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第18話 追放幼女、スケルトンを少し理解する
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それからゴブリンスケルトンたちを呼び戻し、伐採した木を村の中に運び込ませた。
大勢の黒いスケルトンたちが協力し、整然と原木を運び込む光景になんとも言えない複雑な感情が過る。
ただ、そんな光景を見ていて気が付いたことがある。それは、ゴブリンのスケルトンたちは想像していたよりも力が弱いということだ。
というのも、一本の原木を運ぶのに十体以上のスケルトンが協力して運んでいるのだ。
なんか、イメージ的にはもっと力がありそうな感じだったんだけどなぁ。木の壁を破ったくらいだし。
あ、でもこんなものなのかな? 頭がいいから斧とかでなんども同じ場所を叩くなんてこともしそうだし。
うーん、わかんないや。
「ねぇ、やっぱりこれだともっと数を増やさないとダメかな?」
「えっ? まだ増やすんですか!?」
「もちろん。労働力にもなるし、魔物が襲ってきたときの戦力にもなるでしょ?」
「あ、はい。そうですね」
マイクは何やら複雑な表情をしている。
「あれ? どうしたの?」
「いえ……その、こいつらが元々ゴブリンだったって思うと……」
「あ、そっか。そうかもね。でも大丈夫だよ。これはただの骨で、みんなを襲ったゴブリンの魂は残ってないからさ」
「……はい。そうですよね。分かってはいるんですけど……」
「気持ちは分かるけど、あたしはみんなが傷つくほうが嫌かな。だからスケルトンでなんとかなるんならスケルトンでなんとかするほうを選ぶよ」
「……はい」
マイクは複雑な表情のまま、そう言って頷いたのだった。
◆◇◆
その後、あたしたちは伐採の終わった範囲を見て回った。
「うーん、なんか、門から近いところにある木を適当に伐採してる感じだね」
「はい。そうですね」
「これだとあんまり良くないんだよね?」
「はい。魔物や野生動物を遠ざけるには、身を隠す場所をなくすことが大事です。なので、村の壁に近づきにくいように伐採して、下草を刈らないとダメです」
「そうだよね」
あたしは改めてゴブリンスケルトンたちに指示を出す。
「伐採は継続して。ただ、伐採する優先順位は村の壁に近い木からにして。それと、伐採したら下草も一緒に刈っておくこと」
カランカランコロン。
骨が擦れ合う音が聞こえる。それが返事なのかどうかは分からないけれど、多分上手くやってくれるはずだ。
「それじゃあ、仕事に戻って」
カランコロンカランコロン。
スケルトンたちはあたしの指示どおり村の壁沿いを歩いて行った。そしてそのまま伐採することなく、壁の裏へと消えていく。
それから少しして、コーン、コーンと伐採を始めた音が聞こえてくる。
「うん。大丈夫そうだね」
「はい」
「じゃあ、あたしはスケルトンづくりに戻るよ」
「はい」
こうしてあたしは村の中へと戻るのだった。
◆◇◆
あたしは燃やしたゴブリンの死体が集められた場所にやってきた。
今日はゴブリンメイジのスケルトンづくりに挑戦してみようと思う。
というのも、スケルトンは生前の能力や特性をある程度受け継ぐからだ。そこには魔法などの特殊能力も含まれる。
その証拠に、まほイケで悪役令嬢オリヴィアが使役していたスケルトンの中には魔法を使う個体もいたからだ。
いくらノーコンだったとはいえ、あんな強い魔法が使えるスケルトンがいればきっと村の守りに役立つはずだ。
というわけで、あたしはさっそくスケルトン生成の魔法を発動した。
あのときのゴブリンメイジから、魔法を使うスケルトンをイメージして……うっ!?
ものすごい勢いで魔力が無くなっていく。
あ、あれ!? まずい! このままじゃ魔力が!
慌てて止めようとしたが、一度発動したスケルトン生成の魔法は簡単には止まらない。
目の前がかすんできて……あ……意識が……。
あたしはがっくりと膝をついた。
う……もう……。
あたしはそのまま意識を手放したのだった。
◆◇◆
……あれ?
硬くて冷たい感触が頬から伝わってくる。
ええっと、あたし、何してたんだっけ?
っ!?
そうだ! あたし、ゴブリンメイジのスケルトンを作ろうとして……あれ? それでどうなったんだっけ?
