませんが、レベル 15 で一人前、レベル 20 で高レベルです。ですので、普通のハンターどもではとても太刀打ちできないでしょう」
ああ、確かに。そういえば、世間一般だとそういう感じなんだったね。
「助けに行かなくて大丈夫ですかね?」
「オーガは単体としての強さはゴブリンロードよりも下ですし、群れの数も少なく 5 ~ 6 匹程度であることが多いのです。知能もそれほど高くはありませんので我が国の騎士団であれば倒すことは造作もありません」
そんな会話をしている間に右の方から歓声が上がった。木々で隠れて見えないが、どうやらオーガが倒されたようだ。
「あ、倒されたみたいですね」
「はい。こういった陣形を組んでいる場合は持ち場を離れないことも大切なことなのです」
「はい。わかりました」
クリスさんとそんな会話をしつつ、私たちは森の奥へと進むのだった。
0
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
最強幼女のお助け道中〜聖女ですが、自己強化の秘法の副作用で幼女化してしまいました。神器破城槌を振り回しながら、もふもふと一緒に旅を続けます〜
黄舞
ファンタジー
勇者パーティの支援職だった私は、自己を超々強化する秘法と言われた魔法を使い、幼女になってしまった。
そんな私の姿を見て、パーティメンバーが決めたのは……
「アリシアちゃん。いい子だからお留守番しててね」
見た目は幼女でも、最強の肉体を手に入れた私は、付いてくるなと言われた手前、こっそりひっそりと陰から元仲間を支援することに決めた。
戦神の愛用していたという神器破城槌を振り回し、神の乗り物だと言うもふもふ神獣と旅を続ける珍道中!
主人公は元は立派な大人ですが、心も体も知能も子供です
基本的にコメディ色が強いです
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる