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第10話 追放幼女、ゴブリンと戦う
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「いけません! お嬢様がゴブリンと戦うだなんて!」
「え? 戦うのはあたしじゃないよ。実際にゴブリンを倒すのはウィルたちで、あたしがやるのは動きを止めるだけ」
「同じです!」
「そうっすよ! ゴブリンはそれなりに知能があるっす。危ないっす!」
「じゃあ、どうするの?」
「迎え撃つっす」
「でも、今の壁じゃ防げないんでしょ?」
「そうなんすけど……」
「じゃあ、壁は当てにしないほうがいいんじゃない?」
「それは……」
「ならこっちから攻めたほうが良くない?」
「……」
「じゃあ、決まりだね。まずは巣穴の場所を探さないと……」
◆◇◆
あれからもマリーとウィルには反対されたが、結局他にいい作戦がないということで、あたしはウィルたち自警団のみんなと一緒にゴブリンの目撃現場にやってきた。
「ゴブリンはどこで見かけたの?」
「へい。あっちっす。あそこの草むらに……げっ!?」
ウィルは草むらを指さしたのだが、なんとその向こうに緑色をした気持ち悪い二足歩行の生物が三匹いた。手には石を木の棒に括りつけた斧のような道具を持っている。
「ゴブリン!」
「ゲギャッ!?」
「ギャギャギャ!」
「ギギギ」
「ギギーッ! ギギーッ!」
あれ? 三匹じゃない! なんだか奥からわらわら出てくる!
うわぁ……本当に気持ち悪い。なんなの? この見るだけで沸き上がってくる生理的嫌悪感は!
「ひ、姫さん!」
「あの数はヤバいっすよ!」
「逃げましょう!」
ウィルたちも気持ち悪いようで、かなり腰が引けている。
けどさ。逃げたって意味ないでしょ? こんなにいるってことは仲間を連れてきたってことだろうし、放っておいたらスカーレットフォードに来るのも時間の問題だよね?
「ウィル! しっかりしてよ!」
ウィルを一喝した。するとウィルはビクンとなり、申し訳なさそうにあたしのほうを見てくる。
「ゲギャギャギャ!」
「ギャギャー!」
わらわらと出てきたゴブリンたちはあっという間にあたしたちを取り囲むと、なんと石を拾って投げつけてきた。
こいつら!
あたしはすぐさまゴブリンたちの魂を縛り付けた。
「ギャッ!?」
「ギギャッ!?」
「ギ、ギギギ……」
突然動けなくなったゴブリンたちは慌てふためき、なんとか逃れようと抵抗する。
う……さすがにこの数の魔物の魂を縛り続けるのはちょっと負担が……。
「ウィル! みんなも早く! ゴブリンを倒して!」
「っ!? へ、へい!」
「うおおおお!」
ようやく動き出したウィルたちは動けないゴブリンを一匹、また一匹と駆除し、五分ほどですべてのゴブリンを倒し終えた。
「うー、気持ち悪ぃ」
「なんでこんな気持ち悪いんすかね? ゴブリンってやつは」
あたしもそれには同感。緑の肌っていうのも気持ち悪いし、何よりニチャァって笑ってるみたいな顔が本当に嫌。
「あの、姫さん」
「何?」
「一応聞きやすけど……」
なんだか妙に歯切れが悪い。
「だから何?」
「その……食います?」
「えっ? 何を?」
「……ゴブリンっす」
「えっ? ソレ、食べられるの?」
なんか、すでに変な臭いがしてるんだけど?
「まあ、一応、食っても死にはしないらしいんすけど……こう、ものすごく臭くてまずいらしいっす」
「ウィルたちは食べたことあるの?」
「ないっすよ。いくら俺らが盗賊やってたからって、さすがにゴブリンを食うほど落ちぶれちゃいねえっすよ」
「なら聞かないでよ。あたしだって気持ち悪いんだから」
「そうっすよね。じゃあ、埋めて処分しやすか」
「そっか。埋めるのかぁ」
「あれ? 姫さん、なんかあるんすか?」
「うん。骨は使えるかなって」
「えっ? もしかして、こいつもアレにするんすか?」
「うん。ワイルドボアよりも手先が器用そうだし……」
「あー、そうっすね。じゃあ、解体っすか? 気乗りしないっすけど……」
「じゃあ、燃やしたらどうかな? なんとかならない?」
「なるほど。やってみやすか」
するとウィルたちはなぜか石を積み始めた。
「何してるの?」
「窯を作ってるんすよ。こうしたほうがさっさと焼けるんす」
「へぇ、そうなんだ」
ウィルたちは石と土であっという間に窯を作ると、そこに枯れ木やらを入れていく。そして器用に火打石で火をつけ、そこにゴブリンの死体を放り込んだのだった。
◆◇◆
翌日、あたしたちは再びゴブリンの死体を焼却した窯のところへとやってきた。窯の中ではまだ炭が赤々と燃えているほか、原型を留めていない焼け焦げた黒い塊が入っている。
「姫さん、これでも作れるんですかい?」
「うん。試してみるね。一つ取り出して」
「へい」
ウィルが黒い塊を一つ、取り出してあたしの前に置いた。
よし、じゃあやってみますか。
あたしは完成したスケルトンの形をイメージし、魔力を解放した。いつものようにどす黒く、禍々しい魔力が黒い塊を包み込む。
うーん、できるかな? ……あ、できそうだね。
やがて黒い塊の表面に亀裂が入り、中から黒く染まった骨だけが出てきた。
「あ、できた。ゴブリンの骨もちゃんとスケルトンにできるね」
「はぇ~、これがあのゴブリンっすか」
「姫様、これならあんまり気持ち悪くないですね」
「うん。そうだね」
黒いスケルトンなのでちょっと不気味ではあるけれど、これならば生理的嫌悪感は催さない。
「じゃあ、お前はG-1ね。G-1、残りのゴブリンの死体を窯から取り出して」
カランコロン。
G-1は無言で窯へと向かい、その中から炭の塊を次々と取り出していく。
あれ? ゴブリンのスケルトン、もしかしてものすごく優秀なんじゃ?
「え? 戦うのはあたしじゃないよ。実際にゴブリンを倒すのはウィルたちで、あたしがやるのは動きを止めるだけ」
「同じです!」
「そうっすよ! ゴブリンはそれなりに知能があるっす。危ないっす!」
「じゃあ、どうするの?」
「迎え撃つっす」
「でも、今の壁じゃ防げないんでしょ?」
「そうなんすけど……」
「じゃあ、壁は当てにしないほうがいいんじゃない?」
「それは……」
「ならこっちから攻めたほうが良くない?」
「……」
「じゃあ、決まりだね。まずは巣穴の場所を探さないと……」
◆◇◆
あれからもマリーとウィルには反対されたが、結局他にいい作戦がないということで、あたしはウィルたち自警団のみんなと一緒にゴブリンの目撃現場にやってきた。
「ゴブリンはどこで見かけたの?」
「へい。あっちっす。あそこの草むらに……げっ!?」
ウィルは草むらを指さしたのだが、なんとその向こうに緑色をした気持ち悪い二足歩行の生物が三匹いた。手には石を木の棒に括りつけた斧のような道具を持っている。
「ゴブリン!」
「ゲギャッ!?」
「ギャギャギャ!」
「ギギギ」
「ギギーッ! ギギーッ!」
あれ? 三匹じゃない! なんだか奥からわらわら出てくる!
うわぁ……本当に気持ち悪い。なんなの? この見るだけで沸き上がってくる生理的嫌悪感は!
「ひ、姫さん!」
「あの数はヤバいっすよ!」
「逃げましょう!」
ウィルたちも気持ち悪いようで、かなり腰が引けている。
けどさ。逃げたって意味ないでしょ? こんなにいるってことは仲間を連れてきたってことだろうし、放っておいたらスカーレットフォードに来るのも時間の問題だよね?
