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武を求めし者
第五章第7話 ユカワ温泉(3)
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「ああああぁぁぁ、きもちいいぃぃぃ」
海辺の磯を整備して崖沿いに作られた半洞窟の露天風呂にルーちゃんの変な声が響き渡る。極北の地での件といいクサネでの件といい、ルーちゃんは温泉に入ると変な声を出す特殊性癖の持ち主のようだ。
「姉さまっ! この温泉はどんな効能があるんですか?」
「ちょっと待ってくださいね」
温泉水を手で掬うとその匂いを少し嗅ぎ、そして少し舐めて味見をする。
「なるほど。ここはナトリウム・塩化物泉ですね。弱アルカリ性のようですし、極わずかに感じるこの独特なピリッとした感じと苦味は……硫酸塩が少しだけ混じっているようです。総合的に判断するとここは保温と保湿に優れたいわゆる『あったまりの湯』です。少しだけ美肌効果もあるはずですが、極北の地のものほどではありませんね」
「わーい、美肌の湯っ!」
ルーちゃんにはまだ必要ないと思うけどね。
そう思いながらちらりとルーちゃんのお腹を見る。
「どうしたんですか? 姉さま」
傷一つない真っ白でハリとツヤのあるキレイなお肌だ。極限状態だったとはいえ、あれだけの大怪我を傷も残さずにキレイに治せたのは幸いだった。
「いえ。キレイに治って良かったなって思いまして」
「えへへ。姉さまありがとうございますっ♪」
そう言ってルーちゃんが私にくっついてくる。
「ちょっと、髪の毛濡れちゃうじゃないですか。乾かすの大変なんですから……」
「えへへ♪」
まあ、かわいい妹分にべたべたされるのは悪い気分ではないけれどね。
「フィーネ殿はずいぶんと温泉に詳しいでござるな。何を言っているのかはよく分からないでござるが、温泉の匂いと味だけで効能まで分かってしまうとは……聖女というのはすごいでござるな」
「え?」
シズクさんが明後日な方向の謎解釈をはじめた。
「フィーネ様は人々のためになることについてはとても勉強熱心であらせられるのだ。私もフィーネ様にお教え頂くまでは知らなかったが、温泉というのはそれぞれ特徴的な効能があるのだそうだぞ」
私にはさっぱり違いが分からないがな、と後に続け、そしてふんすと何故か偉そうな顔をしている。
「なるほど。そうでござったか。これも日頃の研鑽の賜物だったでござるな」
「あはは。私はまあ、ちょっと温泉にはうるさい吸血鬼なんです」
「ははは。(笑)でござるがな」
いや、その(笑)は忘れて欲しいけどね。
「(笑)ってなんですか?」
ルーちゃんのそれを聞いてシズクさんがしまった、という顔をしている。
「いいですよ。別に気にしてませんから。二人も私のステータスを見ますか? ここには誰もいませんし」
その瞬間にクリスさんが固まった。ルーちゃんはいいんですか、とこちらに近寄ってきた。
「私、いい加減ステータスを隠さなくてももう良いんじゃないかと思うんですよ。ステータスを見せてはいけないのって、将来的に敵同士になったり裏切られたり、そういうことがあるからですよね? クリスさんもルーちゃんも、そんなことはないと信じていますから」
「……フィーネ様」
クリスさんは目を潤ませ、感極まった様な表情で私を見ている。
「フィーネ様、私は今まで生きてきた中で一番うれしいです。遂に私のことを腹心とお認め頂けるとは! 」
ん? どうしてそこまで感動しているの?
「フィーネ殿、一般的に主が従者にステータスを見せるという事は、その従者に全幅の信頼を寄せたという意味でござるよ。むしろ、拙者はとうの昔にフィーネ殿とクリス殿はそのような関係だと思っておったでござるがな……」
シズクさんが呆れたような表情を浮かべている。
「そういう意味があるんですね。知りませんでした。最初にステータスは他人に見せてはいけないって言われて、それからずっとそのままだったんです。そういう意味なら最初からクリスさんには見せても問題なかったんですけどね……」
シズクさんは額に手を当てるとはぁ、と小さくため息をついた。
「フィーネ殿はそういう御仁でござったな。クリス殿もああいう性格でござるし、機会がなかったのでござろうな。主が見せると言っているでござるし、どうせなら全員で見せあってはいかがでござるか?」
「あ、ああ、そうだな! そうしよう!」
クリスさんが嬉しそうにしている。クリスさんにシズクさんのような尻尾があればきっと勢いよく振っていたに違いない。
「ルミア殿はどうするでござるか?」
「え? あたし? じゃああたしも見せますよ」
「ルミア、そう簡単に決めて良いものではないぞ? ステータスを見せるという事は自分の弱点を晒すことに他ならない。特にルミアは誘拐犯に狙われる恐れもあるのだし、それにルミアは妹君を見つけたら白銀の里に戻るのではないか?」
「え? あたしは姉さまと一緒に行きますよ? ずーっと一緒ですっ!」
ルーちゃんとずっと一緒か。うん、悪くないね。
「じゃあ、四人だけの秘密ですよ。いいですね?」
「「「はい」」」
私は誰もいないのをいいことに結界を張ってこの露天風呂に誰も入れないようにシャットアウトする。
「では。ステータス・オープン」
「「ステータス・オープン」」
「拙者は先ほど見せたでござるが、ステータス・オープン」
────
名前:フィーネ・アルジェンタータ
種族:吸血鬼(笑)
性別:女性
職業:治癒師、付与師
レベル:15
HP:355
MP:305
STR:365
INT:290
AGI:275
DEX:320
VIT:335
MND:305
LUC:305
Exp:110,087
SP:30
ユニークスキル(13):▼
スキル(23):▼
────
────
名前:クリスティーナ
種族:人間
性別:女性
職業:聖騎士、御者
レベル:30
HP:430
MP:183
STR:423
INT:179
AGI:321
DEX:309
VIT:455
MND:219
LUC:303
Exp:2,811,511
スキル(7):▼
────
────
名前:ルミア
種族:エルフ
性別:女性
職業:弓士、漁師
レベル:17
HP:105
MP:188
STR:151
INT:283
AGI:236
DEX:362
VIT:59
MND:277
LUC:171
Exp:41,106
ユニークスキル(2):▼
スキル(3):▼
────
────
名前:シズク・ミエシロ
種族:半黒狐
性別:女性
職業:剣聖、商人
レベル:1
HP:202
MP:70
STR:240
INT:120
AGI:363
DEX:384
VIT:165
MND:187
LUC:145
Exp:1 → 2
ユニークスキル(1):▼
スキル(6):▼
────
「えっ? フィーネ様が……吸血鬼……? いえ、この(笑)とは一体何でしょうか?」
「きっと神様が冗談でつけてくれたんじゃないですか? あたしは姉さまなら何でもいいですよっ♪」
ルーちゃんがそう言ってまた私に抱きついてきた。
うん、ありがとう。でもお風呂の中で抱きつかれるとちょっと暑苦しいよ?
「なるほど! そういうことか。フィーネ様が吸血鬼であるわけがないからな。神も粋な計らいをして下さったものだ。きっと、ご病気が治った際には正しい種族名に戻していただけることだろう。ははははは」
クリスさんがまるで自分に言い聞かせるかのように早口でそう言った。口では笑っているが顔は引きつっている。
「クリス殿……それで……いいで、ござるか……?」
そんなクリスさんの様子を見てシズクさんが若干引いた様子でそう言う。
はぁ。なんだか、半分くらいこうなる気もしていたけど、ステータスを見せても信じてくれないってある意味すごいと思う。
まあ、すべてはこの『(笑)』のせいなんだけどさ!
でも今日はちゃんと話そう。ステータスまで見せ合った今この時にちゃんと受け入れて貰えなかったら、きっとまたずっとこのままな気がする。
様子がおかしいことに気付いていたのに有耶無耶にした結果、シズクさんを失いかけたのだ。もう二度と同じような後悔はしたくない。
それに、アーデのおかげでクリスさんの吸血鬼に対する印象は最悪ではなくなっているはずだ。きっと。
私はクリスさんの目をまっすぐに見据えて話す。
「クリスさん、真面目に話してください。私はずっと、ずっと自分は吸血鬼だって言ってきたはずです」
「で、ですが……吸血鬼は……」
「敵、ですか? では私が本当は吸血鬼だったら、私のことを殺しますか? それなら、私は殺されるような悪いことをしましたか?」
「そ、それは……」
クリスさんは口ごもると視線を泳がせ、そしてしまいには俯いてしまった。
「クリスさん、私の顔をちゃんと見てください」
私の言葉にクリスさんは恐る恐るといった様子で顔を上げる。その顔には怯えのような、そして今にも泣き出しそうな、そんな表情が浮かんでいた。
「人間にだって悪い人はたくさんいます。私たちは今まで見てきたじゃないですか。貴族の権力を笠に着て女性に乱暴をする人、誰かを無理やり従えようとする人、思い通りにならなければ他人を殺そうとする人、行きずりの他人を犠牲に自分達は助かろうとする人。マツハタ宿では私も身代わりとして殺されそうになったじゃないですか。親切な人間もいれば悪い人間だっている。それと同じで、吸血鬼にだってフェルヒのように人を無理やり支配する吸血鬼もいれば、人と共存したいと思う私のような吸血鬼だっているんです」
クリスさんは相変わらず何かに怯えているような表情を浮かべている。しかし、目は逸らさずにしっかりと私の方を見てくれている。
「シルツァの里でシグリーズィアさんは集団としての人間と個人としてのクリスさんは別だって言って歓迎してくれたじゃないですか。それじゃあ、ダメですか?」
「フィーネ様……」
沈黙が流れる。
そして絞り出すようなクリスさんの声が露天風呂に響いた。
「……かしこまりました」
海辺の磯を整備して崖沿いに作られた半洞窟の露天風呂にルーちゃんの変な声が響き渡る。極北の地での件といいクサネでの件といい、ルーちゃんは温泉に入ると変な声を出す特殊性癖の持ち主のようだ。
「姉さまっ! この温泉はどんな効能があるんですか?」
「ちょっと待ってくださいね」
温泉水を手で掬うとその匂いを少し嗅ぎ、そして少し舐めて味見をする。
「なるほど。ここはナトリウム・塩化物泉ですね。弱アルカリ性のようですし、極わずかに感じるこの独特なピリッとした感じと苦味は……硫酸塩が少しだけ混じっているようです。総合的に判断するとここは保温と保湿に優れたいわゆる『あったまりの湯』です。少しだけ美肌効果もあるはずですが、極北の地のものほどではありませんね」
「わーい、美肌の湯っ!」
ルーちゃんにはまだ必要ないと思うけどね。
そう思いながらちらりとルーちゃんのお腹を見る。
「どうしたんですか? 姉さま」
傷一つない真っ白でハリとツヤのあるキレイなお肌だ。極限状態だったとはいえ、あれだけの大怪我を傷も残さずにキレイに治せたのは幸いだった。
「いえ。キレイに治って良かったなって思いまして」
「えへへ。姉さまありがとうございますっ♪」
そう言ってルーちゃんが私にくっついてくる。
「ちょっと、髪の毛濡れちゃうじゃないですか。乾かすの大変なんですから……」
「えへへ♪」
まあ、かわいい妹分にべたべたされるのは悪い気分ではないけれどね。
「フィーネ殿はずいぶんと温泉に詳しいでござるな。何を言っているのかはよく分からないでござるが、温泉の匂いと味だけで効能まで分かってしまうとは……聖女というのはすごいでござるな」
「え?」
シズクさんが明後日な方向の謎解釈をはじめた。
「フィーネ様は人々のためになることについてはとても勉強熱心であらせられるのだ。私もフィーネ様にお教え頂くまでは知らなかったが、温泉というのはそれぞれ特徴的な効能があるのだそうだぞ」
私にはさっぱり違いが分からないがな、と後に続け、そしてふんすと何故か偉そうな顔をしている。
「なるほど。そうでござったか。これも日頃の研鑽の賜物だったでござるな」
「あはは。私はまあ、ちょっと温泉にはうるさい吸血鬼なんです」
「ははは。(笑)でござるがな」
いや、その(笑)は忘れて欲しいけどね。
「(笑)ってなんですか?」
ルーちゃんのそれを聞いてシズクさんがしまった、という顔をしている。
「いいですよ。別に気にしてませんから。二人も私のステータスを見ますか? ここには誰もいませんし」
その瞬間にクリスさんが固まった。ルーちゃんはいいんですか、とこちらに近寄ってきた。
「私、いい加減ステータスを隠さなくてももう良いんじゃないかと思うんですよ。ステータスを見せてはいけないのって、将来的に敵同士になったり裏切られたり、そういうことがあるからですよね? クリスさんもルーちゃんも、そんなことはないと信じていますから」
「……フィーネ様」
クリスさんは目を潤ませ、感極まった様な表情で私を見ている。
「フィーネ様、私は今まで生きてきた中で一番うれしいです。遂に私のことを腹心とお認め頂けるとは! 」
ん? どうしてそこまで感動しているの?
「フィーネ殿、一般的に主が従者にステータスを見せるという事は、その従者に全幅の信頼を寄せたという意味でござるよ。むしろ、拙者はとうの昔にフィーネ殿とクリス殿はそのような関係だと思っておったでござるがな……」
シズクさんが呆れたような表情を浮かべている。
「そういう意味があるんですね。知りませんでした。最初にステータスは他人に見せてはいけないって言われて、それからずっとそのままだったんです。そういう意味なら最初からクリスさんには見せても問題なかったんですけどね……」
シズクさんは額に手を当てるとはぁ、と小さくため息をついた。
「フィーネ殿はそういう御仁でござったな。クリス殿もああいう性格でござるし、機会がなかったのでござろうな。主が見せると言っているでござるし、どうせなら全員で見せあってはいかがでござるか?」
「あ、ああ、そうだな! そうしよう!」
クリスさんが嬉しそうにしている。クリスさんにシズクさんのような尻尾があればきっと勢いよく振っていたに違いない。
「ルミア殿はどうするでござるか?」
「え? あたし? じゃああたしも見せますよ」
「ルミア、そう簡単に決めて良いものではないぞ? ステータスを見せるという事は自分の弱点を晒すことに他ならない。特にルミアは誘拐犯に狙われる恐れもあるのだし、それにルミアは妹君を見つけたら白銀の里に戻るのではないか?」
「え? あたしは姉さまと一緒に行きますよ? ずーっと一緒ですっ!」
ルーちゃんとずっと一緒か。うん、悪くないね。
「じゃあ、四人だけの秘密ですよ。いいですね?」
「「「はい」」」
私は誰もいないのをいいことに結界を張ってこの露天風呂に誰も入れないようにシャットアウトする。
「では。ステータス・オープン」
「「ステータス・オープン」」
「拙者は先ほど見せたでござるが、ステータス・オープン」
────
名前:フィーネ・アルジェンタータ
種族:吸血鬼(笑)
性別:女性
職業:治癒師、付与師
レベル:15
HP:355
MP:305
STR:365
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Exp:110,087
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ユニークスキル(13):▼
スキル(23):▼
────
────
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種族:人間
性別:女性
職業:聖騎士、御者
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AGI:321
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スキル(7):▼
────
────
名前:ルミア
種族:エルフ
性別:女性
職業:弓士、漁師
レベル:17
HP:105
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DEX:362
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MND:277
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ユニークスキル(2):▼
スキル(3):▼
────
────
名前:シズク・ミエシロ
種族:半黒狐
性別:女性
職業:剣聖、商人
レベル:1
HP:202
MP:70
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INT:120
AGI:363
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VIT:165
MND:187
LUC:145
Exp:1 → 2
ユニークスキル(1):▼
スキル(6):▼
────
「えっ? フィーネ様が……吸血鬼……? いえ、この(笑)とは一体何でしょうか?」
「きっと神様が冗談でつけてくれたんじゃないですか? あたしは姉さまなら何でもいいですよっ♪」
ルーちゃんがそう言ってまた私に抱きついてきた。
うん、ありがとう。でもお風呂の中で抱きつかれるとちょっと暑苦しいよ?
