84 / 110
第84話 決死の突撃
しおりを挟む
モンタギューが地下牢に入れられたころ、裏門の前では戦況に変化が生じていた。
水堀を渡ることに成功した騎士の半数以上はすでに死亡、または戦闘不能状態となっているのだが、残った騎士たちは攻撃をかいくぐり、門に取り付くことに成功していた。
「ええい! どけ! 火の精霊よ。我が求めに応じ、我が剣に宿れ! うおおおおおお!」
セオドリックの雄叫びとともに、剣に巨大な炎が宿った。セオドリックはそれを一閃する。
ガキイイイン!
激しい金属音と共に炎が放たれた。鉄格子は赤熱し、内側の門扉も炎に包まれる。
「今だ! 今のうちに鉄格子を壊せ!」
「「「はっ!」」」
騎士たちが鉄格子に丸太を次々と差し込み、門の壁に引っかけててこの原理で鉄格子を無理やり外そうとする。
ズシン! グシャッ!
再び岩が投下され、騎士たちがその下敷きとなる。
「怯むな! 我らの活路は前のみだ! 破壊しろ!」
「はっ!」
落石の合間を縫って騎士が丸太に取り付き、再び丸太に力を加える。すると赤熱し、もろくなっていた鉄格子がぐにゃりと変形した。
「いいぞ! あと一息だ!」
ドゴォン! ズシン! グシャッ!
鉄格子が大きな音を立てて外れたのと、次の岩が投下されたのは同時だった。
「今だ! 門の下に入りこめ!」
「「「はっ!」」」
騎士たちは一斉に門の中に雪崩れ込むと、火のついている木製の門扉に先のとがった丸太を勢いよくぶつけた。
ドシン! バキン!
激しい音と共に門扉が軋む。
「もう一度!」
「「「はっ!」」」
騎士たちが再度丸太をぶつけると、今度は丸太が門扉を貫通した。
「いいぞ! 叩き壊せ!」
「「「はっ!」」」
それからも騎士たちは何度となく丸太をぶつけ、ついに門扉は破壊されてしまう。
「よし! 進め! 目標はスカーレットフォード男爵閣下の身柄の確保だ! 他の者は農奴か平民だ!」
「「「はっ!」」」
騎士たちは村内に雪崩れ込む。その先にはすでに収穫を終えた小麦畑が広がっており、彼らの往く手を阻む者はいない。
と、思われたのだが……。
「ぎゃっ!?」
突如、道の端を走っていた一人の騎士が悲鳴を上げ、そのまま小麦畑へと転落した。
「おい! 何コケてんぎゃっ!?」
小馬鹿にするようにそう言った男も同じように悲鳴を上げ、小麦畑へと転落していく。
「脱落した者に構うな! 進め! 目標は中央広場にある村長の家だ!」
「「「はっ!」」」
セオドリックたちは転落した者たちを置いて先を急ぐが、数分に一度ほどの割合で騎士が小麦畑へと転落する。
こうして犠牲を顧みずに麦畑を駆け抜けたことで多くの騎士を失い、気付けばその人数は十名ほどにまで減っていた。
そんなセオドリックたちは再開発に向けて空き地となっているエリア、つまりアルフレッドとエドワードの連れてきた騎士や従騎士たちが下女たちと共に野宿している場所に到着した。
多くのテントが張られており、何か所かにはかがり火まで焚かれている。
「これは一体……?」
カランコロン。
状況が理解できないセオドリックたちの前に、短剣と木製の盾を持ったゴブリンのスケルトンたちが行く手を遮るように立ちはだかった。
「なんだ? こいつら!?」
「化け物?」
「何が化け物だ!」
