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動乱の故郷
第六章第1話 不穏な気配
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イェンアンで魔王警報がレベル 3 へと引き上げられたニュースを聞いてから数週間が経ち、、私たちはノヴァールブールへとやってきた。レッドスカイ帝国の護送部隊によって送り届けてもらったのだ。その間、魔物たちの襲撃が活発になりつつあるのを私たちは肌で感じた。
今までの旅では魔物による襲撃はほとんどなく、ツィンシャの森の中や三日月泉のような特殊なケースがほとんどで、街道にまで魔物がやってくるというケースはあまりなかった。あったとしてもはぐれの魔物が一週間に一度襲ってくるかどうかくらいで、盗賊の警戒をするケースの方が多かったのだ。
しかし、私たちが砂漠を越えてレッドスカイ帝国を出たあたりからは魔物に襲撃される頻度が明らかに増えた。ほぼ毎日、酷い時は一日に何度も襲われたのだ。
「聖女様! どうかご無事で!」
「皆さんこそ、ここまでありがとうございました。レッドスカイ帝国に神のご加護のあらんことを」
「ははっ! 聖女様、万歳! 万歳! 万々歳!」
こうして謎の唱和をしたレッドスカイ帝国の兵士の皆さんは帝国へと帰っていった。
「さて、これでもとの四人での旅に戻りましたね」
「はい。この様子ではホワイトムーン王国方面も魔物の出現数は増えているかもしれません。馬車便がきちんと運行しているかなど、まずは情報収集をすべきでしょう」
「あとは今日の宿も手配する必要があるでござるな」
「ご飯っ! まずはご飯を食べましょうっ! お昼がまだですよっ!」
三者三様、なんだかそれぞれの興味が色濃く出た感じだ。
「じゃあ、まずはお昼にしましょう。ただ、あまり時間が無いので手軽なドゥルムあたりでささっと済ませましょう。その後、前に泊まった宿に行って部屋を取って馬車の運航状況の確認をしましょう」
「はいっ!」
「了解でござる」
「かしこまりました」
そうしてルーちゃんおすすめのお店でドゥルムを食べ、以前に泊まった宿で部屋を取った私たちは乗合馬車の案内所へとやってきた。
ちなみにそこのドゥルムは美味しかったので 100 食ほど作ってもらって私の収納の中に保存しておいた。
いくら保存しておいても腐らないって最高だよね。
さて、それから案内所に行った私たちを待っていたのはホワイトムーン王国への定期便が全て運休という残念なニュースだった。
「我々はどうしてもホワイトムーン王国へと行く必要がある。どうにかならないか?」
クリスさんが受付のお姉さんに質問しているが、お姉さんは首を横に振るばかりだ。
「そもそも、何故運航停止になっているのだ? いくら魔物の襲撃が増えたと言ってもまだそれほどの段階ではないはずだ」
「申し訳ございません……」
クリスさんとお姉さんは話がかみ合っていない。そこにシズクさんが横から口を挟んだ。
「それでは馬車を借りることはできないでござるか? ホワイトムーン王国にあるそちらの車庫に返却する。ええと、元の定期便はカルヴァラ行きでござるな? ではカルヴァラで返却すれば問題ないのではござらんか?」
「えっ? あ、そ、そのような事は私では……」
「ならば判断できる者を呼んでほしいでござるよ」
「えっ、ええと、その……」
シズクさんの提案にお姉さんがたじろいでいると、男の人から声をかけられた。
「どうなさいましたかな? お客様。ん? おお! その服装は! 聖女フィーネ・アルジェンタータ様でらっしゃいますな!」
私たちが振り返るとやや恰幅の良い中年の男性の姿がそこにあった。
「ようこそわが組合へ。私は組合長を努めておりますベニートと申します。本日はどういったご用向きでですかな?」
「はじめまして。フィーネ・アルジェンタータです。私たちはホワイトムーン王国へと戻る馬車を探しているのですが全便運休ということで困っていたのです」
するとベニートさんは深刻そうな表情を浮かべた。
「なるほど。そういうことでしたか。ということは王都の神殿へと向かわれるのですな」
そうしてベニートさんは言葉を区切ると、一呼吸おいて小さな声で話した。
「あまり大きな声では言えないのですが、実は今カルヴァラの町では魔物暴走の兆候が見られておりまして、それでカルヴァラからの要請で連絡があるまで定期便は全て運休となっているのです」
「何だとっ!?」
クリスさんがその情報に過敏に反応した。やはり、ホワイトムーン王国の民を守るために騎士となったクリスさんには聞き逃せない情報なのだろう。
「組合長殿、定期便が出せぬというのなら馬車を貸しては頂けぬか?」
「残念ですが、魔物暴走の警告が出ている場所に馬車を出しては御者の命も危ないでしょうし、私共としても協力したいのは山々なのですが……」
「御者は私ができる。これでも私はホワイトムーン王国では騎士団に所属している。馬と四人乗りの馬車だけで良い。どうにかならないか?」
「で、ですが……」
渋る組合長に私は条件を提示する。
「それでは、私たちが一度買い取り、返却の際にレンタル料を差し引いて買い戻していただくというのはどうでしょうか?」
「えっ? あ、それであれば……」
「決まりですね。それじゃあ、シズクさん、価格の交渉はお願いします」
「任せるでござる。しかしよくそんな仕組みがすぐに思いついたでござるな」
「ベニートさんも商人でしょうから、損しないと分かっていれば乗ってくれるかなって思ったんです」
「そうでござるな。それに、ベニート殿としても馬車を遊ばせているだけではただの金食い虫でござるからな。きっちり交渉してくるでござるよ」
そうして私たちは交渉するために奥の部屋へと招かれた。そしてシズクさんしっかりと交渉を行ってくれたおかげで金貨 10 枚で一度買い上げ、カルヴァラにて金貨 8 枚で買い戻してもらうという破格の契約となった。もちろん、馬も一頭つけてくれる。
ちなみに餌はその辺に生えている草を食べさせれば良いそうだ。
こうして私たちは交渉を終えるとホテルに戻ったのだった。
今までの旅では魔物による襲撃はほとんどなく、ツィンシャの森の中や三日月泉のような特殊なケースがほとんどで、街道にまで魔物がやってくるというケースはあまりなかった。あったとしてもはぐれの魔物が一週間に一度襲ってくるかどうかくらいで、盗賊の警戒をするケースの方が多かったのだ。
しかし、私たちが砂漠を越えてレッドスカイ帝国を出たあたりからは魔物に襲撃される頻度が明らかに増えた。ほぼ毎日、酷い時は一日に何度も襲われたのだ。
「聖女様! どうかご無事で!」
「皆さんこそ、ここまでありがとうございました。レッドスカイ帝国に神のご加護のあらんことを」
「ははっ! 聖女様、万歳! 万歳! 万々歳!」
こうして謎の唱和をしたレッドスカイ帝国の兵士の皆さんは帝国へと帰っていった。
「さて、これでもとの四人での旅に戻りましたね」
「はい。この様子ではホワイトムーン王国方面も魔物の出現数は増えているかもしれません。馬車便がきちんと運行しているかなど、まずは情報収集をすべきでしょう」
「あとは今日の宿も手配する必要があるでござるな」
「ご飯っ! まずはご飯を食べましょうっ! お昼がまだですよっ!」
三者三様、なんだかそれぞれの興味が色濃く出た感じだ。
「じゃあ、まずはお昼にしましょう。ただ、あまり時間が無いので手軽なドゥルムあたりでささっと済ませましょう。その後、前に泊まった宿に行って部屋を取って馬車の運航状況の確認をしましょう」
「はいっ!」
「了解でござる」
「かしこまりました」
そうしてルーちゃんおすすめのお店でドゥルムを食べ、以前に泊まった宿で部屋を取った私たちは乗合馬車の案内所へとやってきた。
