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武を求めし者
第五章第29話 谷底の戦い
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「うわぁ、引くぐらいいっぱいいますね」
「谷底に黒いのがうじゃうじゃいます。うえぇ、気持ち悪いです……」
「あれだけいれば数が減らないのも納得ですね。あそこで増えているという事でしょうか?」
順に私、ルーちゃん、クリスさんの感想だ。私たちは今ヂュィンシィーくんの案内で死なない獣の根城と思しき場所にやってきた。大体谷底まで 40 ~ 50 m くらいだろうか。その谷底にあの死なない獣がひしめき合っている。
「う、あれはまるでゴキb――」
「シズクさん、それ以上は言っちゃダメなヤツです」
「そ、そうでござるか?」
「そうです。間違いありません。その台詞は最後まで言ったら 30 倍に増えるという法則があるんです」
「そ、そう……でござる……か? よく分からないが分かったでござる」
ふう。これで G 認定というフラグはへし折れたはずだ。
え? 迷信だって? ん? 既に手遅れ?
いやいや、こういうのはやっぱり気分が大事だと思うんだよね。
「さて、確認しましたし、戻りましょうか」
「えー?」
ヂュィンシィーくんが不満そうな表情をしている。
「さすがにあれだけ死なない獣、ええと、魔物がいるんですからここで遊ぶわけにはいきませんよ。帰ったら遊んであげますから、ね?」
私は屈んでヂュィンシィーくんに目線を合わせると微笑みながら説得する。
「ほんとに? ほんとにっ?」
「はい。約束です」
「うん、わかった! かえる!」
そう言うとすぐに機嫌を直してくれた。
よかったよかった。
「さて、それじゃあ戻るとしましょう。将軍にこのことを伝えないといけませんからね」
「ふん、その必要はない」
「えっ?」
私たちが振り返ると、そこには槍斧の他に大量の武器を抱えた将軍の姿があった。
「よくやったぞ、小僧。さあ、聖女、行くぞ」
「えっ?」
将軍がいつもの口調でそう言うと私をまるで力士が俵でも担ぐかのようにひょいとその肩に担ぐとそのまま崖下に飛び降りた。
「フィーネ様っ!」
上の方からクリスさんの悲鳴にも似た叫び声が聞こえる。
「ちょ、な! な! な!?」
「口を閉じろ。舌を噛むぞ」
どういう理屈なのかは分からないが将軍はまるで走るように崖を降りていく。
「ふんっ!」
将軍は着地と共に地面に一撃を加える。
するとその一撃の加わった場所から同心円上に衝撃波が走り、ひしめき合っていた死なない獣達がまとめて大きく吹き飛ばされた。
私たちの周り半径 20 m くらいの範囲の死なない獣たちが吹き飛ばされた。
「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」
将軍は私のことなどお構いなしに槍斧を振り回す。
「ちょっ! 私がいるんですよ!」
「そんなもの避けろ。できないなら邪魔にならんよう伏せておけ!」
私は慌てて伏せるとそのまま結界を張って閉じこもる。
「おい! 補充だ! さっさとしろ! 数が多い! 剣では押し切られるぞ!」
「あー、もう! 誰のせいだと思っているんですか!」
私は慌てて将軍の斧槍に魔力を補充する。そこにルーちゃんのものと思われる矢が上から降ってきては獣を灰に変えている。
私は急いで防壁を頭上に作り出した。するとすぐにガキン、という音と共に何かが弾かれたようだ。何が起こったのかは見ていないが、つまりそういう事だろう。
「ふん! そんなどうでもいい話をするな。ふんっ!」
いや、確かに今する話じゃないかもしれないけど、こいつに言われるとものすごくムカつく。
「おい! 聖女! お前の祝福とやらは何だ? 何故こう何度も補充とやらをしなければならんのだ?」
将軍が獣たちを斬りながら私に質問してくる。
「私の浄化魔法を付与しているんです。付与したものが浄化できる対象に触れると浄化魔法が発動します。だから使った魔力の分は補充しなければなくなるんです」
「何だと!? 聖女! お前何故それをさっさと言わない!」
いきなり将軍が戦いながら怒りだした。
一体どういう事なの?
毎度毎度、将軍の怒りのポイントがさっぱりわからない。
「将軍だって聞いてこなかったじゃないですか。それに、どうして浄化魔法が効かないのに私の浄化魔法が付与された武器で攻撃すると倒せるのかは分からないんですから!」
「なんだと!? お前が戦闘向きではないことはわかっていたが、ふんっ! お前の従者どもは、ふんっ! 相当の凡愚だな。ふんっ!」
「えっ?」
いきなりクリスさん達を貶し始めた。
「私の大切な仲間を悪く言わないでください。それに、それこそをここでする話ですか?」
「聖剣に選ばれたというだけで聖女に引っ付いている金魚の糞を無能と言って何が悪い? ふんっ! ふんっ! ふんっ!」
「なっ」
将軍は話ながら飛びかかってくる獣を次々と切り伏せていく。
だが魔力が切れたのか、切り伏せられた獣は吹き飛ばされはしたものの灰とはならずに再生し始めた。
「将軍、補充を!」
「聖女よ。もう補充は必要ない。俺が切り伏せた獣どもに片っ端から浄化魔法をぶち込め」
「え?」
「あれを浄化しろと言ったんだ。聞こえなかったか?」
「浄化!」
私は再生し始めた獣に浄化魔法をかけた。すると獣を浄化の光が包み込む。そして確かな手応えと共に再生し始めていた獣は灰となって消滅したのだった。
「こういうことだ。分かったらぼさっとしていないでさっさと浄化しろ!」
そう言い残すと将軍はそのまま獣の群れの中に突撃していったのだった。
「谷底に黒いのがうじゃうじゃいます。うえぇ、気持ち悪いです……」
「あれだけいれば数が減らないのも納得ですね。あそこで増えているという事でしょうか?」
順に私、ルーちゃん、クリスさんの感想だ。私たちは今ヂュィンシィーくんの案内で死なない獣の根城と思しき場所にやってきた。大体谷底まで 40 ~ 50 m くらいだろうか。その谷底にあの死なない獣がひしめき合っている。
「う、あれはまるでゴキb――」
「シズクさん、それ以上は言っちゃダメなヤツです」
「そ、そうでござるか?」
「そうです。間違いありません。その台詞は最後まで言ったら 30 倍に増えるという法則があるんです」
「そ、そう……でござる……か? よく分からないが分かったでござる」
ふう。これで G 認定というフラグはへし折れたはずだ。
え? 迷信だって? ん? 既に手遅れ?
いやいや、こういうのはやっぱり気分が大事だと思うんだよね。
「さて、確認しましたし、戻りましょうか」
「えー?」
ヂュィンシィーくんが不満そうな表情をしている。
「さすがにあれだけ死なない獣、ええと、魔物がいるんですからここで遊ぶわけにはいきませんよ。帰ったら遊んであげますから、ね?」
私は屈んでヂュィンシィーくんに目線を合わせると微笑みながら説得する。
「ほんとに? ほんとにっ?」
「はい。約束です」
「うん、わかった! かえる!」
そう言うとすぐに機嫌を直してくれた。
よかったよかった。
「さて、それじゃあ戻るとしましょう。将軍にこのことを伝えないといけませんからね」
「ふん、その必要はない」
「えっ?」
私たちが振り返ると、そこには槍斧の他に大量の武器を抱えた将軍の姿があった。
「よくやったぞ、小僧。さあ、聖女、行くぞ」
「えっ?」
将軍がいつもの口調でそう言うと私をまるで力士が俵でも担ぐかのようにひょいとその肩に担ぐとそのまま崖下に飛び降りた。
「フィーネ様っ!」
上の方からクリスさんの悲鳴にも似た叫び声が聞こえる。
「ちょ、な! な! な!?」
「口を閉じろ。舌を噛むぞ」
どういう理屈なのかは分からないが将軍はまるで走るように崖を降りていく。
「ふんっ!」
将軍は着地と共に地面に一撃を加える。
するとその一撃の加わった場所から同心円上に衝撃波が走り、ひしめき合っていた死なない獣達がまとめて大きく吹き飛ばされた。
私たちの周り半径 20 m くらいの範囲の死なない獣たちが吹き飛ばされた。
「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」
将軍は私のことなどお構いなしに槍斧を振り回す。
「ちょっ! 私がいるんですよ!」
「そんなもの避けろ。できないなら邪魔にならんよう伏せておけ!」
私は慌てて伏せるとそのまま結界を張って閉じこもる。
「おい! 補充だ! さっさとしろ! 数が多い! 剣では押し切られるぞ!」
「あー、もう! 誰のせいだと思っているんですか!」
私は慌てて将軍の斧槍に魔力を補充する。そこにルーちゃんのものと思われる矢が上から降ってきては獣を灰に変えている。
私は急いで防壁を頭上に作り出した。するとすぐにガキン、という音と共に何かが弾かれたようだ。何が起こったのかは見ていないが、つまりそういう事だろう。
「ふん! そんなどうでもいい話をするな。ふんっ!」
いや、確かに今する話じゃないかもしれないけど、こいつに言われるとものすごくムカつく。
「おい! 聖女! お前の祝福とやらは何だ? 何故こう何度も補充とやらをしなければならんのだ?」
将軍が獣たちを斬りながら私に質問してくる。
「私の浄化魔法を付与しているんです。付与したものが浄化できる対象に触れると浄化魔法が発動します。だから使った魔力の分は補充しなければなくなるんです」
「何だと!? 聖女! お前何故それをさっさと言わない!」
いきなり将軍が戦いながら怒りだした。
一体どういう事なの?
毎度毎度、将軍の怒りのポイントがさっぱりわからない。
「将軍だって聞いてこなかったじゃないですか。それに、どうして浄化魔法が効かないのに私の浄化魔法が付与された武器で攻撃すると倒せるのかは分からないんですから!」
「なんだと!? お前が戦闘向きではないことはわかっていたが、ふんっ! お前の従者どもは、ふんっ! 相当の凡愚だな。ふんっ!」
「えっ?」
いきなりクリスさん達を貶し始めた。
「私の大切な仲間を悪く言わないでください。それに、それこそをここでする話ですか?」
「聖剣に選ばれたというだけで聖女に引っ付いている金魚の糞を無能と言って何が悪い? ふんっ! ふんっ! ふんっ!」
「なっ」
将軍は話ながら飛びかかってくる獣を次々と切り伏せていく。
だが魔力が切れたのか、切り伏せられた獣は吹き飛ばされはしたものの灰とはならずに再生し始めた。
「将軍、補充を!」
「聖女よ。もう補充は必要ない。俺が切り伏せた獣どもに片っ端から浄化魔法をぶち込め」
「え?」
「あれを浄化しろと言ったんだ。聞こえなかったか?」
「浄化!」
私は再生し始めた獣に浄化魔法をかけた。すると獣を浄化の光が包み込む。そして確かな手応えと共に再生し始めていた獣は灰となって消滅したのだった。
「こういうことだ。分かったらぼさっとしていないでさっさと浄化しろ!」
そう言い残すと将軍はそのまま獣の群れの中に突撃していったのだった。
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