突然男の声がしたかと思うと、なんとゴブリンのスケルトンたちの背後から次々と武装した男たちが現れた。アルフレッドとエドワードが連れてきた騎士たちである。
「お前らが襲撃者だな?」
「よくも!」
「許さん!」
彼らは一様に殺気立っており、セオドリックたちを憎悪のこもった目で睨み付けている。
だがそれも当然のことだろう。なぜなら、彼らは連れてきた下女たちとよろしくやっていたところを中断されているのだから。
「え?」
「な……なぜこんな戦力が?」
「なんだ? 襲撃というのは盗賊ではないのか?」
「あの揃った装備、騎士っぽくないか?」
「信じられん。神聖なる感謝祭の夜に他領を襲撃するとは」
「言語道断!」
「許すまじ!」
「騎士の誇りに懸けて!」
騎士たちは次々とゴブリンのスケルトンたちの前に出る。
「む? あの紋章、サウスベリー侯爵のものではないか!」
「サウスベリー侯爵といえば、スカーレットフォード男爵閣下の!」
「なんという外道!」
「我らは誇り高きバイスター公爵騎士団である! 外道どもをひっ捕らえよ!」
「ラズロー伯爵騎士団の皆! バイスターに負けてはおれんぞ!」
騎士たちは野宿のエリアを飛び出し、セオドリックたちに襲い掛かる。
「くっ! 陣形を組め! 道は狭い! 受け止めろ! 俺が魔法でがっ!?」
突如、セオドリックの右膝から激痛が走った。セオドリックが慌てて下を見ると、ホーンラビットのスケルトンが鎧の隙間に突き刺さっている。
「なっ!? なんだ! こいつ!」
セオドリックは慌てて引き抜き、思い切り地面に叩きつけた。
ガシャーン!
ホーンラビットのスケルトンはバラバラになったが、すぐに元どおりになってむくりと起き上がる。
「ひっ!? な、ど、どうなって……」
「うわっ! セオドリック卿! ご指示を!」
「セオドリック卿!」
「大人しくしろ!」
「ぐあっ!?」
「やめろ!」
「うわぁぁぁぁ」
セオドリックたちはなすすべもなく、アルフレッドとエドワードの連れてきた騎士たちによって取り押さえられたのだった。
水堀を渡ることに成功した騎士の半数以上はすでに死亡、または戦闘不能状態となっているのだが、残った騎士たちは攻撃をかいくぐり、門に取り付くことに成功していた。
「ええい! どけ! 火の精霊よ。我が求めに応じ、我が剣に宿れ! うおおおおおお!」
セオドリックの雄叫びとともに、剣に巨大な炎が宿った。セオドリックはそれを一閃する。
ガキイイイン!
激しい金属音と共に炎が放たれた。鉄格子は赤熱し、内側の門扉も炎に包まれる。
「今だ! 今のうちに鉄格子を壊せ!」
「「「はっ!」」」
騎士たちが鉄格子に丸太を次々と差し込み、門の壁に引っかけててこの原理で鉄格子を無理やり外そうとする。
ズシン! グシャッ!
再び岩が投下され、騎士たちがその下敷きとなる。
「怯むな! 我らの活路は前のみだ! 破壊しろ!」
「はっ!」
落石の合間を縫って騎士が丸太に取り付き、再び丸太に力を加える。すると赤熱し、もろくなっていた鉄格子がぐにゃりと変形した。
「いいぞ! あと一息だ!」
ドゴォン! ズシン! グシャッ!
鉄格子が大きな音を立てて外れたのと、次の岩が投下されたのは同時だった。
「今だ! 門の下に入りこめ!」
「「「はっ!」」」
騎士たちは一斉に門の中に雪崩れ込むと、火のついている木製の門扉に先のとがった丸太を勢いよくぶつけた。
ドシン! バキン!
