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吸血鬼と聖女と聖騎士と
第一章第13話 王様からの贈り物
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神殿を出た後はすぐに宿、というか豪華ホテルに強制連行されてそのまま休んだ。もちろん、部屋は最高級のスイートルーム。宿について私に一切の選択権はなかったが、支払いをする義務だけはあった。一泊金貨10枚なり。解せぬ。
そして翌朝、王様から使いの者がやってきて再び王様のところに強制連行された。
「フィーネ嬢、よくぞ参った。話は聞いておるぞ。職業はやはり治癒師であったそうだな」
「はい」
王様は満足そうに頷くと、誰かに顎で合図を贈る。
「うむ。フィーネ嬢の治癒師就職を祝って、余から祝いの品を用意した。受け取るがよい」
すると、王様の従者がトレーに乗せて見るからに高そうな白い布の塊を運んできた。
「ありがとうございます」
私はそれを受け取り、手に取ってみる。すべすべしていて手触りがとても良い。
これは、どうやらフードのついた外套、いや、ローブだろうか。銀糸で見事な刺繍が施され、その刺繍には凄まじい量の聖なる魔力が込められているのが分かる。
袖口などには薄紅色があしらわれており、背中の部分にも薄紅色で紋章のようなものが入れられている。なんでもこれはこの国の王家の紋章なのだそうだ。
「うむ。それはそなたの治癒師としての力を補ってくれると同時に、余がフィーネ嬢を庇護しているという証でもある。それを身に着けておればおかしな輩に狙われることもなかろう。さあ、羽織ってみるがよい」
「はい」
こんな場面で断れるはずもなく、私はローブを羽織る。すると、侍女のお姉さんたちがさっと現れて手伝ってくれた。さすが、王宮で働いているだけあって動きに無駄がない。姿見までいつの間にか用意されている。
その姿見に映った自分の姿を見た私は、しばしその姿に見惚れてしまった。
つやつやと輝く白銀色の髪、雪のように白い肌に赤い瞳、可愛らしい形をした鼻に薄紅色の小さな唇、それらが驚くほど美しく整っている。それなのにキツイという印象はなく、それよりも優し気で、可愛らしい、そしでどこか儚げな印象を与える顔立ちをしている。そして、吸血鬼の特徴である少し尖った耳が普通の人間ではないことを主張して、ほんの少しだけミステリアスな雰囲気を醸し出している。そして少し丸みを帯びつつあるしなやか肢体包み込んでいるのは白を基調とした上質なローブで、その胸元を飾るのは白銀のロザリオとその赤い宝玉が上品に輝いている。
うん、すっごい似合ってる。とんでもない美少女で、見た目は文句なしの聖女さまだ。このキャラに姫プされたら信者がヤバいことになりそうだ。
「うむ。よく似合っておるぞ。装備品などはこの後、城下にある店にでも行って整えるとよかろう。我が騎士、クリスティーナよ」
「はっ!」
「教皇殿から話は聞いている。シュヴァルツ討伐隊を解散し、貴様を第三騎士団ファレン方面第四分隊副長の任を解く」
「はっ!」
うん? クリスさんは結果的に討伐成功しているのに何で解任されてるの?
周囲の人達もざわついている。私が抗議の声を上げようとするが、私がその言葉発する前に王様が次の命令を発する。
「そして、近衛騎士団特務部隊へ転属とし、フィーネ嬢の近衛を命ずる。これより貴様はフィーネ嬢の剣となり盾となり、その心身を守るのだ」
「はっ!」
あれ? どういうこと?