「ウィル! しっかりしてよ!」
ウィルを一喝した。するとウィルはビクンとなり、申し訳なさそうにあたしのほうを見てくる。
「ゲギャギャギャ!」
「ギャギャー!」
わらわらと出てきたゴブリンたちはあっという間にあたしたちを取り囲むと、なんと石を拾って投げつけてきた。
こいつら!
あたしはすぐさまゴブリンたちの魂を縛り付けた。
「ギャッ!?」
「ギギャッ!?」
「ギ、ギギギ……」
突然動けなくなったゴブリンたちは慌てふためき、なんとか逃れようと抵抗する。
う……さすがにこの数の魔物の魂を縛り続けるのはちょっと負担が……。
「ウィル! みんなも早く! ゴブリンを倒して!」
「っ!? へ、へい!」
「うおおおお!」
ようやく動き出したウィルたちは動けないゴブリンを一匹、また一匹と駆除し、五分ほどですべてのゴブリンを倒し終えた。
「うー、気持ち悪ぃ」
「なんでこんな気持ち悪いんすかね? ゴブリンってやつは」
あたしもそれには同感。緑の肌っていうのも気持ち悪いし、何よりニチャァって笑ってるみたいな顔が本当に嫌。
「あの、姫さん」
「何?」
「一応聞きやすけど……」
なんだか妙に歯切れが悪い。
「だから何?」
「その……食います?」
「えっ? 何を?」
「……ゴブリンっす」
「えっ? ソレ、食べられるの?」
なんか、すでに変な臭いがしてるんだけど?
「まあ、一応、食っても死にはしないらしいんすけど……こう、ものすごく臭くてまずいらしいっす」
「ウィルたちは食べたことあるの?」
「ないっすよ。いくら俺らが盗賊やってたからって、さすがにゴブリンを食うほど落ちぶれちゃいねえっすよ」
「なら聞かないでよ。あたしだって気持ち悪いんだから」
「そうっすよね。じゃあ、埋めて処分しやすか」
「そっか。埋めるのかぁ」
「あれ? 姫さん、なんかあるんすか?」
「うん。骨は使えるかなって」
「えっ? もしかして、こいつもアレにするんすか?」
「うん。ワイルドボアよりも手先が器用そうだし……」
「あー、そうっすね。じゃあ、解体っすか? 気乗りしないっすけど……」
「じゃあ、燃やしたらどうかな? なんとかならない?」
「なるほど。やってみやすか」
するとウィルたちはなぜか石を積み始めた。
「何してるの?」
「窯を作ってるんすよ。こうしたほうがさっさと焼けるんす」
「へぇ、そうなんだ」
ウィルたちは石と土であっという間に窯を作ると、そこに枯れ木やらを入れていく。そして器用に火打石で火をつけ、そこにゴブリンの死体を放り込んだのだった。
◆◇◆
翌日、あたしたちは再びゴブリンの死体を焼却した窯のところへとやってきた。窯の中ではまだ炭が赤々と燃えているほか、原型を留めていない焼け焦げた黒い塊が入っている。
「姫さん、これでも作れるんですかい?」
「うん。試してみるね。一つ取り出して」
「へい」
ウィルが黒い塊を一つ、取り出してあたしの前に置いた。
よし、じゃあやってみますか。
あたしは完成したスケルトンの形をイメージし、魔力を解放した。いつものようにどす黒く、禍々しい魔力が黒い塊を包み込む。
うーん、できるかな? ……あ、できそうだね。
やがて黒い塊の表面に亀裂が入り、中から黒く染まった骨だけが出てきた。
「あ、できた。ゴブリンの骨もちゃんとスケルトンにできるね」
「はぇ~、これがあのゴブリンっすか」
「姫様、これならあんまり気持ち悪くないですね」
「うん。そうだね」
黒いスケルトンなのでちょっと不気味ではあるけれど、これならば生理的嫌悪感は催さない。
「じゃあ、お前はG-1ね。G-1、残りのゴブリンの死体を窯から取り出して」
カランコロン。
G-1は無言で窯へと向かい、その中から炭の塊を次々と取り出していく。
あれ? ゴブリンのスケルトン、もしかしてものすごく優秀なんじゃ?
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