追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎

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第47話 追放幼女、晩さん会に出席する

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 その日の夕方から、町長の屋敷で晩さん会が開催された。晩さん会の参加者は十数人で、うちからはあたしとマリー、そしてサイモンとアンナの四人が参加し、ラズロー伯爵側からはエドワード卿の家族と五人ほどのゲストが参加する。

 晩餐会の形式はちょっと変わっていて、あたしとエドワード卿の家族が並んでお誕生席のような場所に座り、他の人たちは立食形式だ。

 このような形式になったのは、あたしの年齢が理由だ。

 というのも、まず、今回の目的は社交だ。その場合、全員が着席しての晩さん会を行い、その後に舞踏会をするという流れが一般的なのだという。

 だがあたしはまだ九歳なので、舞踏会に参加するなどということはいくらなんでも考えられない。また、着席しての晩さん会で勝手に席を移動することは著しいマナー違反にあたるため、自由に交流するという目的を叶えつつも舞踏会でもないということで、この形となったのだそうだ。

 さて、テーブルには食べきれないほどの料理が並べられており、あたしは乾杯用に渡されたワイングラスを手に取る。

 あ、ちなみにこの世界では未成年どころか子供の飲酒も平然と行われている。あたしは飲まないけどね。

「男爵閣下、お願いします」
「ええ」

 あたしは会場をぐるりと見まわす。

「それではスカーレットフォードとラズローの発展を祈念して、乾杯」
「「「乾杯」」」

 あたしの音頭と共に皆がグラスを掲げ、あたしはそのまま着席した。するとすぐにメイドたちが給仕にやってきて、大皿に盛られた料理を次々と取り分けてくれる。

「男爵閣下」
「はい、エドワード卿」
「この度は、スケルトンをお貸しいただきありがとうございました」
「あら、もうそれは先ほどお聞きしましたわ。どうかお気になさらないで。わたくしたちとしても道がこうして早く開通できましたし、助かっていますわ」
「ですがあのスケルトン、とんでもなく優秀だと現場の者たちからの評判も良く……」
「ええ、そうでしょう。わたくしの領地でも大活躍していますわ」
「男爵閣下の領地の道もあのスケルトンたちが?」
「ええ、そうですわね」
「やはり……」
「それに畑仕事に糸つむぎに、色々やらせておりますわ」
「なんと! 畑仕事に糸つむぎですと!?」
「ええ。あまり器用さを必要とする仕事はできないけれど、それ以外であれば大抵のことはできますわ。ああ、あとあまり力は強くありませんわね」
「なんと……」

 エドワード卿は驚いているが、一方で何かを言いたげな様子だ。

「エドワード卿、どうなさいました?」
「あ、いえ……その、実は……」
「はい」
「……あのスケルトン、引き続きお貸しいただけないかと……」
「ええ、構いませんわ」
「そうですよね。やはりダメ……え?」
「ですから、構いません、と申し上げましたわ」
「ほ、本当ですか!? で、では何体ほど……」
「何体必要ですの?」
「そ、それは……出来れば十体ほどあると……」
「ええ、承りましたわ。税はこれまでのものと同じでよろしいですわね?」
「はい! もちろんです! ありがとうございます!」

 エドワード卿はそう言って喜んでいるが、ありがたいのはこちらも同じだ。お金がもらえる上に、技術まで覚えてきてくれるのだからね。

 それからしばらくエドワード卿と話していると一人の男が目の前にやってきて、何やらちらりちらりと視線を送ってきている。

 ええと、たしかこの男は記念式典にいたケインズ商会の会頭だ。スラッと背が高く、緑のロン毛を後ろで縛っており、モノクルを掛けている。その外見からは、いかにも切れ者といった印象を受ける。

「エドワード卿?」
「む? ああ、これは失礼。男爵閣下、この者はスティーブン・ケインズ準男爵、ケインズ商会の会頭です」
「まあ、商会の方ですのね。オリヴィア・エインズレイですわ」
「スティーブン・ケインズと申します。お美しい男爵閣下にお会いできて光栄でございます」
「あら、お上手ですわ。わたくしのような小娘に」
「何をおっしゃいますか。魔の森の中にある領地を立派に治めていらっしゃる男爵閣下がそのような。それに、本日の祝辞も感動いたしました。あのエインズレイ家のご出身であらせられる男爵閣下が、民のためにラズロー伯爵との関係強化をお望みになられるとは、まさに貴族の鑑と言えるでしょう」
「あら? そうかしら?」

 あたしは平静を装ってそう答えた。

 あれ? この口ぶり、もしかしてあたしの生物学上の父親はラズロー伯爵と仲が悪いのかな? それとも単に評判が悪いだけ?

「ええ。このスティーブン、感激いたしました。男爵閣下のようなお方とであれば、きっとラズローも共に歩めることでしょう」
「そう。でも、争いがないことは良いことでしょう?」
「仰るとおりです。そこで、我がケインズ商会もスカーレットフォードに商売に行きたいと考えておるのですが、いかがでしょう?」
「ええ、いつでもお越しください。ただ、まだあまり稼ぎにはならないかもしれませんわ」
「おや? それは一体どういうことでしょう?」
「スカーレットフォードはようやく動き出したばかりの領地ですもの。馬車が通れる道ができたというだけでまだまだ魔物の脅威はありますし、ケインズ商会が大きな利益を上げることは難しいかもしれませんわね」
「なるほど。ですが、我々は男爵閣下がハワード家に貸し出していらっしゃるスケルトンに興味がありまして」
「あら、そうでしたの? でも、まだそんなに手広くやるつもりはありませんわ」
「そうでしたか。承知いたしました。では必ずや、男爵閣下にご満足いただける提案をご用意して参りますよ」
「そう。楽しみにしていますわ」
「はい、どうぞご期待ください」

 スティーブンはそう言うと、一礼をして立ち去って行った。そしてそのままサイモンに話しかける。

 うーん。さすが、ラズロー伯爵領で一番の商会の会頭だね。抜け目のない感じで、油断したらこちらが足をすくわれそうだ。

「男爵閣下」
「あら、ジャック卿」

 あたしは警備責任者だったジャック卿に話しかけられ、すぐに頭を切り替えるのだった。
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