「うむ。では、これより宣誓の儀を行う。余がその見届け人となろう」
周囲の人たちがまた大きくざわつくが、王様がじろりと周りを見回すだけで静る。王様パワー恐るべし。
静寂が謁見の間を包む。
「フィーネ様」
クリスさんが立ち上がって私をまっすぐと見つめる。その瞳には強い決意と優しさが溢れていて、そして私はまっすぐ見つめ返す。
すると、クリスさんが自分の剣を鞘に収めたまま私に手渡す。これはクリスさんがいつも大切にしている聖剣なんとかだ。手に持つだけで聖なる力が流れ込んできて心地が良い。
「私が跪いたら、私の聖剣を鞘から抜き、切っ先を私の口元に差し出してください。私が口上を述べますので、許す、と仰ってください」
「は、はい」
これはどうやら騎士叙任の儀式のようだ。
そしてクリスさんが私の前に跪く。この場で嫌です、なんて言える勇気のない私は言われたとおりに剣を鞘から抜き、その切っ先をクリスさんの口元に差し出す。
すると、周囲からは大きなざわめきが起こる。おお、まさか聖剣が、なんて声も聞こえてくる。
だが、そのざわめきは、王様の咳払いによって咎められ、辺りは再び静寂に包まれる。
「宣誓!
私クリスティーナは!
フィーネ・アルジェンタータを主とし!
御身を守る盾となり!
御敵を討つ剣となり!
謙虚であり!
誠実であり!
礼節を重んじ!
裏切ることなく!
欺くことなく!
弱者には常に優しく!
強者には常に勇ましく!
己と主の品位を高め!
正々堂々と振る舞う!
騎士たらんことをここに誓う!」
クリスさんの凛とした宣誓が謁見の間に響き渡る。
私は少しの間見惚れていたが、言われていたことを思い出して役目を果たす。
「許す」
すると、クリスさんは聖剣の先に口付けを落とす。
それはまるで、神話の一説にでも登場するかのような美しい光景だった。
そして次の瞬間、謁見の間が盛大な拍手で包まれた。
「フィーネ様。これで私は貴女の騎士となりました。どこまでもお供いたします」
そう言って顔を上げるクリスさん。その顔には笑みを浮かべているが、その目はかすかに潤んでいた。
「ついに、この聖剣セスルームニルを通じて聖騎士の誓いを立てることができました。聖剣はものすごく持ち手を選ぶので、聖剣に気に入られない者には重くて持てなかったり、邪悪な心を持つ者はそのまま聖なる力によって浄化されてしまうこともあるのです」
「へっ?」
おいおい。この脳筋くっころお姉さん、何いきなり人に危険物持たせてるんだよ? あ、人じゃなくて吸血鬼だけど。
「ですが、フィーネ様でしたらセスルームニルも喜んでくれると確信していました。私、フィーネ様にお会いできて、そしてそのフィーネ様の聖騎士となれて、本当に幸せです!」
クリスさんはそれはそれは華やいだ笑顔を浮かべた。それは一点の曇りもない、心からの晴れやかな笑顔だった。
その笑顔を前に、私は言葉を返すことができなかった。
****
「ふむ。大変見事な宣誓であったな。聖騎士クリスティーナよ。その誓いを十全に果たすがよい。さて、貴様の、いやそなたの新たなる出立を祝して余から餞別を贈ろうではないか。さぁ、受け取るがよい」
再び従者の人がトレーに乗せて布の塊を持ってくる。
「ありがたき幸せ」
そう言ってクリスさんは受け取る。どうやらマントのようだ。私のもらったローブと似たようなデザインをしている。銀の刺繍に薄紅色のポイント、背中の薄紅色の王家の紋章までお揃いだ。
「うむ。よく似合っておるな。そうして並ぶとまるで物語にでも出てくるような聖女と聖騎士のように見えるな」
そういって楽しそうに笑う王様。周囲の人たちもうんうんと頷いている。
「ありがとうございます。でも私、実は――」
「ああ、うむ。教皇殿から聞いておるぞ。フィーネ嬢。なに、気に病むことはない。フィーネ嬢が普通の人間ではないことは最初から分かっておった。なにしろ、耳が少し尖っておるからな。最初に報告を受けた時はアルビノ症を含む突然変異だと思っておったのだがな」
「え?」
「だが、フィーネ嬢は日光を気にしていない様子だ。ということはアルビノ症ではなかろう。そして教皇殿からの報告を加味して考えると、そなたは極北の地に住まう白銀のハイエルフの血を引いているのではないかね?」
「はい?」
いやいやいやいや。王様。全然違いますから。普通に、普通に吸血鬼なんです。ちょっと聖属性と太陽の光で元気になるだけで、他は普通の吸血鬼なんです。