激しい音と共に門扉が軋む。
「もう一度!」
「「「はっ!」」」
騎士たちが再度丸太をぶつけると、今度は丸太が門扉を貫通した。
「いいぞ! 叩き壊せ!」
「「「はっ!」」」
それからも騎士たちは何度となく丸太をぶつけ、ついに門扉は破壊されてしまう。
「よし! 進め! 目標はスカーレットフォード男爵閣下の身柄の確保だ! 他の者は農奴か平民だ!」
「「「はっ!」」」
騎士たちは村内に雪崩れ込む。その先にはすでに収穫を終えた小麦畑が広がっており、彼らの往く手を阻む者はいない。
と、思われたのだが……。
「ぎゃっ!?」
突如、道の端を走っていた一人の騎士が悲鳴を上げ、そのまま小麦畑へと転落した。
「おい! 何コケてんぎゃっ!?」
小馬鹿にするようにそう言った男も同じように悲鳴を上げ、小麦畑へと転落していく。
「脱落した者に構うな! 進め! 目標は中央広場にある村長の家だ!」
「「「はっ!」」」
セオドリックたちは転落した者たちを置いて先を急ぐが、数分に一度ほどの割合で騎士が小麦畑へと転落する。
こうして犠牲を顧みずに麦畑を駆け抜けたことで多くの騎士を失い、気付けばその人数は十名ほどにまで減っていた。
そんなセオドリックたちは再開発に向けて空き地となっているエリア、つまりアルフレッドとエドワードの連れてきた騎士や従騎士たちが下女たちと共に野宿している場所に到着した。
多くのテントが張られており、何か所かにはかがり火まで焚かれている。
「これは一体……?」
カランコロン。
状況が理解できないセオドリックたちの前に、短剣と木製の盾を持ったゴブリンのスケルトンたちが行く手を遮るように立ちはだかった。
「なんだ? こいつら!?」
「化け物?」
「何が化け物だ!」
突然男の声がしたかと思うと、なんとゴブリンのスケルトンたちの背後から次々と武装した男たちが現れた。アルフレッドとエドワードが連れてきた騎士たちである。
「お前らが襲撃者だな?」
「よくも!」
「許さん!」
彼らは一様に殺気立っており、セオドリックたちを憎悪のこもった目で睨み付けている。
だがそれも当然のことだろう。なぜなら、彼らは連れてきた下女たちとよろしくやっていたところを中断されているのだから。
「え?」
「な……なぜこんな戦力が?」
「なんだ? 襲撃というのは盗賊ではないのか?」
「あの揃った装備、騎士っぽくないか?」
「信じられん。神聖なる感謝祭の夜に他領を襲撃するとは」
「言語道断!」
「許すまじ!」
「騎士の誇りに懸けて!」
騎士たちは次々とゴブリンのスケルトンたちの前に出る。
「む? あの紋章、サウスベリー侯爵のものではないか!」
「サウスベリー侯爵といえば、スカーレットフォード男爵閣下の!」
「なんという外道!」
「我らは誇り高きバイスター公爵騎士団である! 外道どもをひっ捕らえよ!」
「ラズロー伯爵騎士団の皆! バイスターに負けてはおれんぞ!」
騎士たちは野宿のエリアを飛び出し、セオドリックたちに襲い掛かる。
「くっ! 陣形を組め! 道は狭い! 受け止めろ! 俺が魔法でがっ!?」
突如、セオドリックの右膝から激痛が走った。セオドリックが慌てて下を見ると、ホーンラビットのスケルトンが鎧の隙間に突き刺さっている。
「なっ!? なんだ! こいつ!」
セオドリックは慌てて引き抜き、思い切り地面に叩きつけた。
ガシャーン!
ホーンラビットのスケルトンはバラバラになったが、すぐに元どおりになってむくりと起き上がる。
「ひっ!? な、ど、どうなって……」
「うわっ! セオドリック卿! ご指示を!」
「セオドリック卿!」
「大人しくしろ!」
「ぐあっ!?」
「やめろ!」
「うわぁぁぁぁ」
セオドリックたちはなすすべもなく、アルフレッドとエドワードの連れてきた騎士たちによって取り押さえられたのだった。
717
お気に入りに追加
2,286
あなたにおすすめの小説
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
婚約破棄にも寝過ごした
シアノ
恋愛
悪役令嬢なんて面倒くさい。
とにかくひたすら寝ていたい。
三度の飯より睡眠が好きな私、エルミーヌ・バタンテールはある朝不意に、この世界が前世にあったドキラブ夢なんちゃらという乙女ゲームによく似ているなーと気が付いたのだった。
そして私は、悪役令嬢と呼ばれるライバルポジションで、最終的に断罪されて塔に幽閉されて一生を送ることになるらしい。
それって──最高じゃない?
ひたすら寝て過ごすためなら努力も惜しまない!まずは寝るけど!おやすみなさい!
10/25 続きました。3はライオール視点、4はエルミーヌ視点です。
これで完結となります。ありがとうございました!
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる