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#1 The doors of perception 〜知覚の扉ならまだ良かったが近くの扉がヤバかった(2)
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月曜日、代々木。音楽専門学校「ジュース音楽院」内にある練習スタジオ。Back Door Menの4人が、週末に行われる月1回の学内定例ライブに向けてリハを重ねていた。
貴明と透矢はここの同級生でもあり、バンドは彼らを中心に結成された学内バンドだ。出会いは授業の一環だが、思いがけなくレベルが高く気の合うメンバーが揃ったため、今はインディーズ活動をしながらメジャーを目指している。
Back Door Men are
ギター&ヴォーカル=香取透矢(favorites:ランディ・ローズ、テレンス・トレント・ダービー)
キーボード&ヴォーカル=剣崎貴明(favorites:プリンス、レイ・マンザレク)
ベース=富樫達哉(favorites:ポール・マッカートニー、フリー)
ドラム=松尾純一(favorites:スチュワート・コープランド、レニ)
スタジオ内にはメンバー4人のほか、透矢目当ての数人の女子学生がいるのが日常。中でもうっとりと透矢のギターに聴き入る、頭抜けて華のある女の子が高木紗英だ。自らも学内バンド「Unhappy Girls」でヴォーカルを務める、貴明達の同級生である。
女子だけで構成されるこのバンドは、デビー・ハリーとパッツィ・ケンジットに心酔する紗英の際どい衣装…つまりは小悪魔的なエロさで注目の存在。さらにドラムの藤原理恵は長身巨乳のグラマラスな女王様キャラで、一部にコアな支持層がいる。
「あんたたちー!紗英と一緒にいきたいでしょー!」
「ほーっほっほ!あたくしに跪きなさい愚民ども!」
とまあ、いろいろスレスレだが煽り上手なパフォーマンスで、バンドの人気は上昇中だ。元々紗英は、学内一の美人として絶大な人気を誇る存在。それが外部にも知られてきて、最近のライブには紗英と理恵を見るために、レコード会社のみならず芸能事務所の関係者が足を運ぶようになっていた。
「芸プロ邪魔くせえ。レコ社が来ないと意味ないのによー」
「まあそう言うな貴明。紗英ちゃんくらい可愛ければ周囲がほっとかないさ。それに同級生がアイドルになるのも嬉しいだろ」
「アイドル?いや紗英の歌はロックで上手すぎるから可愛くはないだろ。アイドル向きじゃないのわかってんのかねあいつらは」
「お前は全てが常に音楽基準なんだなあ。てかちゃんと見てるのな、顔だけでなく」
「ったりめえだ、歌や楽器さえ上手ければ、顔なんてついてさえいりゃいいんだよ。ここを何の学校だと思ってるんだ達哉は?」
ベースの達哉が柔和な笑顔で貴明と談笑する。貴明と透矢のような我の強い天才肌のリーダー格を複数抱えるバンドでは、こういう穏やかな人物の存在が「かすがい」になるものだ。もちろんそれだけでなく、彼の堅実かつグルーヴ感あふれるベースプレイはバンドに不可欠なピースである。
無口なむっつりキャラで、何を考えているかわからないが、細かいノリを余裕で叩き分けるドラマー・純一とともに、バンドの屋台骨を支えている。
「ねえねえトウくうん、私たちの曲だけど、ブリッジがいまいちしっくり来ないんだよね。どうすればいいー?」
一通り練習が終わり学生たちが歓談する中、紗英がどこから発声してるのかわからないほど甘ったるい声で透矢に話しかける。彼に理論的なことを聞いてもあまり意味はないのだが、案の定…
「ああ、紗英がいいようにやるのが一番いいと思うよ?」
「うんわかった、好きにやっちゃうね」
だから意味ないんだっての。で、困ったらどうせ次は俺のとこに来るんだよな…と貴明が明後日の方向を見ながらぼーっと考えていると、またしても案の定。
「ねえ貴明。こういう時はどうしてくれんのよこれ?」
透矢への態度とは180度違う、えらくぶっきらぼうで面倒くさそうな紗英が、貴明の眼前に仁王立ちしていた。
「ええと、今さらですけど、人にものを聞くにしては雑すぎませんか、紗英さん?」
「いいから考えてよ。せっかくトウくんが私にプレゼントしてくれた名曲なんだから。湖のやつ」
なぜに同じ男、しかも親友同士でこうまで扱いが違うのか。
「ちなみにあの曲、一応共作ってことにしてるけど、ほぼこの俺様が作ったんですがね」
「あーあーあー、聞こえなーい」
こんな一方的な関係ではあるが、貴明は入学以来、紗英に憧れている。他にもそんな男子生徒は多数いるものの、もちろん紗英が彼らをいちいち尊重する道理はない。
「ギターソロの後だし、ブリッジは雰囲気がガラッと変わるほうがいいよな。さっきのセセッションの2回目のパターンをベースにしていいと思う」
「へえ、あんた本当に音楽だけは的確よね。1回聴いただけでよくわかるもんだわ」
「音楽だけって失敬ですね。だいたい透矢に聞いたってムダなの知ってんだろ、あいつは全部フィーリングなんだから」
「だから天才なんでしょ。誰かさんみたいな頭でっかちよりぜんぜんカッコいいじゃない」
「あーあーそうかい、それじゃ俺も、紗英の好きなようにすればいいと思うよ!」
とびきりの爽やかスマイルで透矢のセリフを繰り返す貴明に対し、仏頂面レベルがMAXに達する紗英。
「うわあムカつく。あ、トウくんどこ行くのお?私喉乾いた、一緒に飲み物買おうよお」
相変わらず可愛い顔して可愛くねえ。環境なんか変わらなくても、女はこうやって簡単に別人になれるじゃないか。貴明はクサクサしながら考えつつも、
「あれ?環境とか何の話だっけ」
昨日の少女の空耳?が、どこかに引っかかっているようだ。
貴明と透矢はここの同級生でもあり、バンドは彼らを中心に結成された学内バンドだ。出会いは授業の一環だが、思いがけなくレベルが高く気の合うメンバーが揃ったため、今はインディーズ活動をしながらメジャーを目指している。
Back Door Men are
ギター&ヴォーカル=香取透矢(favorites:ランディ・ローズ、テレンス・トレント・ダービー)
キーボード&ヴォーカル=剣崎貴明(favorites:プリンス、レイ・マンザレク)
ベース=富樫達哉(favorites:ポール・マッカートニー、フリー)
ドラム=松尾純一(favorites:スチュワート・コープランド、レニ)
スタジオ内にはメンバー4人のほか、透矢目当ての数人の女子学生がいるのが日常。中でもうっとりと透矢のギターに聴き入る、頭抜けて華のある女の子が高木紗英だ。自らも学内バンド「Unhappy Girls」でヴォーカルを務める、貴明達の同級生である。
女子だけで構成されるこのバンドは、デビー・ハリーとパッツィ・ケンジットに心酔する紗英の際どい衣装…つまりは小悪魔的なエロさで注目の存在。さらにドラムの藤原理恵は長身巨乳のグラマラスな女王様キャラで、一部にコアな支持層がいる。
「あんたたちー!紗英と一緒にいきたいでしょー!」
「ほーっほっほ!あたくしに跪きなさい愚民ども!」
とまあ、いろいろスレスレだが煽り上手なパフォーマンスで、バンドの人気は上昇中だ。元々紗英は、学内一の美人として絶大な人気を誇る存在。それが外部にも知られてきて、最近のライブには紗英と理恵を見るために、レコード会社のみならず芸能事務所の関係者が足を運ぶようになっていた。
「芸プロ邪魔くせえ。レコ社が来ないと意味ないのによー」
「まあそう言うな貴明。紗英ちゃんくらい可愛ければ周囲がほっとかないさ。それに同級生がアイドルになるのも嬉しいだろ」
「アイドル?いや紗英の歌はロックで上手すぎるから可愛くはないだろ。アイドル向きじゃないのわかってんのかねあいつらは」
「お前は全てが常に音楽基準なんだなあ。てかちゃんと見てるのな、顔だけでなく」
「ったりめえだ、歌や楽器さえ上手ければ、顔なんてついてさえいりゃいいんだよ。ここを何の学校だと思ってるんだ達哉は?」
ベースの達哉が柔和な笑顔で貴明と談笑する。貴明と透矢のような我の強い天才肌のリーダー格を複数抱えるバンドでは、こういう穏やかな人物の存在が「かすがい」になるものだ。もちろんそれだけでなく、彼の堅実かつグルーヴ感あふれるベースプレイはバンドに不可欠なピースである。
無口なむっつりキャラで、何を考えているかわからないが、細かいノリを余裕で叩き分けるドラマー・純一とともに、バンドの屋台骨を支えている。
「ねえねえトウくうん、私たちの曲だけど、ブリッジがいまいちしっくり来ないんだよね。どうすればいいー?」
一通り練習が終わり学生たちが歓談する中、紗英がどこから発声してるのかわからないほど甘ったるい声で透矢に話しかける。彼に理論的なことを聞いてもあまり意味はないのだが、案の定…
「ああ、紗英がいいようにやるのが一番いいと思うよ?」
「うんわかった、好きにやっちゃうね」
だから意味ないんだっての。で、困ったらどうせ次は俺のとこに来るんだよな…と貴明が明後日の方向を見ながらぼーっと考えていると、またしても案の定。
「ねえ貴明。こういう時はどうしてくれんのよこれ?」
透矢への態度とは180度違う、えらくぶっきらぼうで面倒くさそうな紗英が、貴明の眼前に仁王立ちしていた。
「ええと、今さらですけど、人にものを聞くにしては雑すぎませんか、紗英さん?」
「いいから考えてよ。せっかくトウくんが私にプレゼントしてくれた名曲なんだから。湖のやつ」
なぜに同じ男、しかも親友同士でこうまで扱いが違うのか。
「ちなみにあの曲、一応共作ってことにしてるけど、ほぼこの俺様が作ったんですがね」
「あーあーあー、聞こえなーい」
こんな一方的な関係ではあるが、貴明は入学以来、紗英に憧れている。他にもそんな男子生徒は多数いるものの、もちろん紗英が彼らをいちいち尊重する道理はない。
「ギターソロの後だし、ブリッジは雰囲気がガラッと変わるほうがいいよな。さっきのセセッションの2回目のパターンをベースにしていいと思う」
「へえ、あんた本当に音楽だけは的確よね。1回聴いただけでよくわかるもんだわ」
「音楽だけって失敬ですね。だいたい透矢に聞いたってムダなの知ってんだろ、あいつは全部フィーリングなんだから」
「だから天才なんでしょ。誰かさんみたいな頭でっかちよりぜんぜんカッコいいじゃない」
「あーあーそうかい、それじゃ俺も、紗英の好きなようにすればいいと思うよ!」
とびきりの爽やかスマイルで透矢のセリフを繰り返す貴明に対し、仏頂面レベルがMAXに達する紗英。
「うわあムカつく。あ、トウくんどこ行くのお?私喉乾いた、一緒に飲み物買おうよお」
相変わらず可愛い顔して可愛くねえ。環境なんか変わらなくても、女はこうやって簡単に別人になれるじゃないか。貴明はクサクサしながら考えつつも、
「あれ?環境とか何の話だっけ」
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