追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎

文字の大きさ
上 下
10 / 118

第10話 追放幼女、ゴブリンと戦う

しおりを挟む
「いけません! お嬢様がゴブリンと戦うだなんて!」
「え? 戦うのはあたしじゃないよ。実際にゴブリンを倒すのはウィルたちで、あたしがやるのは動きを止めるだけ」
「同じです!」
「そうっすよ! ゴブリンはそれなりに知能があるっす。危ないっす!」
「じゃあ、どうするの?」
「迎え撃つっす」
「でも、今の壁じゃ防げないんでしょ?」
「そうなんすけど……」
「じゃあ、壁は当てにしないほうがいいんじゃない?」
「それは……」
「ならこっちから攻めたほうが良くない?」
「……」
「じゃあ、決まりだね。まずは巣穴の場所を探さないと……」

◆◇◆

 あれからもマリーとウィルには反対されたが、結局他にいい作戦がないということで、あたしはウィルたち自警団のみんなと一緒にゴブリンの目撃現場にやってきた。

「ゴブリンはどこで見かけたの?」
「へい。あっちっす。あそこの草むらに……げっ!?」

 ウィルは草むらを指さしたのだが、なんとその向こうに緑色をした気持ち悪い二足歩行の生物が三匹いた。手には石を木の棒に括りつけた斧のような道具を持っている。

「ゴブリン!」
「ゲギャッ!?」
「ギャギャギャ!」
「ギギギ」
「ギギーッ! ギギーッ!」

 あれ? 三匹じゃない! なんだか奥からわらわら出てくる!

 うわぁ……本当に気持ち悪い。なんなの? この見るだけで沸き上がってくる生理的嫌悪感は!

「ひ、姫さん!」
「あの数はヤバいっすよ!」
「逃げましょう!」

 ウィルたちも気持ち悪いようで、かなり腰が引けている。

 けどさ。逃げたって意味ないでしょ? こんなにいるってことは仲間を連れてきたってことだろうし、放っておいたらスカーレットフォードに来るのも時間の問題だよね?

「ウィル! しっかりしてよ!」

 ウィルを一喝した。するとウィルはビクンとなり、申し訳なさそうにあたしのほうを見てくる。

「ゲギャギャギャ!」
「ギャギャー!」

 わらわらと出てきたゴブリンたちはあっという間にあたしたちを取り囲むと、なんと石を拾って投げつけてきた。

 こいつら!

 あたしはすぐさまゴブリンたちの魂を縛り付けた。

「ギャッ!?」
「ギギャッ!?」
「ギ、ギギギ……」

 突然動けなくなったゴブリンたちは慌てふためき、なんとか逃れようと抵抗する。

 う……さすがにこの数の魔物の魂を縛り続けるのはちょっと負担が……。

「ウィル! みんなも早く! ゴブリンを倒して!」
「っ!? へ、へい!」
「うおおおお!」

 ようやく動き出したウィルたちは動けないゴブリンを一匹、また一匹と駆除し、五分ほどですべてのゴブリンを倒し終えた。

「うー、気持ちわりぃ」
「なんでこんな気持ち悪いんすかね? ゴブリンってやつは」

 あたしもそれには同感。緑の肌っていうのも気持ち悪いし、何よりニチャァって笑ってるみたいな顔が本当に嫌。

「あの、姫さん」
「何?」
「一応聞きやすけど……」

 なんだか妙に歯切れが悪い。

「だから何?」
「その……食います?」
「えっ? 何を?」
「……ゴブリンっす」
「えっ? ソレ、食べられるの?」

 なんか、すでに変な臭いがしてるんだけど?

「まあ、一応、食っても死にはしないらしいんすけど……こう、ものすごく臭くてまずいらしいっす」
「ウィルたちは食べたことあるの?」
「ないっすよ。いくら俺らが盗賊やってたからって、さすがにゴブリンを食うほど落ちぶれちゃいねえっすよ」
「なら聞かないでよ。あたしだって気持ち悪いんだから」
「そうっすよね。じゃあ、埋めて処分しやすか」
「そっか。埋めるのかぁ」
「あれ? 姫さん、なんかあるんすか?」
「うん。骨は使えるかなって」
「えっ? もしかして、こいつもアレにするんすか?」
「うん。ワイルドボアよりも手先が器用そうだし……」
「あー、そうっすね。じゃあ、解体っすか? 気乗りしないっすけど……」
「じゃあ、燃やしたらどうかな? なんとかならない?」
「なるほど。やってみやすか」

 するとウィルたちはなぜか石を積み始めた。

「何してるの?」
「窯を作ってるんすよ。こうしたほうがさっさと焼けるんす」
「へぇ、そうなんだ」

 ウィルたちは石と土であっという間に窯を作ると、そこに枯れ木やらを入れていく。そして器用に火打石で火をつけ、そこにゴブリンの死体を放り込んだのだった。

◆◇◆

 翌日、あたしたちは再びゴブリンの死体を焼却した窯のところへとやってきた。窯の中ではまだ炭が赤々と燃えているほか、原型を留めていない焼け焦げた黒い塊が入っている。

「姫さん、これでも作れるんですかい?」
「うん。試してみるね。一つ取り出して」
「へい」

 ウィルが黒い塊を一つ、取り出してあたしの前に置いた。

 よし、じゃあやってみますか。

 あたしは完成したスケルトンの形をイメージし、魔力を解放した。いつものようにどす黒く、禍々しい魔力が黒い塊を包み込む。

 うーん、できるかな? ……あ、できそうだね。

 やがて黒い塊の表面に亀裂が入り、中から黒く染まった骨だけが出てきた。

「あ、できた。ゴブリンの骨もちゃんとスケルトンにできるね」
「はぇ~、これがあのゴブリンっすか」
「姫様、これならあんまり気持ち悪くないですね」
「うん。そうだね」

 黒いスケルトンなのでちょっと不気味ではあるけれど、これならば生理的嫌悪感は催さない。

「じゃあ、お前はG-1ね。G-1、残りのゴブリンの死体を窯から取り出して」

 カランコロン。

 G-1は無言で窯へと向かい、その中から炭の塊を次々と取り出していく。

 あれ? ゴブリンのスケルトン、もしかしてものすごく優秀なんじゃ?
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

処理中です...