慌てて起き上がろうとしたが、どうにも体に力が入らない。
ああ、しまった。これは魔力切れになったときの症状だ。
そうか。あたし、ゴブリンメイジのスケルトン作りに失敗したんだ。
力を振り絞り、四つん這いになる。そして気合で立ち上がろうとしたが、そのまま尻もちをついてしまった。
ダメ。もう、力が入らない。
誰かに迎えに来てもらわないと……あれ?
ふと目の端に、普通のゴブリンの十分の一くらいの大きさの小さなスケルトンが所在無げに立っているのが目に入った。
えっと、何あれ? あんなの、作った覚えはないんだけど……。
でも黒いし、あたしの作ったスケルトンだよね?
「こっちに歩いてきなさい」
カランコロンカランコロン。
ミニスケルトンはあたしの命令に従って歩いてきた。
うん。あたしのだ。近くまで来ると、たしかにあたしの魔力を感じる。
もしかして、魔力が足りなくてミニサイズで出来ちゃったってこと?
「えっと、空に向かって爆発魔法を放って」
カランコロン。
ミニスケルトンが手を上に掲げると、米粒ほどの小さな光の玉が上空に発生した。それはゴブリンメイジがやっていたように徐々に大きくなるが、ピンポン玉くらいの大きさになったところでミニスケルトンはそれを空に向かって放った。
ポン!
小さな音と共にそれは爆発した。
あっ……そっか。あたしの魔力が足りないからミニスケルトンも魔力が足りなくて、あのときみたいに強力な魔法は使えないんだ。
うーん。よく分からないけど、もしかして自分よりも強い魔物はスケルトンにできないってことかな?
あれ? でも強さだけだったらワイルドボアとか、絶対にあたしより強いよね?
ということは、魔力の強さかな? スケルトンは魔力で動いているわけだし、あたしより魔力の強い魔物は難しいのかもね。
「じゃあ、って、あれ?」
ミニスケルトンはその場に崩れ落ち、サラサラと砂のようになって消えてしまった。
スケルトンは魔力を使い切るとああして消えてしまうのだけれど、どうやらあの一発だけで魔力をすべて使い切ってしまったようだ。
こうなっては、もう二度とスケルトンにすることはできない。
……仕方ないね。ゴブリンメイジの骨はもったいなかったけど、まほイケでは語られなかったこともわかったのは収穫かな。
こういうのはもっと魔力を高めてから挑戦しようっと。
大勢の黒いスケルトンたちが協力し、整然と原木を運び込む光景になんとも言えない複雑な感情が過る。
ただ、そんな光景を見ていて気が付いたことがある。それは、ゴブリンのスケルトンたちは想像していたよりも力が弱いということだ。
というのも、一本の原木を運ぶのに十体以上のスケルトンが協力して運んでいるのだ。
なんか、イメージ的にはもっと力がありそうな感じだったんだけどなぁ。木の壁を破ったくらいだし。
あ、でもこんなものなのかな? 頭がいいから斧とかでなんども同じ場所を叩くなんてこともしそうだし。
うーん、わかんないや。
「ねぇ、やっぱりこれだともっと数を増やさないとダメかな?」
「えっ? まだ増やすんですか!?」
「もちろん。労働力にもなるし、魔物が襲ってきたときの戦力にもなるでしょ?」
「あ、はい。そうですね」
マイクは何やら複雑な表情をしている。
「あれ? どうしたの?」
「いえ……その、こいつらが元々ゴブリンだったって思うと……」
「あ、そっか。そうかもね。でも大丈夫だよ。これはただの骨で、みんなを襲ったゴブリンの魂は残ってないからさ」
「……はい。そうですよね。分かってはいるんですけど……」
「気持ちは分かるけど、あたしはみんなが傷つくほうが嫌かな。だからスケルトンでなんとかなるんならスケルトンでなんとかするほうを選ぶよ」
「……はい」
マイクは複雑な表情のまま、そう言って頷いたのだった。
◆◇◆
その後、あたしたちは伐採の終わった範囲を見て回った。
「うーん、なんか、門から近いところにある木を適当に伐採してる感じだね」
「はい。そうですね」
「これだとあんまり良くないんだよね?」
「はい。魔物や野生動物を遠ざけるには、身を隠す場所をなくすことが大事です。なので、村の壁に近づきにくいように伐採して、下草を刈らないとダメです」
「そうだよね」
あたしは改めてゴブリンスケルトンたちに指示を出す。
「伐採は継続して。ただ、伐採する優先順位は村の壁に近い木からにして。それと、伐採したら下草も一緒に刈っておくこと」
カランカランコロン。
骨が擦れ合う音が聞こえる。それが返事なのかどうかは分からないけれど、多分上手くやってくれるはずだ。
「それじゃあ、仕事に戻って」
カランコロンカランコロン。
スケルトンたちはあたしの指示どおり村の壁沿いを歩いて行った。そしてそのまま伐採することなく、壁の裏へと消えていく。
それから少しして、コーン、コーンと伐採を始めた音が聞こえてくる。
「うん。大丈夫そうだね」
「はい」
「じゃあ、あたしはスケルトンづくりに戻るよ」
「はい」
こうしてあたしは村の中へと戻るのだった。
◆◇◆
あたしは燃やしたゴブリンの死体が集められた場所にやってきた。
今日はゴブリンメイジのスケルトンづくりに挑戦してみようと思う。
というのも、スケルトンは生前の能力や特性をある程度受け継ぐからだ。そこには魔法などの特殊能力も含まれる。
その証拠に、まほイケで悪役令嬢オリヴィアが使役していたスケルトンの中には魔法を使う個体もいたからだ。
いくらノーコンだったとはいえ、あんな強い魔法が使えるスケルトンがいればきっと村の守りに役立つはずだ。
というわけで、あたしはさっそくスケルトン生成の魔法を発動した。
あのときのゴブリンメイジから、魔法を使うスケルトンをイメージして……うっ!?
ものすごい勢いで魔力が無くなっていく。
あ、あれ!? まずい! このままじゃ魔力が!
慌てて止めようとしたが、一度発動したスケルトン生成の魔法は簡単には止まらない。
目の前がかすんできて……あ……意識が……。
あたしはがっくりと膝をついた。
う……もう……。
あたしはそのまま意識を手放したのだった。
◆◇◆
……あれ?
硬くて冷たい感触が頬から伝わってくる。
ええっと、あたし、何してたんだっけ?
っ!?
そうだ! あたし、ゴブリンメイジのスケルトンを作ろうとして……あれ? それでどうなったんだっけ?
慌てて起き上がろうとしたが、どうにも体に力が入らない。
ああ、しまった。これは魔力切れになったときの症状だ。
そうか。あたし、ゴブリンメイジのスケルトン作りに失敗したんだ。
力を振り絞り、四つん這いになる。そして気合で立ち上がろうとしたが、そのまま尻もちをついてしまった。
ダメ。もう、力が入らない。
誰かに迎えに来てもらわないと……あれ?
ふと目の端に、普通のゴブリンの十分の一くらいの大きさの小さなスケルトンが所在無げに立っているのが目に入った。
えっと、何あれ? あんなの、作った覚えはないんだけど……。
でも黒いし、あたしの作ったスケルトンだよね?
「こっちに歩いてきなさい」
カランコロンカランコロン。
ミニスケルトンはあたしの命令に従って歩いてきた。
うん。あたしのだ。近くまで来ると、たしかにあたしの魔力を感じる。
もしかして、魔力が足りなくてミニサイズで出来ちゃったってこと?
「えっと、空に向かって爆発魔法を放って」
カランコロン。
ミニスケルトンが手を上に掲げると、米粒ほどの小さな光の玉が上空に発生した。それはゴブリンメイジがやっていたように徐々に大きくなるが、ピンポン玉くらいの大きさになったところでミニスケルトンはそれを空に向かって放った。
ポン!
小さな音と共にそれは爆発した。
あっ……そっか。あたしの魔力が足りないからミニスケルトンも魔力が足りなくて、あのときみたいに強力な魔法は使えないんだ。
うーん。よく分からないけど、もしかして自分よりも強い魔物はスケルトンにできないってことかな?
あれ? でも強さだけだったらワイルドボアとか、絶対にあたしより強いよね?
ということは、魔力の強さかな? スケルトンは魔力で動いているわけだし、あたしより魔力の強い魔物は難しいのかもね。
「じゃあ、って、あれ?」
ミニスケルトンはその場に崩れ落ち、サラサラと砂のようになって消えてしまった。
スケルトンは魔力を使い切るとああして消えてしまうのだけれど、どうやらあの一発だけで魔力をすべて使い切ってしまったようだ。
こうなっては、もう二度とスケルトンにすることはできない。
……仕方ないね。ゴブリンメイジの骨はもったいなかったけど、まほイケでは語られなかったこともわかったのは収穫かな。
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