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第29話 追放幼女、買い出しに出掛ける

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 あたしは途中で寝てしまったのだけれど、村のみんなは夜遅くまで飲んで踊っていたらしい。

 あまり大したことはやってあげられなかったけど、楽しんでもらえたみたいでなんだかちょっと嬉しいかな。

 そんな収穫祭も終わり、これからは冬に向けてどんどんと気温が下がっていくのだけれど、実は今年の畑仕事がこれで終わりになるわけではない。

 というのも、これからほうれん草、じゃがいも、ビーツなどといった冬野菜の収穫が待っているし、秋まきのライ麦やニンニクなどのお世話もあるため、スケルトンたちの出番もまだまだ続く。

 とはいえあたしがお手伝いできることは特にないので、あたしにしかできないことをやろうと思う。それは買い出しだ。

 ちょっとクラリントンまで買出しに行ってこようと思う。

 だって、せっかくスケルトンの数が増えたのはいいんだけど、なんか道具が足りなくて、石製のものを使っているらしいんだよね。それはいくらなんでも大変すぎるよね?

「マリー」
「はい、なんでしょうか?」
「やっぱりクラリントンに行こうと思う」
「……どうなさったんですか? 道を作ると仰っていませんでしたか?」
「うん。だけど、やっぱりよく考えたらクラリントンで買ったほうが早いかなって。それに道を作るにしても、ちゃんと鉄製のシャベルとかがあったほうがスケルトンたちも仕事がしやすいんじゃないかなって」
「それはそうですが……」
「というわけで、毛皮を持ってクラリントンに売りに行こうよ。あたしなら貴族特権でフリーで入れるだろうしさ」
「……はい」
「で、マリーにも一緒に来て欲しくって、あとは誰を連れて行ったらいいと思う?」
「そうですね。毛皮でしたら毛皮職人のトニーと、道具を買うのでしたら木工職人のハロルドでしょうか?」
「そうだね」
「あとは護衛ですが……」
「元盗賊じゃないとなると……誰かいたっけ?」
「たしか一人いたはずです。自警団で昔のゴブリンの襲撃を生き延びた者が。名前は……ええと……パトリック、だったと思います。とても若い男のはずです」
「そうなんだ。じゃあ、その彼にお願いしようかな」

 こうしてあたしたちはクラリントンへと向かうことにしたのだった。

◆◇◆

 三日後、あたしたちはクラリントンへと向けて出発するため中央広場に集まった。予定しているメンバーに加え、ゴブリンのスケルトンを三体連れてきている。

「それじゃあみんな、よろしくね」
「はい! 任せてください! 姫様! 俺! 頑張るっす!」

 そう鼻息荒く返事をしてくれたのがパトリックだ。彼はスカーレットフォード生まれの十六歳で、まだあどけなさの残る少年だ。しかしその顔に大きな傷痕がある。これはあたしたちが来る前にゴブリンにやられた傷なのだという。

「うん。期待してるよ」
「はいっ!」
「トニーとハロルドもね」
「へい」
「はい」

 トニーとハロルドも緊張した面持ちでうなずいた。

 あたしはマリーと荷車に乗り込む。

「じゃあ、行こうか」
「はい!」

 パトリックは大きな声でそう返事をしたのだが……。

 モォー!

 荷車をく牛がのんびりとした鳴き声を上げた。

「ぷっ」
「あはは」

 緊張した空気が一気にゆるむ。

「なんだかこの子、あたしたちにそんなに緊張するなって言ってくれたみたいだね」
「ははは、そうっすね」

 パトリックも表情を緩め、牛に前に進むように合図を出した。すると牛はゆっくりと歩きだす。

 こうしてあたしたちはクラリントンへと向けて出発するのだった。

◆◇◆

 途中で何度か魔物に襲われたものの、あたしたちは五日掛けてクラリントンの町が見える場所までやってきた。スカーレットフォードに来るときは馬車で二日の道のりだったので、牛と荷車という組み合わせはやはり時間が掛かってしまう。

「姫様! すごいっすね! あれがクラリントン! あんな高い石壁があるなんて!」

 パトリックは初めて見るスカーレットフォード以外の町に興奮している様子だ。

「うん。魔の森の魔物たちから住民を守るためだね」
「そうなんすね!」
「そのうちスカーレットフォードもああするから」
「ホントっすか!?」
「うん」

 そんな会話をしつつ、あたしたちはぐるりと町の南側にある正門へと向かう。どんな目で見られるか分からないので、スケルトンは森の中に隠している。

 ええと、貴族用の門は……ああ、あっちだね。

「パトリック、あそこの列のないほうの門に向かって」
「はい!」

 あたしたちは行列を尻目に、貴族専用の門へと向かった。すると……。

「おい! ここは貴族のお方専用だ! 平民はあっちに並べ!」

 牛がく荷車にメイド服を着た女性と、シルクの服を着てはいるもののヴェールで髪を隠した怪しい八歳児が乗っていて、さらに付き人の男たちはどう見ても農民なのだ。当然といえば当然かもしれないが、門番の男たちがあたしたちを追い払いにかかる。

「こちらのお嬢様はスカーレットフォード男爵オリヴィア様です! お前は国王陛下より爵位を賜ったスカーレットフォード男爵は貴族ではないとでもいうつもりか!」
「「えっ!?」」

 すぐさまマリーが血相を変えて抗議すると、門番たちは困惑した表情を浮かべる。

「ごきげんよう。わたくしはスカーレットフォード男爵オリヴィアですわ。どうかこちらをご覧になって」

 あたしは出来る限りお淑やかなお嬢様口調で、爵位の証明書を見せた。すると門番たちはいぶかしんだ様子ではあるものの、それを確認する。

「……はぁ。これは……本物……?」
「本物っぽいな……」
「通さないと問題だよなぁ?」
「不敬罪……だよなぁ?」
「……ま、まぁ、通すか」
「は! 確認いたしました! スカーレットフォード男爵閣下! 大変失礼いたしました!」

 門番たちはそう言って門を開いた。あたしは証明書を返してもらい、にっこりと微笑む。

 こうしてあたしたちはクラリントンの町へと入るのだった。
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