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第52話 追放幼女、魔物を駆除する
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「姫様~」
「お帰りなさ~い!」
あたしたちがスカーレットフォードに帰ってくると、村人たちが総出で出迎えてくれた。
「うん、ただいま。みんな、あたしが留守の間、変わりはない?」
「はい!」
「作付けも順調に進んでおります」
「そう、良かった」
村のみんなの元気そうな様子にあたしはホッと胸をなでおろす。
「トニー、先に送っておいた毛皮は?」
「へい。すでに下処理を始めてます」
「うん、ありがとう。使えそう?」
「一部の傷んでるのは切れ端を取ることになりやすが、それ以外は一枚で」
傷んでいるというのは、フォレストウルフとクレセントベアのスケルトンだけで倒したフォレストウルフの毛皮かな?
動きを強制的に止めていたわけじゃないし、綺麗な状態で、というわけにはいかなかったのだろう。
「そっか。わかった。じゃ、あとはよろしくね」
「へい」
続いてあたしはウィルに声を掛ける。
「ウィル」
「へい、姫さん。お帰りなせぇ」
「うん、ただいま。あのさ」
あたしは第三野営地でのことを説明した。
「それで、対策を考えたいんだけど……」
「なるほど。っつーことは、やっぱり村と同じように堀と跳ね橋しかねえんじゃねぇっすか?」
「やっぱりそっかぁ。結構な工事になるけど、やるしかないね」
「へい」
「うん、ありがと。じゃ、あたしは家に帰るよ。さすがに疲れてるし。あと、みんなも何か困ったことがあったらいつでも言いに来てね」
こうしてあたしたちは自宅へと向かうのだった。
◆◇◆
その後、街道沿いの三つの野営地の改築工事に着手した。空堀を作り、跳ね橋を架けるのだ。
工事はもちろんすべてスケルトン任せで、その間にあたしは魔物の駆除をすることにした。
ウィルにも一応確認してみたところ、やはりサイモンの言っていたとおりで、クレセントベアはかなり危険な魔物なのだという。
どれぐらい危険なのかというと、魔物退治を請け負う冒険者たちがあまり戦いたがらないくらいらしい。
そうなると商人たちは高いお金を払って強力な護衛をつける必要があり、その費用は商品価格に転嫁されてしまう。
うちはまだかなり貧しいので、商品が高くなるのは困る。
というわけで、あたしはウィルたちを連れて第一野営地にやってきた。すでにゴブリンのスケルトンが堀の掘削工事を始めている。
「ここが野営地っすか」
「ここにクレセントベアが……」
「ん? 違うよ、パトリック。クレセントベアが出たのは第三野営地だよ」
「あ、そうなんですね」
「うん、そう」
「しかし姫さん、ビッターレイってあのラズロー伯爵領なんすよね?」
「そうだよ」
するとパトリックが横から口を挟んでくる。
「ウィルさん、『あの』ってどういうことっすか?」
「ああ、それはな。ラズロー伯爵って言えば、獄炎伯爵とも呼ばれてる魔の森から王国を守る番人だ」
「そうなんすね」
「そうだぞ。ものすげぇ炎で魔物どもを薙ぎ払うらしい」
「ビッターレイに大きな街壁を築いたのもラズロー伯爵だって話だね」
「そうなんすか」
「うん。だから町の英雄なんだって。ミュリエルが、ビッターレイの町長の娘さんがそう言ってたよ」
「へぇぇぇ」
「しかし、獄炎伯爵の町の近くにクレセントベアが出たんすか?」
「出たっていうか、おびき寄せたっていうか?」
「おびき寄せた?」
「うん。焼肉して、その匂いで?」
「はぁっ!? 焼肉っすか!?」
「うん。野営地の防御力を確認したくてさ」
「……そうっすよね。姫さんなら魔物が来ても余裕っすもんね」
「まあね」
「……姫様、もしかしてここでも焼肉、するんすか?」
「え? うん、もちろん。効率よくおびき寄せられることが分かったからね」
「「……」」
あれ? 二人とも黙っちゃった。
「どうしたの?」
「い、いえ、なんでもないっす」
「そう? じゃあスケルトンたちがお肉を捕まえてくるまでしばらく待とうか」
「へい」
こうしてあたしたちは壁の上に登り、工事の様子を眺めるのだった。
◆◇◆
それから一週間かけて魔物を誘引し続け、数えるのも面倒になるほどの魔物たちを駆除した。
このあたりにもクレセントベアは生息しており、毎日複数頭が襲ってきた。
ただ、一番数が多かったのはフォレストウルフだったかな。
他にもワイルドボア、フォレストディア、ゴブリンといったお馴染みの奴らからジャイアントラットという巨大なネズミの魔物、さらにホーンラビットという角付きのウサギまで様々な魔物の駆除を行うことができた。
ゴブリン以外の毛皮とお肉はスケルトンたちにスカーレットフォードへと運んでもらい、骨は新たなスケルトンとして活用させてもらっている。
お肉は一部を庭の氷室で保存して、残りは村人たちの胃袋に直行だ。それでも食べきれなかった分は干し肉にしてもらっている。
あ、ちなみに名前はジャイアントラットがGRで、ホーンラビットはHRにしてみたよ。これなら聞き間違いも起きなさそうだし、いい感じじゃない?
「お帰りなさ~い!」
あたしたちがスカーレットフォードに帰ってくると、村人たちが総出で出迎えてくれた。
「うん、ただいま。みんな、あたしが留守の間、変わりはない?」
「はい!」
「作付けも順調に進んでおります」
「そう、良かった」
村のみんなの元気そうな様子にあたしはホッと胸をなでおろす。
「トニー、先に送っておいた毛皮は?」
「へい。すでに下処理を始めてます」
「うん、ありがとう。使えそう?」
「一部の傷んでるのは切れ端を取ることになりやすが、それ以外は一枚で」
傷んでいるというのは、フォレストウルフとクレセントベアのスケルトンだけで倒したフォレストウルフの毛皮かな?
動きを強制的に止めていたわけじゃないし、綺麗な状態で、というわけにはいかなかったのだろう。
「そっか。わかった。じゃ、あとはよろしくね」
「へい」
続いてあたしはウィルに声を掛ける。
「ウィル」
「へい、姫さん。お帰りなせぇ」
「うん、ただいま。あのさ」
あたしは第三野営地でのことを説明した。
「それで、対策を考えたいんだけど……」
「なるほど。っつーことは、やっぱり村と同じように堀と跳ね橋しかねえんじゃねぇっすか?」
「やっぱりそっかぁ。結構な工事になるけど、やるしかないね」
「へい」
「うん、ありがと。じゃ、あたしは家に帰るよ。さすがに疲れてるし。あと、みんなも何か困ったことがあったらいつでも言いに来てね」
こうしてあたしたちは自宅へと向かうのだった。
◆◇◆
その後、街道沿いの三つの野営地の改築工事に着手した。空堀を作り、跳ね橋を架けるのだ。
工事はもちろんすべてスケルトン任せで、その間にあたしは魔物の駆除をすることにした。
ウィルにも一応確認してみたところ、やはりサイモンの言っていたとおりで、クレセントベアはかなり危険な魔物なのだという。
どれぐらい危険なのかというと、魔物退治を請け負う冒険者たちがあまり戦いたがらないくらいらしい。
そうなると商人たちは高いお金を払って強力な護衛をつける必要があり、その費用は商品価格に転嫁されてしまう。
うちはまだかなり貧しいので、商品が高くなるのは困る。
というわけで、あたしはウィルたちを連れて第一野営地にやってきた。すでにゴブリンのスケルトンが堀の掘削工事を始めている。
「ここが野営地っすか」
「ここにクレセントベアが……」
「ん? 違うよ、パトリック。クレセントベアが出たのは第三野営地だよ」
「あ、そうなんですね」
「うん、そう」
「しかし姫さん、ビッターレイってあのラズロー伯爵領なんすよね?」
「そうだよ」
するとパトリックが横から口を挟んでくる。
「ウィルさん、『あの』ってどういうことっすか?」
「ああ、それはな。ラズロー伯爵って言えば、獄炎伯爵とも呼ばれてる魔の森から王国を守る番人だ」
「そうなんすね」
「そうだぞ。ものすげぇ炎で魔物どもを薙ぎ払うらしい」
「ビッターレイに大きな街壁を築いたのもラズロー伯爵だって話だね」
「そうなんすか」
「うん。だから町の英雄なんだって。ミュリエルが、ビッターレイの町長の娘さんがそう言ってたよ」
「へぇぇぇ」
「しかし、獄炎伯爵の町の近くにクレセントベアが出たんすか?」
「出たっていうか、おびき寄せたっていうか?」
「おびき寄せた?」
「うん。焼肉して、その匂いで?」
「はぁっ!? 焼肉っすか!?」
「うん。野営地の防御力を確認したくてさ」
「……そうっすよね。姫さんなら魔物が来ても余裕っすもんね」
「まあね」
「……姫様、もしかしてここでも焼肉、するんすか?」
「え? うん、もちろん。効率よくおびき寄せられることが分かったからね」
「「……」」
あれ? 二人とも黙っちゃった。
「どうしたの?」
「い、いえ、なんでもないっす」
「そう? じゃあスケルトンたちがお肉を捕まえてくるまでしばらく待とうか」
「へい」
こうしてあたしたちは壁の上に登り、工事の様子を眺めるのだった。
◆◇◆
それから一週間かけて魔物を誘引し続け、数えるのも面倒になるほどの魔物たちを駆除した。
このあたりにもクレセントベアは生息しており、毎日複数頭が襲ってきた。
ただ、一番数が多かったのはフォレストウルフだったかな。
他にもワイルドボア、フォレストディア、ゴブリンといったお馴染みの奴らからジャイアントラットという巨大なネズミの魔物、さらにホーンラビットという角付きのウサギまで様々な魔物の駆除を行うことができた。
ゴブリン以外の毛皮とお肉はスケルトンたちにスカーレットフォードへと運んでもらい、骨は新たなスケルトンとして活用させてもらっている。
お肉は一部を庭の氷室で保存して、残りは村人たちの胃袋に直行だ。それでも食べきれなかった分は干し肉にしてもらっている。
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