「なるほど! そういうことか。フィーネ様が吸血鬼であるわけがないからな。神も粋な計らいをして下さったものだ。きっと、ご病気が治った際には正しい種族名に戻していただけることだろう。ははははは」
クリスさんがまるで自分に言い聞かせるかのように早口でそう言った。口では笑っているが顔は引きつっている。
「クリス殿……それで……いいで、ござるか……?」
そんなクリスさんの様子を見てシズクさんが若干引いた様子でそう言う。
はぁ。なんだか、半分くらいこうなる気もしていたけど、ステータスを見せても信じてくれないってある意味すごいと思う。
まあ、すべてはこの『(笑)』のせいなんだけどさ!
でも今日はちゃんと話そう。ステータスまで見せ合った今この時にちゃんと受け入れて貰えなかったら、きっとまたずっとこのままな気がする。
様子がおかしいことに気付いていたのに有耶無耶にした結果、シズクさんを失いかけたのだ。もう二度と同じような後悔はしたくない。
それに、アーデのおかげでクリスさんの吸血鬼に対する印象は最悪ではなくなっているはずだ。きっと。
私はクリスさんの目をまっすぐに見据えて話す。
「クリスさん、真面目に話してください。私はずっと、ずっと自分は吸血鬼だって言ってきたはずです」
「で、ですが……吸血鬼は……」
「敵、ですか? では私が本当は吸血鬼だったら、私のことを殺しますか? それなら、私は殺されるような悪いことをしましたか?」
「そ、それは……」
クリスさんは口ごもると視線を泳がせ、そしてしまいには俯いてしまった。
「クリスさん、私の顔をちゃんと見てください」
私の言葉にクリスさんは恐る恐るといった様子で顔を上げる。その顔には怯えのような、そして今にも泣き出しそうな、そんな表情が浮かんでいた。
「人間にだって悪い人はたくさんいます。私たちは今まで見てきたじゃないですか。貴族の権力を笠に着て女性に乱暴をする人、誰かを無理やり従えようとする人、思い通りにならなければ他人を殺そうとする人、行きずりの他人を犠牲に自分達は助かろうとする人。マツハタ宿では私も身代わりとして殺されそうになったじゃないですか。親切な人間もいれば悪い人間だっている。それと同じで、吸血鬼にだってフェルヒのように人を無理やり支配する吸血鬼もいれば、人と共存したいと思う私のような吸血鬼だっているんです」
クリスさんは相変わらず何かに怯えているような表情を浮かべている。しかし、目は逸らさずにしっかりと私の方を見てくれている。
「シルツァの里でシグリーズィアさんは集団としての人間と個人としてのクリスさんは別だって言って歓迎してくれたじゃないですか。それじゃあ、ダメですか?」
「フィーネ様……」
沈黙が流れる。
そして絞り出すようなクリスさんの声が露天風呂に響いた。
「……かしこまりました」
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