ちなみにそこのドゥルムは美味しかったので 100 食ほど作ってもらって私の収納の中に保存しておいた。
いくら保存しておいても腐らないって最高だよね。
さて、それから案内所に行った私たちを待っていたのはホワイトムーン王国への定期便が全て運休という残念なニュースだった。
「我々はどうしてもホワイトムーン王国へと行く必要がある。どうにかならないか?」
クリスさんが受付のお姉さんに質問しているが、お姉さんは首を横に振るばかりだ。
「そもそも、何故運航停止になっているのだ? いくら魔物の襲撃が増えたと言ってもまだそれほどの段階ではないはずだ」
「申し訳ございません……」
クリスさんとお姉さんは話がかみ合っていない。そこにシズクさんが横から口を挟んだ。
「それでは馬車を借りることはできないでござるか? ホワイトムーン王国にあるそちらの車庫に返却する。ええと、元の定期便はカルヴァラ行きでござるな? ではカルヴァラで返却すれば問題ないのではござらんか?」
「えっ? あ、そ、そのような事は私では……」
「ならば判断できる者を呼んでほしいでござるよ」
「えっ、ええと、その……」
シズクさんの提案にお姉さんがたじろいでいると、男の人から声をかけられた。
「どうなさいましたかな? お客様。ん? おお! その服装は! 聖女フィーネ・アルジェンタータ様でらっしゃいますな!」
私たちが振り返るとやや恰幅の良い中年の男性の姿がそこにあった。
「ようこそわが組合へ。私は組合長を努めておりますベニートと申します。本日はどういったご用向きでですかな?」
「はじめまして。フィーネ・アルジェンタータです。私たちはホワイトムーン王国へと戻る馬車を探しているのですが全便運休ということで困っていたのです」
するとベニートさんは深刻そうな表情を浮かべた。
「なるほど。そういうことでしたか。ということは王都の神殿へと向かわれるのですな」
そうしてベニートさんは言葉を区切ると、一呼吸おいて小さな声で話した。
「あまり大きな声では言えないのですが、実は今カルヴァラの町では魔物暴走の兆候が見られておりまして、それでカルヴァラからの要請で連絡があるまで定期便は全て運休となっているのです」
「何だとっ!?」
クリスさんがその情報に過敏に反応した。やはり、ホワイトムーン王国の民を守るために騎士となったクリスさんには聞き逃せない情報なのだろう。
「組合長殿、定期便が出せぬというのなら馬車を貸しては頂けぬか?」
「残念ですが、魔物暴走の警告が出ている場所に馬車を出しては御者の命も危ないでしょうし、私共としても協力したいのは山々なのですが……」
「御者は私ができる。これでも私はホワイトムーン王国では騎士団に所属している。馬と四人乗りの馬車だけで良い。どうにかならないか?」
「で、ですが……」
渋る組合長に私は条件を提示する。
「それでは、私たちが一度買い取り、返却の際にレンタル料を差し引いて買い戻していただくというのはどうでしょうか?」
「えっ? あ、それであれば……」
「決まりですね。それじゃあ、シズクさん、価格の交渉はお願いします」
「任せるでござる。しかしよくそんな仕組みがすぐに思いついたでござるな」
「ベニートさんも商人でしょうから、損しないと分かっていれば乗ってくれるかなって思ったんです」
「そうでござるな。それに、ベニート殿としても馬車を遊ばせているだけではただの金食い虫でござるからな。きっちり交渉してくるでござるよ」
そうして私たちは交渉するために奥の部屋へと招かれた。そしてシズクさんしっかりと交渉を行ってくれたおかげで金貨 10 枚で一度買い上げ、カルヴァラにて金貨 8 枚で買い戻してもらうという破格の契約となった。もちろん、馬も一頭つけてくれる。
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