「極北に住まう白銀のハイエルフは他のエルフと同様に見目麗しく、大きく尖った耳を持つ。そして、雪のように白い肌と白銀の髪、そしてそなたのような赤い瞳を持ち、聖なる力を操ることを得意としていると聞く。つまり、そなたのその力、そしてその容姿は先祖返りと考えると辻褄が合うのだ」
いや、違うんですけどね。違うんですけど、どうしよう。妙に筋が通っていて困る。
私が返答に窮して微妙な表情をしていると、クリスさんが笑顔で私を励ましてくれる。
「フィーネ様、良かったですね! これでフィーネ様のルーツが分かるかもしれませんよ」
ああ、分かるよ。一切悪気がないことくらい。クリスさんが本当にそう思って言ってくれていることくらい。
まったく、アニュオンの NPC はこの王様といい教皇様といい、クリスさんといい、マジで NPC とは思えないほど人間らしくて、そして本当に良い人ばかりで邪険にできない。
「ありがとうございます」
私は自然にそう答えていた。
「ふむ。では、そなたたちにこれから与えられるであろう神々の試練を乗り越えられるよう、我々は神に祈ろうではないか」
ん? どういうこと?
「この者たちに!」
王様がブーンのポーズをした。至って真顔だ。真剣な表情をしている!
「神のご加護があらんことを!」
そこからの華麗なるジャンピング土下座。
「神のご加護を!」
周りの人たちまで一糸乱れぬ動きでブーンからのジャンピング土下座を決める。
やばい、腹筋が! 唐突にこれを挟むのは勘弁してくれ!
「感謝を!」
クリスさんがブーンのポーズを決める。
「フィーネ様!」
小声で注意された。
「か、かんしゃを」
私もブーンのポーズを取る。
「そして、神のご加護を!」
からの、ジャンピング土下座。
「ご、ごかごを」
私も倣っておずおずと土下座をする。
もちろん、しばらくの間私が必死に腹筋と戦っていたのは言うまでもない。
そして翌朝、王様から使いの者がやってきて再び王様のところに強制連行された。
「フィーネ嬢、よくぞ参った。話は聞いておるぞ。職業はやはり治癒師であったそうだな」
「はい」
王様は満足そうに頷くと、誰かに顎で合図を贈る。
「うむ。フィーネ嬢の治癒師就職を祝って、余から祝いの品を用意した。受け取るがよい」
すると、王様の従者がトレーに乗せて見るからに高そうな白い布の塊を運んできた。
「ありがとうございます」
私はそれを受け取り、手に取ってみる。すべすべしていて手触りがとても良い。
これは、どうやらフードのついた外套、いや、ローブだろうか。銀糸で見事な刺繍が施され、その刺繍には凄まじい量の聖なる魔力が込められているのが分かる。
袖口などには薄紅色があしらわれており、背中の部分にも薄紅色で紋章のようなものが入れられている。なんでもこれはこの国の王家の紋章なのだそうだ。
「うむ。それはそなたの治癒師としての力を補ってくれると同時に、余がフィーネ嬢を庇護しているという証でもある。それを身に着けておればおかしな輩に狙われることもなかろう。さあ、羽織ってみるがよい」
「はい」
こんな場面で断れるはずもなく、私はローブを羽織る。すると、侍女のお姉さんたちがさっと現れて手伝ってくれた。さすが、王宮で働いているだけあって動きに無駄がない。姿見までいつの間にか用意されている。
その姿見に映った自分の姿を見た私は、しばしその姿に見惚れてしまった。
つやつやと輝く白銀色の髪、雪のように白い肌に赤い瞳、可愛らしい形をした鼻に薄紅色の小さな唇、それらが驚くほど美しく整っている。それなのにキツイという印象はなく、それよりも優し気で、可愛らしい、そしでどこか儚げな印象を与える顔立ちをしている。そして、吸血鬼の特徴である少し尖った耳が普通の人間ではないことを主張して、ほんの少しだけミステリアスな雰囲気を醸し出している。そして少し丸みを帯びつつあるしなやか肢体包み込んでいるのは白を基調とした上質なローブで、その胸元を飾るのは白銀のロザリオとその赤い宝玉が上品に輝いている。
うん、すっごい似合ってる。とんでもない美少女で、見た目は文句なしの聖女さまだ。このキャラに姫プされたら信者がヤバいことになりそうだ。
「うむ。よく似合っておるぞ。装備品などはこの後、城下にある店にでも行って整えるとよかろう。我が騎士、クリスティーナよ」
「はっ!」
「教皇殿から話は聞いている。シュヴァルツ討伐隊を解散し、貴様を第三騎士団ファレン方面第四分隊副長の任を解く」
「はっ!」
うん? クリスさんは結果的に討伐成功しているのに何で解任されてるの?
周囲の人達もざわついている。私が抗議の声を上げようとするが、私がその言葉発する前に王様が次の命令を発する。
「そして、近衛騎士団特務部隊へ転属とし、フィーネ嬢の近衛を命ずる。これより貴様はフィーネ嬢の剣となり盾となり、その心身を守るのだ」
「はっ!」
あれ? どういうこと?
「うむ。では、これより宣誓の儀を行う。余がその見届け人となろう」
周囲の人たちがまた大きくざわつくが、王様がじろりと周りを見回すだけで静る。王様パワー恐るべし。
静寂が謁見の間を包む。
「フィーネ様」
クリスさんが立ち上がって私をまっすぐと見つめる。その瞳には強い決意と優しさが溢れていて、そして私はまっすぐ見つめ返す。
すると、クリスさんが自分の剣を鞘に収めたまま私に手渡す。これはクリスさんがいつも大切にしている聖剣なんとかだ。手に持つだけで聖なる力が流れ込んできて心地が良い。
「私が跪いたら、私の聖剣を鞘から抜き、切っ先を私の口元に差し出してください。私が口上を述べますので、許す、と仰ってください」
「は、はい」
これはどうやら騎士叙任の儀式のようだ。
そしてクリスさんが私の前に跪く。この場で嫌です、なんて言える勇気のない私は言われたとおりに剣を鞘から抜き、その切っ先をクリスさんの口元に差し出す。
すると、周囲からは大きなざわめきが起こる。おお、まさか聖剣が、なんて声も聞こえてくる。
だが、そのざわめきは、王様の咳払いによって咎められ、辺りは再び静寂に包まれる。
「宣誓!
私クリスティーナは!
フィーネ・アルジェンタータを主とし!
御身を守る盾となり!
御敵を討つ剣となり!
謙虚であり!
誠実であり!
礼節を重んじ!
裏切ることなく!
欺くことなく!
弱者には常に優しく!
強者には常に勇ましく!
己と主の品位を高め!
正々堂々と振る舞う!
騎士たらんことをここに誓う!」
クリスさんの凛とした宣誓が謁見の間に響き渡る。
私は少しの間見惚れていたが、言われていたことを思い出して役目を果たす。
「許す」
すると、クリスさんは聖剣の先に口付けを落とす。
それはまるで、神話の一説にでも登場するかのような美しい光景だった。
そして次の瞬間、謁見の間が盛大な拍手で包まれた。
「フィーネ様。これで私は貴女の騎士となりました。どこまでもお供いたします」
そう言って顔を上げるクリスさん。その顔には笑みを浮かべているが、その目はかすかに潤んでいた。
「ついに、この聖剣セスルームニルを通じて聖騎士の誓いを立てることができました。聖剣はものすごく持ち手を選ぶので、聖剣に気に入られない者には重くて持てなかったり、邪悪な心を持つ者はそのまま聖なる力によって浄化されてしまうこともあるのです」
「へっ?」
おいおい。この脳筋くっころお姉さん、何いきなり人に危険物持たせてるんだよ? あ、人じゃなくて吸血鬼だけど。
「ですが、フィーネ様でしたらセスルームニルも喜んでくれると確信していました。私、フィーネ様にお会いできて、そしてそのフィーネ様の聖騎士となれて、本当に幸せです!」
クリスさんはそれはそれは華やいだ笑顔を浮かべた。それは一点の曇りもない、心からの晴れやかな笑顔だった。
その笑顔を前に、私は言葉を返すことができなかった。
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「ふむ。大変見事な宣誓であったな。聖騎士クリスティーナよ。その誓いを十全に果たすがよい。さて、貴様の、いやそなたの新たなる出立を祝して余から餞別を贈ろうではないか。さぁ、受け取るがよい」
再び従者の人がトレーに乗せて布の塊を持ってくる。
「ありがたき幸せ」
そう言ってクリスさんは受け取る。どうやらマントのようだ。私のもらったローブと似たようなデザインをしている。銀の刺繍に薄紅色のポイント、背中の薄紅色の王家の紋章までお揃いだ。
「うむ。よく似合っておるな。そうして並ぶとまるで物語にでも出てくるような聖女と聖騎士のように見えるな」
そういって楽しそうに笑う王様。周囲の人たちもうんうんと頷いている。
「ありがとうございます。でも私、実は――」
「ああ、うむ。教皇殿から聞いておるぞ。フィーネ嬢。なに、気に病むことはない。フィーネ嬢が普通の人間ではないことは最初から分かっておった。なにしろ、耳が少し尖っておるからな。最初に報告を受けた時はアルビノ症を含む突然変異だと思っておったのだがな」
「え?」
「だが、フィーネ嬢は日光を気にしていない様子だ。ということはアルビノ症ではなかろう。そして教皇殿からの報告を加味して考えると、そなたは極北の地に住まう白銀のハイエルフの血を引いているのではないかね?」
「はい?」
いやいやいやいや。王様。全然違いますから。普通に、普通に吸血鬼なんです。ちょっと聖属性と太陽の光で元気になるだけで、他は普通の吸血鬼なんです。
「極北に住まう白銀のハイエルフは他のエルフと同様に見目麗しく、大きく尖った耳を持つ。そして、雪のように白い肌と白銀の髪、そしてそなたのような赤い瞳を持ち、聖なる力を操ることを得意としていると聞く。つまり、そなたのその力、そしてその容姿は先祖返りと考えると辻褄が合うのだ」
いや、違うんですけどね。違うんですけど、どうしよう。妙に筋が通っていて困る。
私が返答に窮して微妙な表情をしていると、クリスさんが笑顔で私を励ましてくれる。
「フィーネ様、良かったですね! これでフィーネ様のルーツが分かるかもしれませんよ」
ああ、分かるよ。一切悪気がないことくらい。クリスさんが本当にそう思って言ってくれていることくらい。
まったく、アニュオンの NPC はこの王様といい教皇様といい、クリスさんといい、マジで NPC とは思えないほど人間らしくて、そして本当に良い人ばかりで邪険にできない。
「ありがとうございます」
私は自然にそう答えていた。
「ふむ。では、そなたたちにこれから与えられるであろう神々の試練を乗り越えられるよう、我々は神に祈ろうではないか」
ん? どういうこと?
「この者たちに!」
王様がブーンのポーズをした。至って真顔だ。真剣な表情をしている!
「神のご加護があらんことを!」
そこからの華麗なるジャンピング土下座。
「神のご加護を!」
周りの人たちまで一糸乱れぬ動きでブーンからのジャンピング土下座を決める。
やばい、腹筋が! 唐突にこれを挟むのは勘弁してくれ!
「感謝を!」
クリスさんがブーンのポーズを決める。
「フィーネ様!」
小声で注意された。
「か、かんしゃを」
私もブーンのポーズを取る。
「そして、神のご加護を!」
からの、ジャンピング土下座。
「ご、ごかごを」
私も倣っておずおずと土下座をする。
もちろん、しばらくの間私が必死に腹筋と戦っていたのは言うまでもない。
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